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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

支配者の眼

2016-06-28 07:31:21 | その他
 〇〇文化センターや公民館(浜松市では協働センターと呼ぶ)で、歴史などの教養講座が展開されている。同じ人があちこちで、異なったテーマで講師を引き受けているが、ボクではとてもやれない。一つのテーマに最短でもほぼ一ヶ月の時間を費やして準備するボクとしては、驚くばかりだ。

 さてそういうことではなく、歴史講座で人気があるのは戦国時代である。したがって、戦国時代の研究者はあちこちで講師を依頼されたりするからなかなか収入は良いようだ。しかしおもしろい話をするためには、一次史料だけではだめ、どうしても後の時代に書かれた書物をもとにし、あたかも史実であったかのように話さなければならない。徳川家に関わるものだったら江戸時代にたくさん書かれている。
 そういうものをつかってストーリーをつくるのだろうが、そうなるとウソを伝えるということにもなり、ボクではとてもできない。

 今浜松市では、「井伊直虎」を売り出そうと多額の予算をつかって宣伝に努めている。NHKの歴史大河ドラマで彼女を取り上げることになっているからだ。ホテルや製菓会社などももうけようと、「直虎御膳」など、創作に余念がない。

 ところでこの人物についての史料は圧倒的に少ない。一年間、おそらく虚実取り混ぜて(といっても虚がほとんどだろう)ストーリーをつくるのだろう。
 最近のNHKのそれは、ほとんど虚によって構成されていると思う。

 この戦国時代に関心があるというのは、もちろん戦国大名についてである。つまり支配階級。戦国時代はまさにその名の通り騒乱の時代、何でもありだ。その時代を、支配階級の眼で見ていく。支配領域の拡大のためには兵を用いる、権謀術数をめぐらす。
 藤木久志氏の研究(『戦国の村を行く』、『飢餓と戦争の戦国を行く』など)を読むと、我が祖先はよくこの時代を生き抜いてこられたものだと思ってしまうほどだ。

 しかし戦国時代に関心のある人々は、藤木氏がテーマとする戦国時代の民衆ではなく、戦国大名のあれこれに注目し、支配者の眼からこの時代を眺める。

 社会科学も人文科学も、いかなる立場からみるかによって描かれる世界は大きく変わる。ボクは常に底辺から(「底辺の視座」とボクはいっている)みるが、戦国時代に関心を持つ人々はまさに「上から目線」である。

 そうした見方が、ひょっとしたら、現在を見つめるところにも現れているのではないか、と思う。

 安倍政権の支持率が、昨日だかNHKの世論調査で47㌫となっていたと記憶する。あり得ない話だ。しかしその数字がなかなか減らない。

 男たちに安倍政権を支持する人が多いようだ。男たちは、本当は庶民なのに、支配層(つまり経団連や不労所得でいきる富裕者)の視点で現代社会をみているのではないか。戦国時代に関心を持つ人々と重なる。

 こうした錯覚が、安倍政権を支持させているのではないだろうか。となると、現在認識と歴史認識とが直結していることとなり、歴史を研究し、語る者としての責務はなかなか重大だということになる。

 支配者の眼ではなく、被支配層からみつめることが、本当は大切なのだが・・・・


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