今だから…昭和さ ある男のぼやき

主に昭和の流行歌のことについてぼやくブログです。時折映画/書籍にも触れます。

昭和の名歌手たち・徳山(とくやま・たまき)

2006-11-28 00:05:25 | 昭和の名歌手たち

戦前~戦中に絶大なる人気を博しながら、早世してしまったがために、知名度が低い・不当評価に甘んじている歌手は案外多いモノです。
二村定一、楠木繁夫、美ち奴…。
そんな不幸な歌手のひとりが、今回取り上げました、徳山(トクヤマ・タマキ)です。

まず「」、この字からして読み方が難しい。「れん、レン」だろうと思ってたら、
「たまき」とはねえ…。馬鹿まる出し@ハナ肇
私は徳さん知らなきゃ、この「」という字は一生知ることは無かったかも・・・(;^_^ A
この字、マックでは表示されるのかも不安。
まるで選挙ポスター(笑)
これで大丈夫だと思いますが…。

この徳さんとはどういう方かと言いますと
徳山(1903~42)
神奈川県藤沢出身。
昭和三年、東京音楽学校卒業後、武蔵野音楽学校の講師となる。
講師時代の教え子に渡辺はま子がいる。
昭和四年、日本ビクターに入社し、レコード吹き込みを本格的に開始。
昭和五年、流行歌吹き込みの風当たりが強くなってきたので、武蔵野音楽学校講師を退職。クラシック歌手と流行歌手、双方に集中。
昭和六年、映画主題歌『侍ニッポン』、『ルンペン節』が大ヒットし、一躍人気歌手の座につく。
昭和七年、四家文子と吹き込んだ『天国に結ぶ恋』が大ヒット。
昭和九年、皇族懇話会にて、小唄勝太郎、渡辺はま子、藤山一郎らと美声を披露し、「河原乞食」よばわりされていた流行歌手の地位向上に一役買う。
その後も、古川緑波とコンビを組み、映画・舞台出演する一方で、オペラ「カルメン」などに出演。クラシック(バリトン)と流行歌の世界で大活躍。
昭和14年『太平洋行進曲』『大陸行進曲』、昭和15年『空の勇士』『隣組』…と戦時歌謡でもヒットを連発。一世を風靡した。
昭和17年一月二十八日、敗血症のため死去。38歳。
満州慰問での怪我がもと、過労と戦時中の物資不足が祟った死であった。
大柄で豪放磊落そうな見た目とは裏腹、小心者で恐妻家であったと言われる。

こんな状態じゃ徳さんのベスト盤は無いよなァ…と思ってしまいそうですが、何とあるのです、CDで!
昭和を飾った名歌手たち-徳山
まだCDショップに在庫が残ってるところもあります。
いつ、購入不可能になるかわかりませんので、興味のある方はお早めにどうぞ。

そんな徳さんの、私の好きな曲はどんなのかと申しますと…。

ルンペン節
やっぱりコレは欠かせません。
現在CDに収録されているものは、ヒットした数年後に再録音されたものだそうです。
(知り合いの方の話だと、昭和9年に再録音したものだそうです)
オリジナル(昭和6年)版は、ドラムロールと♪でもルンペン呑気だね~ という部分のコーラスがあったりと、再録音に比べると華やかです。
しかしながら、徳さんの唄がイマイチ。特に♪ア~ッハッハ~ といったとこ、ただ歌ってるだけです。これはこれで悪くは無いのですけど…。
どうも音楽学校出のプライドが邪魔をしていた気がしなくも無いですね。
再録音だと、徳さんは頑張ってちゃんとコミックソングとして歌ってます。
そりゃ本職の二村定一、エノケン、ロッパと比べるとアレですけど。
ただこの後もレベルは向上していって、ロッパと見事にやり合うまでになってますから
、もし存命だったら、案外戦後吹き込み直してリバイバルヒットさせたかも。

♪すっからかんの空財布~ でもルンペン呑気だね~
西條八十の詩も楽しい1曲です。

侍ニッポン
作曲の松平信博は、今聴くと実につまらない曲が多いのですが、これは例外のひとつ。中島孝、村田英雄などもカバーした、今も演歌系番組で時折唄われるスタンダードとして見事に生き残っております。
歌い手の魅力で聴かせる曲だと私は思っております。
歌詞の新納鶴千代、「にいの」を「しんのう」と読み方を誤ったまま、吹き込んでしまった話は有名です。原作者・郡司次郎に、徳さん、あとで平謝りだったとか。

隣組
♪ド、ド、ドリフの大爆笑~
そう、『ドリフ大爆笑』のOPで唄われる曲は、この曲の替え歌なのです。
この曲に限らず、ドリフは戦前戦時歌謡の替え歌/パロディを持ち歌にしています。
メガネドラックの♪メン、メン、メガネは良い眼鏡~
これもこの曲の替え歌です。
作詞は岡本一平(岡本太郎の父で、大正~昭和初期に一世を風靡した漫画家)
こういう、「みんなで歌いませう」的曲も親しみやすく歌えるのが徳さんの魅力。

サラリーマンよ
聴けばわかりますが、藤原義江「討匪行」(この曲も聴けばわかります)の替え歌。
こういう下世話的曲を歌いつつ、クラシックって(笑)

天から煙草が
戦場に煙草が降って来る、という凄まじい設定の戦時コミックソング。

天国に結ぶ恋
当時あった心中事件をもとにした映画の主題歌。
四家文子共々偽名で、仕方無しに吹き込むも大ヒット。
批判されるも、二人とも「唄ってるこっちだって嫌だ」と言ったとか。

ガラマサどん
社長(古川ロッパ)の、趣味(下手の横好き)である義太夫に毎晩付き合わされる社員(徳さん)とその妻(江戸川蘭子)の苦悩を描いたコミックソング。
♪あなた今夜も義太夫ね ×××して頂戴ね と江戸川が歌うと、ロッパがそれに一言。これが実に面白い。
隠れた名曲。私は。徳さんナンバーではこれが一番好きですね。
ロッパの歌も、まとめたモノが欲しいところ。

さくら音頭
各社で競作となり、小唄勝太郎・三島一声・徳山のビクターが大勝利に終った曲。
徳さんの音頭モノは珍しい。
吹き込み時の一枚。PCLスタジオにて
しかし、この曲は小唄勝太郎を聴くためのモノで、徳さんは刺身のツマ以下状態(笑)
レコード店には「勝太郎の『さくら音頭』をくれ!」と言って、一般人が殺到した話が残っております。そのぐらい勝太郎ボーカルが素晴らしい。
勝太郎ナンバーでは「勝太郎くづし」と並んで私が気に入ってるナンバー。

歌ふ弥次喜多
古川ロッパとの弥次喜多舞台&映画主題歌。
左は古川ロッパ
軽快な1曲。ピンちゃん(藤山一郎)には歌えまい(笑)

ブム大将
浅草オペラでも御馴染み。
余談ですが、エノケンが歌ったモノも素晴らしい。

やっぱり戦中に亡くなってるせいか、評価が(当時から)不当に低い。
映像も数本の映画程度しか残ってませんしね・・・。
しかしながら、クラシックの世界をこなしつつ、幅の広い活動した、この偉大なる歌手がこのまま忘れられるのは淋しい限り。
話は変わりますが、『努力の歌手』と、私は徳山のことを思っております。
音楽学校出身の徳山が、コミックソングを歌いこなすようになるにはイロイロと大変だったことでしょう…これだけで私は徳さんを買ってます(^.^)
藤山一郎みたいに失笑モノの流行歌を残す歌手は多いですが、徳さんみたいにコミソン主流のような状態になった歌手は他にはまずいないでしょう。
同じ不遇でも二村定一(私も大好きです)はネット間に愛好者が多く、わりと情報が出回ってますが、徳山は「」という字も手伝ってか、あまり情報が無い状態です。
情報が無い=たいしたことがない歌手 では絶対ありません。
歌の幅の広さから、「ゲデモノ」、と言えなくもありませんけど、ゲデモノほど惹かれるとハマるものです(笑)


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2 コメント

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藤沢市立本町小学校校歌 (う--でぶ)
2006-11-27 21:41:10
藤沢の「ほんまち小学校」はたしかこの人の作曲だったんじゃないだろうか...??
(湘南レコードとは東海道の線路挟んで反対側、旧/藤沢宿の方の「本町」の歴史ある小学校です。)
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さすが地元愛 (函館のシト)
2006-11-27 22:04:57
よく御存知ですね…。
作曲もしてたんですか…!?
知らなかったです。
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