花夢

うたうつぶやく

036:組うた

2006年12月11日 | 題詠2006感想
目に止まる作品がいっぱいあって、収集がつかなくなってきます。
このところ、どんどん選べなくなってきています・・・。

かなりいろいろと惹かれました。
ここに載せなかったものでも、まだ気になっているものはあるのですが・・・。
とりあえず、パチンと濃く気になったものだけを残しました。


かたくなに拒めばこばむほど枠組みをはみでるわたしの向日葵のこと
小軌みつき

向日葵の大きさ、明るさが、うわっと迫ってきます。
たぶん、向日葵はとても肯定的な花だと思います。
これでもかというくらい、目立つ黄色の花弁を大きく広げ、太陽に向かって咲く向日葵。
なにかを守ろうとしているものにとっては、まぶしすぎるほどに。明るすぎるほどに。

無条件に肯定的な存在を拒もうとするのは、そこに、手放しにしていられない守りたいものがあるからでしょう。
それが「枠組み」となり、作中主体を囲っている。
けれど、拒もうとすればするほど、向日葵は自分の心に広がっていく。
拒もうとしていること自体が、その存在をはっきりと意識してしまっているということだから。

心のなかは、きっと、いろんなものが絡み合い、せめぎあっているのでしょう。
けれど、そのなかにうわっと嫌でも広がる向日葵は、いつしか「わたしの」という所有格となっています。
いつのまにか、心の中には、そのまっさらで肯定的な向日葵がしっかり根付き、枠組みをはみ出しながらも「わたしの」一部となって咲いているのではないでしょうか。



遺伝子の組み換えよりも複雑な心の微分積分を解け
松本響

うわー。なんてこと!と思いました。
通りで解けないわけです。
難問・・・・というより、不可解な領域。
ふつーの人にとっては。

しかし、その難解さを「解け」と目の前にばっと投げられた感じ。カッコイイ。

響さんの作品には、時折、学校で習う用語がぽろぽろと出てきて、私はそれがとても好きなのです。
学校で習う用語は、たいてい、その意味や、その使い方、教室以外ではなにひとつ役にたちません。
けれど、響さんは、それを街中のあちこちに放り投げ、散りばめることで、教室で得られない別の「答え」を導こうとしているように思います。



全身の皮下組織には広がって青い匂いがそれから消える
やすまる

一瞬、ん?と思いましたが、野暮を承知で、少し継ぎ足すと・・・・
全身の皮下組織には(○○○が)広がって青い匂いが(広がって)それから消える
という意味なのでしょう。

ここに入る主語(○○○)とは、なんなのでしょう。

全身の皮下組織に広がるもの。青い匂いが広がるもの。

ただ、わかることは、なにかの感情の一種だ。ということです。
いや、むしろ名づけられぬ感情ゆえに、こういう形になったのかもしれません。
全身の皮下組織に広がり、青い匂いを放ち、消えていくもの。

そこに、うれしいとか、悲しいとか、せつないとか、そういうものは付随せず、ただ、そういう“感覚”に似たものが通りぬける。
そういう瞬間を切り取られたような気がします。



神様がぼくらを組み立てたときに願ったことが思い出せない
みち。

神様は、ぼくらを組み立てたのか。と思いました。
なんだか、レゴみたい。「作った」と言われるより、不思議な感覚。
私たちは、説明書つきで、いろんなパーツを寄せ集め組み立てられたものだったのか。

そして、そこに願いがあったのか。

組み立てられていたことすら、忘れていた。
そこに願いがあったのかどうなのか、私はもう覚えていないらしい。



<振り返り>
遊び心にのって、ここから4首は春夏秋冬を詠みこんでみました。
(みつきさんに気づいてもらえて嬉しかったです。笑)
お題をふたつ盛り込むような感じで、季節の雰囲気が出るような歌を。という試みでした。