Gメモリーズブログ

有限会社クリエイティブデザイン羽沢組

初代ゴジラ見聞録・4

2014年11月28日 | 羽沢組的怪獣見聞録




4 背びれの開きの謎

 写真でも多くの劇中映像でもそうですが、初代ゴジラの背びれにはその後のゴジラに比べて大きな特徴があります。
 上から2つ目と3つ目が大きく開いています。いろいろ調べていくうちにそれが解決しました。
 1号スーツの制作写真はいくつか残っており、そこでは背びれの開きはありません。均等に並んでいます。皆さんご承知の通り、1号スーツは重くて使い辛いために途中で上下に分割され、下半身は足のアップなどのシーンに多用されています。上半身だけのものは下半身に比べて使用頻度が少なかったと思われ(首の部分で切断されて頭部は口の開閉などのギミックが仕込まれアップ用に使用されました)、分割後の写真や資料などはかなり少ないようです。ですからこの時の背びれの状態がわかるものはほとんどありません。

 一方の2号スーツ。少しばかりですが、制作時の写真がいくつかあります。はっきりと背びれだけが写っている写真はないのですが、斜めやシルエットなどから判断して、ここでも背びれは均等の並びで作られているようです。
 前に書いた開米栄三さんが入った2号スーツゴジラのスチール写真では、後ろや横のアングルはないのですが、斜めからの推定と、他のオフショット風の開米さんか入ったと推測されるスチールでは、2番目と3番目の背びれに開きは感じられないのです。
 ではなぜ多くの写真などで背びれがそのようになってしまっているのか。
 それは中島さんの身長が原因であると思うのです。
 ゴジラのスーツの中、足の下には板が入っており、鼻緒がついて下駄状になっており、それで歩いたりしていたそうですが、重量のせいで相当な運動量だったそうです。しかも尻尾は後年のゴジラとは違い、吊って操演で動かしていた事はほとんどなかったそうです。制作の過程でもわかる通り、あの長さと太さでは尻尾だけでも相当重かったはず。中島さんが装着している風景写真や、2号スーツを脱いだ状態の写真でも尻尾だけは形をとどめてあるのがわかる事からも尻尾の重さは感じられますし、特にお尻の下、尻尾の付け根部分は太く芯もしっかりしてあるはずですので、それらは推定できます。その尻尾を引きずるわけですから、歩くだけでも重心が下や後ろに引っ張られて大変だった事でしょう。
 中島さんの身長からして、2号スーツではお腹から腰、膝から足首までの間にしわやたるみが出やすくなっている事がわかります。人が入っていない状態での2号スーツの写真でもそれらはわかります。つまり背中で言うと、3番目の背びれの高さから下なのです。
 重くて引きずるしかない尻尾、動かしにくい下半身を中島さんの運動量で無理矢理的に動かしていた事を考えれば、常に腰から下の部分が強引に引っ張られた状態になるのは必然。3番目以降の背びれがどんどん下に向くわけなのです。なので2番目と3番目の背びれが開いていくのは当然と言えるでしょう。明らかに意図的ではなく、イレギュラーでそうなってしまっているというわけです。

 この謎がわかっただけではなく、この検証だけでも、中島さんが実に大変な仕事をされたのかというのもよくわかります。あらためて尊敬してしまいます。

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