永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

雨のスズキ釣り              6月18日

2010-06-20 | スズキ
メバルを釣りに行った明くる日、突然O君がやって来た。いつもの人なつこい笑顔である。

仕事で奥能登に来た帰りだと言う。
展覧会に出かける前に彼のフィールドで一緒にスズキを釣ったが、帰ってきたらまたやろうと約束していたのでグッドタイミングだった。

仕事部屋に座るや否や釣りの話である。彼の話は聞いていて楽しい。
毎日のようにスズキを釣っている彼ならではの実践話はとても参考になるし、話自体に躍動感があり熱いのである。釣りへの熱情が人間の皮を被っていて、その皮が内側の熱情のあまりの圧力に張り裂けんばかり、というのが彼ではなかろうか。

で、早速、次の日に釣りに出かけようと言うことになった。

さて、次の日であるが、午後から雨になった。
待ち合わせの夕刻に近づくにしたがって雨は強くなるようであった。

雨か・・・・ふむ。
「雨がバンバン降っているが、そちらはどうか?」とメールを送ると
「こちらもぱらぱら降っていますが、やるきなら僕は付き合いますよ!!」と返ってきた。
その意気に雨も蒸発しそうだ。小生が行かなくとも、独りでもやりそうである。

薄暗くなって、降りしきる雨の中、ポンコツハイエースを走らせた。

待ち合わせ場所に少し遅れて到着すると、0君がやはり笑って待ってくれていた。
もうひとり、ハッサク君も来ていた。
馴染みのメンバーである。
早速それぞれウエダーを付け、ロッドを握り磯へと向かう。
雨は小振りになって、さして気にならない程度だった。
少し雨が降っている時の方が活性が高いと小生は思っている。
ちょうどいいではないか。

真っ暗な磯、水の中を歩いて進む。
ヘッドライトで足元を照らすが、凹凸につまづいて転びそうになりながら、
前進する。ゴリが慌てて逃げていくのが見える。綺麗な海である。

それぞれが一番前の適当な岩の上に立ち、キャストをはじめる。
目の前の海はところどころ岩が突き出しているくらいであまり変化のないオープンな海である。ベタ凪で小雨のせいか、水面がぼうっと靄っておりちょっと幻想的でもある。
なんだかいい感じ。
数日前、O君が80センチを上げたポイントらしい。
デカイのと出会いたかった。
この幻想的な海を割って怪物のようなやつが出現するのである。
想像するだにワクワクして来る。

先ずは遠方の回遊を狙って、ヨレヨレ68、13グラムをフルキャストする。
このプラグはとにかく良く飛ぶんである。
全体が浅場なので竿を立てての早巻き、表層を走らせる。もうグングン巻く。
前回は一投目でヒットしたが、今回はどうやら状況が違うらしく全くアタリがなかった。

10メートル横でキャストしているO君もアタリはないと言う。
「潮が動いていないみたいですね」と彼。

しかし、流石O君、暫くすると彼のロッドはしなっていた。
「来ましたね」
「でかいか?」
「そうでもないっす」
しかし、取り込んでみれば70オーバーだとか。

案外近くでアタックしてきたというので、プラグをスライドスイムに替えて、ゆっくり引いてみる。一度、ガツンとアタックして来るが乗らない。
そしてその後はサッパリである。

近くを探って食わないということは、遠くにいたやつが追っかけてきて近くで食いつくのかもしれない。そう思い、再び、ヨレヨレで遠くを狙ってみる。

右45度の角度でフルキャスト。
やはりグングン巻く。すると、ゴンと来た。
合わせると重く乗った。魚が必死に逃げ惑う振動が直に伝わって来る。
とにかく重かった。リールを巻くがなかなか巻けない。9.6フィートが折れ曲がる。
デカイかもしれない。
全身で思い切りロッドを引く。その瞬間、ガクッと抜けた。あんらら~~。

「惜しかったですね」
様子を見ていたO君が慰めてくれる。

暫くして再び彼にヒットしたようだった。
「小さいのでリリースします」と彼。

その後はアタリは全く途絶え、移動することに。
遠くでやっていたハッサク君も釣れなかったらしい。
煙草を忘れたので、一度車に戻った。
小生も煙草は好きだが、O君もそれがないといけないらしい。
「煙草を吸うとテンションあがりますから」と笑う。

小休止、煙草一服。
雨は小降りのままだった。

さて、試合再開。

海沿いの道、先ほどのポイントを過ぎ暫く歩いたところで磯に入り再び水の中を歩く。
深くなったり浅くなったり。
深いところは腰ほどの水深。
底の地形をよく見て歩く。つまずかないように。
ヘッドライトに照らされる澄んだ水が波紋を作り美しい。

そしてまたそれぞれが適当な岩の上に立ち、キャストをはじめる。
前方には突き出た岩もなく、ただ広く浅い海だった。
最初のポイントよりさらに浅い感じなので、王道スライドスイムを投げ、ゆるりと巻く。

左手20メートルにハッサク君、右手50メートルにO君である。

数分して、ハッサク君が声を上げた。
「やっときましたあ~!!ばれるなよ~!!」
ハッサク君らしい、微笑ましい声である。

O君もヒットしたようであった。

小生にも来た。が、直ぐにバレてしまう。

その後、アタリはなく、なんだか釣れそうな雰囲気がないので、早々に移動することに。

歩き始めると、ハッサク君も移動するらしく向こうから歩いてきた。
彼のストリンガーにはさして大きくはないものの2匹が繋がれていた。

「今日はおれ、ボウズかもしれんなあ」と言うと
「まだまだこれからっす」と彼。
軽い口調だが、優しいんである。

O君がやっている岩を越えて暫く歩くと、軽く湾になっているところに出た。
湾の左手の岩に上がってみる。
前方左手には大きな岩が突き出し、右手には小さな岩が顔を出している。
なんだかいい雰囲気。ここでじっくりやってみることにする。

ハッサク君は湾の右手に陣取ったようだった。

全体に少しは深いようなので、先ずはヨレヨレ68を正面にフルキャストし、ロッドを立てて早巻きである。あくまで表層を走らせる。
それでもあちこちに沈み根があり、時折根掛かりしそうになる。
だが、ラパラチタニウムブレイド1.5号は28ポンド、少々の根掛かりは大丈夫なんである。

扇形に右へと打っていき、右手に突き出した岩の近くでガツンと来た。
思い切り合わせると今度はちゃんとフッキングしたようだった。
重く激しい手応え。スズキの手応えである。
もうグングン巻く。バレる隙もないほどに。
近くに来て左右に走る。魚も必死である。
右手でロッドを保持し、左手で背中の玉網を抜き取る。
二三度空振りして、やっと玉網入れ成功。
強い引きの割には小さくて、60センチクラス。
しかし、なんとかボウズは逃れたのだった。



その後の一投目、左手の岩の近くにフルキャストし、巻きはじめたところでゴン!!と来た。
合わせると乗った。またグングン巻く。
「入れ食いじゃないですか」と近くに移動してきたO君。
40メートル向こうの海面に波しぶきがあがる。
エラ洗いするやつはでかくはないが、すこぶる元気はいい。
力の限り走り、その引きは重く激しい。
魚の躍動がそのままロッドに伝わって来る。
それが楽しい。
取り込んでみると、やはりまた60センチクラス。
最近のアベレージサイズらしい。



その後、入れ食いどころか、パタリとアタリはとまった。
しかし、移動する気にはならなかった。
移動してもここよりいいところに出会う感じがしなかったし、まだ釣れそうな予感があったからだ。
O君たちはどんどん移動しているようで、遠くに離れてしまった。

確かに居着きを拾っていくにはランガンスタイルが有効なのだが
雰囲気のある自分の感覚にピタッときた場所ではじっくりとやってみたい。
粘るのは本来得意なのだ。

ハッサク君作の尺八ミノー80に替えてやってみる。
このミノーもよく釣れるのだが、当たらなかった。
で、またスライドスイムの登場である。

ジップベイツというメーカーは基本的に好きだが、このルアーは特に小生のお気に入りである。特別際立った特徴がある訳でもないが、いつもルアーボックスに入っていないと落ち着かない。ボンヤリとした信頼感。そんなルアーなんである。

ヨレヨレほど遠くに飛ばないが、ゆっくりと巻ける。表層をゆらゆらと泳がすのである。

シャローでのスズキ釣りにそんなに経験がある訳ではない。
この磯のこともまだよくは知らない。

とにかく、ヨレヨレの早巻きで遠くの回遊を狙うのと、スライドスイムのスロー巻きで近くの居着きを狙うというこの二本立てが今夜のテーマであった。

最初から、扇状に角度を変えながら打っていく。

と、右斜め45度方向、35メートル付近でゴゴンと当たった。
距離はあるが浅いところだ。
ロッドを立てリールを巻く。
またエラ洗い。水面で魚体が跳ねる。
小さいやつだ。
でも、ゴンゴン引っ張る。ロッドがグングンしなる。
いい感じ。
思った通り60センチに満たないやつだった。




その後、また沈黙。

雨が強くなりはじめた。
ヘッドライトの明かりの中、雨が太い直線になって海面に落ちてゆく。
そろそろ引き際か。

左前方の岩と左の磯の間を狙ってフルキャスト。
極めて浅いところなので根掛かりしないよう早めに引いていると・・・・ゴツン!!
合わせる。乗った。
こいつも元気がいい。
さっきのやつより重かった。
近くに来てさらに走る。
左手で玉網をとろうとするが、掴めない。
焦る。
バレるなよ。
やっと手が届き、玉網入れ。




その後、さらに雨が強くなり、終わりにした。

誰かに80センチは来るだろうとO君は言ったが、
結局来なかった。
しかし、スズキ釣りのあの躍動に満ちたやりとりは存分に味わえた。
釣りは楽しいのだ、と改めて思わせてくれた釣りだった。

また、前回もそうだったが、シャローの磯でルアーを一本もロストしなかったのは気分がいい。
少しはシャローでのスズキ釣りに慣れたのかもしれないな。

釣果はO君8本、ハッサク君4本、小生が4本だった。
プラスαトビウオが2尾。トビウオだってルアーにアタックして来るのだ。面白いことにヒットしてリールを巻くと、魚は海中からではなく、空中からやって来たりするんである。飛んで逃げようとするのを引き寄せるわけだ。







連れ合いの友人たちが明日やって来るので、是非彼らにスズキの刺身を食わせてやりたいと言っていたら、普段、釣ってもその殆どをリリースするO君が、小生が釣れなかったことを考えできるだけキープしてくれた。
結果、10本も持ち帰ることになった。
お陰で村の人たちや友人たちにも配り、勿論、連れ合いの友人たちにはたらふく刺身やムニエルを馳走でき喜んでもらえたのだった。
普通、スズキは魚屋さんにもなくてなかなか食べられない。今回のスズキは特別うまかった。


ところで、この10本のスズキをハイエースに積み込もうとした時、ちょっと中腰になり、腰に違和感、
嫌な予感が走った。

2日後の今、予感は的中、何年ぶりかのぎっくり腰なんである。
次の展覧会に向けてそろそろ仕事を始めなければならないというのに。
とほほほ。

楽しいことは続かないんである。
欲張ったバチが当たったんであろう。



北斗七星の夜               6月16日

2010-06-18 | メバル
大阪での二つの展覧会。その長い滞在から帰ってきた。
帰りに福井に寄り、つーさんとイカ釣りでもやろうと思っていたが、
生憎、タイミングが悪くそれも出来なかった。

福井はまだ親イカは釣れていないらしいが、相変わらず彼はデカメバルを釣り続けており、
独りテトラに立ち、延々と釣り続ける彼の背中を想うと、俄然、小生もやる気が沸いて来るのであった。

帰ってくるや荷物もほどかず、いても立ってもいられない気持ちで海へ向かった。

先ずはデカメバル本命ポイント、ライトフットの崖である。

海は凪ぎ、初夏の柔らかい風が後方から吹いていた。
空も分厚い雲が細い三日月を覆っている。
真っ暗。

まずはアスリートリップレスを付けて第一投、ゆっくりと引いてみた。
このポイントは凪で釣れたことはない。
しかし、手前磯際まで引いてきたところでガツンと来た。
おっと!!
ロッドを立てリールを巻く。案外重い。
魚は必死に根に潜ろうとするが、そうはさせない。
バラさないように気をつけて抜き上げる。
堂々とした魚体だった。
計ってみると27センチ。

いつもならここでそいつの写真が来るところだが、カメラを忘れてしまった。

一投目から来るとは、今日はいい日なのかもしれない。
しかし、その後はアタックして来るもののサッパリ乗らない。
ワームに替えてやってみるとかからないでもないが、20センチ弱の小さいやつばかり。
粘ってみる。
時折、25センチ弱がかかる。でもデカイやつはかからない。

・・・移動。

イージーテトラ。
ここは2.5グラムのジグヘッドにガルプでやってみる。
一投目、左テトラ際を狙う。
ココン!小さいアタリ。二度目のココンで合わせる。乗った。
重いが大したことはなかった。
26センチ。

その後暫くはどの方向でも頻繁にアタリがあり、柔らかく合わせると確実に乗って来る。
みな25センチ弱。
サイズが今ひとつだが、頻繁にアタリがあるのはやはり楽しい。
メバルの引きというものをしっかり感受する。

そして足元で一際でかいアタリ。ガツンと引ったくった。
沖へと走る。ロッドがしなる。
おお!!でかいぞ。
そやつ水面で跳ねた。スズキだった。
走るのをいなしながら、ゆっくりと引き寄せる。勿論玉網などない。
水際のテトラまで降りて、リーダーをとり、直接口を掴もうとした途端、激しく跳ねてジグヘッドが外れちまった。


その後、フグの猛攻で暫くアタリは止まったが、左方向テトラ際の底を丹念に探っているうち、わずかなアタリ。
でも乗らない。
しつこく同じところを狙っていると、また魚信。そこでストップして少し待つと案の定コンコンときて、次のコンで合わせる。
乗った。こいつは重く強く引いた。左のテトラの根に潜ろうとするのをロッドを沖に突き出し引き剥がす。
デカイぞ、心は踊る。

いち、に、の、さん!で抜き上げ、空中しっかりと左手でキャッチする。ここで暴れて落とすとそれまでだ。
頭に藻を被ったそいつは不敵な面構え。
藻の隙間からでかい目がこちらを睨む。
しかし、力の割には身体は小さかった。計ってみると26センチ。
尺クラスに違いないと思ったのだが。
まあ、こんな勘違いはよくある。


いつの間にか空は晴れて、水平線の上に北斗七星が傾いていた。天頂右を天の川が横切り、悠々と白鳥が羽を伸ばしている。
季節はすでに夏なのだ。

そろそろメバル釣りも終わりである。




釣果は27センチを頭に15匹キープした。