浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】井上ひさし『兄おとうと』(新潮社)

2014-09-04 21:41:08 | 
 井上ひさしの戯曲である。上演はこまつ座。この作品はみていない。みていないけど、戯曲は楽しい。ボクは、むかし演劇鑑賞にかんする仕事を手伝っていたことがある。演劇というのは、舞台で上演されてはじめてその良し悪しがわかるのだが、しかし台本の出来不出来も相当影響する。よい台本なら、その演劇もだいたい良いものになる。

 井上ひさしの戯曲は、できのよい台本である。だから台本だけでも面白い。

 さてこの劇は、吉野作造とその弟・信次の話し。吉野作造は言わずと知れた大正デモクラシーの旗手。10歳年下の信次は農商務省の官僚。大臣にまでなった人物である。この二人、いずれも東京帝国大学法学部を首席で卒業し銀時計をもらっている。

 立場は相当異なる。兄弟の縁が切られたり、仲直りしたり。「なぜ」と問う重要性を啓発したり、吉野作造がどういう社会事業を展開していたのかなど、大正デモクラシーの旗手という面だけではなく、実際におこなっていた社会事業についても説明される。

 仲直りの場面、幼いときに生き別れになった兄弟が、箱根の旅館で再会する場面がある。なんとその二人の生まれ故郷が、大井川の上流の山の中だって。となると、川根本町だ。

 また吉野信次の部下に、岸信介なる者もいたそうだ。

 大正デモクラシーは、いま振り返る価値がある。

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