永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

お月さんとイカ釣りダービー

2011-10-15 | アオリイカ
昨年、輪島エギングダービーにエントリーし、中盤までは盛り上がったが展覧会で尻切れとんぼに終わっちまった。

今年も一応エントリーしたが、まだ一度も計量に行っていなかった。
計量の意味あるサイズが釣れていないのだ。

ダービーの締め切りは今月一杯、そろそろ計量しとかないとなあ、という思いがあった。

加えて、その日13日はまだかろうじて満月だった。予報は晴れ、風も悪くなった。
私はまんまるお月さんと釣りをするのが基本的に好きである。
翌日の午後からは天気は崩れ夜には雨になるという。

となれば、いざ!!出陣なのである。
満月のイカ釣りはなにがなんでも行かずばならぬ。のである。

夕刻、先ずは昨年のダービー、徹夜で頑張り27センチを上げたポイントに行ってみるが、既に先客が3人もいた。
その一人は毎年上位に居座るエギンガーさんであり、後の二人もダービーに参加している人に違いなかった。

諦めた。

移動する。
一度も行ったことがないが、以前から気になっている磯へ。
緩いカーブを描く湾の磯、岬のちょっと突き出た岩へ向かったが、生憎ここも先客が一人いた。
挨拶をし、邪魔にならぬよう隣の岩に乗った。
「釣れますか?」と訊いてみると
「一匹釣れたけど、その後一時間釣れません。」と大らかな笑顔で応えてくれる。
正直な人である。

いつも通り3.5号エギを正面の海にフルキャストする。
右後方からの追い風に乗ってよく飛ぶ。
潮が良く動くところらしく右前方に沖に向かって軽く潮目が出来ていた。

凪ぎに近い波、追い風で底に達するまでのカウントは45。
水深は10メートル強。
悪くない。

空は快晴、少し欠けた満月が右の山の端から顔を出し、磯を煌煌と照らしライトが要らないくらいだった。
イメージ通りの満月の釣りであり心は弾んだ。




釣れないというがタイミングが悪いだけだろう。

案の定、2投目足元の底で乗って来た。
足元だから小さいやつかと思いきや、そうではなかった。
胴長22センチ。今季最大である。



いや驚いた。
遠くから追っかけて来たやつに違いない。

その後もぼつり、ぼつりと掛かった。
数は出ないがサイズが揃っていた。
みんな20センチに少し足りないサイズ。
今年は全体的に小さく、20センチ弱は他のところではその日の最大サイズなのだ。




そのうち、先客はライントラブルでどうにもならない、頑張ってくれと言い残し帰っていった。
ならば、と彼の釣り座に移動する。
やはりそこがこのポイントでの一番の釣り座だった。どの方向へもキャスト出来るし、高さ、足場の安定感は理想的だった。

いつの間にか水平線にはイカ釣り舟の灯りが点々と並んでいた。
目の前の海を見ていると、なんだかデカイのが来そうな予感があった。

そして、数投後、予感は的中した。

中程の距離、底だった。
ラインのテンションが微妙に重くなり、少し待ってみると案の定そうっと引っぱるではないか。
少しラインを送ってやり、間を置いてクンと合わせるとカンナがしっかりとイカに食い込み、ロッドに重さが乗った。
いやその重さったらなかった。ロッドが激しくお辞儀を繰り返し、リールが自由に巻けなかった。

でかいぞ!!
バレないように慎重に事を進める。イカの強烈なジェット噴射をロッドでいなしながらゆっくりと寄せて来る。
水面に浮上したそやつは何度も水を噴射した。
いやあ、いい光景。

足元まで引き寄せ抜き上げにかかるが、ちょっと心配になった。
しかし、玉網を持って来ていない。
小さめのスズキを抜き上げる要領だ。
ロッドのしなりを利用して一気に抜き上げ、ロッドに全重量が掛かる前に磯の上に引き上げた。
なんとかうまくいった。




25センチを越える堂々としたアオリイカだった。
20センチクラスとは次元の違う大きさである。

いや、一人でコーフンしちまったぜ。
ここに来て正解だったとつくづく思った。

これで22センチと25センチになった。
ダービーは三匹の合計である。
後一匹20センチオーバーが欲しかった。

時間はまだ、たっぷりとあった。


しかし、その一匹が来なかった。

ぼつり、ぼつりとは来るものの20センチを越えない。

時折、アカイカ(マイカ)も来た。





つーさんのイカプラスの記事に刺激されて、時折潮目あたりの表層も狙ってみるが掛からない。
そういえば表層で掛かるのは荒れている時だったような記憶がある。

12時までには余裕を持って帰れると思っていたがそうはいかなかった。

粘るうちに12時は過ぎ、過ぎるとアタリは全く途絶えてしまった。

帰ろうかと思った。
3匹目は18センチでもいいではないか、そのうちデカイのが釣れたら交換すればいいのだから。
だが、一度帰って、計量のために再び輪島に出て来るのは面倒に思えた。
我が家は輪島市街地から20キロ離れた山の中なんである。
このままのんびり朝までやって、早一番、塩谷釣具で計量してもらおう、そう思った。

そのうち眠くなって来た。
だらだらとキャストとシャクリを繰り返していても釣れる訳がない。

岩の上で寝ることにした。
風が当たらないようくぼみを探し身体を横たえる。
フードを被れば思いのほか寒くはなかった。

少しかけた満月がそんな私を見て笑っている。
月に寄り添うように金星が輝き、西の低いところにはオリオン座が傾いていた。


一時間も眠っただろうか、目が覚めるとスッキリとして再び釣り座に立った。
海は完全に凪ぎ、風も緩くなっていた。
気分新たにキャスト再開。

一投目にヒットしたが手応えが可笑しかった。
生体反応がなく藻の塊を引いているようだったが
足元まで来て突然激しく慌てるようにジェット噴射を始めたのである。
ははんと思った。
こいつ、足元まで来て初めて釣られたことに気がついたんだ。

で、このへんなやつ、20センチを僅かに越えていた。



しかし、へんなやつはこいつだけではなかった。
その後、小さいのが数匹釣れたが
みんなそのようなぼんやりとした活気のない反応であった。

要するに、イカたちは眠っていたのだ。
これじゃあ釣れる訳がない。

ここは12時を過ぎるとイカたちの就寝時間なのだ。
そう思うと俄然やる気がなくなりもう一度岩の上で寝てしまった。

目が覚めると朝だった。
朝まづめに期待してみたが、イカたちはまだ寝ているようで早々に切り上げ塩谷釣具へ。

計量の結果、26センチは850g。あと22センチと20センチ、三匹の合計は1806gとなり
いきなり暫定トップに躍り出たのであった。
うっひゃ~~、トップ。

自慢ではないが、私はこれまでの人生で優勝とかトップとかの経験が皆無である。
学校の成績でも運動会でも何かのコンテストでも大したことはなかった。(体育実技と美術だけはまあまあだったが。)
暫定であっても、トップという言葉の響きは新鮮で嬉しい。

しかし、すぐに抜かれるだろうな。

25センチクラスがあと一匹釣れれば上位入賞、2匹だと本当に優勝するかも。

ダービーの締め切りは後2週間。
輪島の熱き釣り師たちのように毎朝、毎晩とはいかない。
しかしだ、ここは静かに狙ってみるか。

人生初の「優勝」を。





計測の三杯。


釣りに出かける理由。

2011-10-11 | アオリイカ
釣りに出かけるにいろいろと理由がある。

私の場合、釣りはブログのタイトル通り、私が直球で幸せになれる行為だが、だからといって毎日釣りをしている訳じゃない。
釣りに出かけるには何かの動機と契機がある。

その日、連れ合いのパート仲間の女の子が泊まりに来ることになった。彼女は最近離婚し、近々金沢に引っ越してやり直すのだという。
引っ越す前に連れ合いと是非話がしたかったらしい。
女同士の積る話もあるのだろうと、その夜私は釣りに出た。

イカ釣りシーズン後半はイカも成長し深場へと移り、夜釣りが主流になるが
この時期、まだ夜釣りには早かった。

しかし、ぼつぼつ来た。





サイズも少し上がって来たようだ。


日中の釣りと違って夜釣りはラインを伝わって来る微妙な魚信が頼りとなる。
視覚的な情報が少ないので、かえってイカとのやり取りに集中できる。

基本的には底を狙う。まず深さを測る。カウントしてどのくらいで底に到達するか。
同じ深さでも風や波、潮流に寄って落ちるスピードは違う。
だからその時、その時のカウントがある。

その夜はカウント40で底に着いた。
カウント35で鋭い2段シャクリやタンタンタンと振り幅の小さいジグザグダートでエギを動かし、またフォールさせる。そしてまたエギを動かす。
エギを鋭く動かすことと、シャクリのパターンを作らないこと、また夜の場合はエギを小さく動かすことが肝心かと思われる。
そして底の少し上あたりの位置を保つ。

フォール時、ラインには常に軽いテンションを掛けているが、そのテンションに違和感を察知したら、それがアタリである。
もわっと重くなったり、急に軽くなったり、突然引ったくったり、また、そうっと引っぱるような感触。

私はそうっと引っぱるようなアタリが好きである。
その時はラインを少し出してやり、ワンテンポ置いて合わせる。
するとぐっと重さが乗る。してグイグイ引っぱる。
こいつが楽しい。

違和感を感じても乗らない時がある。その時はエギの周囲にイカたちがいることをしっかりイメージして誘ってみる。エギをあまり移動させず鋭く動かして待つ。それを繰り返す。
それでも乗らない時はエギを追っかけて来ていることが多いので、足元まで気を抜かないことだ。

底でアタリがなければ、表層も狙ってみる。
水深3メートルくらいのレンジ。
時折、このレンジで入れ乗りすることがある。

しかし、この夜は表層はサッパリだった。

ベタ底でなんとかぼつぼつである。





曇り空で月もなくただ暗い海だった。
目の前に広がる闇と波のざわめき、そして我がロッドが空を切る音だけだった。

連れ合いの同僚はほんわかとした空気の可愛い女性である。
離婚は旦那の浮気が原因らしい。
結婚して4年目だという。
2年悩んだ挙げ句、別れることを決意したのだとか。

まあ生きていればいろんなことがある。
いいことも悪いことも。
そしてまた、いいことも悪いことも二つ続かない。

離婚は若い彼女にとって一大事だったに違いないが、なんてことはない。
今の世、掃いて捨てるほどある。
そのうちいい男と出会いまた結婚すればいい。
故河合隼雄氏も理想の結婚は二回目の結婚だといっているではないか。
美味いイカ食って新たな出発だ。

と、・・・・掛かった!!



うっは!!マイカ。

この夜の釣果は20センチ弱が15杯。

翌日、彼女はシャキシャキのイカ刺しをたらふく平らげ、でかいお椀のご飯もお代わりし、
いい顔で帰って行ったのだった。





その2日後、横浜で暮らしている娘たんぽぽが幼馴染みの結婚式で帰って来た。
久しぶりに帰って来た彼女に何が食いたい?と訊くと
「イカ刺し食べたい。」と言う。

誰かに美味い魚を食わせたい、というのは私の釣りに出かける大きい動機である。
してそんな時は多くの場合、釣れるんである。
いや、釣れるまで帰らないのかも。

彼女が食べるに5杯もあったら十分だろうとタカをくくり
軽い気持ちで昼前に出かけたのだが、これが甘かった。

先日40杯釣れたポイントであるが、
釣り始めに20センチが釣れ



いい調子だと思いきや、
その後、サッパリ釣れない。

ここは確実に釣れるポイントだと確信していたが、
このポイントでも昼を過ぎると駄目らしい。
風も悪かった。
右からの強い横風。

しかし、テトラ帯の中程でやっている人には時々釣れているようだった。
いないわけではないが、私の守備範囲ではなかった。
私の釣り座はいつも通りテトラ帯の先端なのである。

だからといってテトラ帯の中程の、その釣り師の隣に移動する気にはならない。
しかし5匹は釣りたい。
とうとういても立ってもいられず、テトラ帯の根元に移動した。
ここは浅いが目の前に潮目があり、あぶくの帯ができている。
そのあぶく帯を狙ってみようと思ったのだ。

がしかし、ここもサッパリである。
なんだかな、どこかタイミングがズレている。
釣りは追っかけてはイケナイ。というのが持論である。
まあ人生も同じだな。
うまくいっている人の真似をしたり追っかけても駄目である。自分なりのやり方で生きる。

気持ちを落ち着け、先端の釣り座に戻った。
ここは潮の流れもあり深くていいところなのだ。ここでじっくりでかいのを狙おう。
改めて目の前の海と対峙する。
海と自分と。それだけの世界。

沖に向かって風上の正面、低い弾道でキャストする。
3.5号のエギは案外飛んで釣りになる距離に着水する。
カウント50、ベタ底を狙ってみる。

掛かった。

案外の重さ、20センチだった。



その後もぼつぼつと掛かり始めた。




いつの間にか隣の釣り座に若いカップルが登場していた。
なんだか楽しそうにやっている。
彼女と釣りに出かける。それほど楽しいことがあろうか。

ぎっちょの彼氏のキャストが独特で面白く、イカ釣りに慣れた様子で時折イカを引き寄せていた。
なんでも毎週末金沢からここにやって来てイカ釣りをやっている二人なんだそうだ。
道理でここのテトラを知り尽くしている感じだったし、的確な釣りであった。



この日は土曜であったが、いつになく道路には車が多く走っているし、ざわついた雰囲気があった。
珍しい車の渋滞を見て「明日はダイワ主催のイカ釣り大会が輪島で開催されるので、ポイントの下見にやって来てるんです。」と彼が言う。
毎年この時期に行われる大会で金沢富山から釣り師が250人程度参加するらしいが、なんと彼は昨年のチャンピオンで彼女は3位だったのだとか。
勿論、明日の大会にもエントリーし、連覇を狙っているのだそうだ。

彼は18センチが釣れてもリリースし
「こんなんじゃ優勝出来ませんね」と笑うのであった。
で、そんな彼氏を嬉しそうに見守る彼女なんである。
ナイスカップル、いいね、このやろー!!

そうこうしているうちに周囲は薄暗くなり、二人は爽やかな印象を残し姿を消したのだった。
名前はフクシマさんというらしい。またどこかで会えるだろう。

で、私。
この時点で既に5杯はクリアしていたが、なかなか帰れなかった。
この一投で帰ろうと思うと掛かり、
また最後の一投で掛かるんである。

で、最後の最後でまた掛かる。
そいつは根を引き剥がすような重さがあり、引きもこれまでになく強かった。バレるなよと慎重に引き寄せ、よいしょと抜き上げる。
思ったほどの大きさではなかったが、それでも今季の最大であった。


21センチ。

で、泣いても笑ってもこの一投で
またこいつが掛かり、これで終わりにしたのだった。



マイカ。


釣果は結局20杯。

釣れたとは言えないが、目一杯の釣りだった。


言うまでもなく、たんぽぽは美味い!!美味い!!の連発でイカ刺しを貪り食ったのだった。
まず横浜ではこんなプリプリのイカは食えないのだ。







ところで、福井のおみつさんからメールが届いた。おみつさんはつーさんの嫁さんである。
今年の12月、彼女のギャラリー・ゲッコウカフェで展覧会をすることになっている。
メールの最後にはこう書いてあった。

「釣りもいいけど版画もね!」

うっひゃ~~!!






【お知らせ】

師匠つーさんが釣り雑誌にデビューした。
つーさんは釣り師としてすでに北陸周辺では知られた存在だが、釣りだけでなく文学や哲学にも造詣が深く、いい文章を書く。
そのことは彼のブログ「星空キャスティング」に明らかだ。(ブックマーク参照)

その彼が雑誌に記事を書くというのはまさに水を得た魚のごとくなんである。
雑誌の名は「イカプラス」。東海・北陸のイカ釣り情報満載の釣り雑誌売れ行きナンバーワンのメジャー雑誌である。
今回の記事はアオリイカ釣りについて。特に秋のイカ釣りシーズン後半の釣り方として常識となっている底をとるやり方をひっくり返し、表層を狙うという提案が目を引く。
彼の釣りの素晴らしさは常識をしっかりと踏襲しながら、それに固執しない視野の広さと柔らかい感性で独自のテクニックを開いていくところにあるが、イカ釣りでも惜しみなくそのテクニックが披露されているわけだ。

このブログに立ち寄った貴方に是非、手に取っていただきたい。貴方の釣りにとって何か光るものを手に出来ること請け合いである。

12月には彼の真骨頂デカメバル釣りの世界がさらに大きい紙面で展開される予定だ。
楽しみに。

















イカの海

2011-10-06 | アオリイカ
10月4日、朝早くからぷらりと出かけた。

昨夜の雨が少し残ってはいたが、西の空は明るかった。

予定のポイントは風が悪く波が強過ぎた。潮も濁っている。
二投して諦め、移動する。

海沿いの道を走りながらこの状況で釣りが出来そうなポイントを探した。

能登外浦の、とあるテトラ。

ここも荒れ気味だったが、湾なので最初のポイントほどではなかった。
1~1.5メートルの波というところ。
時折やって来る大きなうねりがテトラにぶち当り、飛沫がかかる程度。
風はうまい具合に追い風であった。

先客は二人いたが、うまいぐあいに先端の釣り座は空いていた。
釣り座は宙空に斜めに突き出したテトラなので慎重な人は行かないのだろうな。


少し濁りがあるのでオレンジカラー3.5号エギを正面にフルキャスト。風に乗ってよく飛び、遠くのうねっている波に着水する。
この海悪くない。なんだか活気がありワクワクするものがあった。

ボトムの少し上、深層を狙う。
およそ30数えて二段しゃくり。そして適当に軽い連続ダート。フォール。またしゃくる。
その繰り返し。決まったパターンはない。
ただ深層をキープすることだけを心がける。

入れ食いとはいかないものの、釣りはじめからいい調子で釣れ続けた。
続けて掛かったかと思えば暫く間があき、また釣れる、という調子。








頭の中でカウントしてはしゃくり、またしゃくる。
そのうちカウントしなくても身体がリズムを覚えやっている。





まんべんなく掛かるのだが、みんな15センチ前後。20センチを超えるやつが来ない。

今年の特徴は釣れる場所と釣れない場所がハッキリしていること。全般に小さいが稀に予想だにしない大物が釣れたりもするということらしい。
どうやらこのポイント、ぴたりストライクのようだった。
こうなったら数にこだわってみようか。
食って美味いのはこのサイズなのだ。

目の前には美しい海。水平線は緩やかな弧を描き、そのうえに可愛い綿雲がたなびいている。何も考えることはない。この景色をただ見つめ、竿を振る。
身体の隅々に海と風と秋の陽光がしみ込むようだ。




イカの乗り方にはいろいろある。

まずはよくある、しゃくった瞬間ガツンと掛かるやつ。
これは掛けたのではなく、掛かったのだな。
下手すると身切れするので、大きく鋭くしゃくる時はタンと軽くしゃくっておいて大きくしゃくることにしている。



次に、フォール時、引ったくるように持って行くやつ。
こいつはなかなか乗せられないが、乗ったら触腕一本に掛かっている場合が多い。
だから、掛かった場合、そうっとゆっくりと引いて来る。



その次にフォール中、ぐっと重さが乗って来る時。
こいつはしっかりフッキングしている。



またフォール中、そうっと触っているのが分かる時。
やがてやつはエギを少し引っぱる。ラインを少し出してやり、ワンテンポ間を作って合わせるとぐっと重さが乗る。
これはしっかり掛けたのだ。この乗り方が一番楽しい。



エギが足元まで来ても、気を許してはいけない。
足元にいるやつは小さいやつが多いが、沖からエギを追っかけて来たやつもいる。
エギをギリギリ見えるところまで上げておいて、暫くその周りに大きいやつが追っかけて来ていないか確かめる。
そんなやつはエギが岸に近づくと慌てるように寄って来て抱きつくことが多い。




今回はラインに注視した。
日中などラインが見える時、ラインの動きでアタリをとる。
師匠つーさんの得意技だ。こいつを会得すると釣果が倍違うと彼は言うのだが、これがなかなかに会得し難し。
なにせ、波があり風があるのだ。寄せ波引き波でラインはふけたり引っぱられたり、風で膨らんでよく分からない。

しかしだ、じっと見ていると確かにそういったラインの動きとは違う動き方をするときがある。
違和感のあるフケ方、引っぱられ方、それがアタリである。
特に、フケる時、よく見ていないと見逃してしまうが、こいつはイカがしっかり抱きついているのでまずはバレない。
一二度そのアタリで掛けたが、それで掛けるとなんだか嬉しい。当り!!って感じだ。




イカたちは美しい。何度見ても見飽きない。形、模様、同じやつはいない。丸くてでっかい目。
釣り上げるとエンペラを前後にバタバタと動かし、そのうち水をブシューと噴く。思いっきりだ。
水ならいいが、墨も噴く。顔も衣服も現代アートだ。
ともあれイカたちは活き活きと躍動するんである。

嗚呼、なんと楽しいことか。


日が高くなるに釣れて風向きが変わって来た。右からの横風。
俄然釣りにくくなってきた。

釣れる間隔も長くなって来る。



しかし、粘る。
粘るのが私の得意技。




我慢をして粘るのではない。
気分がいいし楽しいから、知らず長くなる。


気がつくとベルトに付けていた小さなバッグが見当たらない。
何かやっているうちに外れ海に落ちたらしい。
道具を海に落とすのも私の得意技だ。
リーダーとハサミ、スナップが入っていた。
根掛かりでエギをロストし、どうすることもできず終わりにした。

日は頭上にあり、いい時間になっていた。
6時間はテトラの先っちょに立っていたことになる。
いい年こいて何やってんだ、と思うがしかたない。
海に出るとついこうなっちまうんである。


久しぶり、クーラーボックスはずんと重く、テトラを渡るのが危うかった。

大して釣れない日が多いが、

こんな日もある。





帰って数えたら40だった。最大は17センチ。




嗚呼、イカ釣り!!ベイトでやってみた。

2011-10-01 | アオリイカ
8月はシュノーケリングでの海遊び。9月はじめは名古屋方面での展覧会でほぼ2ヶ月あまり釣りから遠ざかっていた。

展覧会の仕事も終わった9月23日、さいたまから友人Gさんが男の子二人を連れてやって来たのでみんなでイカ釣りに出かけた。
今季初のイカ釣りだし、友人と子供たちにもイカ釣りの楽しさを味わってもらおうと期待したが全く釣れなかった。
釣れないというより、イカの存在がなかった。

そんな状況だったが、最後にやっとこGさん釣り上げた。
小さいやつだったが、子供たちも生きているアオリイカを見ることができ、よかった!!




地元の漁師さんたちも今年はアオリイカが少ないと言う。
連れ合いが言うには魚屋さんでは小さいのが一杯400円もするのだそうだ。

昨年はいい年だったが、今年は駄目なのか。
しかし、そう思いたくはない。
まだ本格的にイカ釣りをやった気がしなかった。



Gさんたちが帰って3日目、28日。
気合いを入れ、朝まづめを狙って昨年の本命ポイントに出かけてみた。
輪島の磯である。

海は荒れ気味だったが、風は追い風、先客もいず悪くなかった。
3.5号エギを付けてフルキャストする。
追い風に乗って遠くまで飛び着水する。
朝の海に独り立ちルアーを投げる。
何も考えることなく、目の前の海と水平線だけである。
なんだかワクワクと嬉しいのであった。

しかし、噂通り渋かった。海は美しいが、沈黙したままだ。
キャストを始めて2時間、釣れたのは小さいのが一匹。
イカの釣り方を忘れたのか?
昨年のことを思い出しながら二段しゃくりや連続ダートなどやってみるのだがアタリはなかった。
でも、帰る気にはならない。時間はたっぷりとある。

気分転換、ロッドを替えてみた。
ベイトロッドである。
この冬からベイトでのイカ釣りを考えていたのだが、偶然オークションに出ていたイカ用ベイトロッドを安く手に入れた。リールはスズキ釣りに使っているアンタレスだ。して今日がそれらベイトタックルでの初挑戦というわけである。
フルキャストしてみる。やはり飛距離はスピニングに比べ5メートルくらい短い。
シャクリも案外簡単に出来るが、慣れないせいか違和感がある。
その感じは新鮮でもあり、楽しくもある。
違和感のないシャクリ方を探しているうちに、ゴッと重さが乗った。
紛れもなくイカだった。
アンタレスでイカを引き寄せる。初の体験、面白かった。
15センチクラスだったが、兎にも角にもベイトでの初イカである。



そして、次のキャスト、続けてヒット。



その次も掛かった。



突然の爆釣モードである。
時合いらしかった。
時計を見ると7時半を回ったところ。

その後もヒットは続いたが、






長くは続かず少しアタリが遠のいた。
群れが移動したのかも知れぬ、スピニングに替え遠くを狙ってみる。

しかし、アタリは戻って来ない。

30分も経っただろうか、遠くの底辺りで一際重い感触、藻の塊とも思ったがそうではなかった。グイグイと引く。ロッドの先端がお辞儀する。
遠くからゆっくりと引き寄せる。これぞイカ釣りの醍醐味である。



暫くしてやはり遠くのボトム、重さが乗った。
先程よりさらに重かった。引きも強い。
引き寄せる。
ああ!!楽し!!



18センチ。このサイズになるとやはり嬉しい。


その後、もう一匹。




そして、アタリは途絶えた。

時間は10時半。太陽は高く昇り、暑いくらいだった。

釣果は5時間粘って15杯。
その殆どは7時半前後の1時間弱のベイトでの釣果である。
大した釣果ではないものの、釣れないことはないということを確信した。



ベイトタックルでの初体験も楽しかった。
遠くは狙えないものの、手返しは良く、近場の数釣りには適しているかも知れない。
私は基本的にベイトリールが好きなので、これからこいつでのシャクリ方、釣り方を作っていくのも楽しみだ。



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