jurgen's Heurige Blog (ゆるげんのブログ)

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深夜特急1 香港・マカオ/沢木耕太郎

2010年11月06日 | 読書
何年か前に読もうとして、
途中で挫折してしまった1冊。
アジアを旅することに興味がわかなかったのか?
単に忙しかったのか?
よく覚えていない。

この本によると香港はえらく刺激的なところのようだ。
その後、中国に返還されてどう変わったのだろう?
ちょっとだけ興味が湧いてきた。

実は印象に残っているのが、
本文よりも巻末の沢木耕太郎氏と山口文憲氏との対談の方だった。

旅の途中で出会った26、7才くらいのアメリカ人の中に、
アメリカに帰ったら大学に入りなおして、また企業に勤めるつもりだという人がいたという話。

山口:一旦ドロップ・アウトするとまたうまくドロップ・インする回路が日本にはない。
結局フリーライターをやるくらいしかないでしょう。
副業にテレビに出るくらいが選択の幅で、
もう一回銀行員になったりすることはできないですよね。

沢木:そうだね。
戻ってきてライターになるとかプロダクションに入るとか、
それぐらいのルートはあるけれども、
銀行員になるとか役人になるかという回路はない。
それがあると面白いのにね。


以前読んだ時も、
この部分がものすごく頭の中に残っていて、
日本もそういう柔軟な社会になったらどんなにいいだろうと思ったものだ。
この対談は1993年に行われたものだが、
日本の社会は依然として硬直したままだ。

現在の生き方に行き詰まりや疑問を感じて、
アテのない旅に出てみたいと思っている日本人はかなり多いのではないだろうか。
自殺者が毎年3万人を超える異常な社会である。
そこから一旦脱出して、他にどんな生き方があるのか?どんなライフスタイルがあるのか?
自分の目で確かめてくる価値はある。
本やインターネットで読んだり調べたりすることはできる。
しかし、自分の目で確かめてきた・肌で感じてきた情報とは雲泥の差がある。
ゆでガエルになるまえに、いろんな国を見ていろんな文化に触れて、
いろんな可能性を考えておくほうが断然よい。

旅に出たくとも、
いったんドロップアウトしたら、元にドロップインすることができない。
そうなると旅に出ることを諦めてしまう。
そんな悪循環が、ますます日本を硬直した閉塞感だらけの救いのないものにしているのではないだろうか。

ちなみにここで言っている「旅」とは、
日本へ帰国のチケットを予め用意した1週間かそこらの「海外旅行」を指していない。
この本に出てくるようなアテのない旅のことである。




深夜特急1 香港・マカオ
沢木耕太郎
出版社: 新潮社 (1994/03)
ISBN-10: 4101235058
ISBN-13: 978-4101235059
発売日: 1994/03