永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

お月さんとイカ釣りダービー

2011-10-15 | アオリイカ
昨年、輪島エギングダービーにエントリーし、中盤までは盛り上がったが展覧会で尻切れとんぼに終わっちまった。

今年も一応エントリーしたが、まだ一度も計量に行っていなかった。
計量の意味あるサイズが釣れていないのだ。

ダービーの締め切りは今月一杯、そろそろ計量しとかないとなあ、という思いがあった。

加えて、その日13日はまだかろうじて満月だった。予報は晴れ、風も悪くなった。
私はまんまるお月さんと釣りをするのが基本的に好きである。
翌日の午後からは天気は崩れ夜には雨になるという。

となれば、いざ!!出陣なのである。
満月のイカ釣りはなにがなんでも行かずばならぬ。のである。

夕刻、先ずは昨年のダービー、徹夜で頑張り27センチを上げたポイントに行ってみるが、既に先客が3人もいた。
その一人は毎年上位に居座るエギンガーさんであり、後の二人もダービーに参加している人に違いなかった。

諦めた。

移動する。
一度も行ったことがないが、以前から気になっている磯へ。
緩いカーブを描く湾の磯、岬のちょっと突き出た岩へ向かったが、生憎ここも先客が一人いた。
挨拶をし、邪魔にならぬよう隣の岩に乗った。
「釣れますか?」と訊いてみると
「一匹釣れたけど、その後一時間釣れません。」と大らかな笑顔で応えてくれる。
正直な人である。

いつも通り3.5号エギを正面の海にフルキャストする。
右後方からの追い風に乗ってよく飛ぶ。
潮が良く動くところらしく右前方に沖に向かって軽く潮目が出来ていた。

凪ぎに近い波、追い風で底に達するまでのカウントは45。
水深は10メートル強。
悪くない。

空は快晴、少し欠けた満月が右の山の端から顔を出し、磯を煌煌と照らしライトが要らないくらいだった。
イメージ通りの満月の釣りであり心は弾んだ。




釣れないというがタイミングが悪いだけだろう。

案の定、2投目足元の底で乗って来た。
足元だから小さいやつかと思いきや、そうではなかった。
胴長22センチ。今季最大である。



いや驚いた。
遠くから追っかけて来たやつに違いない。

その後もぼつり、ぼつりと掛かった。
数は出ないがサイズが揃っていた。
みんな20センチに少し足りないサイズ。
今年は全体的に小さく、20センチ弱は他のところではその日の最大サイズなのだ。




そのうち、先客はライントラブルでどうにもならない、頑張ってくれと言い残し帰っていった。
ならば、と彼の釣り座に移動する。
やはりそこがこのポイントでの一番の釣り座だった。どの方向へもキャスト出来るし、高さ、足場の安定感は理想的だった。

いつの間にか水平線にはイカ釣り舟の灯りが点々と並んでいた。
目の前の海を見ていると、なんだかデカイのが来そうな予感があった。

そして、数投後、予感は的中した。

中程の距離、底だった。
ラインのテンションが微妙に重くなり、少し待ってみると案の定そうっと引っぱるではないか。
少しラインを送ってやり、間を置いてクンと合わせるとカンナがしっかりとイカに食い込み、ロッドに重さが乗った。
いやその重さったらなかった。ロッドが激しくお辞儀を繰り返し、リールが自由に巻けなかった。

でかいぞ!!
バレないように慎重に事を進める。イカの強烈なジェット噴射をロッドでいなしながらゆっくりと寄せて来る。
水面に浮上したそやつは何度も水を噴射した。
いやあ、いい光景。

足元まで引き寄せ抜き上げにかかるが、ちょっと心配になった。
しかし、玉網を持って来ていない。
小さめのスズキを抜き上げる要領だ。
ロッドのしなりを利用して一気に抜き上げ、ロッドに全重量が掛かる前に磯の上に引き上げた。
なんとかうまくいった。




25センチを越える堂々としたアオリイカだった。
20センチクラスとは次元の違う大きさである。

いや、一人でコーフンしちまったぜ。
ここに来て正解だったとつくづく思った。

これで22センチと25センチになった。
ダービーは三匹の合計である。
後一匹20センチオーバーが欲しかった。

時間はまだ、たっぷりとあった。


しかし、その一匹が来なかった。

ぼつり、ぼつりとは来るものの20センチを越えない。

時折、アカイカ(マイカ)も来た。





つーさんのイカプラスの記事に刺激されて、時折潮目あたりの表層も狙ってみるが掛からない。
そういえば表層で掛かるのは荒れている時だったような記憶がある。

12時までには余裕を持って帰れると思っていたがそうはいかなかった。

粘るうちに12時は過ぎ、過ぎるとアタリは全く途絶えてしまった。

帰ろうかと思った。
3匹目は18センチでもいいではないか、そのうちデカイのが釣れたら交換すればいいのだから。
だが、一度帰って、計量のために再び輪島に出て来るのは面倒に思えた。
我が家は輪島市街地から20キロ離れた山の中なんである。
このままのんびり朝までやって、早一番、塩谷釣具で計量してもらおう、そう思った。

そのうち眠くなって来た。
だらだらとキャストとシャクリを繰り返していても釣れる訳がない。

岩の上で寝ることにした。
風が当たらないようくぼみを探し身体を横たえる。
フードを被れば思いのほか寒くはなかった。

少しかけた満月がそんな私を見て笑っている。
月に寄り添うように金星が輝き、西の低いところにはオリオン座が傾いていた。


一時間も眠っただろうか、目が覚めるとスッキリとして再び釣り座に立った。
海は完全に凪ぎ、風も緩くなっていた。
気分新たにキャスト再開。

一投目にヒットしたが手応えが可笑しかった。
生体反応がなく藻の塊を引いているようだったが
足元まで来て突然激しく慌てるようにジェット噴射を始めたのである。
ははんと思った。
こいつ、足元まで来て初めて釣られたことに気がついたんだ。

で、このへんなやつ、20センチを僅かに越えていた。



しかし、へんなやつはこいつだけではなかった。
その後、小さいのが数匹釣れたが
みんなそのようなぼんやりとした活気のない反応であった。

要するに、イカたちは眠っていたのだ。
これじゃあ釣れる訳がない。

ここは12時を過ぎるとイカたちの就寝時間なのだ。
そう思うと俄然やる気がなくなりもう一度岩の上で寝てしまった。

目が覚めると朝だった。
朝まづめに期待してみたが、イカたちはまだ寝ているようで早々に切り上げ塩谷釣具へ。

計量の結果、26センチは850g。あと22センチと20センチ、三匹の合計は1806gとなり
いきなり暫定トップに躍り出たのであった。
うっひゃ~~、トップ。

自慢ではないが、私はこれまでの人生で優勝とかトップとかの経験が皆無である。
学校の成績でも運動会でも何かのコンテストでも大したことはなかった。(体育実技と美術だけはまあまあだったが。)
暫定であっても、トップという言葉の響きは新鮮で嬉しい。

しかし、すぐに抜かれるだろうな。

25センチクラスがあと一匹釣れれば上位入賞、2匹だと本当に優勝するかも。

ダービーの締め切りは後2週間。
輪島の熱き釣り師たちのように毎朝、毎晩とはいかない。
しかしだ、ここは静かに狙ってみるか。

人生初の「優勝」を。





計測の三杯。