最近の出来事

ニュースや新しいテクノロジー、サイエンスについて感じること。

ファミリーコンサート

2010-09-26 15:31:42 | 日記
ニューヨーク郊外(ウェストチェスター郡)に Caramoor という音楽用のイベント会場がある。
普段は催し物や結婚式等でも使用できる施設だ。

今日はファミリーコンサートがあった。
まず、お昼前に到着して、芝生の上でピクニックを楽しむ。
隣のフランス人一家は3種類のチーズ(ブルーチーズ、カマンベールともう一つは黄色いクリーミーなチーズでラベルも見えずなんだか分からなかった)にソシスとソシソン、バゲットを楽しんでいた。
赤ワインとワイングラスはもちろんのこと、まな板とナイフを野菜とともに持参してくるあたりがフランス人らしいなと感心した。
右隣は、典型的なアメリカ人一家と思われた。
ピザを一枚にソーダ(コカコーラ)とポテトチップスという組み合わせ。
まごう事なきアメリカ人だ。

午後のコンサートは「題名のない音楽会」形式で、女性司会者が指揮者とやりとりをしながらコンサートを進めていく。

1曲目はユダヤ系アルゼンチン人のゴリゾフが作曲した現代曲(Night of the Flying Horses)
幾つかのモチーフを演奏して会場の子供達に感想や想像できるものを聞いて回る。
寝静まっている静かな厩が想像できるとか、何か起こりそうな気持ちにさせられるとか、子供達も活発に発言する。
夜空を馬の群れが馳せる情景が浮かんでくるなど、子供達は一生懸命想像力を働かせて曲の感想を述べる。
企画も面白いが、それに応える会場の子供達も凄い。

2曲目はベートーベンの交響曲第7番から "Poco sostenuto - Vivace" を。
まずオーボエがなめらかに奏でる主題を聞かせて、他の楽器による同じ主題の演奏を聞かせてくれる。
リズムも曲想も違うので、子供達は自由にコメントを付けてくる。
自然とベートーベンの本質に触れさせようという試みだ。

3曲目にはお待ちかねの Yo Yo Ma が登場。
ドボルザークの Waldesrube だ。
まず彼がこの曲で描かれている3種類の静寂を彼なりに解釈する。

静かな森を平穏な気持ちでゆっくりと歩く。
とても幸せな満たされた感情がわき上がってくる。

二つ目は森で道に迷った時の不安な静寂。
何も聞こえない。
自分の心臓の鼓動だけがあたりを支配する。

最後に "Deafening silence"
何かが起こる期待感で胸が張り裂けそうだ。
この静かな森を抜ければ何かがある。
今はそれが何であるか全く判らない。

彼が演奏を始めると最初の1小節でもう引き込まれる。
彼は特別だ。
あの音色を聞けるだけでこの会場にいる子供達は幸せだと思う。
本物に触れることが出来るから。

そして、2曲、Gabriela Lena Frank の Leyendas: An Andean Walkabout から "Coquetos" とショスタコビッチのジャズ組曲からワルツ。
ダンサーが出てくる。
これらは室内楽なので本来指揮者は要らない。
いじけて退場する指揮者も可愛いが、意を決して再登場した指揮者から楽団員を守ろうとするダンサーの振り付けも独特で味わい深い。

最後は、コンマス (Colin Jacobson) が作曲した Ascending Bird を演奏したのだが、ヨーヨーマがこっそり後ろから入ってきてチェロの後ろの方でオケと一緒に弾いていた。
主役を張る俳優はエキストラが出来ないのと同じで、やはり目立つ。
印象に残ったのは、とても嬉しそうに弾いている姿。
オーケストラでみんなと一緒に音楽を作るのが楽しくて仕方がないという風情。

今日はコンサートのダブルヘッダーで、この後すぐ自分のソリストとしての役目があるにもかかわらずまるで自由に大空を飛び回る鳥のように、今この瞬間を心いくまで味わっている。

今日のコンサートは一風変わった進行だが、役者が揃った上に観客ののりも良いという願ってもない状況の下、忘れられないののとなった。

コンサート前のピクニックと併せて今年最良の休日と言える。