今だから…昭和さ ある男のぼやき

主に昭和の流行歌のことについてぼやくブログです。時折映画/書籍にも触れます。

リメンバー・楠トシエ!

2006-10-31 00:29:40 | 昭和の名歌手たち

―昭和30~40年代前半を生きていた人には絶対この人の唄は耳にしている。


こう断言しちゃってもいい方、それが楠トシエさんです。
コマソンの女王の異名をとり、ご本人いわく「1000曲くらい吹き込んでるじゃない?
と言ってしまえるほどの吹き込み。
昭和26年(=民放が出来た年)からCMソングを歌ってるそうです。
そんなビンちゃん(愛称、本名の楠木敏江から)のコマソン代表曲を上げると…

・カッパの唄(黄桜)
♪カッパッパ~ルンパッパ~カッパ黄桜カッパッパ~
数年前も復刻版的かたちで流れていたので知ってる…って方もいるでしょうね。
一度聴いたら忘れらないインパクトを持ったCMソングです。

・長生きチョンパ(船橋ヘルスセンター)
♪船橋ヘルスセンター 船橋ヘルスセンター 
 長生きしたけりゃチョイとおいで~ チョチョンノパ! チョチョンノパ!

イメージキャラクター(?)のハゲオヤジ3人が風呂に入ったりしてるBGMにこの曲。
まさに昭和な伝説的なCMソングであります。
これも一度聴いたら(見たら)忘れられないモノですね。

この2曲はビンちゃんの代表曲でしょうね。この2曲でビンちゃんは後世に残るべき歌手なのですよ。間違いなく。

ヴイックスの歌、ハウス・バーモントカレーの唄、パント錠の歌、テル、サロンパス、シズチンC、ノーシンの唄…上げればキリがないくらい沢山歌ってます。

歴史のある会社のCMは、天地総子さんか楠トシエのいづれかが一度は担当してる…な~んて言い切れそうなくらいです。

NHKとも縁が深く、一時期は専属だった時期も。
そんな訳で、初期の「NHKみんなのうた」もイッパイ歌ってるご様子。
ま、NHKの仕事での代表作は「お笑い三人組」でしょうね。
確か江戸屋猫八の相手役でレギュラー出演してました。
…いや、「ひょっこりひょうたん島」のサンデー先生役かも(汗)
これも今なお輝く仕事ですよね。
紅白歌合戦には昭和32年から38年まで7回連続出場。
盛り上げ役として、毎年イロイロと扮装したりしたそうであります。

残念ながら映像は38年しか残っていませんが…。

子供向けの仕事といえば、ポパイの唄も歌ってたようです。
あと「おはよう!子供ショー」の司会もありましたね。

CMソングを多く受け持ってたのは、三木鶏郎門下だったこともあるでしょうね。
聴取率が異常なまでに高い(70%とも80%とも90%とも…)「日曜娯楽版」「ユーモア劇場」で毎週ビンちゃんの唄が流れてる…。
否が応でも知名度が上がるわけですよねえ…。
宮城まり子で有名な「毒消しゃ、いらんかね」、ビンちゃんも番組で歌ってたそうです。レコード=まり子、放送=ビンちゃん だったとか…。

幼少時から子供劇団だったかそういう形で舞台に立って、戦後もムーランルージュにいた…このあたりが芸達者な秘密なんでしょう。

あんまり芸達者すぎたのか、NHK専属⇒キングレコード文芸部という経歴がアダになっちゃったのか、まったく評価されて無い状態なのが残念です。
隠れた愛好者はいるはずですけどね…。
主役ではないでしょうが、無いと困る脇。
この方無くしては昭和30~40年代を語ってはいけないでしょう。

昭和3年生まれのビンちゃんですが、最近はディズニー作品の吹き替えをしていたりしながら、悠々自適な生活を送っていらっしゃるようです。

トークショー開催のハナシがあったらぜひ見に行きたいですね。


尾藤イサオ&ドーン 悲しき願い

2006-10-27 18:05:01 | 70年代・歌謡曲

久々にシングル盤で面白い買い物をしました。

御存知尾藤イサオの「悲しき願い」でございます。
しかし、ジャケ画像を見てわかるように「新録音」です。
今なお進化し続けている、ソウルの塊ですので、当然オリジナルよりパワーアップしていることは言うまでも無いです。

さて、どんなアレンジ(編曲:萩田光雄)に仕上がっているでしょう?
ヒント:1978年


答え:ディスコ・アレンジ
しかし、オリジナル部分は色濃く残っている上、尾藤イサオはアツイ。
よって実に面白い作品になってしまったのです(^▽^)
雄叫びももう入っております、今より長い!

この曲と「明日のジョー」を確実に歌ってくれるんでしたら、この人のショーは見てみたいですね。といいますかライブ音源欲しい~!!
ライブ盤かセルフカバー盤をぜひ出して下され(含む:自主製作盤)m(_ _)m


我が愛しの芸者歌手たち・番外編 榎本美佐江(その2)

2006-10-23 19:48:33 | 我が愛しの芸者歌手たち

榎本美佐江という歌い手さんの情報がネットには殆どありません。
当ブログは榎本に限らず、そんな忘れられてしまった名歌手のことを多少なりとも載せることが、開設の理由のひとつでございます。
他のものも取り上げてはいますが、良いモノは新旧関係無いという考えです。

角度とメイクで女は変わる
先日、榎本美佐江のソノシートが手に入りました。
これで念願の「舞妓はんブギ」を手に入れることが出来ました(^▽^)
え~榎本美佐江って?方のために改めまして略歴紹介。

お千代さんではありません
榎本美佐江(1924~98)
川口生まれ。
28年に、東映映画『女難街道』主題歌だった「お俊恋唄」がヒット。
昭和30年、国鉄スワローズ投手の金田正一と結婚し、引退。
昭和38年、金田と離婚し、歌謡界へカムバック。
糟糠の妻として支えた彼女を捨て、若い女のもとに走り、あげく相手を妊娠させたことが離婚原因。また子供が出来なかったことも一因。
このような事情のため、世間は榎本に同情的だった。
復帰第一弾シングル「後追い三味線」はヒットした。
その後も、数少ない日本調歌手として、活躍。
戦前、小笠原美都子が歌っていた「十三夜」のリメイクは有名。
「十三夜の榎本か、榎本の十三夜か」という名唱である。
晩年もテレビ東京やNHKの懐メロ番組に出演。
平成10年9月23日、大腸ガンで没。


このソノシートには、作詞家・吉川静夫の文が掲載。
それによると…。
・新東宝のニューフェイスが芸暦の最初
・「お俊恋唄」は、ビクター社のヒット賞は貰えず、片面の「新太郎街道」を歌った小畑実が貰った。
・吹き込みの時は榎本はマイクを拝む。

…などということが書いてあります。
特に「新東宝~」の部分は記憶違いなのか、本当なのか?
後者だとすると、ネットで見る記載は間違いということになります。
他にも検索すると、「お俊恋唄」のヒット時には「十三夜」は既に持ち歌…という記述も。一体何が正しくて、何が間違いか?
当ブログは間違いがわかり次第、訂正する予定でございます。
ご指摘お待ちしておりますm(_ _)m

さて、ソノシートに戻ります。
案外ソノシートはオリジナル企画というものがあったりします。
コレの場合は榎本美佐江と市丸の対談が収録。
市丸が聞き手になって、いろいろしゃべっております。
当時の新曲「お別れさのさ」を三味線静子の伴奏で披露。
榎本からの懇願で、姐さんは「春風(小唄)」を披露。
江戸小歌の家元として、日本調の勉強もしなきゃね…と一言。

右から、市丸、榎本美佐江、三味線静子
市丸姐さんの発言
・貴女が復帰するって電話貰った時、嬉しくて声が出なくなっちゃった。
・榎本復帰後、初めてのテレビ出演の時、言葉が出なくて泣けちゃった。
・3日も8年も同じよ、休んだら声は出なくなる。
榎本さんの発言
・最初は歌えるか不安だった。
・復帰前に吉田先生の元にレッスンしにいったとき全然声が出なくて、テープに声を録音して何回も聴いて、練習した。

対談を聞く限り、市丸姐さんは榎本美佐江を可愛がっていた御様子。
二人とも、「声が似てる」とよく言われるそうである(ソノシートの記載より)。
確かに「舞妓はんブギ」を聴くと、そう聴こえなくもないけども。
後年は二人ともまったく違いますが。
榎本=ちりめんビブラート 市丸=小粋な美声
となっていきますが…。

没後8年、気がつけば今や榎本の歌を収録したCDを探すことすら困難であります。
去るものは日々に疎し。
しかしながら、かつてこんな日本調の良い歌手がいた…ということは事実です。
月を見たときにでも、「十三夜」でも口ずさみ、思い出してくださいませ。


ウィリー沖山「スイスの娘」

2006-10-22 11:25:40 | 戦後・歌謡曲

昨日、横浜県民ホールへ「第6回C・M・F音楽祭」へ行って来ました。
雪村いづみ・弘田三枝子・山下敬二郎・西口久美子@元青い三角定規・ウィリー沖山…それはそれは濃いメンバーで、日本の中高年は元気イッパイであることを思い知らされました。出演者も客も元気元気…トイレは近いけど(笑)
あの調子ではあと数十年はイケそう…私のほうが先にくたばりそうです(汗)

その会場で、ウィリー沖山さんの自主製作のベスト盤が売ってました。
ウィリーさんを見たのは2度目なんですが、最初に見たとき、「これはCD欲しいな…」と思っていたので、喜び勇んで購入。
ショーが終わったらみんな買いに行くのかな…と思いましたが、もう持っているのか、CDをいじれる世代じゃないのか(大汗)、皆さんサッサとトイレットか外へと消えていきました…。おかげでスムーズに買えましたけど。


ウィリー沖山「スイスの娘」
やっぱりというか、残念ながらというか、インディーズ盤です。
一応Amazonでも買えますよ。

しかし、インディーズとあなどるなかれ!
ビクターがチャンと協力しているので、当時のオリジナル音源
しかも、マスタリングが別宮環氏という、その筋では高名な方。
よって、あの当時の音が良い音で聞くことができるのであります(^▽^)

Mr.ヨーデルの異名を持つウィリー沖山。
実はヨーデル以外でも何でもござれ、なお方。
低音の響きが実にイイ…。日比谷のジャズフェスティバルで歌ってた「慕情」にはシビレました。あの手のポピュラー系をまとめたCDもお願いしたいですね。
惜しまれるのは今手に入るCDがコレ1枚きり。
やっぱり巧過ぎる人は売れないらしい…。

さて、CDの収録曲は…。
キャトルコール
スイスの娘
東京のヨーデル唄い
バック・イン・ザ・サドル・アゲイン
ダーリン・ダーリン
ヨーデル唄いと洗濯女
ホワイ・ベビイ・ホワイ
アルプスの若者たち
アルペン・ミルクマン(山の人気者)
恋の投縄
悲しいヨーデル
アイ・ミス・マイ・スイス
スケーターズ・ワルツ・ヨーデル
チャイム・ベル
峠の我が家

の全15曲。これで2500円。(ココに解説あり)

これ、予想以上に聴いていて心地良いです。
良い買い物をしました。
個人的には「スイスの娘」「東京のヨーデル唄い」「峠の我が家」がおススメ。
特に「峠の我が家」の低音がたまりませぬ。巧すぎるぜウィリー。

公式サイトを見ると、昭和8年生まれだそうです、ウィリーさん。
何の何の、声は裏声から低音まで衰えるどころか円熟味の増した素晴らしいモノになっております。見に行ってみる価値はあると思います。

…とまるで、ウィリー沖山の太鼓持ち状態になって、今回はオシマイm(_ _)m


おこりんぼ さびしんぼ(山城新伍)

2006-10-21 00:23:33 | 書籍
最近、糖尿病治療からか、まるっきり表舞台に出てこない山城新伍。
先日亡くなった丹波哲郎の葬儀の時も現れた様子もなく、テレビやスポーツ紙で追悼コメントの類を寄せた様子も無い。
正直、「今年亡くなった名優にエントリーされちゃうのでは」…とその健康状態が気になって仕方が無い。

一番最近に山城新伍を見たのは去年の12月放送の「いつみても波乱万丈」。
その時に糖尿病の話もしていた。
山城新伍も村田英雄状態になってしまうのか…そうならないことを祈る。
早いところ出てきて、あの辛らつな語り口を聞かせて欲しいが…。


さて、今回取り上げるのは、この本。
「おこりんぼ さびしんぼ―若山富三郎・勝新太郎 無頼控」
著・山城新伍(幻冬舎・98年)

これは、若山富三郎・勝新太郎兄弟の思い出と、さりげなく今の芸能界への苦言を書いたもの。
トークの面白さ・持ちネタの豊富さで知られる新伍が、これまた話のネタの宝庫である勝新太郎・若山富三郎を語ってる。
これでつまらない読み物になる訳が無い。
笑って泣かせて…なかなかのモノになっている。資料としても持っておきたいし、何も知らない人でも楽しめると思う。
正直なところ、名著だと思う。さすが山城新伍だ。この人はもっともっと評価されていいと思う。
ところどころ毒もあり、それがまた山城らしくて楽しめる。
残念ながらこの本は絶版だそうである。

これをネタにしようと検索をかけていたら、水道橋博士が絶賛していることを知った。水道橋、ワカッテルな!ぜひ頑張って復刻して下さいm(_ _)m

せっかくだから幾つかエピソードを紹介しましょう。
ただイイだけじゃ、何ですしね…。


その1・若山富三郎編
東映俳優会館で高倉健の楽屋を二部屋続きにする工事をすることに。
それを聞いた若山"センセイ"「俺に断りもなく…なんちゅうことを」
即座にどこかからドデカイトンカチを持ってきて、いきなり自分の壁を叩き始めた。
止めて止めれる富三郎では無い。壁のコンクリートはドンドン崩れる。

その音に驚いたのは隣の部屋の大川橋蔵。
ひとり昼飯を食べていたら、いきなりドーンドーン壁がゆれ始めた。
あわてて「何事か」と箸を持ったまま、富三郎の楽屋へ。

橋蔵「どうしたんですか?」
若山「二部屋続きにするんや」、もうその目は壁しか見ていない…。
橋蔵「それはいいけど…ぼくの部屋はどうなるんですか?」、と、もう完全に呆れ返った声。
やっと正気に戻った若山、「あ、スンマヘン」と何故か関西弁で謝る。

そんな時、「どうしたんだ、台詞ぐらい静かに覚えられないのか~」
ニヒルな感じで、余裕たっぷりで鶴田浩二参上。
話を聞くや、「ふざけやがって。よ~し俺もやってやる」と、鶴田までも自分の楽屋の壁を叩き始めたのだった…。

騒動が治まった時には若山の楽屋の壁はコンクリートがすべて剥げ落ちていた。
今でも、俳優会館のその部屋は板張りである。


その2・勝新太郎編
後年、映画から遠ざかっていた勝新の主な収入源はディナーショー。
わざわざ4万、5万払って来てくれる客のためにも…と毎回凝った演出。
唄って芝居も…というエンターテイナー・勝新太郎と自負しただけあった。

ある時、山城新伍に、そのディナーショーに「出ろ!」とお声がかかった。

「大阪と北海道…2ヵ所決まってるんだけど、新伍、来てくれよ」
「何やるんですか?唄うんですか?」…打ち合わせのときに新伍が聞く。
そうすると「いや、唄わなくていい。最初に俺の悪口を言ってほしい」と勝新。

―ラスベガスあたりで、フランク・シナトラがショーをやるときのディーン・マーチンみたいに、最初さんざ悪口を言う。そのうち静かに本人登場、会場爆笑。気付かずまだ悪口は続く。本人に後ろからポンと肩を叩かれてやっと気付く。そしたらいきなりトークがヨイショになる。―

新伍「シナトラとディーン・マーチン…ああいうの狙ってるんでしょう?」
勝新は嬉しそうに言った。「そうだそうだ、そういうやつだ」

ディナーショー当日。
予定通り新伍は最初に出てきてトーク。

「カツシンだ~なんて威張ってますけどね、いい加減なモンです。勝さんと銀座で2、3人で呑んでたんです。マスコミの連中もいい加減な奴らで、気がついたら20人も30人もゾロゾロくっついて来て。カツシンのおごりで酒呑むぞ~なんて。勝新も『おう、俺のおごりだ、呑め~。任せておけ』なんてこと言ってんですよ。ま、何人いたって一緒なんです。結局金払わないんですから」

といった作り話をして、客を沸かせていた所、前の方の席にいた、その筋の姉御連れのヤクザがブチ切れた。
「何後輩の分際で悪口言うてんじゃ、10年早いコノヤロー」
必死にこれはシャレだと弁解するもまったく通じない。
「勝さん、早く出てきて下さいよ」と懇願。
客席も騒然となる。ピアノの曽根幸明は動じず、美しいメロディを奏でている。
「もうアカン、どうもならん」…そう思ったとき、やっと勝新ステージ登場。

しかし様子がどうもおかしい、笑っている。
「何してたんだよ新伍、なかなかキッカケないから、待ってたんだぞ」
…気がつくと、文句を言ってたヤクザも笑ってる。
そう、新伍はドッキリにあった、カツシンにハメられたのであった。

ディナーショーは大盛況のうち終了した。勿論、北海道のディナーショーには新伍は来なかった。



他にも面白い話・泣ける話・うなずける話が山盛り。
ぜひBOOK-OFFあたりで見つけたら購入をおススメします。

「Come On Back」 雪村いづみ

2006-10-20 12:20:56 | 70年代・歌謡曲
雪村いづみ+キャラメル・ママの伝説的作品「スーパージェネレーション」
の前段階に吹き込まれていながら、そのまま忘れ去られていた音源9曲が、20年経って発掘されて復刻されたものが、このアルバム「Come On Back」です。

雪村本人と和田誠の対談を読むと
・ユーミンなど新しい世代の曲を集めたアルバムを作ろう
・「Guess Who I Say Today」のようなアルバムを作ろう
と考えて吹き込まれたものの、途中で「スーパージェネレーション」の企画が持ち上がり、その後またビクターで何だ、ミュージカルだ、離婚だ…とバタバタしているうちに、そのまま忘れ去られた様子。

雪村の記憶だと、「Come On Back」「Satisfied」「Just A Little Loving」の3曲はアメリカで録音したそうです。
今だと、わりかしみんなそういうことをしていますが、当時としては革新的だったと思われます。それこそ矢沢永吉が最初だと思っている人が多いでしょうが、実は雪村いづみはそれより前に行っていることが発覚。

ボツになったのが惜しまれます。
もし、あの二つの企画が無事進行していたら、雪村いづみはニューミュージック界でも大御所になっていたのかも???
その代わり出来たのが「スーパージェネレーション」だから、トンコさんは損はしてはいないんでしょう。損したのは日本の音楽界ですね。

このアルバムと「スーパージェネレーション」
この2枚を聴くたびに、時代を先取りしすぎた…とつくづく思います。
先駆けというものは何かと叩かれるものですが、雪村の場合、あまりにも評価が低すぎる気がしてなりません。

「古くも新しくも無い」
対談での二人の意見です。
いえいえ、充分新鮮です。雪村いづみという歌手はニューミュージックなんて言葉が出来る前に既にそのジャンルより先を行っていたことがわかります。
時代がやっと追いついた今こそ、聴くチャンスでしょう!
ぜひとも、歌手生活55周年を機にもう一度復刻して欲しいです。

キングレコードに想う

2006-10-14 10:29:40 | 60年代・歌謡曲

高英男(コウ・ヒデオ)って御存知ですか?
昭和30年代一世を風靡したシャンソン界の大スタァ歌手であり、カルト映画俳優としても名を馳せた方です。
今も尚健在で歌っているそうです。

高英男はキングレコード専属でした。
この会社は過去の遺産(=音源)を活用する気はさらさら無いご様子です。
演歌系の大歌手・三橋美智也、春日八郎は比較的大事に扱ってますが…。
江利チエミ・ペギー葉山・中原美紗緒、そして高英男…他にも多数。テキトウです。
チエミ・ペギーはまだ恵まれている方ですが、復刻されてしかるべき・世に出すべき、そういうモノがまるで出ていない。
三橋・春日のように、未発表音源の類がなぜチエミやペギーたちの場合は世に出ないのか?
「売れないから」「権利問題が複雑で…」、ならばどうやったら売れるか、知恵を絞っていただきたい。美空ひばりを見てみましょう。(露骨過ぎる部分はあれど)売るためにアレコレと考えて商品を世に出しています。
「モノが違う」なんて言わないで、汗をかいて愛情のこもった商品を発売して下さい。
クレジットの間違いだらけな、テキトーな選曲の3000円ベスト盤で「勝負」してますなんて、歌手にも我々客にも無礼じゃないのでしょうか?

・チエミの民謡集
・ジャズ民謡シリーズ(林伊佐緒)
…このあたりはアプローチ次第じゃないでしょうか?

・ミュージカルタイトルマッチ(江利チエミ&雪村いづみ)
戦後の超ビッグな二人が戦後歌謡史から洋楽から歌いまくる…当時話題になったこのショーの音源(または映像)、これなんて空前絶後の企画。権利関係は複雑でも、売るには話題性充分・もってこいじゃないですか。
大捜索すれば「必ず」出てくるはずです。1975年ともなれば…。

高英男にしても、様々なシャンソン(「枯葉」「愛の讃歌」「詩人の魂」「ロマンス」…)をニッポンに持ち帰ってきたような方
フランスでも長く活躍し、勲章を貰ったほどの実績付き。
プロでしたら他にもチョイと調べれば山のように売り出し方が出てくるはずです。

演歌ばかりに力を入れず、過去の遺産を有効利用し、商売をして欲しいです。


高英男映画出演一覧

2006-10-13 09:20:45 | 高英男
青春ジャズ娘(28年・新東宝 松林宗恵)
現代処女(28年・大映 佐伯幸三)
紅椿(28年・大映 吉村簾)
東京シンデレラ娘(29年・新東宝 井上梅次)
桜まつり歌合戦(29年・大映 西村元)
ジャズ娘乾杯(30年・宝塚 井上梅次)
裏町のお転婆娘(31年・日活 井上梅次)
お転婆三人姉妹 踊る太陽(32年・日活 井上梅次)
男の挑戦(35年・第二東映 島津昇一)
狙い撃ちの無頼漢(37年・東映 島津昇一)
ギャング対ギャング(37年・東映 石井輝男)
十一人のギャング(38年・東映 石井輝男)
柳生武芸帳 片目水月の剣(38年・東映 長谷川安人)
特別機動捜査隊 東京駅に張り込め(38年・東映 太田浩児)
大悪党作戦(41年・松竹 石井輝男)
吸血鬼ゴケミドロ(43年・松竹 佐藤肇)
やくざ刑罰史 私刑(44年・東映 石井輝男)
江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(44年・東映 石井輝男)

高さんの発言

…映画に出たての頃は歌で出て、後は『歌は舞台でするから映画では歌わせないで下さい』って僕は確かに言ってた。
『歌わすために出すんだったら出ません。ギャングでも何でも一つの個性として一つの個性として使ってくれるのなら出ます』…なんて偉そうなこと言っちゃって。


僕は映画に出演する時は『〈色つき〉で出るんだから』って。
『色つきって、白黒じゃなくてカラー映画に出るって言うんですか』
『いや、殺伐とした中にバラの花が一輪かざしてあるような、〈いろどり〉の場面に使われればいいと僕は思っているから』
『うまいコトいいますね』と、当時の会話。
そういうつもりじゃなかったら、歌で時間のないところをサッサと行って
「はい、演りましょう」
「OKです」
「さようなら」ってテキパキと帰って来れません。責任感じて、「重い役、演らせないでくれ」って、確かに監督さんには言ってました。

という理由から、後半は映画では歌っていないそうです。
映画話については他にも多数あります。ボツボツ出していきます。

偉大なる異端児・高英男

2006-10-12 18:21:38 | 高英男
この方はまさにオンリーワン。
このシトのヘンな曲といえば、コサキンで話題だった♪き~こえ~るダバダバダ~「男と女」を筆頭に山のように…。
ヘンになってしまうのはこのシトの恐ろしいほど強い個性によるものが多い(つ~か、ほぼすべて)。

例えば
エディット・ピアフの名曲で、日本では二葉あき子あたりの歌唱が有名な「パダム・パダム」は、美輪明宏あたりが言う「おシャンソン」と同じようでまるで違う、完全に気が狂い始めた人の叫びと化している。越路のコーちゃんの「人生は過ぎゆく」あたりに負けず劣らずの破壊力を持っている。
♪パダム パダム パダム~そら聞こえるだろう~
 パダム パダム パダム~ふたつの足音~
 パダ~~~ム(絶叫) パダム パダム あやなしてひびくよ
 疲れた足音と希望の~~~あし~~~おとが~~~~~~~
 ア~~~~~~~~
(作詞:中原淳一 ライブ録音・76年帝国劇場)
残念なの現行べスト盤にはこの録音ではなく、スタジオ録音版が収録。それでも妖しさは充分あるのは流石。

狂気の歌い手・高英男。
越路吹雪は未だに人気がある。ちあきなおみは伝説と化しつつある。中島みゆきは「宙船」で存在をまたまたアピール。
美輪明宏はただいま大人気。
同じ狂気を歌える歌い手・高英男にも光を…。

一度でいいからこのお方のワンマンコンサート(音源・映像でも可)を観たい(聴きたい)。
70年代のステージ音源の良さはスタジオ録音盤なんかを超越している。
今でも現役なのではあるが、あの状態ではやはり難しいか…。

「オペラ座のダンサー」(歌の終わりは絶叫して倒れるとか)
「白いねむり」(中原淳一、傑作の詩)
「3人のスリの歌」(何と服部良一作曲。)
それにフランスでよく歌ってたらしい日本の曲(「蘇州夜曲」や「荒城の月」「ソーラン節」等)
何とかcd化してほしいけど、まるで需要がなさそうなのが残念至極。リサイタル等の音源はキングじゃなく本人(&事務所)が持ってると過去cdに収められた音源を聴くかぎりそう思われます。(でないと70年代のリサイタル音源がモノな訳が無い)
早いとこ何とかしないと…。崩御ともなればその後の音源の行き先がどうなることか。消えてしまうかも。
キングはいうまでもなく、役立たずだし。追悼盤なんて期待できるような会社じゃないし、おそらく出さない。その年のベスト盤にさりげなく数年前のベスト盤を復刻して終わり。

幻の音盤同盟あたりで何とかしてもらえないものか?
全11回レコーディング(うち最低5回分はCD化済みらしい)の「雪の降る街を」の復刻とかもお願いしたい。
「男と女」がらみで何とかできないものか…。
永六輔とピーコあたりも声を上げて欲しいです。
特に永にはラジオで熱く、そして意味不明に語って欲しい。

私が思う、数少ない何とかして今盛り立てたい歌手のひとり。

21世紀BEST OF THE RED1972→`81

2006-10-06 22:16:41 | 90年代・歌謡曲

最近、谷村新司が活発にメディアに登場してますね。
「チンペー愛」を持つ私は、喜んで見ております。

今回取り上げるCDアルバムは

「21世紀BEST OF THE RED1972→`81」
97年発売です。

このアルバムはセルフカバーで、21世紀向けに改めて自分のヒット曲をアレンジし直したモノです。
「21世紀BEST OF THE BLUE 1982→」 と同時発売でした。

ファンの間では赤盤青盤と言うとか言わないとか…。
ジャケに写ってるのはリンゴに見えますが、梨です。
21世紀梨…まあシャレですね。

まったくアレンジを変えた曲もあれば、殆ど同じだったり…様々です。
「おおっ~」と唸るものもあれば、「ええっ~」とガッカリだったり…。
でも買ってみる価値は充分あると思います。
音はバツグンに良くなってますし、チンペー円熟の歌声は素晴らしいです。
ちなみに赤盤青盤なら赤盤の方をおススメします。
何せアリス&昴・群青・陽はまた昇る、が収録曲ですからね。

それでは参考になるのかならないのか、独断と偏見による紹介を・・・。

1.明日への讃歌
作詞・作曲:谷村新司/編曲:青柳誠
ピアノと共に静かに歌い始めるチンペー。
サビに近づくとストリングス等が入ってきて、大人なムード全開。
一番が終わるとジャカジャカと本格的な演奏スタート。
しかし、アリス時代のモノと比べると何か淋しくもあったり…。
「今の(97年当時)チンペー」ということではこれで良いのでしょうけどね。

2.冬の稲妻
作詞:谷村新司/作曲:堀内孝雄/編曲:青柳誠
ロックンロールにアレンジされてます。
適度に力が抜けていて、聴き易いです。
これは成功といえると思います。

3.チャンピオン
作詞・作曲:谷村新司/編曲:青柳誠
アダルトなロック+ジャズテイストなアレンジに…。
歌われてるチャンピオンの国籍はどこ?という感じ。
なかなか洒落たアレンジですので、もっとテンポを上げたものなら良かったかも。
何か中途半端。大人のロック(+ジャズ)になりきれてませんね。
あと一歩…ってとこです。

4.今はもうだれも
作詞・作曲:佐竹俊郎/編曲:青柳誠
オリジナルとの違いはギターがアコギからエレクトリックギターへの変更。
確かに現代風に聴こえます。
この試みは面白いです、楽器一つでここまで変わるものなんですねえ。
21世紀バージョンになってます。成功です。

5.遠くで汽笛を聞きながら
作詞:谷村新司/作曲:堀内孝雄/編曲:青柳誠
アリス時代はサビ部分のコーラスだったチンペーさんの「遠くで~」。
(ちなみにこのコーラスは寿司のサビ的役割です)
感動的に仕上がりました。個人的な好みで行くと最近のベーやんよりGOOD!
このアルバム収録曲では1,2に入るくらい気に入ってます。

6.ジョニーの子守唄
作詞:谷村新司/作曲:堀内孝雄/編曲:青柳誠
アレンジはほぼアリス時代と同じです。
しかし、オリジナルに比べるとコーラスがオバサン臭いモノになってる…。
あと2番の後のギターのメロディラインはオリジナルを完全踏襲して欲しかった。
チンペーの歌唱が素晴らしい分、そのあたりが残念でなりません。
ホントに惜しい。

7.狂った果実
作詞:谷村新司/作曲:堀内孝雄/編曲:青柳誠
ちょっと全体的に軽い印象を受けます。
この歌は、どん底での悲痛な叫びですから(映画版では主役は最終的に人を殺める)
それを思うとあまりにも軽すぎる気がします。
チンペーの声もまるで歌と合ってないようにも思えたり…。
この歌はべーやんだな…としみじみ思ってしまいました。

8.秋止符
作詞:谷村新司/作曲:堀内孝雄/編曲:青柳誠
ハーモニカによる出だしがとても良いです。
秋特有の寂しさを見事に引き出すことに成功しています。
オリジナルの良さを生かした好アレンジです。
大成功です。

9.帰らざる日々
作詞・作曲:谷村新司/編曲:青柳誠
谷村新司ワールドなヨーロピアンアレンジ。安心して聴けます。
可もなく不可もなく…ってところですね。

10.それぞれの秋
作詞・作曲:谷村新司/編曲:青柳誠
もともとアリスワールドじゃなく谷村新司ワールドなのでさほどの変化なし。
やはりヨーロピアンなアレンジです。可もなく不可もなく…

11.マイ・ボーイ
作詞・作曲:谷村新司/編曲:服部隆之
JAZZYなアレンジに仕上がってます。可もなく不可もなく…

12.陽はまた昇る
作詞・作曲:谷村新司/編曲:服部隆之
「陽はまた昇る」(英語で)というコーラスから曲は始まります。
イントロのピアノはギターに変更。
後半のゴスペル風アレンジはなかなか面白いです。
もっと派手にいじっちゃっても良かった気がしますね。

13.群青
作詞・作曲:谷村新司/編曲:服部隆之
かの名優森繁久彌もお気に入りのチンペーの名曲中の名曲。
映画「連合艦隊」での撮影時には、砂浜にスピーカーを設置させ、「群青」を聴きながら演技したという伝説がございます。
感動的に仕上がってます、チンペーの歌唱も文句無し。
もっと派手なアレンジでも良いくらい。それだけの曲です。

14.昴-すばる-
作詞・作曲:谷村新司/編曲:服部隆之
谷村新司が産んだ最大のヒット曲。
チンペー亡き後でもこの曲は歌い継がれていくと思います。
一度オリジナルをショボくした再録音があったので心配してましたが、昴21世紀バージョンのこちらは大丈夫です。宇宙をイメージさせる雄大なアレンジに仕上がってます。曲が良いので派手なアレンジでも映えます。大成功です。

15.走っておいで恋人よ
作詞・作曲・編曲:谷村新司
こちらはクロージング的役割。
チンペーがギター一本でデビュー曲(アリス)をあの当時に帰って歌ってます。
なかなか爽やかで胸にグッとくるものがあります。

その他雑感等
・「あと少しで…」という曲等が結構多い。楽しめなくは無いがその辺は詰めが甘い。
・もっと冒険したアレンジでも良かった気がする。

好き勝手書いてみましたが、秋の夜長に紅茶でも飲みながら、このCDを聴くのはなかなか乙なものです。秋なアレンジした曲も多いですし。
レンタル等で見かけたらどうぞ借りてみて下さいませ。