今だから…昭和さ ある男のぼやき

主に昭和の流行歌のことについてぼやくブログです。時折映画/書籍にも触れます。

幻のB級レコード第1回 「村田英雄リサイタル 燃える男の歌声」

2007-01-08 05:46:43 | 幻のB級アルバム

私がリアルタイムで記憶していた村田英雄は、糖尿病で片足切断しながらも舞台に復帰した90年代後半からです。
糖尿病+坊主頭+作務衣姿+車椅子=村田英雄
というのが私の村田センセのイメージ。
歌なんて全然記憶に無く、「糖尿病は魔病」「尿に蟻が集るんです」と語る村田センセしか記憶にありません。
後は、ワインの呑み過ぎで倒れたとか、残ってた片足も切断した直後に再婚…この程度でした^^;
そんな私の中の村田英雄像を一変させたのが、2002年W杯開催中に某新聞に訃報記事を前倒しされて数日後に、日本がサッカー一色に染まる中、ひっそりと亡くなられてから。
その頃、既に昭和歌謡曲に興味があった私は追悼番組を何となく録画しておく気に。
「そういや、『王将』ってチャンと聞いた事ないよな…」
その程度でした。
NHKで2本(総合、BS)放送されたものを録画して、数日後ひとり夜中に鑑賞。
…参りました、ホント素晴らしかった。
以降、村田英雄も愛聴するようになりました。
保管にだらしない私ですが、その番組は今でも保存しています。
その直後、村田センセのライブ盤が存在することを知ったのです。
しかし、中学生の私には高額で手が出ませんでした。

あれから3年、夾竹桃の花咲くころ(@お嬢)・・・じゃなかった、約5年後、とうとう入手することが出来ました。

今回新たに、まず復刻されることは無いであろう存在のLPアルバムを紹介するコーナー「幻のB級レコード」をこさえました。B級と言ってもホントにB級のモノから、実は絶品の作品まで幅広く取り扱っていく予定のこのコーナー。
第1回は、この村田センセのライブ盤を紹介させて頂きます。

メイク濃すぎ
芸能生活四十周年記念 村田英雄リサイタル 燃える男の歌声
品番-TP60268~9(東芝)
収録-昭和52年10月20日新宿コマ劇場
出演-村田英雄、及川洋(司会)
演奏-ダン池田とニューブリード

《曲目》
序曲(人生劇場より)
口上
無法松の一生(度胸千両入り)
小倉祇園太鼓(流し打ち~乱れ打ち)
殺陣田村~黒田節
別れの一本杉
村田英雄の今日まで(ナレーション:及川洋)
浪曲「父帰る」
人生劇場
柔道一代
姿三四郎
柔道水滸伝
夫婦春秋
夫婦舟
めおと雲
王将
花と竜
男の土俵
父帰る
男だけの唄
皆の衆
フィナーレ~村田英雄挨拶

《一言》
編集され過ぎてて、ゴチャゴチャになっております^^;
一連のヒット曲は殆どワンコーラスに編集。
これはコロムビアとの版権の関係だったんでしょうが…。
まだ東芝時代のヒット「人生峠」「夫婦酒」も発表されてません。
しかし、そういうツッコミどころを差し引いても、村田48歳・円熟中年パワーを堪能できます。

《解説》
OP、村田センセの口上が聴いていて心地良し。まさに男の世界。
そして1曲目は御存知「無法松の一生~度胸千両入り~」
続いて村田センセ直々の「小倉祇園太鼓」流し打ち~乱れ打ち
迫力充分、村田センセ、大ハッスル(^^)
続いて田村殺陣の披露。しかし、LPなので何が何だか…こういうのこそカットすべきではなかろうか?
尺八の音色が徐々に変わり、村田流「黒田節」。低音が冴え渡る重厚な黒田節。赤坂小梅か村田英雄か、という出来。
そして、ここで突然司会の及川洋とのトーク。ホントに唐突過ぎて前後が繋がってません^_^;

司会:先だって春日八郎さんの何周年記念に
村田:ハイ、25周年のパーテー
司会:歌手生活25周年ですか、春日さんは
村田:ハイ。私行きましてね、先輩とお会いしましてね。
司会:そうなんですってね。春日八郎の唄にシビレたことがあるという想い出がありましたね。
村田:え~もう、私は春日さんの都会演歌といいますか、我々と違ってドロ臭い演歌と違ってですね、春日が持ってる良い演歌、都会演歌、哀愁のある演歌ですか。
そういうものっていうのがとっても好きですね
司会:なるほど。
村田:中でも私は「別れの一本杉」という歌がものすごく好きなんです。今日はひとつ聞いて頂きます。

ということで「別れの一本杉」
これがなかなか良いのです。村田英雄でも流行ったんじゃないかという出来。
しっかり村田色に染め上げています。

「村田英雄の今日まで」
及川洋のナレーションで村田英雄の半生を紹介。
なおこのナレーションで「酒も煙草も断ち…」という部分があるのが何とも言えません。ホントに実行出来ていたら、両足切断なんて事態も無かったでしょうに…。
続いて、浪曲「父帰る」(原作:菊池寛)。
立川談志曰く
「村田さんは唄よりも浪曲の方が何倍も良かった。出来れば浪曲師としてずっとやっていて欲しかった」
そうかも…と肯ける素晴らしい口演。

ここからは、村田英雄ヒットパレード。
まずは「人生劇場」、悠然と歌い上げます。
間奏に村田からの御挨拶
「演歌一筋今日まで歩いて参りました。村田英雄の男の唄は私が作ったのではなく多くのファンの皆様に作って頂いた男の世界。声の続く限り、歌い続けて参ります」
比較的珍しい1番・2番のツーコーラス歌唱。
ここからは柔道三部作。
「柔道一代」「姿三四郎」「柔道水滸伝」…版権からか、すべてワンコーラス編集されていて、ちょっと不自然。これを聴いて思ったのは、村田が「柔」を歌っていても、おそらくヒットしたんじゃないかということ。
この3曲、もっと評価して欲しい。語られることが全くのは無い寂しい…。
ドラマ主題歌だったからでしょうか?
そして夫婦シリーズへ突入。
「夫婦春秋」はワンコーラス編集。これも珠玉の名曲です。
「夫婦舟」、宮崎民謡「シャンシャン馬道中唄」を後半に入れた、なかなか凝った作品。確か委託盤からシングル化された作品。
「めおと雲」、まさに村田夫婦演歌。
♪空も晴れたよ いつか見ためおと雲だよ
とニッコリ微笑みながら歌われた日には、私が女なら泣くでしょう(^^ゞ

司会者が散々煽り、ついに十八番中の十八番、村田英雄最大のヒット曲「王将」へ。
しかし、版権の関係でワンコーラス編集^^;。(推定)3番を歌い終わったビブラートが編集しそこなって残っているのが何とも言えぬモノを醸し出しています。
さすがにこれでは消化不良・・・。
ここで村田英雄の筆による曲が2曲、「花と竜」「男の土俵」
どちらも、まさに村田ワールド。
「花と竜」は、某若手演歌歌手も歌ってますが、迫力/貫禄の点で既に門前払い。
中年パワー全開の豪快な歌声は聴いていて、ホント心地良いです(^^)
そして、ここで歌謡曲の「父帰る」。もう村田ボイスに酔うための曲です(^.^)
いよいよリサイタルも佳境に。
この年の紅白でも歌った「男だけの唄」の前に村田センセからの御挨拶
「ホントに御声援下さいましてありがとうございます、2度とこの喜び忘れることなく、唄に専念して参ります」
病気で1年近く休業したことからのこの言葉。
しかし、後年・・・。
いよいよ、ラスト。
村田公演でのエンディング曲は絶対コレだったという曲「皆の衆」
豪快に歌詞を替えてます、歌詞を間違えない村田は村田に有らず(笑)
この説得力、この曲は村田御大にしか歌えないです。
巧さだけでは歌えない曲だな…とつくづく思います。
歌い終わり、村田センセからの御挨拶。
元気一杯、後年あのような状態になるとはまったく思えない素晴らしいショウでした。
男の色気プンプン


粋でいなせな我らが浩吉っあん・高田浩吉

2007-01-07 14:47:02 | 昭和の名歌手たち

歌ふ映画スタァ-この言葉はもはや死語と化しております。
歌う俳優/タレント…こう言い換えた方が良いかも知れませんね。
昔は映画、今はドラマにCM。
自分も出演、主題歌・挿入歌も歌っちゃえ。
石原裕次郎、高倉健、吉永小百合・・・。

逆に、歌手が俳優やって大成しちゃった美空ひばり、江利チエミ。
結果、副業が本業になってる小林旭みたいなのもいます。
最近だと、上戸彩、沢尻エリカ、長澤まさみ…。
タイプは違いますが柴咲コウもそうでしょうね。
今は何だか女性ばかりなのは気のせいでしょうか(^^ゞ
・・・頑張れ、男(笑)

さて、このタイアップ、誰がトップバッターか?
女性だと高峰三枝子、男性だと高田浩吉と言われております。
お三枝さんは、今はとりあえずパスして、今回は浩吉っあんの方を取り上げたいと思います。


高田浩吉(1911~98)
兵庫県園田村(現・尼崎市)生まれ。
生後すぐ母が亡くなり、伯母のもとで育てられる。
大正十五年、松竹入社。
昭和五年頃から大幹部となり、主演映画が製作される。
昭和十年、「大江戸出世小唄」が公開、主題歌と共に大盛況を博し、スタアの座を固める。
昭和十六年、徴兵。満州・ロシア国境のチャムスへ赴任。
昭和十八年に除隊後は、慰問を中心に活動。
昭和二十年、高田浩吉劇団結成、二十五年の解散まで各地を巡業し盛況を博す。
昭和二十六年、映画界に本格復帰。「とんぼ返り道中」で美空ひばりの相手役を演じたところ、人気が再燃。親子二代のファンも急増。
「伊豆の佐太郎」もヒットさせ、見事に歌うスタアとして奇跡的に返り咲く。
その後も「白鷺三味線」「大江戸出世双六」「五十三次待ったなし」などヒットを連発。
昭和三十五年、東映移籍。
時代劇映画衰退に伴い、テレビ・舞台へ活躍の場を移行する。
昭和四十年代の懐メロブームでも、その美声を惜しみなく披露。
昭和六十年代には、原野商法を行っていた会社の広告出演していたことから、裁判で賠償を命じられたこともある(のち、和解)。
平成十年五月十九日、没。


元祖・歌う映画スタァなだけに、本来映画共々紹介すべきなんでしょうが、この手の娯楽時代劇映画というものはなかなか見る術がございませんので、視聴次第…とううことで御勘弁願いますm(__)m

江戸情緒たっぷりの端唄/都都逸調の浩吉ぶし。
戦後はそれに加え、ほのかにジャズの香り。
大江戸モダン・サウンドは、今もなお私の中では健在です。

伝七小唄
実は2種類ありますが、これは後者。
昭和43年3~7月にABCで放送された「伝七捕物帳」主題歌です。
浩吉っつあんと、その愛嬢・高田美和のデュエット。
三味線とエレキギター、スチールギターの融合。
和製・テケテケ・サウンド。
乞う再評価!
作曲は土田啓四郎(代表作:愛と死を見つめて)

大江戸出世双六
昭和30年公開の同名映画主題歌。
♪どうする どうする スチャラカン
といいながらも、ノホホ~ンと構えてるような歌詞。
まさに端唄の世界。
浩吉ぶし絶好調、私が最も愛唱する1曲です。

半次呼び込み唄(お軽勘平)
歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」から「お軽勘平」を題材にしたと思われる1曲。
♪私ゃ 売られていくわいな ヨイショ 行くわいな
軽快な曲調とは裏腹、なかなかヘビーな歌詞です。

大江戸出世小唄
♪土手の柳は風まかせ 好きなあの娘は風まかせ ええ しょんがいな
という歌詞は、ある年代以上であれば耳にした覚えはあるかと思います。
高田浩吉の唄といえばコレ、というべき決定版です。

むらさき小唄
これは高田浩吉では無く、国民栄誉賞俳優・長谷川一夫主演映画「雪之丞変化」の主題歌で、東海林太郎のヒット曲。
この「雪之丞変化」は長谷川一夫の当たり役で、戦後も市川崑監督でリメイク。
浩吉っつあんも、「雪之丞変化」を舞台で演じていたからなのか、昭和51年頃にこの曲を吹き込み、ポリドールからシングルが出ています。
曲中の台詞は、雪之丞・十代目岩井半四郎(仁科亜希子の父)、闇太郎・高田浩吉となっています。この台詞も素晴らしい。
さすがの浩吉っつあんも歌唱に衰えが見られませんが、そのあたりは50年の芸暦で見事にカバーしております。

鴛鴦道中
昭和13年、上原敏と青葉笙子によるヒット曲。股旅歌謡の決定版の1曲。
戦後、ニューギニアで戦死した上原に代わって、東海林太郎に相手役を替えて、実演等で披露していたこともある(レコードも発売)。
懐メロブーム到来の昭和42年ごろ、テイチクで、今度は高田浩吉を相手役に迎え、三度吹き込んだのが、コレです。
上原、東海林、高田…と戦前ポリドールの看板スタア三人と同一曲を吹き込みをしている青葉笙子、他にこういう例は少ないかと思います。
三代目の歌声も、決して悪いモノでは無く、青葉共々往年を回想しながらの心暖まる歌唱となっております。

浮かれ駕篭
米山正夫の作詞/作曲による、和製ジャズ端唄。
高田浩吉もお気に入りで「私のお気に入りの曲のひとつです」と、後年語っています。
まさに高田浩吉の真骨頂、ぜひとも一聴をオススメ致します。

明日なき男
昭和32年公開「りんどう鴉」劇中歌。
粋な台詞入りの、浩吉股旅ソングの名作。

この台詞をこう爽やかさすら感じさせて聴かせる俳優は今では皆無でしょうね。
演ってる俳優が恥ずかしがってることがバレバレな状態で、この台詞は・・・。
浩吉っつあんの偉大さを痛感致します。
そして、娯楽映画の難しさも。

江戸の三四郎さん
昭和31年公開「花笠太鼓」劇中歌。
戦後、高田浩吉の相手役といえば、美空ひばりなのですが、この映画の相手役は何と江利チエミ!一応ジャズ歌手としてスタートしたはずなのですが、この映画ではそんなことを一部歌うシーンを除き、微塵も感じさせぬ熱演振り。
映画で何とチエミを、途中まで浩吉っつあんは「男」だと思って接しているのです(笑)

後年、サザエさんを当たり役にするのもわかる気がします。
さて、この曲ですが、もとは九州地方の俗謡で、それをアレンジしたものだそうです。
見事に江戸の唄となっているのは浩吉ボイスの成せる技でしょう。

伊豆の佐太郎
戦後、高田浩吉カムバック第一弾シングル。
佐太郎という名は、作詞の西條八十邸出入りの植木職人の名前から拝借。
股旅+小唄/端唄調のエッセンスのこの曲は高田浩吉ならでは。

白鷺三味線
タモリお気に入りの1曲(曰く「思想が無い唄」)
この曲の売りはイントロの三味線。
オリジナルでは、伝説の三味線弾き・三味線豊吉が担当。
この曲は、高田自身も会心の1曲。
上原げんと作品では最も良いと、絶賛。


日本調復活…ぜひ受け継いで歌う方が出てきて欲しいモノです、男で(笑)
女性では、檜山うめ吉さん?とかいう方がいるそうなので。