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ラボナール

2010-09-27 20:32:01 | 日記
今、アメリカでは Sodium Thiopental - ラボナール(田辺)- Pentothal (Abbott)  が不足している。
外科系や麻酔科の医師にはお馴染み過ぎる薬だ。
麻酔科をローテーションしている時には全身麻酔の導入薬として毎日使用していた。
日本でまだ市場占有率が50%を超えていた時に、田辺製薬が突然製造中止を発表して騒然となった薬だ。
要は、薬価が安くてやってられないと製薬会社がごねた訳だ。
蓄積された症例数が多く、麻酔を研修で回っている身から観ても使いやすい薬であった。
経済性だけでものを考える会社と、そこまで製薬業界を追い詰める厚生省(当時)は本当に患者のことを考えていたのだろうか。
今でもこの薬を完全に取って代われる新薬は無いと思う。

医療系以外でも、自白を強要するために使うことがあるらしい。
抵抗する意識を鈍らせるからだ。

とにかく、WHOの基本薬物リストに掲載されている位重要な医薬品だ。
そんな薬が手配できないとはどういうことだろう。

一番影響を受けているのが、なんと刑務所だそうだ。
死刑執行に必要だというのが理由。

アメリカでは全50州のうち15州で死刑が廃止されている。
最高刑が死刑となっているケンタッキー州では来年まで Thiopental が入庫してこないため、政府関係者が苛立ちを隠していない。
FDAも今年の3月から品薄の警告を出している。

今週、カリフォルニアで1978年の死刑制度復活以来14人目となる刑の執行が行われるが、それを最後に Thiopental の在庫が調達されるまで死刑執行が停止となる。
現在カリフォルニア州は700人を超える死刑囚を抱えており、執行停止による費用増加も無視できない金額だ。
アメリカ国内での製造を担っている Hospira が供給減の理由を明かしていないのも不思議だ。
現在の同社の主力商品である Propofol の製造販売に力を注いでいるからだろうか。
(値段が高く旨みが大きい。)
因みに、プロポフォール(アストラゼネカのディプリバン)はマレイ医師によるマイケル・ジャクソンへの過剰投与が死因と関連づけられて有名となった鎮静薬・麻酔薬だ。