永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

主役は磯ヒラだった。

2012-10-27 | 青物
大阪ブリコラージュ展覧会が迫り来て、まだやらねばならぬ仕事が山ほどあるのに、
こういったジョーキョーの時に限って釣りに出たい気持ちが強くなるのは、どーゆーわけか、困ったもんである。

山積みの仕事に背を向けて逃げるごとく海に向かう。

イカ釣りのために10月は展覧会を避けたのだが、甘かった。
11月はじめの展覧会のために仕事をせんといかんのだ。
10月をぽっかり空けるには11月も展覧会を入れてはいけないのだった。

といっても、自転車操業の人生、そんなことでは暮らしが成り立たない。
この矛盾。ああ、一度、金持ちになってみたい・・・・。
などと思ってみても所詮、虚しい。かえって寂しさが増すではないか。とほほ。
だからそういったことは考えないことにする。


駐車場に着くと、二人の先客が帰るところだった。
彼らのクーラーボックスは満杯。
「爆釣ですか、いいね。」
「こんなに釣れたの初めてよ。重くて帰り道二回も休憩したよ。」
と満面の笑み。分かるなあ。
「このところ釣れなかったけどまた釣れはじめたな。」
「何時からやってるんですか?」
「夕方から」
「釣れるのに帰るんですか?」
「少し前からアタリがなくなったからね。」


さてと、釣り座に立ちキャストを始める。
先ずは試しのロッドで。

実は今回二本ロッドを持って行ったのだ。
前回、アクシデントがありロッドの先が折れちまった。
で、長い間使ったこともなかった予備のロッドの出番である。

もう一本は昨年、息子の青が根掛かりのまま思い切りしゃくりロッドのバッドを折ったのだが、そのロッドの竿先を残しておいた。
で、前回のバッドにその竿先を付けてみたら少し緩いがワックスを沢山付けるとなんとかうまくはまったので実際使えるかどうか試してみたかった。

試しのロッドは何の問題もなさそうだった。
キャストもシャクリも。

しかし、海は彼らの言う通り祭りの後だった。
アタリも雰囲気もない。

数投目、キャストした瞬間、変な音とショック。
ガイドに絡まったわけではないが、ラインブレイクでエギは遠くに消えちまった。
こんなことは今期初のこと、何か嫌な予感がした。
PEを組み直してリーダーを付けるのが面倒なので簡単修理ロッドの試しはそれで終え、本番の予備ロッドに替えてキャスト開始。
この予備ロッドは基本的にこれまで使って来たオリムピック、カラマレッティと同じだが、いつだったか、信じられないほど格安でネットオークションに出ていたので予備ロッドとしてゲットしていたもの。

普段やったことのない、ロッドを二本持参なんて、そのうち一本が駄目になり二本持って来て良かったという状況になるんじゃないのか、なんて嫌な予感がふと頭をよぎった。

使っていなかったせいか、ちょっと堅い感じがするが、そんなもんだろう。
南の追い風に乗ってエギは遠くに飛んで闇に消える。
波は1メートル、釣り易い状況。
カウント40~45で着底。
活性はないようだが底ベタを意識するとヒットした。



まあ釣れなくはないようだ。
今夜が今期最後の釣りになるかもしれない。
朝までのんびりやろう。
なんて考えていると根掛かった。

このポイントは深くて根掛かりしても大したことなく、
これまでエギのロストなんて殆どなかった。

この根掛かりもタカをくくって簡単に外れるだろうと思ったが
外れそうもない。がっちりと何かに食い込んでいた。

思わず、大きくしゃくってみた。
その瞬間、ガキッ!!という嫌な音。
あんららー!!!
ロッドがバッドからパキンと折れちまった。
信じられなかった。

これまで根掛かりでしゃくったことも何度もあるし、そうとう乱暴なこともしたが、ロッドがバッドから折れるなんて一度もなかったし全くの想定外だった。
根掛かったルアーを折れたまま回収しながら、そうだ前回先を折ったロッドと同じやつだから、そのバッドにこの穂先を付ければ完品がひとつできるではないか。
と思いきや、穂先もトップガイドから折れていた。


まさに予感的中なんである。

前回のアクシデントいい、続いての今回のアクシデント。
かなりの精神的ダメージではあった。

がしかし、ここで帰るわけにはいかない。
もう一本ロッドはある。間に合わせの修理ロッドではあるが。

ここでちょっくら休憩。
連合いがポットに入れてくれた熱いお茶を磯に座って流し込む。

釣りはじめにぽつぽつと降っていた雨もやんでいたが、空は厚い雲に覆われ、星1つ出てはいない。暗闇の釣りである。
誰もいない暗闇に自分だけが佇んでいる。
この感じは悪くない。
煙草に火をつける。

さて、気分を新たにイカ釣りである。
間に合わせのロッドは問題もなく機能してくれていた。

朝に近づくに従って、アタリは次第に戻りはじめたようだった。




そのうち、背後からヘッドライトが近づいて来た。
「ゴロスケさんですよね。」私を見てそう言う。
「はい、そう言う貴方は?」
「昨年、ここで会ったSですよ。」
そこで思い出した。
昨年、輪島のイカ釣りダービーの最後、若者に一位を奪われ、最終日、再逆転を狙って一キロ級を掛けたものの玉網入れに失敗、バラした直後に出会ったのがSさんで、その時の口惜しさを彼に話したのだった。

「隣でやってもいいか?」と彼。
勿論。
隣で軽くキャストするSさん。
彼がしゃくるとジージーとドラグの音がする。
緩いドラグ設定だ。
相当手慣れた釣り師である。

朝に近づくにしたがってアタリが戻りはじめていたが
それにしても彼はよくヒットさせる。
「ドラグ緩くしてあるんですね?」
「きつくすると根掛かった時、食い込みますからね。」

そういえば、私の場合、イカ釣りにしてはドラグは堅く設定している。
エギを鋭く動かすにはそれがいいと思っていたが・・・・
ロッドが折れたのもそのせいかも知れぬ。
藻に掛かれば少々のショックでも藻が受け止めるだろうが
いきなり岩などに根掛かりし、強いショックを掛けるとロッドに相当の負担がかかるだろう。
いろんな条件が偶然重なれば、バッドもいとも簡単に折れちまうのだ。

彼くらい緩くしておいたら、先ずロッドが折れるなんてあり得なかった。

それに、ドラグの堅い、緩いはエギの鋭い動きには関係ないのかもしれぬ。
ちゃんとしゃくれば、エギは鋭く動くだろうし、連続ダートも出来るだろう。
ただ、緩いとダート幅が小さいかもしれぬ。
問題はスラックを利用してカツンとカウンター気味にしゃくれるか、だ。
ダート幅の小さい方が好きな私にとってはいい方法かもしれぬ。

などと考えている間も、彼は間断なくヒットさせている。
私もまずまずのヒットが続いた。



「アタリが戻ってきましたね。」
「そのようだね。」
「サイズも上がってきました。」
「ほんとな。」

彼とのダブルヒットも度々。
時折でかいのも掛かった。
といっても22センチくらいか。




S氏のロッドは柔らかいのか、デカイのが来ると抜き上げず、丁寧にラインを持ってあげている。

「いい調子だね。」
「一ヶ月前の満月の時、こことは違うポイントでしたが、夜中やって100杯以上釣りましたよ。あの時は楽しかったなあ。」
100杯とな。私の最高はやはり満月の時、このポイントで70杯だった。
上には上がいるものだ。

彼は地元の建設会社で現場監督をしているのだという。
仕事の合間を見て釣りをしているらしい。
いや、彼の釣行ぶりを聞いていると、どうも釣りの合間に仕事をしているようだ。うっはー。
それほどの釣り好きらしい。幸せ者なのだ。

夜が空ける直前、入れ食いの活況になったが、明るくなってからパタリとアタリは止まった。
このところのいつものパターンである。

海面を見ると青物が来ていた。
あちらこちらでボゴッ、ボゴッと海面が動き補食している。

よし!!と釣りを切り替える。

前回、デカメバル用のアイスジグで一本上げたが、今回はそれを狙ってルアーを沢山もって来ていた。
しかし、青物のルアーが分からない。
これまで、あまりやったことがないのだ。

スズキ用の小さめのシンキングペンシルでやってみると時折アタックするがもうひとつ。
青物用のメタルジグをぶん投げてグングン巻き上げるが、こいつは全く反応がない。
で、前回のアイスジグでも駄目だった。

「沢山釣れたら、一本下さいね。」とS氏。

シンキングペンシルに一度ヒットしたが鋭い走りをいなしている間にバレてしまい、
そのうちアタリはなくなった。

うむ、簡単じゃないな。と一息。

ここでS氏は帰り支度。
「帰りますか?」
「今日も仕事ですから。」

彼が帰った後、ルアーの箱の隅にワインド釣法のワームとジグヘッドがあったので、そいつをぶん投げてみた。
と、ワインドの間もなく着水した瞬間、ヒットした。
バラさないように慎重に引き寄せ抜き上げる。堅いエギロッドならではの抜き上げである。
こいつはルアー丸ごと呑み込んでいた。



その直後、再びそいつをキャストすると、ワインドして来る間にワームを半分齧り取られていた。

ワームの替えを持っていなかったので最初からやり直し。
さて、どのルアーが効果的か?

ふと、箱の中に横たわっているトップウォーターが目に入った。
レッドペッパー110である。
レッドペッパーベイビーはクロダイ用に持っていて、その動きやら雰囲気やらを大いに気に入り、いつかスズキにも使ってやろうとでかいタイプ110をゲットしていたのだ。

それに、もともとこのルアーには思い入れがある。
私が釣りを始めたのは福井越前の釣り師つーさんと出会ったからだが、忘れもしない11年前、初めて一緒にスズキ釣りに出かけ、ルアーなんてオモチャみたいなもので魚が釣れるんだということを現実に見せてくれた。その時、彼は83センチのスズキを釣ったのだが、そのルアーがレッドペッパーであった。

なんだか縁を感じるルアーなんである。

そいつを付けてキャストしてみる。
でかいタイプを実践で使うのは初めてだった。

クロダイでやっていたように、小刻みなトゥッチで引いて来る。
海面をルアーがチョンチョンと動き回りながらやってくる。
弱ったイワシが逃げ惑っているような活き活きとした動きだ。

時々、ルアーを追っかけアタックして来るが空振りだ。
確かに反応はある。
しかし、ロッドの動きが大きいせいか、直ぐにラインがフックに絡まりうまくいかない。

で、そっとやってみる。
絡まないように海面をそっとただ引きしたり、チョンチョンと動かしてみたり、ともかく小さいアクションで誘うように。
すると・・・・・・突然、海面が盛り上がり、ガバッ!!と来た。



次のキャストでもヒットした。
そうか、このパターンなのだ。

入れ食いではないが、数投しているうちにアタックして来る。

トップウォータでの釣りはやはり面白くコーフンするんである。
海面のルアーの動き、それに食いつく魚の様子、みんな見えるのだ。

4匹目だったか、こいつの引きは強かった。
強めのドラグが鳴った。
イカ用のラインが切れるかとも思った。
走る走る。それをいなす、いなす。
近くまで寄せて、下の岩礁に潜らないように必死だ。
流石にこいつは抜き上げが出来ず、でかいイカ用に持って来ていた玉網を使った。





その後もレッドペッパーは調子が良かった。

8時になり、待ち合わせの時間があったので終わりにした。

結果、二本はバラしたものの、6本を上げることができた。

早朝の一盛り、独りの祭りだった。


それにしても、レッドペッパーはいいルアーだ。


(帰って気が付いたが腹のフックが一本折れていた。)



前回と似ている。
アクシデントはあったが、S氏の釣りに考えさせられたこと、それなりにイカが釣れたこと、そして最後にコーフンの青物。
やはりドラマチックではあったのだ。

悪いことあれば、いいこともある。
いいことも二度続かないが、悪いことも二度続かないのだ。
いや、ロッド折れは二度続いたぞ。

二度あることは三度ある。
というのを気をつけた方がいいか。


ところで、フクラギだと思っていたが、アップした写真を見て、金沢、福井の友人釣り師たちからコメントあり。どうやらこの魚、黄色の線と口の丸みからフクラギではなくヒラマサではないかと。
どうりで美味いと思ったのだが、それは釣り立てだからだろうと思っていた。
ヒラマサなら、一段と嬉しいが、知らずに釣ったのだから、自慢にはならんわな。
しかし、驚いたぜ。ヒラマサなんてな。


S氏がもう少しその場にいたら、ヒラマサ、持って行ってもらったのになあ。




バットから折れたロッド。穂先も。驚くほど丈夫なカーボンロッドも折れるときはいとも簡単に折れるんである。


青物(恐らくヒラマサ)釣果



荒れた海はドラマチックだった。

2012-10-24 | アオリイカ
大阪から友人向井一家と彼らの仲間玉ちゃんがやってきた。

以前から遊びに来たいとは言っていたが
アオリイカシーズン真っ最中のタイミングである。
遠路はるばる都会からやって来たからには釣り立てのイカを腹一杯食わしてやりたいと思うし、それは約束でもあった。

というわけで、旦那の貴彦さんと釣りに出た。
彼は釣りをしているわけではなかったが、イカ釣りには興味津々、是が非でも一緒に行って自分も釣ってみたいと言う。

正直なところ、今のイカ釣りの状況は初心者にはキビシイ。
成長したイカは用心深くて簡単には掛かってくれないし、底を取るというのが鉄則だが、その感覚も分からないだろう。
まして夜の釣りである。
昼でも釣れないわけではないがこの時期のイカは夜の方が活性が高いし、昼は海が荒れ、風向きも悪かった。夜の方が可能性が高いのだ。

しかし、初心者にとって暗闇の釣りは極めて厳しい。
第一、暗闇にキャストするのであって、ルアーがどのように飛んだのかさえも分からないし、エギが海中をどのように動くのかなんて想像もできないだろう。
さらに、予報では1.5メートルの波、穏やかな海ではなかった。

そのようなことを一応説明するのだが、彼はひるむどころか
顔は好奇心に輝き、やる気満々なのであった。

というわけで、現場に着いたのは3時だった。
ポイントの磯に行ってみると、予想外に海は荒れていた。
乗っかる岩礁の周囲は轟々とサラシが渦巻き、1.5メートルどころではなかった。
一瞬、アブナイな、やめようか、とも思ったが、
やる気満々の彼の顔を見るにつけ、ともあれ行ってみることに。

乗っかる岩礁に渡るのが難しい。
波が押し寄せて行く手を遮断しているのだ。
波が大きく引くタイミングを見極め、
その瞬間、今だ!!
とデコボコの磯を忍者のごとく走り渡らねばならない。
タイミングを間違えれば、波にさらわれてしまう。
ちょっと緊張するのだったが、彼は恐れることもなく、私の号令に従ってうまく渡った。

いつもの一番前の釣り座ではもろに波を被るので、下がって高いところを選んで立ち、暫く様子を見た。
右手も左手もサラシの渦だったが、潮の流れと突き出た岩礁の形のせいで正面だけはぽっかり穴が開いたようにサラシが出来ていない。
風はうまいこと真後ろからの追い風である。
周囲の岩礁はみんな波を被っていたが、我々が立っているところだけは不思議と波が上がって来ない。
いや、時々上がって来るが大したことはない。膝下が濡れる程度。

よし!!なんとか釣りが出来そうだった。

リールの使い方、投げ方をレクチャーし、とにかくキャストしてもらう。
ふむ、初めてにしてはちゃんと飛んでいる様子。

次にシャクリをレクチャー。先ずは二段しゃくり。こいつは流石に上手くはいかない。
まあそのうち慣れるだろう。

と、私もキャストを開始した。

追い風でルアーは飛んでくれるし、荒れてはいるがルアーは沈んでくれなんとか釣りになりそうだった。
しかし、アタリは来なかった。

ライトで海面を照らしてみる。濁っていてはイカは釣れない。
海面の上下運動が大きくてよく分からない。でも荒れているということはいつもより濁っているに違いない。

こんな状況ではイカはどこかへ避難しているかも知れない。
釣れないかも・・・・不安がよぎる。
まして、彼は釣ることは出来ないだろう。
是非イカを釣る体験をしてもらいたかったが、タイミングが悪過ぎる。

しかたない。次の機会だな。
日本海の磯に立っただけでも悪くはないのだ。
などと考えていた時だった。

彼のロッドの先が曲がっている。
あら!根掛かりか!
いや、違う。ロッドの先がグングンとお辞儀している。
そして彼はリールを巻いている。
イカだ!!

「ゆっくり巻いて!!ゆっくり、ゆっくり!!」と思わず叫ぶ。

左手で巻くことに慣れないのでぎこちないが
数秒後、ラインには確かにアオリイカがぶら下がっていた。

いや、驚いちまった。
この状況で、彼が先に釣りあげるとは・・・・



サイズは小さかったが、彼の初アオリイカであった。

自分で釣り上げながら何が起きたのか状況がよく呑み込めていない様子ではあったが
とにもかくにも釣ったのだ。


彼の目標はひとつ釣り上げるということだったが、
それはいとも簡単に実にあっさり達成出来たのだった。

暫くして私にも掛かった。
深いところ。根掛かりのような重さ。底から引き剥がす。でかい!
引きも強い。ロッドがグウン、グウンとしなる。
玉網は持って来ていなかったが、それほどでもないだろう。
抜き上げると予想外に重かった。




ヤマシタ、エギ王Qオレンジ3.5号に糸錘を4~5重巻きにしてカウントは45くらいだろうか。
この荒れでは、それでやっと底に達する。

底を感じ、意識しながらしゃくる。ダート幅は小さく、誘うように。

すると再び乗った。

そいつも重かった。




そこで最初のやつとこいつを計ってみた。
24センチと22センチだった。
24センチは勿論今期最大。




その後もいい感じで数杯ヒットする。






しかし、彼にヒットしない。

エギをディープタイプに替えてもらい、
カウントも30から40、深いところを狙うように。

暫くすると、ヒット。
今度はいいサイズ。


(この写真を撮るのが私の目標だった。)


その直後、アクシデント。
私がロッドを置いて墨を吐かせるために放置していた数杯のイカをクーラーボックスに入れていると、ガチャン!!という衝撃音。
何事かと思いきや、私のロッドが飛んでいた。
彼がキャストした拍子にエギが私のロッドのラインを引っ掛けたらしい。
危うく海に落下しかけたロッドは救ったが、ラインはブレイクしていた。切れた先のラインとエギは近くの岩に引っ掛かっていてラッキーだったが、
よく見ると、ロッドの穂先が折れ、トップガイドと二番目のガイドが無くなっていた。



しかし、ここで釣りをやめるわけにはいかない。
三番目のガイドをトップガイドとして使うべく、ガイドの先に残っている部分をプライヤーで切り取り
やんわりとキャストし、やんわりとしゃくってみた。
少し堅いが、案外しゃくり易いし、なんとかなりそうだった。

いや、実際、それで問題なくイカは釣れるのだった。


これも22~3センチ。


元気よく水を噴射する。

その後も入れ食いとはいかないが、
いい感じでヒットは続いた。


彼もぼつぼつと釣り上げている様子。

見るとキャストもシャクリも次第に様になって来たようで
ロッドが風を切る音が小気味いい。
いや、大したもんである。

初めての釣りで、これほど早くものにしたやつがいたか。しかも暗闇の中でである。

周囲に夜明けの気配が流れ込んで来る頃には
ヒットする頻度は私とあまり変わらなくなっていた。

時にダブルヒットすることもあった。

心底楽しそうな彼であったし、私とて大いに心は弾むのであった。




明るくなって想像以上に波がきついことに気が付いた。
波の上下を観察すると2.5メートルの波である。

改めてこんな状況で釣りをしていたのかと。



すっかり明るくなってアタリは止まった。
前回もそうだったし、前々回もそうだった。
明るくなるとどうして釣れなくなるのか?

成長したイカは警戒心が強く、明るくなるとさらに警戒するのか?
この朝まづめに大敵である青物が来ているのか?

バッグの中に入れていたデカメバル用のアイスジグ7センチを付けて潮目に投げてみた。
前回、ひょっとしてと思い、そいつを投げてみるとバラしたが確かに何かが食いついたのだ。

イカの連続ダートと同じ要領で引いて来る。ワインド釣法だな。
と、ゴツンと衝撃。ヒットした。
走った。イカとは違い、鋭く強い引きだった。
今回はバレずになんとか引き寄せ、えいやっと抜き上げた。
果たして、そいつの正体はフクラギだった。



その後も数投してみるが、ヒットしたのは一投目だけだった。

イカは既に釣れる気配がなくなっていたが
釣果はもう十分すぎるほどで
そこで終わりにした。

思えばいろいろあった釣りだった。

荒れた海。
ティップが折れたロッドでの釣り。
貴彦さんも根掛かりラインブレイクでラインが短くなり、フルキャストが出来ない釣りだった。
しかし、今季最大も釣れたし、彼もイカを釣る体験が十分に出来た。
フクラギのオマケもある。

貴彦さんは時折岩の上まであがって来る波にジーパンの裾も運動靴もびしょ濡れであったが、ひるむことなくひたむきに釣りに集中していた。
釣りなどやったことのない都会の青年である。その彼がこんなにも釣りに没頭し、この厳しい状況をものともせずイカ釣りをなんとかものにしたのだ。



楽しいと彼は言う。
この海が気持ちいいと彼は言う。
彼の顔が朝日に輝いていた。

彼を連れて来てよかった。

心底そう思った。




(昼飯は釣り立てイカ刺し宴会。右は貴彦さんの嫁さんひとみさん、左は玉ちゃん。)


三匹目のドジョウは夕日だった。

2012-10-11 | アオリイカ
今、大阪の展覧会に向けて絵皿を作っているが、気分転換、午後遅くから釣りに出た。
窯焚きやらなんやら、これから暫くは行けないということもある。

また、前々回、柳の下に見事なドジョウがいて、前回も二匹目のドジョウがいた。
さらに今回、三匹目のドジョウはいるか?ということもある。

釣り座に立ったのは四時。
凪いだ海、風向きは悪くなかった。
さて、三匹目のドジョウはどうか?
前回、前々回の入れ食いを思い出しながらキャストを始めた。

一投目、アタリなし。
ふむ。

二投目、アタリなし。
ふむ。

三投目、方向を変えてみる。
しかし、アタリなし。

4投目、エギを替えてみる。
やっぱりアタリなし。

どうやら三匹目のドジョウはいないらしい。
まあ、こんなもんだろう。

かえってこのくらいの方が釣りらしい。
このポイントは懐が深い、そのうちスイッチが入るだろう。

なんてのんびりかまえるものの
その後もさっぱりアタリはなかった。

ほんとさっぱり、なんである。
どこをどうやってもまるでイカの存在が消えちまったようだった。

ふーむ。
しかし、晩飯のおかずくらいは釣って帰りたい。

釣れないが、空はとびきり綺麗だった。



キャストしてフォールを待つ間、思わずカメラを取る。




久しぶりの日本海に落ちる夕日だ。



この荘厳な夕日や月、星たちを眺めるのも釣りの大いなる楽しみなのだ。



と、小さいのが掛かった。リリース。

暫くして、また小さいの。

釣れないとはいえ、流石夕まづめ。
少しは状況が変わって来たと見える。

日は完全に水平線下に落ち、残照がほのかに海面を照らすその時
底でイカがエギに触っている微かな感触。
うっは、久しぶりの感触。

イカは用心深く様子を窺っている。
軽いダートで誘ってみる。そしてそっと待つ。
ゆっくり引いてみると抱いたような僅かな重さ。
そこで合わせる。ぐっと重さが乗った。
途中まで引いて来て、突然走り始める。
ロッドの先がグングンとお辞儀する。

その日、初めてのまともなヒットだった。




その後、ぼつぼつ。




このところ気に入っているダートマックス。あまり激しくしゃくらない私に相性がいいかも。渋い時に。



月もなく、真っ暗の暗闇の中
一投一投、集中してイカを掛ける。
ラインを伝わる微妙な魚信だけが頼りだ。
釣りらしいと言えば言える。

7時を過ぎたあたり、暗闇に閃光が炸裂しはじめた。
稲光である。
次第に閃光が近くなって来た。

突然、雲行きが怪しくなった。胸騒ぎがする。

イカもなんとか10杯、晩飯のおかずには十分。
終えることに。

車へと磯の崖を登っていると、案の定雨が降って来た。
それも土砂降り沛然。

車に戻るまでに全身濡れ鼠になっちまった。


三匹目のドジョウはいなかったが
見事な夕日は釣れたことだし、微妙な魚信のやりとり。

それに土砂降り。


なんだかな


へんてこで愉快な釣りだった。



柳の下の二匹目のドジョウ。

2012-10-07 | アオリイカ
前回の入れ食いの感覚が甘く疼くように身体に残っていた。

その感覚に引っぱられるように出かけた。

爆釣の明くる日行ってみるとボウズ、ということはよくあること。
普通、柳の下に二匹目のドジョウはいない。

土曜日の早朝ということもあって、前回より少し早く現場に行ったが、やはり先客がいた。
車は一台、ひとりならなんとか入れるだろうとポイントに向かった。

月は半月、薄曇りの空にボンヤリと顔を出し、ゆるく辺りを照らしていた。
その薄明かりの中、ポイントに一人の先客が見えた。よし、何とか入れる。

「隣でやってもいいか?」と声をかけると、
「はい、どうぞ!」と若者らしきハキハキとした声だった。
こんな先客はありがたい。
彼の足元には既に数匹のイカが横たわっていた。
墨や水を十分吐かせるためにこうして暫く置いておくのだ。
なんだか調子良さそう。

彼の左手に立ち、私もキャストを開始。
前回とは違い、1メートルの波、凪ぎに近い。
イカもメバルも他の魚も基本的には少し荒れて釣りにくいくらいが活性が高く
凪ぎは釣りにくいものだが今日はどうだろう?

前回と同じく、一投目から掛かった。
こいつがいきなりでかかった。
胴長20センチ。



そして、二投目も三投目もヒットする。
それは前回の感覚と同じであり
時間はさかのぼり、前回の釣りがそのまま続いているようだった。
柳の下、二匹目のドジョウはいたのである。





先客は金沢からやって来たという。
「一人より二人の方が危なくないですしね」と言う。
凪のように静かな海で?
そう言ったのは彼の優しさであろう。

そこではたと考えた。
まあ、一人の夜釣りなんて何が起きるか分からないし、危険と言えば危険なのだ。
普通家族を持つ大人であれば、そう考えるのが当たり前だろうし、それが責任でもあるのだろう。
しかし、私はそんなこと考えたこともない。
釣りは基本独りでするものと思っている。
なんかガキだなあ・・・・

イカは釣れ続けた。
ワンキャスト、ワンヒットの時間帯があれば
ぼつぼつの時間帯、
そしてまた入れ食い、
またぼつぼつ。
全体的には間断なく釣れ続けた。









釣れ続けることは楽しい。
何度も、何度もイカの反応、引き、生体反応を体感出来るのである。
嗚呼、なんと幸せなことか。

先客の彼も間断なく釣り上げているようだった。
シャクリや竿さばきは相当慣れた人のものである。
暗くて顔はよく見えないが、立ち振る舞いに楽しさが溢れている。

奥能登日本海の磯である。
イカのシーズン、エギングブームで町に近い釣り場はどこも人で一杯であろう。
越前海岸でも他府県ナンバーの車が列をなし、ポイントに入ることさえ一苦労である。
それに比べれば、ここは釣り人は極めて少ない。

たゆたゆと海は広がり、空には月、まだ薄暗い早朝は爽快だった。
懐の深い海である。どれほどのイカたちがいることか。
この磯で釣りが出来るシアワセを実感する。


(こいつは胴長22センチ。流石に引きは強かった。今年の最大だ。)






しかし、こんな状況は極めてブログに書きにくいんである。
底を取り、適当にしゃくっていれば乗って来る。
考えることもなく釣れるんである。
なんかなあ、全く釣れないのと同じくドラマに欠けるんである。


周囲が明るくなって先客さんがさほど若い人ではないことが判明。
52才だという。驚いた。
何と若々しい声、振る舞い。
釣りは人を若くするのだ。
ここで初めて名乗り合った。
金沢の公務員さんなのだそうだ。
彼も明るくなって私がゴロスケだと言うことに気が付いたらしい。
このブログを読んでくれているのだとか。

明るくなってアタリの方は突然パタリと遠のいた。
あれだけのアタリがである。
イカたちが突然姿を消したようであった。

前回は明るくなってもなんとか釣れた。
考えられるのは海の荒れである。
前回は荒れていた。今回は凪である。
潮も悪くないし、そのくらいしか考えられなかった。

贅沢ではあるが、釣れない状況も新鮮ではあった。
釣れないところを釣るのが腕であろう。
エギの色やサイズを替えてみたり、レンジを変えてみたり、方向を変えてみたり、シャクリを変えてみたり、いろいろやってみるが
やはり釣れないのである。
腕がないんである。

先客さんも粘っていた。帰るきっかけが見つからないという感じ。

一時間半粘って、小さいの数匹。みんなリリース。


諦めた。時間は8時過ぎ。

先客さんが釣果を見せてくれる。
50杯は釣っただろう。
こんな釣果は初めてだと嬉しそう。



私のクーラーも前回につづき満杯。




また重いクーラーを背負ってヒーフーハーフー崖を登った。

そのうちまたどこかで会いましょう、よろしく。
と挨拶交わし先客さんと別れた。
なんだか清々しい人であった。

帰り道、村々世話になっている友人のところに立ち寄り、イカを配りながら帰った。

キープしたやつを数えてみると52杯だった。
15杯はリリースしたから、70杯近く釣り上げたことになる。
前回よりさらに多く釣ったことになるが、前回より時間が長かった。


ともあれ私のイカ釣りの数の記録である。





ワンキャスト、ワンヒット。月の下の元気なイカたち。

2012-10-04 | アオリイカ
満月を過ぎた月が出ていた。
なんだか胸騒ぎがした。

早朝暗いうちに釣りに出た。
昨夜の晩飯後眠っちまって目が覚めたら2時、もう少し寝ようと思ったが眠られず
準備をして少し早いがそのまま家を出た。

輪島の磯である。
現場に着いたのは3時半。
秘密の場所でもないのだが、流石にウイークデイのこの時間は誰もいない。

釣り座に立つと波は1~1.5メートル、適当に荒れて頭上の月が煌々と海面を照らしていた。
軽い追い風、釣りとしては悪くない状況だ。

しかし、この時間帯はあまり釣れたことがない。
勝負は朝まづめ、それまでの2時間、月でも眺めながらのんびりやろう。
そう考えていた。

エギもなんとなく選んだ古いタイプのエギ王Q(私はこの古いタイプが好きなのだ)オレンジ赤テープ3.5号を付けてキャストした。

ところが、である。

一投目からヒットした。
まあまあの17センチ。



ふむ、調子いいではないか。

で、二投目、
同じ方向。
カウント30、水深8~10メートル、着底を確認して大きく二段しゃくり、続けてパンパンパンと軽いダート、暫くフォールさせ再び軽いパンパンパン。時折二段しゃくりを入れる。その繰り返し。

と、またヒット。



同じサイズ。
あんらら、この時間に珍しい。

三投目・・・・
またヒット。



四投目、
またまたヒット。



最初は運良くと思っていたが、
どうもそうではないらしい。

五投目、六投目、七投目みんなヒットである。


こいつは今期初の20センチ。





遠くでバラしてもそのまま続けると途中でまたヒットした。



まさしくワンキャストワンヒットである。

一体どれほどのイカがいるのだろう。
目の前の海のいたるところにイカたちがいるのだろうか。

で、浅いところを狙ってみるとやはり掛からない。
中層も駄目である。

ともあれ、底を取り、そのレンジで引いて来ると確実にヒットするし
そのパターンを守っていればヒットが続くのである。


強い引き。20センチオーバー。



方向もおおよそ正面。大きくズレない限りヒットしてきた。

ときおり空振りはあるものの、80パーセントは乗って来た。

一体どれほど入れ食いが続くのだろう?
普通30分続けばいい方だろう。

しかし、続くのであった。

エギも最初のやつだけ。
アタリが止まれば替えるつもりだが、その必要はなかった。

時計を見ると5時であった。
すでに1時間半、入れ食いは続いていた。

勿論こんな経験は初めてである。
なんだかな、嬉しいというより、不思議だった。
なんでこんなにヒットするのか?

月のせいもあるのだろう。偶然、イカの群れがやって来たのか?
何故釣れないのか?というのはいつも考えることだが
何故こんなに釣れるのか?というのはあまり考えたことがない。
少々、頭が混乱する。

しかし、ワンキャストワンヒットは続くのであった。

気が付くと、周囲が明るくなっていた。
背後の東の山あたりから日が昇りかけていた。

でもまだ続いた。






しかし、6時、朝日が顔を出してから、すこし勢いが鈍って来た。
80パーセントが50パーセントに。
50パーセントが30パーセントに。
朝まづめの逆である。

すでに、クーラーボックスは満杯状態になっていた。

6時半になって突然風向きが変わった。
追い風から右前方からの向かい風に。それも強い。風速5メートルか。

前方の釣れていたポイントにエギを運ぶことが出来なくなって来た。
すると途端に釣れなくなった。
波も1.5~2メートルと強くなり、時折波しぶきが背中に掛かった。

もう十分、帰ろうか、とも思うが
しかしだ、釣れなくなったから帰るというのはどうもシャクに障る。
この状況でなんとか釣ってみせよう。それが釣り師ではないか。

風上に向かってフルキャストしてもエギは飛んでくれないし、近場にいいサイズのイカはいない。
ならばと左方向にキャストすると、少しは飛んでくれるがラインは大きく膨らんでエギが沈まない。浅いところにもイカはいないようだった。
仕方ないのでさらに左手を狙ってみる。少しは距離が出るので、ラインを水面に付け、なんとか長い時間待って深場に沈めてやると時折ヒットした。
しかし、ヒットするのは左手の磯際であってなかなかいいサイズが出ない。
要するに、一番イカが溜まっている前面の遠めの深場に届かないのだ。

やはり無理か、と諦めかけた時、
前回ここで一緒になったK名人が糸錘を巻いて投げていたのを思い出した。

バックの中を捜すと、あった!糸錘。
糸錘は常に持ち歩いていたが、これまで使ったことがなかった。
なんだかバランスが悪くなりそうで、いつも考えの外であった。

しかし、この際、やってみよう。
実験である。

エギ王Qは糸錘を巻くのに都合がいい。
やはり古いタイプのピンクに糸錘をぐるぐる巻きにした。
4重に巻いたので2~3グラム重くなったろう。

正面にフルキャストした。
案外飛ぶではないか。たった2~3グラム重くなったくらいで。
ラインは膨らむが、それでも沈んでくれるようだ。
カウント40~50、それでシャクリを入れる。

と、


(糸錘4重巻き)

その後も入れ食いではないが、いいところに沈ませることが出来れば釣れないことはない。






おお!!糸錘の威力よ!
と糸錘の偉さを思い知ったところで釣りを終えることにした。

まだ、やれば釣れるが、もうクーラーボックスに一杯たりとも入らない。

8時半だった。

バッグとクーラーを背負い、崖を登るのに一苦労、息は切れ、汗びっしょりかいちまった。

帰って数えてみると40杯。10杯はリリースしたから50杯は釣り上げたのだ。
これまで40杯というのは何度かあるが、こんな短時間では経験がない。
お陰で村の近所と遠方の友人にクール宅急便でおすそ分け出来たのだった。


しかしなあ、

なんという猛烈な、シアワセな朝だったか。


メモリアルな釣りであった。