ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

ボーイズ・ドント・クライ(キンバリー・ピアース監督)

2007-12-31 | Weblog
ストーリー;性同一性障害を抱えるティナ・ブランドンはアメリカ中部の保守的な土壌ルイジアナ州で暮らしている。ふとしたことで隣町のフォールズ・シティに気の合う仲間と知り合い、「ブランドン・ティナ」という「好青年」として暮らし始める‥。
出演 ;ヒラリー・スワンク、クロエ・セヴィニー、ピーター・サースガード
コメント;性同一障害を扱った映画だがややしんどい。ルイジアナ州リンカーンが主人公の出身となるが、これは「アバウト・シュミット」が舞台となるオマハとそう遠くない場所。日本にやや雰囲気がにている気もするが保守的な土壌といった雰囲気がこの2つの映画からわかる。同時に所得階層の差がかなり大きい地域のようだ。ヒラリー・スワンクは主人公のティナ・ブランドンを演じてアカデミー最優秀主演女優賞を獲得。確かに相当に役回りが難しい役を熱演したものだが、その仕草になんとなく不快感を覚えたのは私が男性だからだろうか、あるいは嘘をつきとおすティナ・ブランドンもしくはブランドン・ティナのキャラクターのせいだろうか。後味が悪い映画であると同時に、きれるととてつもない凶暴性を発揮する犯罪者もしくは元犯罪者の男性たちにも嫌悪感を覚える。性同一性障害者をつかまえて「化け物」とののしるこの男性たちや、あるいは恋人の母親もある種の異形の生物であり、「差別」というもののループのような階層を実感するからかもしれない。つまりこの映画は1993年にルイジアナ州で起きた実際の殺人事件をモデルにしているわけだが、映画を通して「この映画をみている自分はどうなんだ」という製作者の意図を画面・映像・音楽からつきつけられているような後味の悪さがある。
 よく言えばメッセージ性だが、逆に考えると2時間近くも説教をくらっているような気にもなる。監督のキンバリー・ブランドンは女性監督で殺人事件発生当時はコロンビア大学の学生だったとかいうが、そこはかとなく「学生映画っぽい」という雰囲気も漂う。実験性もあり役者の研究も深いが、なんとなく全体的にメッセージ先行型というか。しかし映画で必要なのは別にメッセージではないし、特定のイデオロギーでもない。とはいえヒラリー・スワンクがアカデミー主演女優賞を受賞したこの年の助演女優賞が「17歳のカルテ」のアンジョリーナ・ジョリー。さらには病んだアメリカの市民生活を描いた「アメリカン・ビューティ」が最優秀作品賞という年だ。
 アメリカ型資本主義が民主党クリントン大統領が長刀をふるい、財政赤字を猛烈な勢いでかたづけ、さらに景気を盛り上げていたころにこうした保守的な土壌や普通の生活の裏側を描く作品が迎えられた2000年という年はある種世紀の変わり目にふさわしいのかもしれない。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿