この間のコンテストでいまいちSWRが高いのが気になっていたアンテナ。もう一度組直してみると、48MHzくらいで共振していることがわかった。ところが、いろいろ接触を疑って触っていたら、いつの間にか直ってしまった。たぶん、同軸ケーブルのコネクタが怪しかったような気がする。長く使っていた秋月の安物ケーブル、錆も出ているし接点復活材をオミマイした。ちなみにトランシーバーとアンテナの接続には、もう秋月のケーブルは使っていない。やっぱり安物買いの何とかかな?
なんか難しそうな理論である。私も最近まで聞いたことがなかった。同志社大学の故市川亀久彌教授の提唱した理論である。「創造性の科学」と題された氏の本には、親交のあったノーベル賞科学者の湯川秀樹が序文を寄せている。日本初のノーベル賞受賞者がお墨付きを出しているわけだから、怪しい理論ということで片づけてしまうわけにもいかない。
市川先生は、この本を初め多くの独創的研究の方法論についての著作を出版した。それらの多くの著作の中で、中心的な考え方が、等価変換理論というものらしい。ちょっと気になって今は絶版になっている「創造性の科学」を中古で入手してみた。ちょっと変わった本で、ほとんど説明もなく何十ページにわたってたくさんの図が収められていた。そこに示してあるのは、木の枝分かれの様子が川の枝分かれに似ていることとか、ペリカンのくちばしの角度がパワーショベルのバケットのそれとそっくりであることなど、とにかく身の回りの様々なものの類似点についてたくさんの例題が示されている。
どうやら、こうしたたくさんの例から、市川先生は、世の中のいろんな事柄が一定の変換によって結び付けられることに気が付いたのである。それが等価変換理論である。本の中には、その変換を示す式が書いてあるが、普通の数式ではないその理論は今一つよくわからない。
長年技術者をやって来て、もともとの自分の専門分野とは異なるような分野の仕事にも関与するようになった。そういう時にどうやって未知の問題にチャレンジしてくかというと、実は類似性の発見というのが大きな武器になっている。要するに専門外の分野であっても、その問題の本質的なレベルでは、自分のよく知っている、例えば電気工学の分野と同じはずと考えるのである。そして、その類似性がある程度認められるような構造が発見されれば、答えを見つけるのはそれほど難しくない。言ってみれば、戦いを自分の得意な場所に引っ張り込むようなものである。さらにいうと、それは工学的な分野だけに限定されないような気もする。政治や社会のいろいろな問題をニュースで見ているときに、「この話、どっかで聞いたことあるなあ。」と思うことがある。それは、同じ話を新聞で読んだことがあるということではなく、構造が類似の問題を、他のところで見たことがあるということである。
例えば、最近進歩が著しい脳の仕組みについてのモデルは、階層化された人間社会の構造にすごく似ているような気がする。数多くの細分化された企業や自治体が全体として統合され、政治家がその頂点で国としての体面というか一貫性を保っている、というのが今の社会のありようだが、これってまさに脳の中で行われている処理とそっくりであると思うのだ。もし、この類似性が本当だとすると、脳の中にも警察とか裁判所とか、そういう構造もあるはずである。どうだろう?
いずれにしても、見る角度や立ち位置によって、物事というのはいろんな様相を呈して目の前に現れる。でも、一歩下がって、見直してみると、実は皆同じようなものであることに気がつく。どんどんどんどんその目線を後ろに引いて、高い位置に持っていくと、全てものが一体になった姿が目の前に現れてくるような気がしないでもない。こうなってくると工学というよりも宗教のお話になってくるかもしれない。
市川亀久彌、創造性の科学、日本放送出版協会、昭和45年第一刷発行