老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

562;これでいいのか・・・・

2017-11-22 06:07:47 | 老いの光影
これでいいのか・・・・

雲ひとつない冬の夜空に
浮かぶ星
くっきりと輝く
明日の夜明けは
霜が降り寒い朝

星が輝く東北の夜は
寒い
妻の名前は忘れてしまった夫は
足で掛布団をめくり
自由に動く手で
何やらゴソゴソしている
夫の怪しげな音に目を覚ました老妻
寒さと眠たさで起きるのは億劫だが
体に鞭を打つな思いで老妻は起きた
夫の寝姿は下半身は丸裸
シーツやパジャマから両手、陰部、臀部まで
糞尿まみれ
それを見ただけで
溜息をつく
(幸せが逃げていく)
ひどいときには
一晩に三回もシーツを取り替えたこともあった
気持ちが悪いから
紙パンツやパットを外してしまうのだろうが
「こっちが倒れてしまう」と、
87歳の妻はこぼす。

介護施設ではつなぎ(抑制着)は許されない。
本人の立場にしても抑制着は許されず、「人権無視」だと言われる。
こうも連夜糞尿まみれになった夫を
寒い深夜に介護される老妻の身を案じてしまう。
妻が倒れてしまったら誰が夫の世話(介護)をするのか。
長男嫁(同居)はいるが、「あっしにはかかわりない」といった感じ・・・・。

本人には申し訳ないと思いながらも
婆さんが倒れてしまったら
誰が爺さんの面倒を見てくれるのか
仕方がないと思いつつ、老妻に「つなぎ(抑制着)を使うと、おむつ外しはなくなる」と話をした。

翌日、つなぎを着せてみた。
翌々日の朝、老妻に電話をかけた。
「良かった、本人はゴソゴソしていたが、おむつを外すことは出来なかった」
「お陰様で体は休め眠ることができた」

これでよかったのか・・・・
これでいいのか・・・・

559;上手な介護サービスの活用処方 第47話「認定調査の項目」 〔44〕 「物や衣類を壊す」

2017-11-21 00:08:09 | 上手な介護サービスの活用処方
  上手な介護サービスの活用処方 第47話「認定調査の項目」 〔44              
    4-11 物や衣類を壊す(有無)

・「物を壊したり、衣類を破いたりする」行動の頻度を評価する項目である
・実際に物が壊れなくても、破壊しようとする行動がみられる場合は評価する。

1.ない
2.ときどきある
3.ある

・食事中に、お椀を地面に叩きつけるような行動が、月に数回みられることから、
 「ときどきある」を選択する。樹脂製のため壊れることはないが、食べ物が
 散乱するため掃除が手間になっている。

・気に入らないことがあると周囲のものをとって投げることが月1回あり、
 家族は掃除等に 手間を要している。頻度より「ときどきある」を選択する。

・壊れる物を周囲に置かないようにする、破れないようにするなどの工夫により、
「物を壊したり、衣類を破いたりする」「行動が見られない場合は、「ない」を
 選択する。この場合予防的手段が講じられていない場合の状況、発生する介護の手間、
 頻度について特記事項に記載する。


介護保険制度がスタートする前は、介護施設に勤務していたことがあった。
そのときは、認知症老人は、シーツを破いたり、枕を破り、籾殻を出したりしていた。
認定調査を行っていて、在宅では上記のような行為はほとんど耳にしない。
よく耳にするのは、紙おむつを外し、紙おむつをちぎったり破ったりしている。

557;気になる老人(ひと)

2017-11-20 11:54:24 | 老いの光影
気になる老人(ひと) 

朝、出かけにスマホが鳴った
「今日歩くのもしんどいから休む」

一昨日 SpO2を測ろうと
人指し指に挿入しても
なかなか数値が出てこなかった
足は浮腫み
オシッコも余り出なかった
爪の色は悪く死の影を感じさせる
冬至を過ぎ初春には96の齢になる
「(死が)近いんだ」と呟いていた
気になり
会いに行った

堀炬燵に足を入れ坐っていた
声をかけると
笑顔はみられたが
歩くのも億劫
顔は右眼から頬にかけ
左手の背にも
浮腫みあり
オシッコ余りでず
水は余り飲まない





556;ミミズ

2017-11-20 07:03:01 | 阿呆者
ミミズ

gennki旅に出かけるか」と話すと
妻は嫌がる
「縁起でもないから、旅に出るとは言わないで」と。
死の旅を連想するからなのであろう
私の立場からすれば
旅は
心の旅になる

散歩をすると
ミミズに出逢う

ミミズと人間とは
不思議な縁がある
チョッとしたケガのとき
腕や脛にミミズ腫れになる
土のなかから出てきたミミズに「こんにちは」
魚釣りのときミミズの世話になる

路上に瀕死状態のミミズは
顔を背けたくなる
乾き焼け爛れたたミミズの焼死体が
数匹放置されたままであった
舗装の上を遅々と歩いているうちに
舗装は鍋底の如く熱くなり
焼け爛れ息絶えたのであろうか

焼け爛れながらも最期の一瞬まで
熱い舗装から逃れようと
もがき呻きながら這いつくばっていたミミズ

いまの私はミミズ以下の生物
もがき悩んでいるだけで
そこから脱出する気概がない
熱い舗装から逃れようと
息絶えるまで這いつくばった
ミミズに見倣おう

555;上手な介護サービスの活用処方 第46話「認定調査の項目」 〔43〕 「収集癖」

2017-11-19 19:56:09 | 上手な介護サービスの活用処方
 上手な介護サービスの活用処方 第46話「認定調査の項目」 〔43
                4-10 収集癖(有無)

ここでいう「いろいろなものを集めたり、無断で持ってくる」行動とは、
いわゆる収集癖の行動のことである。


1.ない
2.ときどきある
3.ある

・昔からの性格や生活習慣などで、不要と思える箱や包装紙等を捨てないでいるが、
 明らかに周囲の状況に合致しない行動であるため、「ない」になる。

・毎日外に出て石を拾ってきて自室内に保管している。収集した石を勝手に廃棄すると
 本人が怒るため、家族はそのままにしている。この場合は「ある」になる



収集癖のある認知症老人はおられるのであろうが、私の場合
また介護相談や認定調査などにおいて遭遇したことがない。

553;抱きしめたくなる胸

2017-11-19 10:29:03 | 老いびとの聲
抱きしめたくなる胸

ママの胸は赤ちゃんのもの

キュ~ンとくる胸
トキメキの胸
ジ~ンときたときの胸
ドキドキしたときの胸
ハラハラするときの胸
抱きしめたくなる胸

抱きしめたくなるときの胸
どんなときかな
辛いとき
悲しいとき
再会したとき
恋しているとき

552;“水でも器に盛られた瞬間から料理になること”

2017-11-19 05:33:35 | 介護の深淵
 “水でも器に盛られた瞬間から料理になること”

韓国ドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』(韓国原題 大長今)(全54話)

4話「母の教え」の一場面を紹介ます。

「最高尚宮(チェゴサングン)になりたい」というチャングムに
ハン尚宮は「飲み水をもってきて」と・・・。
チャングムは、お湯、冷たい水、木の葉を浮かべたり、といろいろ工夫をしますが
何度もやり直しを命じられます。

ハン尚宮は、チャングムが最近、
泥水を沸かし洗濯をしたのは・・・と問いかけると、
チャングムは母の教きえを想い出した。
母親は水をあげるときに、
「お腹が痛くありませんか?」「今日お通じは?」「のどが痛いことは?」と、細かく聴いてから、
冷たい水や温かいお湯、甘い水を下さいました


ハン尚宮は、「そうよ、細かく聴くこと」。
そこに気づいて欲しかったの。
料理を出す前に食べる人の体調や好物、体が受けつける物。
それを考えるのが料理の心得だと教えたかった。
でもお母様からもう教わっていたのね。
お母様は立派な方ね。
水でも器に盛られた瞬間から料理になること。
食べる人への配慮が一番だということ。
“料理は人への気持ち”だとご存じだったのね」。

介護においても同じようなことが言えるのではないか、と私自身も教えられました。
食事や排泄、入浴などの介助を行うとき、
老人からどうしていただきたいのか、
「細かく聴くこと」と同時に
配慮(気遣い)していくこと、
それが重要なことであることに気づかされました。


551;上手な介護サービスの活用処方 第45話「認定調査の項目」 〔42〕 「一人で出たがる」

2017-11-18 13:13:34 | 上手な介護サービスの活用処方
 上手な介護サービスの活用処方 第45話「認定調査の項目」 〔42
              4-9 一人で出たがる(有無)

「一人で外に出たり目が離せない」行動の頻度を評価する項目である

1.ない
2.ときどき
3.ある

・以前は目を離すとすぐに家の外に出てしまっていたが、 下肢の筋力低下が進んでからは、
歩行ができないため、 実際に外に出て行くことはないため、「ない」を選択する。


人間は(他の動物も同じ)外に出たがる生き物だと思う。
 家の中にジッとしておれない。それは認知症老人だけに限ったことではない。
 ただ時(時間)と場(状況)を考えなずに「(一人で)外に出たがる」から
 介護者は困ってしまう。
・介護施設やサービス事業所のなかで、利用者が「一人で出たがる」とき、行動を制止せず
 手が届く距離間をとり後ろからついていったりなどの見守りが必要である。
 サービス利用中に歩行など運動することにより、適度な疲労感と外に出たいという
 欲求を実現することで、自宅に帰ってから「外に出たがる」ような行為は消失していくことに
 つながっていく・・・・・。

 
 

550;「誰にもわからないひとり介護の辛さ」に対する自問自答 〔2〕

2017-11-18 07:02:07 | 介護の深淵

「誰にもわからないひとり介護の辛さ」に対する自問自答 〔2

認知症を抱えた老人の辛さ
認知症老人をひとり背負い
どこまでも続けていく介護の辛さ

生きることさえしんどくなり
どうしようもない孤立感に襲われる
食べることさえも誰かの手をかりなければ
数分前に食べたことさえも忘れ
夜中には糞尿まみれになった老親の世話
生き恥を晒し人に疎まれながらも生きて往く辛さ
誰にもわからないひとり介護の辛さ

生き恥を晒し、人に疎まれながらも生きて往く辛さ

誰にもわからないひとり介護の辛さ
に対し
自分自身は どう悩み どうするのか
辛い荷物を丸ごと抱えたり背負うことはできない
相手の辛さをわかったふりではなく
自分のこととして耳を傾け
そのなかで痛み、辛さを感じとれる努力を
そして、使えるサービスと人をつなぎ
ひとり介護の辛さからひとりじゃない介護へ
わたしがいてあなたがいる
あなたがいてわたしがいる

老親を替えることはできないが
ケアマネジャーは替えることはできる

坂道を登った先の高台は鳥瞰の時空間
冬の先は春






549;「誰にもわからないひとり介護の辛さ」に対する自問自答

2017-11-17 07:03:14 | 介護の深淵

 『誰にもわからないひとり介護の辛さ』に対する自問自答

あるblogに掲載された『誰にもわからないひとり介護の辛さ』を読み
私自身唸り打ちのめされた
それでも「お前よどこまでひとり介護の辛さがわかっているのか」と
声が聞こえてきそうだ。

自由気儘に家族をかえりみず生きてきた親や連あいほど
貯金も余りなく年金もかけてはこなかった
使える介護サービスはあっても
介護に使える金は限りがある
残されたものは
ひとり介護者の介護力のみ

頼る者はなく
ケアマネジャーがいるじゃないか、と言われても
どこまで親身になって相談してくれているか
月1回の訪問でどこまでわかってくれているか

兄弟姉妹叔父叔母が居ても
自分の生活だけでいっぱいいっぱい
結局はひとりの介護の辛さが
重くのしかかる

やり切れない介護、辛いか介護の日々のなかで
生きるってなんだろう、と溜息をついてしまう
私の人生ってなんだろう
大切な時間を奪われ失い
気がついたときには
身も心も抜け殻になり生きる気力さえも失ってしまう
そんな辛さを誰にぶつけたらいいのか

濁流で堰き止めが破れ氾濫したとき
介護が燃え尽きたとき

どこまでわかっているのか
どこまで惚けているのか
わからないけれど
「ありがとう」の言葉があるだけで
辛い気持ちも救われる

「どこまで生きればいいのか」
それは「どこまで介護をし続ければいいのか」
それとも「どこまで介護をすればいいのか」
という言葉にも置き換えられる

「誰にもわからないひとり介護の辛さ」に対する自問自答
まだ自問自答にはなっていない
この続きは後日書いていく








548;在宅で見送る(看取る)ことの難しさ

2017-11-16 11:02:20 | 老いの光影

在宅で見送る(看取る)ことの難しさ 

昨日9時30分過ぎにスマホが鳴った
磯野さざえさんの声で「いつもおばあちゃんより元気がなくどうしたらいいか」
〔呼びかけても反応はありますか〕
「反応はあります」
〔血圧計ありますか〕
「血圧計壊れていて使えない」
〔血圧計持っていきます〕
〔電話だけでは様子がわからないので、今から伺います。それで私ごとで申し訳ないのだが、
肋骨骨折したので行くのに時間がかかるのでお待ち頂けますか。必ず行きます〕
5km先にあるさくらさくらデイサービスに電話をかけた。
センター長に「悪いけど血圧計とSpO2を持ってきてくれる。
ついでに私を乗せ磯野さん宅まで行くことできる?」とお願いする。
30分後にさざえさんから電話が入る「起きてご飯を少し食べたらいくらか元気になった」
〔良かった、いま向かっていますので間もなく着きます〕(私の自宅から車で7分程度)

磯野さん宅に着き、隠居宅の玄関を入ると居間兼寝室である。
フネさんはベッドに寝ていて、顔色は青白く目は窪み、
呼吸も荒かった(下顎呼吸の状態ではなかった)。
サザエさんは、どうしていいか戸惑っておられた。
血圧は上は151(いつもは100そこそこ)、SpO2測定すると「74」の数値
もう一度ど人指し指に挿入に測定すると「67」であった。
これでは呼吸するのも苦しいし、歩けるような状態ではなかった。
〔救急車を呼び、救急外来受診させた方がいいのでは〕、とサザエさんに話を持ちかけた。
「お願いします」ということになり、5分後には救急隊は到着。
救急隊員はSpO2を測定すると低く「66」であり、5の酸素吸入
タンカーに乗せ救急車に移動。20数分後に受入病院が決まり、救急車は走り去った。

7日から10日の入院予定で阿武隈総合病院入院となった。

今度同じような状態になったとき、阿武隈総合病院は入院を受け入れてくれるかどうか。
老衰のような症状のとき、在宅で看取りをとい医師から告げられるが
サザエさんにしてみれば、看取りの経験がないだけにどうしていいか不安である。
〔入院期間中に退院後どうしたらいいか、相談していきましょう〕ということになった。

昔は、庶民の生活は貧しく
おいそれと入院することはできなかった。
床に臥し、飲食もできなくなり老衰になると
(自宅の)畳の上で見送りをするのは
どの家庭においても普通の「死の風景」であった。

昔より訪問診療や訪問看護があっても
在宅で見送る(看取る)ことに不安や躊躇いがあり
病院での最期の治療を望む
”畳の上で(住み慣れたわが家で)死にたい”と本人が希望され
家族も本人の希望を叶えようと見送る強い覚悟が必要になる。

どうしても本人が苦しむ状態を見ると、悩みや葛藤が生じる。
それには勿論 在宅診療医師、訪問看護、訪問介護、ケアマネジャーなどの
連携になってくる

どこで死ぬか、
自分のことならば決められるが
他人のこととなるとなかなか難しい
昔の方がよかった、という老人の呟きが頭の中を過ぎる

確かにそうである
不便で生活は豊ではなかった
死ぬ場所にしても、悩むことはなかった

あなたは老い行き
死が近づいたら
何処で死にたいですか




547;上手な介護サービスの活用処方 第44話「認定調査の項目」 〔41〕 「落着きなし」

2017-11-16 07:29:51 | 上手な介護サービスの活用処方
 上手な介護サービスの活用処方 第44話「認定調査の項目」 〔41
              4-8 落ち着きなし(有無)

ここでいう「”家に帰る”等と言い落ち着きがない」行動とは、施設等で「家に帰る」と言ったり、
自宅に居ても自分の家であることがわからず「家に帰る」等と言って落ち着きがなくなる行動のこと。
「家に帰りたい」という意思表示と落ち着きのない状態の両方がある場合はのみ該当する。


1.ない
2.ときどき
3.ある

・単に「家に帰りたい」と言うだけで、状態が落ち着いている場合は含まれない。

blog512「徘徊」や「一人で出たがる」(次回掲載)とも関連してくる
・認知症が進行してくると、ここがどこだかわからなくなり、そわそわし椅子から立ち上がり歩きだす。
・認知症を抱えている女性の場合、「家に帰る」と話されるが、よく聞くと「実家に帰る」の意味が多い。
・ちなみに男性は「~に行く」「~に出かける」と言い、それは「会社に行く」「仕事に行く」と言って、落ち着きがなくなる。

デイサービスやグループホーム、介護施設などで、認知症老人が落ち着かずそわそわし立ち上がったり、歩いたりするとき、
一概に「落ち着きがない」「徘徊がある」「出たがる」などの行為は本人の問題にしまいがちである
それは、介護職員のかかわり方に問題があるのではないか・・・・。
「自分はここに居てもいいんだ」というような場の雰囲気をつくることが大切になってくる。
「できる」ことをお願いしたり、お願いしたことが不十分であっても「ありがとう」と言葉をかけ、
「自分は役に立っている」、
ここには自分の居場所があると感じさせると、落ち着きが出てきます。
それを「坐っていなさい」、立ち上がると「どこへ行くの」などと言ったり、指示や命令などが多いと、
ここは自分が居てはいけないと感じてしまい、「家に帰る」「子どもが待っているから帰る」等と言って立ち上がり、そわそわする。
利用者がそわそわした行動になると、介護者(事業所、介護施設)のサービスが貧しいのだな、と反省する方が先なのかもしれない。
認知症老人は正直なのである。感情を隠さずそのまま行動に出していく。