jurgen's Heurige Blog (ゆるげんのブログ)

I will, I will いっぱい足りないの切なくて
I feel, I feel いっぱい会いたいのボクだって

深夜特急3 インド・ネパール/沢木耕太郎

2010年11月20日 | 読書
わしが初めて読んだインドの旅について書かれた本は椎名誠の『インドでわしも考えた』だった。
それまで書かれたインド本は藤原新也をはじめ「暗く重い」ものばかりだったそうだ。
椎名さん独特の半径50メートル以内の感性によってとらえたインドは「明るかった」。
わしはインドへ一度も行ったことがないが、
椎名的インドのほうがわかりやすく、
等身大で・ざっくばらんで・飾らない自分の感性と合っていたので断然こちらを支持したものだ。
藤原版インドは「キザでええ格好しい」が鼻について、
とてもじゃないけど読めたものではなかった。
この人のアメリカ本も同様で自分の肌には合わなかった。

沢木さん版インドも決して暗く重いものではなかった。
長年日本に住んできて培ってきた価値観・世界観が、
インドへ一度でも行ってみれば、
根底からひっくり返さられるインパクトがあるらしい。
インドに心底ハマってしまう人がけっこう多い理由がわかるような気がした。
神秘的というよりは猥雑で混沌として何でもありの世界。。
椎名的インド支持は決して間違っていなかった。

もっとも印象にのこっている「カトマンズからの手紙」の一節。

ヒッピーたちが放っている饐えた臭いとは、
長く旅をしていることからくる無責任さから生じます。
どの国にも、人々にも、まったく責任を負わないで日を送ることができてしまいます。
しかし、もちろんそれは旅の恥は掻き捨てといった類の無責任さとは違います。
その無責任さの裏側には深い虚無の穴が空いているのです。
深い虚無、
それは場合によっては自分自身の命すら無関心にさせてしまうほどの虚無です。

深い虚無の穴が開くほどの長い旅は経験したことはない。
長年サラリーマンをやってきて、
やっててヨカッタと思ったことは一度もなく、
一度しかない貴重な自分の若い時の時間を会社のために使い終わってしまった虚しさはものすごく感じている。
もっと別の使い道があったのではないか?
いまさら確かめようもないが、取り返しのつかないことをしてしまった虚無感はいっぱいだ。
長旅の虚しさとサラリーマンの虚しさは同じ物なのだろうか?
それとも別物なのだろうか?
よくわからない。。。


深夜特急3 インド・ネパール
沢木耕太郎
出版社: 新潮社 (1994/04)
ISBN-10: 4101235074
ISBN-13: 978-4101235073
発売日: 1994/04