健康を科学する!

豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

喫煙率と肺がん死

2010-04-15 08:14:33 | 研究
最近、日本では喫煙率が下がっています。しかし、喫煙が大きな原因と考えられる肺がんによる死亡者数は下がらず、むしろ増えているというのです(YOMIURI ONLINE)。たばこは多くの発癌物質を含んでおり、がんの原因の3分の1を占めるとされています。中でも肺癌は、喫煙と強く関係していることが指摘されており、喫煙者の方が男性で4・4倍、女性で2・8倍と肺癌になりやすいとされています(YOMIURI ONLINE)。
日本での肺癌による死者は1960年に5000人程だったそうですが、1998年には5万人を超え、胃癌を抜いて癌の種類別死亡原因のワースト1になったそうです。その後も増え続け、2008年は約6万7000人が肺癌で亡くなっているというのです。そもそも癌は、細胞の品質管理の異常と考えられます。したがって、急激に癌化が進むというよりは、例えば発癌物質などの影響は徐々に表れる考えられます。したがって、記事にもありましたが、喫煙率低下の影響が肺癌死者数の変化として捉えられるようになるには時間がかかるのだと思います。米国の例も示されていましたが、世界で最も早くたばこによる健康被害に警鐘を鳴らし、1960年代半ばから消費量が減り始めた米国でも、肺癌死亡率が低下に転じたのは1990年代に入ってからということらしいです。
日本人男性の喫煙率は1960年代半ばから年々下がり、2009年は39%にまで下がったそうです。ですが、たばこ消費量全体の伸びに歯止めがかかったのは1990年代半ばになってからということで、米国の例にあてはめると、日本で肺癌死亡率が減るには、あと10年かかるということらしいです。でも、人種差による影響の等が出る可能性がありますので、もう少し時間が必要かもしれません。また、癌で亡くなる人が増えている最大の要因は、実は寿命が延びたこととも指摘しています。実際、高齢化の影響を排除した「年齢調整死亡率」でみると、男性の肺癌死亡率は1990年代後半から下がり始めているとのことです。現在の高齢者は戦後の混乱期に青年期を過ごしているため、肺癌死率が低いそうです。しかし、20~50歳代の喫煙率が欧米諸国に比べて高いということですので、加齢の影響が出始める今後肺癌死の数が増える可能性も指摘されています。肺癌死が減るのまでには意外と時間がかかるかもしれません。
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