『茜のランプ』は松尾祥子さん(コスモス・桟橋)の第二歌集。
2006年4月18日、柊書房発行。定価2600円(税込)。
*
歌集名が『茜のランプ』ということもあって、何とも言えない親近感を覚えた。
暖色系の色合いがあたたかみを感じさせる一冊。
・あやまちを赦してくれる木のありて会ひにゆくなり寂しき晩夏
・をんなにはわけのわからぬ力あり踏ん張る足に根がはえてくる
・風ふけばなんぢやもんぢやの樹は揺れてこんなもんだとわれに言ふなり
ああ、とため息をつきたくなった時に、こんな歌に出会うと、
ふつふつと自分の中に力が湧いてくるような気がするのは、何故だろうか。
言葉には力があり、それは人に勇気を与えもするし、絶望のふちに追いやることもある。
「癒し」という言葉は、流行してしまってからは妙にマイナスのイメージを帯びてしまったけれど、
やはりこのような歌はいい意味での「癒し」の力を持っていると思う。
「あやまちを赦してくれる木」とはなんとやさしい存在であろうか。
そして「わけのわからぬ力」が宿ることを自覚したり、
なんじゃもんじゃの木の「こんなもんだ」という言葉にかえって救われてみたり、
歌集を読んでいるうちに少し元気が戻っている自分に気づくのだ。
・へうたんを磨く人ゐし縁側に人なくてひとつへうたん残る
・蜘蛛の子も人間の子も成長す時のしづくをたくはへながら
・死のまへの五分思へばハト麦茶煮出す五分のふいに尊し
・夢を子に問はれてしばしかんがへる頭に大き紫陽花ひらく
・考へて考へすぎて秋ふかし丸干しイワシ頭から食む
寂しいことも悲しいことも、或いは現実のどうしようもないことも、
松尾さんの歌には何とも言えない「救いのようなもの」があって、そこにとても魅力を感じた。
愛唱性のあるあかるい調べもこの作者の魅力だと思う。
あかるすぎない、つよすぎない、ほどほどの加減があって、
きっとそこが心地よいのだろう。
多くの方々にこの松尾さんの歌の魅力を味わっていただけたらと思う。
(※柊書房・・・電話03-3291-6548)
2006年4月18日、柊書房発行。定価2600円(税込)。
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歌集名が『茜のランプ』ということもあって、何とも言えない親近感を覚えた。
暖色系の色合いがあたたかみを感じさせる一冊。
・あやまちを赦してくれる木のありて会ひにゆくなり寂しき晩夏
・をんなにはわけのわからぬ力あり踏ん張る足に根がはえてくる
・風ふけばなんぢやもんぢやの樹は揺れてこんなもんだとわれに言ふなり
ああ、とため息をつきたくなった時に、こんな歌に出会うと、
ふつふつと自分の中に力が湧いてくるような気がするのは、何故だろうか。
言葉には力があり、それは人に勇気を与えもするし、絶望のふちに追いやることもある。
「癒し」という言葉は、流行してしまってからは妙にマイナスのイメージを帯びてしまったけれど、
やはりこのような歌はいい意味での「癒し」の力を持っていると思う。
「あやまちを赦してくれる木」とはなんとやさしい存在であろうか。
そして「わけのわからぬ力」が宿ることを自覚したり、
なんじゃもんじゃの木の「こんなもんだ」という言葉にかえって救われてみたり、
歌集を読んでいるうちに少し元気が戻っている自分に気づくのだ。
・へうたんを磨く人ゐし縁側に人なくてひとつへうたん残る
・蜘蛛の子も人間の子も成長す時のしづくをたくはへながら
・死のまへの五分思へばハト麦茶煮出す五分のふいに尊し
・夢を子に問はれてしばしかんがへる頭に大き紫陽花ひらく
・考へて考へすぎて秋ふかし丸干しイワシ頭から食む
寂しいことも悲しいことも、或いは現実のどうしようもないことも、
松尾さんの歌には何とも言えない「救いのようなもの」があって、そこにとても魅力を感じた。
愛唱性のあるあかるい調べもこの作者の魅力だと思う。
あかるすぎない、つよすぎない、ほどほどの加減があって、
きっとそこが心地よいのだろう。
多くの方々にこの松尾さんの歌の魅力を味わっていただけたらと思う。
(※柊書房・・・電話03-3291-6548)