精神機能と能力開発:心理学―教育学―社会学

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努力によって開花する才能

2014年12月17日 | 動機づけ・モチベーション・習慣
(1)努力とは?
意志をもって、目的・目標を達成しようとする、動機づけ(モチベーション)。

(2)努力と習慣
努力や練習によって、スキルを獲得し、スキルに熟達する。
新しいことを始める時は特別な心的エネルギーを必要とするが(コストが大きい)、それが習慣になれば心的エネルギーを必要としなくなる。

(3)努力と才能
生まれつき(最初から)備わった才能もあれば、努力を続けることによって開花する才能もある。
努力や習慣は、自分次第。継続は力。幸運は偶然(ランダム)。
努力や習慣は、第二の天性。

ADHDのよそ見や立ち歩きには、2つの理由が重なっている

2014年12月16日 | 発達障害(ADHD)


(1)中核メカニズム
注意欠如・多動性障害(ADHD)の中核メカニズムは、動機づけ特性。
1)制御や熟慮に必要となる、努力を要する動機づけ(effort)の、自己調節困難を、
4)外的に、努力不要で得られる動機づけを取り入れて、補償している。

(2)努力を要する動機づけの不足
1)授業に集中できない
2)授業中に立ち歩く、よそ見をする

(3)外部から取り入れて、補う
3)立ち歩いて、よそ見をして、気分転換
4)授業に取り組む

(4)空白時間・待ち時間
ADHDのある子どもは、環境内の刺激を取り入れて、デフォルトの動機づけ状態の低さを、補おうとしている。
そのため、手持ち無沙汰の空白時間・待ち時間(刺激や活動が少ないので)が、最も苦手。進行のテンポがゆっくりの活動よりも、速い活動の方が、課題への取組みが良い。
また、単調な課題に対する集中力は、他児よりもかなり短い。5~10分が限界。課題や活動をユニットにして入れ替えるなども、メリハリや気分転換になる。

(5)ADHDについて
ADHD のある子どもの問題行動は、デフォルトの動機づけ状態の低さを補うための退屈しのぎの機能が出発点。実際の教室の授業場面では、他児が皆静かに着席 しているので、1)自分1人だけが容易に注目されて嬉しがり、2)近くの席のお友だちにちょっかいを出して嫌がられたり、3)先生に叱られてわざと反抗して面白がったりと、1)~3)にあるような人に注目されたり構って貰ったりして喜ぶことも、(出発点の)デフォルトの動機づけ状態の低さを補う機能を果たしている。このような強化の随伴性の悪い流れ(悪循環や誤学習)を変えることが、実践的な介入や指導の焦点。ADHDのある子 どもは、基本的に悪い子ではなく、人懐っこく、構って欲しい気持ちが強いので、叱られて反抗することが唯一の関わりになり、悪い子として人に認められることは、本人にとっても不本意。また、やる気がないことの原因が、授業の内容についていけず、活動を上手に行う自信がない場合は、「わかる・ できる」ための手立ても併せて必要。

(6)自閉症とADHDの併存について
不注意や多動がみられる場合、まず1)小児神経疾患を疑い(これは障害ではなく病気、直ちに治療が必要)、次にADHDではなく、2)自閉症や自閉的傾向、3)虐待による反応性愛着障害のことが考えられる。たとえば乳幼児健診で、ことばの遅れと多動が指摘された場合、そのお子さんはADHDではなく、自閉症であることが多い。自閉症の子どもの多動の特徴は、1)自分のこだわりのあることにマイペースであること、2)感覚の過敏性や、3)状況理解の困難、4)状況に不安や心理的ストレスがある場合、居心地の悪さが多動として表現されること。ADHDでは外見はHyper(過剰)だが脳内の活動はHypo(過少活性:デフォルトの低さ)であり、自閉症では脳内の活動がHyper(不安やパニックなど)の違いがある。注意力については、ADHDでは大雑把で細かいところに注意が向かず、自閉症では細かいところに注意が向くものの、全体を統合して意味を捉えることが苦手など、違う。

また、仮にADHDやLDと診断されていても、年齢とともに自閉的傾向に診断変更されることもある。自閉症の診断基準の「三つ組」をすべて満たすのではない自閉的傾向は、できるだけ早期に発見することが望まい。発見が遅れるほど周囲との人間関係がこじれて、思春期の二次的症状や、成人期の症状の複雑化へと進展するリスクがある。例えば、小さい頃は、思ったことをそのまま口にしても笑って許されたり、他人のルール違反を指摘して大人に報告すれば褒められるが、大人になれば、本当のことでも言ってはいけないことがあり、他人のルール違反はあえて指摘しないなど、暗黙の大人ルールがある。小さい頃の環境では、自閉症の特性が隠れてしまうことに注意が必要。

発達障害(LD、ADHD、自閉症)は、純粋例や典型例がある一方で、相互に高率で併存し、併存例では臨床像が類似している(はっきりとどの障害ともいえない微妙な状態)。併存例の子どもの指導方針としては、純粋例や典型例の指導原則を柱にして、その子の特性に合わせて微調整をする。学校教育においては、その子の医学的な診断名というよりも、認知特性の個人差に基づいて指導する。

指導のスキル、初心者の場合 ~職業の顔と一人二役~

2014年12月15日 | 臨床指導のコツ
指導のスキル、初心者は何を目標にしたら良いのか?

(1)ロジャースの3原則、バイステックの7原則
これらは究極の目標であり、職業キャリアを通じて目指すべきもの。
初心者がこれらすべてを直ちに習得することは、現実的に不可能。
もし、初心者がこれらの原則を文字通り実行しようとすると、上手くいかないことが多い。
それでは、初心者は、当面は何を目標にしたら良いのか?

(2)職業の顔
初心者は、当面の目標として、「普段の自分を見せない」「職業の顔を身につける」ことを心掛けるのが現実的。
これは、クライエントを不安にさせず、信頼されるだけの職業的な意識や態度のこと。
自分の人間としての本来的な善意や真心で接するというよりも、(もちろん、それは理想として目指していなければならないが)
当面は、普段の自分を見せないことを心掛けるべき。

(3)一人二役
指導者には、厳しさと優しさ、一人二役、どちらも必要。
厳しいだけ、力で押さえつけるだけでは、一時的に上手くいったようにみえて、実際は内心の不満や反発を買う。
優しいだけ、物分かりの良いだけでは、甘やかしてダメにする。また、共感や受容だけでは通用しない場面にも、必ず遭遇する。
厳しいのか優しいのか、曖昧で良く分からないのも、まずいやり方。うやむやで、馴れ合いを生む。
厳しさも優しさも、相手のためを思っていれば、指導効果が生じる。褒めなければならない、叱ってはいけない、ということはない。相手のためを思っていなければ、誉めても指導効果はない。

(4)初回で仲良し
初回の指導で、ラポール(信頼関係、仲良しになる)を築くことは可能。ラポールに手間取ってはいけない。
初回の指導でラポールができないと、子どもの保護者は失望して次回から来なくなることもある。成人のクライエントでも同様。
また、心理検査は一回限りの出会い。その一回でラポールができないと、被験者は緊張してしまい、本来の能力を発揮できず、検査結果が低くなる。

(5)長く続ける
自分の指導スタイルができるまで、少なくも3年かかる(石の上にも三年)。
それを10年続けると、自分の仕事が自由にできるようになる(桃栗三年、柿八年)。

2つの発達障害 ~知的障害・脳性麻痺と、LD・ADHD・高機能自閉症~

2014年12月14日 | 発達障害(全般)


発達の障害について…

(1)発達とは
子どもの心身の形態や機能が、身体の発育や文化的な経験を通じた学習によって成長し、大人になること。

(2)発達の障害とは
発達の全般的な障害(遅滞)であり、これは知的障害や脳性麻痺のこと。

(3)法律用語
発達障害が知的障害や脳性麻痺であるという考え方は、1960年代にアメリカ合衆国で提起された。この発達障害は、法律用語。

(4)学術用語
しかし、この法律用語である発達障害が、我が国に紹介されたとき、まず学術用語として広まり、学会名称や学術雑誌名に採用された(日本発達障害学会)。

(5)発達障害者支援法
さらに我が国では、学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、高機能自閉症など、知的障害を伴わないものの発達の偏り(部分的障害)のあるものを、発達障害として新たに法的な支援の対象とした。

(6)2つの発達障害
我が国では、学術用語としての発達障害(知的障害、脳性麻痺)と、法律用語としての発達障害(LD、ADHD、高機能自閉症)が併存している。

心理学の3つの柱 ~知覚・行動・学習~

2014年12月12日 | 心理学
<心理学が日常生活の実感とは異なるのはなぜか?>
(a) 誰でも日常生活の中で、相手や自分の気持ちを考えている。心理学は最も身近な学問のはずだが、日常生活の実感とは異なる。
(b) この日常的な心理分析は、(自分の)主観と(相手の)主観の間の共感的理解。これには、主観と客観、気分や感情、事実と憶測、先入観など、あらゆるものが含まれ混在している。
(c) それを科学的(客観的)な視点から、整理して体系化したものが心理学。その柱は、大きく3つ。

<心理学の3つの柱>
(1) 知覚
感覚と知覚は異なる。感覚とは、光や音など物理的な情報が、神経を通って大脳に伝えられること。知覚とは、その伝えられた情報を受け取り、意味づけして理解すること。たとえは、写真を感覚とすれば、絵画が知覚にあたる。知覚は物理的な情報そのものではなく、人によって受け取り方が異なる。知覚は心理学の入口。
(2) 行動
人が何を考えているのか(主観・内省)ということより、どのように振る舞ったか(行動)に注目する。行動は心理学の土台、行動によって心理学は科学となる。しかし、人の主観や内省を取り上げないことで、心理学を日常生活の実感から遊離させている。
(3) 学習
心理学用語の学習とは、学校の学業のことではない。経験によって行動が変化すること、新しい行動を習得すること、ある状況である行動が生じやすくなること・生じにくくなることが、心理学の学習。スキルや知識の習得、生活環境への適応・不適応は、この学習の結果であると考える。



自己分析や自分探しについて

2014年12月11日 | キャリア


「自分」というものについて
(1) 自分にしか分からない(他者には分からない)ことがある一方で、
(2) 自分では分からない(他者には良く分かる)こともある。
(3) また、他者を見て(人の振り見て…)自分の欠点に気づくこともある(…我が振り直せ)。
(4) 自己省察(振り返り)がないと、成長につながらないが、
(5) 自分自身に注意や意識が固着することは、精神的・社会的不適応を高める。自己分析の深みにはまる。
(6) 他者とのつながりも自己省察も、どちらも必要。
(7) さらに、努力や取り組みを続ける、経験の積み重ねによって気づく、自分もある。立ち止まって考え込んでいては、気づかない。

ADHD研究の謎 ~不注意と衝動性~

2014年12月10日 | 発達障害(ADHD)
(1)不注意と衝動性
ADHDには3つの臨床症状(不注意、多動性、および衝動性)がある。ADHD研究のテーマは、多動性→不注意→衝動性の順に変遷した。現在はADHDの衝動性が注目されているが、ADHDの不注意について結論は出ていない。

(2)妨害刺激
妨害刺激があると、課題の成績(パフォーマンス)が低下することも、改善することもある。妨害→改善。(?)

(3)よそ見、立ち歩き
課題の遂行の邪魔にならないように、よそ見をすることがある。身体活動を伴う課題で、成績が良い。課題に取り組むために、よそ見や立ち歩きをする。(?)

(4)衝動性とテンポ
課題のペースについて、早いテンポで反応抑制(衝動性)の課題の成績が改善する。慎重に取り組むことのできる筈の遅いテンポでは、その課題の成績が低下する。(?)

(5)報酬
報酬(ご褒美)があると、課題の成績が改善する。報酬は衝動性をもたらす(すぐに手に入れようとする)とは限らない。

青年期の自己意識 ~個性の自覚と孤独感~

2014年12月09日 | 意識
一般にいわれる孤独感とは、社会的孤立(人との繋がりがない)のことをさし、社会不適応のリスクのある望ましくない状態とされる。それに対して青年期の孤独感とは、自己意識が高まり自我を確立していく過程で(一過性に)生じるものをさす。青年期の孤独感は、自他の分離性や自己の独自性、個性の自覚に伴う孤独感であり、思弁的・思索的なものといえる。

この思弁的・思索的な孤独感について、1980年代前半に実施された自己意識のアンケート調査と同じ内容を、再度1990年代後半に実施して統計的解析を行った。その結果、1980年代前半には明瞭に示された思弁的・思索的な孤独感が、1990年代後半には不明瞭になっていた。その理由として、①青年期において思弁的・思索的な傾向が低下していること、②インターネットや携帯電話などの普及により、常に人と繋がっている状態(自分1人の時間が少ない)が考えられた。

常に人と繋がっている状態とは、人に支えられている望ましい状態(ソーシャルサポート)である反面、例えば誰かに電話や電子メールを貰った場合はすぐに返事をしなくてはいけないなどのプレッシャーや負担感も指摘される。現在の子どもの人間関係では、「キャラ(クター)」というものが存在する。「キャラ」とは、その子どもの本来のパーソナリティや個性というよりは、劇の配役(演じられた役)のようなものとされる。この「キャラ」により予測可能で調和した人間関係が維持される反面、本来の自分自身を表現できなくなる。自分自身の真の個性に気づき、独創性を発揮するためには、人との繋がりだけでなく、自分1人の時間を確保することも必要になる。

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