少年カメラ・クラブ

子供心を失わない大人であり続けたいと思います。

両眼でみる月

2005-01-17 22:08:10 | 天体観測
双眼装置を使って月を初めて観望した。冬型が強まってきたので、風が強くシーイングは最悪。ゆらゆらと像はゆれている。西にちょっと傾きかけた半月が寒い冬空にぽっかりと浮かんでいた。

82度のナグラーアイピースでは、60倍超の倍率であっても月全体がまだ視野に収まる。双眼装置の中に入っているプリズムのためにやや収差が大きくなって端の方にいくとニジミがちょっとでるが、それほど気になるということはない。

両目で見た月は、片目のときに比べるととても「頭に入りやすい」感じがする。片目(右)で見たときは、一つ一つの地形の特徴を噛んで含めるように頭に入力してからスケッチしたが、両目で見ると全体の形がスッと理解できる。右目だけで見ているときは、実際には82度もの視野があるので、相当広範囲な部分を見ているにもかかわらず、頭は意識が向いているほんのわずかな領域しか認識できなかった。しかし、両目で見る月面は広がりを持った広大な領域の中にいろんな特徴的な構造がみえるのだ。

もちろん、片目でみたときよりも顔の筋肉が緊張しない分リラックスして楽に観望を楽しめたことは当然だ。

右目は左の脳へ入力され、左目は右の脳へ入力されると言う。右目だけで見ると、細かい地形の分析はできるけど全体を把握することが難しいし、左目だけでみると見えているのに地形の特徴を言語化できない。そして両目で見ると、それらが統合されて認識されている。まさに教科書通りの実験結果が得られたわけだ。

以前スケッチした場所を今度両目でスケッチして比べてみよう。多分、大分違ったものになるだろう。意識としては、月の地形なんてどうやってみても同じなはずなのに、どっちの眼で見るかということが、ものの認識に大きな影響を与えるなんて、すごく面白いと思う。月の地形の実相を私たちは知ることが出来ない。眼という器官を通して意識の中にイメージからそれを想像するしかない。