もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵/椎名誠 角川書店

学生時代に本の雑誌社発行の単行本で1度読んだことがある。
文藝春秋を一字一句洩らさず読むという企画だけ鮮明に覚えていたけど、
あとは記憶になかった。
つくづく自分の脳みその容量の少なさに悲しくなる。
古い記憶が新しい記憶によってガシガシと上書きされてしまうのだ。

冒頭を飾るタイトルと同名の小説は、
当時、目黒考二が椎名の原稿をボツにしたことが元で喧嘩になったことの意趣返し。
不思議な小説「武装島田倉庫」へつながるアイデアの原型が散見される。

雑誌のレビューは今は亡き懐かしい雑誌タイトルがいっぱい出てきて遠い目になる。
読んだことはないけれど、そういえばあったよなあ……。
「写楽」、「ホットドッグ・プレス」、「平凡パンチ」、「微笑」とか。
どれも同じ婦人雑誌の新年号メッタ斬りもナルホドであった。

単行本が発行されるまでの事件やエピソードは椎名の「本の雑誌血風録」や目黒の「本の雑誌風雲録」に詳しいので併せて読むと深く楽しむことができる。
この本が書かれたのは1981年。
椎名の文章が若いです！