永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

ポッパークロダイは愉快だな。                          7月19日

2011-07-20 | クロダイ
釣り友O君と朝まづめのクロダイ釣りに出かけた。

7月のこの時期、メバルが終わった頃、ルアーでのクロダイ釣りのシーズンが始まる。
昨年はこの釣りをやらなかったので2年ぶりである。

O君からの誘いに一も二もなく乗ったのは、この釣りが極めて面白いからだ。
トップウォーターでの釣りである。トウッチでのルアーの動きやルアーに食いつく魚の様子もよく見えてそれは楽しいのである。もう想像するだにワクワクしてくるではないか。

午前4時、夜の帳が開け始めた頃、待ち合わせ場所に到着。
間もなく軽トラに小さなボートを積んでO君がやって来た。いつもの笑顔である。ほんと男というものは釣りとなるともう手放しと言うか、少年の笑顔になるのだ。

さて現場に到着、田んぼの畦を歩き二人でボートを海辺まで運び、道具を積んでいざ乗り出した。
軽トラに積めるくらいのサイズのボートである。これで二人乗れるのかと思ったが、意外とそう窮屈な感じはしない。只、キャストする方向は同じか逆かそのふたつに限られるのだが。
勿論、オールで手漕ぎであるがそれがまたいいのである。

基本的に遊漁船に乗っての釣りは釣りとは思っていないが、このような小さな手漕ぎボートでの釣りはまずお金がかからないこと、そしてポイントも道具も自分で考えるということから私の釣りの範疇に入ると思っている。陸からの釣りとそう変わらない。

水深2~4メートルの浅い海である。底にはアマモなどの海藻が繁茂し緩やかな潮の流れに任せて揺れている。凪の奇麗な海である。



先ずはポッパーをキャストする。
軽くトウッチを入れると、シュポ!シュポ!!という音を立て、水を弾きながら動くのだが、その様子がいかにも「ここだ、ここにいるぞ」と周囲の魚たちに知らせているようで面白い。

と、何かが水面を跳ねた。
ボラか、と思ったが
「シーバスですね」とO君。
スズキもボラのように魚体を全て海面から出し跳ねるのである。
ただし、その様子はボラとは違いジャンプ後、イルカのように頭から海面に突っ込むようだ。

その方向にキャストしてみる。
と、ガバッとスズキがジャンプ、ルアーにアタックした。
それは何とも素敵な光景だった。
よく釣具ショップのロゴになりそうな光景。魚がジャンプしてルアーにアタックしている、その図柄そのままの光景だった。

「でかいですね」とO君。
ロッドは絞り込まれ、ドラグが出てゆく。
ロッドはメバル用だが、このディープ83は少々のスズキは大丈夫。
よし!と寄せにかかる。
激しく走るスズキ。いい感じ、と思いきや
そこで、すこん、と抜けちまった。

まあいい。
今日はクロダイ釣りなのだ。

と、気持ちを入れ直し、クロダイに集中。
ボートはアンカーなるものがないので、自然にゆっくり流され、船も回転するわけで自ずとルアーが着水するポイントも違ってくる。これがいい。

暫くすると、出た!!
魚が出る、という表現があるが、まさにトップでの釣りにはピッタリの言いようである。
ガバッと出る。下から来てポッパーに襲いかかった。
そしてうまく乗った。

クロダイの引きは独特である。
鋭くて激しく、強い。もう最高の手応えである。
銀色の魚体を翻しながら上がってくる。
O君が玉網ですくってくれる。
40センチオーバー、いい型だった。
「とにかく釣れましたね。」と喜んでくれる彼である。




その後、出て来るものの乗らない。
途中でバレてしまう、というのが続いた。
「ルアーでのクロダイ釣りはバラシが多いです。」
「口が小さいですからね。」と彼。
納得。

しかし、魚がいないわけではない。

オールで漕いで少し場所を移動し、またキャストを繰り返す。

30分も経ったろうか、
O君と喋りながらルアーを引いていると、出た。
乗った。でもまたバレるか、いやバレなかった。
しっかりフッキングしていた。
こいつもいい引きだった。



その直後、また出た。
こいつは大きかった。
始めはスズキかと思うほど重く、強かった。
何とか引き寄せ、魚体が見えた。やはりデカイ。よし。
そして、やつの顔が見え、身を翻したその瞬間、
カクン、と抜けちまった。

バラシが多いとはいえ・・・・・残念無念。


その後、アタリは途絶え、また移動。

海底は藻から沈み根が多くなった。潮の流れが強くなったとみえ、ボートが流される速度が速くなった。

今回、気がつけば不思議なことが一つあった。
アタリが私に集中しているのである。どういう訳かO君にアタリが来ない。
はっきり言って私はクロダイ釣りに関しては殆ど初心者であり、彼はスズキと同様猛者である。このポイントも彼のフィールドであり、釣り方も熟知している。
なのに、である。

私のやり方はよく分からないということもあって、とにかくアタリのあったルアー(ジャクソン、RAポップ、シラスカラー)を只ひたすら投げ続け、同じリズムでトウィッチし続けているだけなのである。
トウィッチのリズムも少し速すぎるらしい。もう少し遅い方がいいと彼は言うのだが、せっかちな性格なのか、つい速くなっちまう。
しかし、この時はその私のやり方、タイミングがピッタリと合っていたのではないか、と彼は言う。
いや、私の投げるルアーがたまたま魚の目の前に落ちただけ、とも思えるのだが、ともあれ、彼にはバラしどころかアタリさえなく、私だけに当るのである。

3匹目も私に来た。





流石にこうなると、彼も少しは焦るんである。いろいろと考えルアーを次々に交換したりしてやってみる。

と、やっと来た。クロダイ用のペンシルであった。
ガバッと水面が盛り上がるように彼のルアーに飛びかかった。
「やっと来ましたねぇ、ボクにも」と笑う彼。
しかし、バレてしまった。デカイやつだったが。

その後も彼に来る。
でもやはりバラしてしまう。

その後は二人とも時折ヒットするものの、乗らなかった。

気がつけば、ボートは相当遠くまで来てしまっていたので
帰りながらの釣りとなった。

日は高くなり、時刻も8時を回っていた。

「クロダイの時合いは決まっていません。いつでも釣れたりします。」
と彼は言うのだが、この朝は日が高くなるにつれてアタリは遠のいた。

ここで一息、朝飯の握り飯を頬張り、お茶を乾いた喉に流し込む。
凪いで穏やかな海、時々落ちてくる雨粒が涼しくて気持ちよかった。




半分くらい戻ったところで、突然のように私に来た。
ルアーが突然姿を消し、ロッドが絞り込まれた。
強い引きだったが、近くまで引き寄せ見えた魚体は引きの割にはデカくなかったがしっかりとフッキングしていた。





暫くして、とうとうO君に来た。
「やっときました!」

引き寄せる彼。バレるなよ。
今度こそはしっかりフッキングしていた。
しかし・・・
あがったのはクロダイに違いないが・・・うっはーー!!



もう苦笑いの彼であった。


その後はアタリは途絶え、我々の釣りは終わったのだ。

結局、私4匹、O君ゼロ、ということになった。うっはっは。
偶然だとは思うが、悪い気はしない。
まあ、たまにはこんなこともあっていいではないか。

いつもは逆なのだから。

クロダイのデイゲームは実に楽しい。
近いうちにまたやろう、と別れた。

その夜は遠方からの来客もあり、黒鯛の刺身、塩焼きの大宴会。
海が綺麗なせいだろう、もう感動の美味さだった。


O君ありがとう。

でした。



(最大42センチ)






テトラのてっぺんで。                           7月8日

2011-07-10 | メバル
山道から里道に出て海に出るまで暫く走らなければならない。
窓を開けると田植えが終わった田んぼの水面を渡って来る初夏の風が気持ちよかった。

海に出るとまず波の様子を見る。
その夜は2メートルの波ということだったが、実際は凪いでいた。もうベタ凪に近い。

ここまで来ると引き返すわけにも行かず、ポイントに向かって海岸線を走る。
地形によって波の高さは違って来る。それを期待したが、どこまで走っても凪ぎに変わりはなかった。

しかし、このところの新ポイント、高いテトラの下の海は違った。
周囲は凪いでいるが、ここだけはサラシが立っていた。
うねりがあり、それが海面から顔を出し細長く横たわる磯に当り、テトラと磯に囲まれたその海域はサラシが広がり、波立つ海面には活気があった。

先ずは前回爆釣であったガルプ、ジギングブラブ2インチを付けて前回のヒットポイント沈み根辺りに投げてみる。
すぐに食いつくと思っていたが、食いついては来なかった。
前回良かったから今回も、というわけにはいかないようだ。
メバルは特にその場その時でパターンが違ったりする。
その時のベイトに由るのだろうが、よくは分からない。

そのうち、ジギンググラブは無惨な姿になってしまう。
またフグである。
困るのであるが、諦めない。まだ始めたばかりなのだ。

ならばと、自作のカブラを投げてみる。ここでプラグを使う気にはなれない。テトラに擦れてすぐにボロボロになってしまうからだ。
しかし、カブラもダメだった。こいつを使うには少し荒れ過ぎなのかも知れない。

ふと、カルティバのロックンベイトが思い浮かんだ。
人気がないようだが、気に入っているのでいつもバッグに入れてある。
尻尾を小刻みに振りながら泳ぐ可愛いやつで、フグにも強そうだ。

左手は宙空に突き出したテトラが邪魔をして投げにくいのだが、ラインが擦れるのを覚悟で敢えてその方向へ投げてみる。
着水とともにゆっくり引いて来る。
いきなりゴツンときた。
合わせると重さが伝わって来る。
ゴリ巻きして、抜き上げである。
えいやっ!!とリールを巻いたが、海面を離れると重くてままならない。
それでも巻くが、中空に突き出したテトラをなかなか超えてくれない。
テトラの腹を擦り引っ掛かり、下がり、また上がって来る。
と、その時、カクンと抜け落ちてしまった。

ああ!!と思う。
またである。


願わくは魚がそのまま海に落ちてくれることだ。
まだ巻き上げはじめたところだったし、おそらく大丈夫だったろう。
そう思いたい。

おそらく、柔らかい口の脇にフッキングしたのであろう。
この高さを落とさずに抜き上げるには堅い上顎にしっかりとフッキングさせる必要がある。
そのためには向こう合わせではなく、アタリに集中してこちら主導で掛けねばならない。


どうやらこの方向にはフグはいないようだった。
或はロックンベイトがお気に召さないのかも知れない。


すかさず、次のキャスト。同じ方向。同じライン。
ヒット。
今度は猛烈な早さで巻き上げた。
25センチ。
フッキングを確かめる。なんとか上顎に掛かっていた。




その次もガンときた。
こいつは重かった。
今度は心して巻き上げる。
テトラに引っ掛かりそうになり、一度落ちかかるが、なんとか巻き上げた。
デカメバル用のルナキアでも大丈夫かと思うほど折れ曲がった。
こいつはしっかり上顎にフッキング。




ひょっとしてと、バックからメジャーを出して、暴れる魚を押さえつけながらなんとか計測写真を撮る。
しかし、28センチを僅かに越えたに過ぎなかった。
前回、計測写真はその場ですぐ撮らんといかんなあと痛感したわけで、気を入れてやってみるとこれである。





その後もヒットは続いた。

26センチ。



25センチ。



そしてまた、一際重いやつ。
よし!!今度こそはと期待しながら抜き上げた。




測ってみる。

しかし、また28センチであった。





その後、遠くを狙ってフルキャストすると、向こうの磯まで届いて根がかり、
ラインブレイクとなってしまった。
テトラの上でラインを編み直し、再び釣りに戻ったが、
何故かアタリはぴたりと止まってしまった。

フグがいるからか?
そうではない。

フグはいなかった。
しかし、どの方向に投げても、ワームを替えても、
反応はなくなった。

何故か?暫くテトラに座り込んで考えた。
いろいろ考えられるが結局のところ分からない。
突然スイッチが入って爆発し、突然スイッチが切れて静まり返った。
そういうことだ。

メバルの時合いは短いとよく言われる。
ほんとそうなのだ。
時合いは祭りで、終われば後の祭りである。
先程までの熱気と興奮は何だったのか、
終わった後の一種形容し難い寂しさもメバル釣り独特である。

今回も怪物に出会えなかった。
でも、まだ諦めるわけにはいかない。
ここには必ず怪物がいるのだし、
この海はまだメバルたちの宴が続いているのだ。


空には星はなく、暗闇と波のざわめきだけである。
初夏の柔らかい風が吹いていた。



しかし、私は深夜独り、こんなテトラのてっぺんで何をしているのだろう?


なんだか可笑しかった。






怪物を狙う。                  7月4日

2011-07-06 | メバル
昨夜から、嵐のような風が吹き、叩き付けるような激しい雨が降り続いた。
もう春一番とは言わないし、夏一番というのも聞いたことがないが、この嵐は確かに夏一番であった。

午後遅くになってパタリと風は止み、雨も上がった。

ふむ・・・
こんな時は、釣りに出よう。
ふと、そう思った。なんだか予感めいたものがあった。

怪物に出会えるのではないか、と。

晩飯後、遅い時間に出かけた。


9時過ぎ、先ずはこのところご無沙汰のポイント「イージーテトラ」から始める。
ここは今年の始め尺が二匹釣れたが、その時海は釣りが難しいほど荒れていた。
あれほどの嵐の後である。あの時のような荒れを期待したが、
1メートル弱、少々波立った凪ぎといったところだった。

しかし、ともあれ投げてみる。
尺ヘッドDにビームスティックを付け、まずは底をスローに引いてみる。
数投目、左テトラ際を通していると、ガツときた。
合わせた途端ドラグがどんどん出る。

あらっ!! ドラグを締めるのを忘れていた。慌てて締める。
ドラグを締めている間、根に潜ったようで引いても動かない。
で、テンションを緩め、少し間を置き、ゆっくりと上げるように引くと重さが着いて来た。
うまくいった。案外の重さ、一気に寄せる。
おっと、28センチ。このポイントでは上出来サイズだ。






案外いいのかも知れないと気分は一気に上昇するのであったが、
その後、さっぱり。

折角の尺ヘッドDだからと、ワインドでやってみるがうんともすんともである。
今のところ、ワインドの効果が実感出来ない。

そのアタリのなさは、魚は釣れたやつしかいなかったのでは、と思われるくらいであった。
勿論、小さいやつは時々掛かるのであるが。

早々に諦め、怪物を狙って本命ポイントへ。

先ずは定番の釣り座。
風は緩やかな追い風、悪くない。
波は1メートル。荒れ気味の凪である。

活性がなくはないのだが、
でかくて23センチ。





前回、取り逃がした大物が食いついた底も狙ってみるが、アタリすらなかった。


この荒れではこんなものかと早々に諦め
さて、新ポイントのテトラへと移動。

釣り座に立って下を見ると、やはり高いなあと思う。でも高いからこそ広範囲を攻められるし、障害物もあまり気にならないという利点もある。
下の海はそう荒れてはいないが、何かいい雰囲気があった。海面がソワソワというか、ザワザワと囁き合っているようで、こちらも胸騒ぎがするのであった。
風は緩い向かい風。飛ばしウキをキャストするに殆ど問題のない風だった。
ここで怪物を狙うために用意した飛ばしウキリグをセットする。
ラインはラパラマルチゲーム0.6号14ポンド、リーダーを3号にし、ジグヘッドはカルティバ、クロスヘッド2gに以前買って使わなかったガルプのブラックバス用ワーム3インチ(8センチ)を付けた。
まずは正面に投げてみる。思った通りしっかり飛んで放物線を描いて下の海面に落ちてゆく。ゆっくり、ほんのゆっくり引いて来る。くるか・・・・・・・

いや、こなかった。
暫く方向を変えやってみるがアタリなし。

で、ジグヘッドとワームを変えてみる。少し小さいやつに。
自作ジグヘッドサイズ2にガルプジギンググラブ2インチ6センチ。テールのクルリと曲がったやつだ。

正面少し左には沈み根が数カ所かたまってあるのだが、根がかり覚悟でそのラインを通してみる。
と、がっつん、と引ったくった。
15メートルをグングン巻き上げる。
23センチ。小さい。




そして次のキャスト。
また来た。
引き寄せ、巻き上げる。

巻き上げにかかると、その重さがよく分かる。
途中、テトラにどでん、どでんと引っ掛かりながら上がって来るのであるが、それにしても重かった。
落ちるなよと祈りながら、えんや、えんやと巻き上げる。
上がって来たやつは思った通りでかかった。
どでんとしたやつだった。

早速、バッグからメジャーを出して測ってみる。
テトラの上で暴れる魚を計測するのは難しい作業である。
足元は丸い曲面であるし、下手すると魚は滑り落ちてしまう。
魚を左手で押さえ、右手でメジャーを添えるのである。
勿論、写真を撮る余裕はなかった。
尺であった。30センチをほんの僅か超えていた。



ジグヘッドを見ると重さに耐えかねたのか伸びていた。
この高さを暴れながら上がって来たのである。無理もない。




思った通り、ここには大物がいた。
しかし、狙っているのはそのレベルではない。もっと強烈な引き、重さ、怪物だ。


次のキャストも続いてヒットした。
24センチ。




その次も。
26センチ。





もう入れ食いであった。




そしてその次。

こいつも重かった。
再び、メジャーを出して計測、29センチ。
先程の尺より幾分小さいものの、全体は体高が高くてこいつの方が形はよかった。




しかし、その次のキャスト、ロッドを振り抜いた瞬間、ラインが切れてルアーは闇に消えちまった。
おそらく、ガイドにラインが絡んだままキャストしたのだろう。

しかし、入れ食いである。ここで釣りを止めるわけにはいかない。
怪物への期待はまだ膨らんだままである。

ラインを組み直し、リグを作り直し、再びキャストを始めた。


しかし、

先程の入れ食い活気は何処へやら、忽然とアタリは消えてしまった。
たった数分しか経っていないというのに。
何者かにばっさりと切り捨てられたかのような理不尽さであり、すでに祭りの後であった。


諦めきれずヒットポイントをしつこくやっても時々当って来るのはフグばかり。
一発でちょん切られるワーム。ああ、勿体ない。

あっ、と思う。

フグなのだ。

そういえば、フグがうろつくポイントでこれまでメバルが釣れたことがない。
フグたちがやって来て海面を支配すると、メバルたちはフグと争ってまでワームに食いつこうとはしないのだ。
極めて遠慮深い、奥ゆかしい性格なんである。
特に、デカメバルともなれば奥ゆかしく用心深い性格故に長生き出来たのである。


ならばと、プラグを投げてみるが、もうメバルたちは引っ込んだまま出て来ようとはしなかった。


諦めた。残念無念。魚がそこにいるのは分かっているのだが、
フグたちはワームが美味かったのか、そこを去る気配がなかった。



平らな場所に戻り、一応計測写真を撮っておこうと改めて尺を測った。

ところが、である。
既に口を開いて堅くなった尺は僅かに尺に届かないのであった。
うっひゃ~~!!!




死後硬直で縮んだのか、見間違いだったのか、
こういうのを「後泣き尺」というのだろうか。

まあ、いいではないか、大した問題じゃない、うむ・・・・
と自分にいい聞かせながら車へと向かったのだった。


釣り始めはどんよりと重く真っ暗な空だったが帰りはすっかり晴れ上がり、頭上には夏の大三角が煌めいていた。


怪物には出会えなかったが、



いつか、きっと。


である。

























めばる二夜。 怪物がいる。            6月25日、28日

2011-07-01 | メバル

「メバルの刺身が食べたい。」
金沢から来ていた友人が私を見てそう言った。

ならばと出向いた。6月25日だった。

このところ毎日間断なく雨が降り続けていたが
丁度、午後過ぎから止んだところだった。

ポイントは前回と同じ「右足の崖」である。
メバルシーズンの終盤である今、私のシーズンを気分良く締めくくるためにも
尺をもう一匹あげたかったし、この時期、尺を狙えるポイントはここの他なかった。

前回このポイントは期待はずれの凪だったが、今回は丁度いい荒れ具合だった。
1~1.5メートルの波、サラシがいい感じで渦巻いていた。しかし、風が悪かった。強い向かい風。
6センチ7グラムのプラグもまともに飛んでくれない。自作のシンキング飛ばしウキ15グラムもサラシの向こうまで届かなかった。
ここでデカイやつが来るのは遠いところだというのに。

活性が強いときはサラシの中でもアタックして来るが、今回は全くダメである。
釣り座を変えてなんとかキャスト出来る方向に投げてみるが、ラインは風に流され、反応はなかった。

流石に2時間、アタリもなければ諦める。

諦めかけた頃、俄に風が弱くなった。

チャンス到来と風に向ってサラシの向こうへフルキャストする。

数投目、やはり遠いところでコンときた。待ちかねたアタリだ。
しかし乗らない。
同じところを何度も通す。
と、ココン。やはりきた。今度は乗せる。
遠くから引き寄せる。案外の手応え。魚は暗い海面を滑るように近づいて来る。
27センチ。




しかし、その後が続かない。
一時間後、25センチが一匹。




その後、再び風が強くなり、諦めた。

2匹だが、なんとか友人に刺身を作ってやれるではないか。

空はどんよりと厚い雲が覆い、細かな雨も落ちて来た。
車までの道を急いだ。

と、帰り道右手の大きなテトラ群にふと目が止まった。

普段、この巨大なテトラは危険過ぎて釣り人はあまり近寄らない。
私も過去何度か降りてゆく道を見つけて中段ではあるが、釣り座を見つけキャストしたことがある。
確かにあまり人が来ないところだし、メバルのポイントとしては最高で、デカメバルの入れ食いも経験している。
しかし、始めからそこに行く心構えと体力がないとひとりで行く気にはならない。
正直、何度か登り降りしたが、だからといっていつもうまく登れる自信が今ひとつないのである。
もし、足を滑らせ落ちたら、それで終わりなのである。要するに怖いんである。
それにその降り道も今では確かな記憶がないのである。

もしテトラからキャストすれば丁度いい感じの追い風となる。
ひょっとして降りなくても、テトラの上からキャスト出来ないか、と思った。
で、探してみると、あった!!

比較的安全で簡単に行ける釣り座。しかも足下の海は沈み根、浮き根があり、魚が好んで集まりそうなポイントである。
ただし、問題が一つ。足場の高さである。
それはもうメバル釣りの釣り座としては考えられないほどの高さである。
おそらく15メートルはあるであろう。ルアーをピックアップするにも巻き上げる途中、ルアーはテトラの隙間に引っ掛かるかも知れないし、こすることはまず避けられない。魚が掛かってもそうであろう。およそ人はここからキャストしようとは思わない。
勿論、ジグヘッド単体などは問題にならない。かろうじて重いプラグか飛ばしウキならなんとかなりそうだった。
私の飛ばしウキはウレタンゴム製のラグビーボール型のやつで、衝撃には極めて強いし重さも10グラム以上である。
こんなところにはもってこいであった。

試しに投げてみた。
追い風ということもあって、案外綺麗に飛んでくれる。
飛ぶというより、放物線を描いて遥か下へと落下するのである。

着水するのに時間はかかるが、案外問題なくキャスト出来ることに驚いた。
ゆっくり引いてみる。
暗闇の中、何処にルアーが落ちたのか、どの辺りをルアーは動いているのか遠過ぎて分からない。
頼りは長いラインを伝わって来る細かな信号と勘である。

どのくらい引いて来たか、おそらく足元のテトラ近くまで来て、ゴゴン!!と引ったくられた。
合わせると重さがロッドに乗った。よし、と巻き上げる。グングン巻き上げる。
いつもは引き寄せ抜き上げるわけだが、それとは違い、巻き上げる。長い距離をぐんぐん巻くんである。
魚の重さがもろにロッドに掛かり、予想通り、何度かテトラをこすりながら魚はあがって来た。
26センチ。



巻き上げる時間は長いものの、デカメバル専用のロッドである。折れる心配はない。
尺でも大丈夫だ。

とにかく、素早く巻き上げなくちゃならない。魚がテトラに擦らないように。


二投目、また掛かった。
23センチ。



三投目。
25センチ。




案の定、入れ食いとなった。










どれも25センチ前後であったが
先程までの釣れない釣りが嘘のようであった。

10匹も続いただろうか、突然時合いは終わり、静かになった。
暫くするとまた釣れるだろうと思ったが、
もう十分だった。


この釣り座は発見であった。
いつもは通り過ぎていたが、ちょっと発想を変えてみると
それが宝のポイントなのだった。

でかいのは釣れなかったが、このポイントにはきっと大物がいる、そんな確信めいたものを感じられ
それが嬉しいではないか。

明くる日、友人は刺身と煮付けに舌鼓をうち、大いに喜んでくれたのである。




そして3日後、28日。


予報を見ると、今度こそ追い風である。
波も1.5メートルらしい。

出かけた。

またまた「右足の崖」である。

いつもの釣り座は予想通りの追い風。波もいい具合に荒れていた。
サラシの15メートル先には潮目が横たわっている。
状況は申し分ない。これを待っていたのだ。

よし!!
と、まずはプラグを定番の方向、潮目を狙って投げてみる。
風に乗ってルアーはよく飛んだ。
ここは大物は遠くで掛かることが多い。
すぐにでもアタリがあると確信していた。

ルアーが潮目に差し掛かり、
くるぞ、くるぞ・・・とドキドキしながらルアーを引く。


がしかし、

サッパリ、であった。
時々、小さいのが掛かる程度。

状況がいいからと言って、いつも釣れるわけじゃないんだな。
潮目だからといって、そこにいつも魚が溜まっているとは限らない。
いない時はいないし、釣れない時は釣れないんだ。
当たり前のこと。

考えうる全てのことをやってみたが、ダメである。

しかし、一度、底を引いているうちに食いついて来たやつがいた。
そいつは手応えからデカメバルのレベルを確かに超えた大物だった。
メバルなら軽く尺越えだったと思えるが、やり取りの間とうとうバレてしまった。

3月30日の女釣り師との釣りでも、大物を逃がした。あの時は寄せる途中、障害物であるテトラの根に引っ掛かり、バラしてしまったのだった。

手応えからしてスズキでもないし、クロダイでもない。それは確かだ。鈍重でありながら、下への強い引きである。おそらく根魚だろうと思われる。メバルか、ソイか、キジハタか、アイナメか、タケノコメバルか、どちらにしても大物である。
メバルなら35センチ級の怪物に違いない。


バラした後の強烈な手応えの印象が長く尾を引いた。


思い返せば、このポイントでのこんな経験はこれまで一度や二度ではない。
ラインが切られたり、バラしたり、フックが伸ばされたり、一度も上げることができなかった。


そいつをもう一度と同じ底をしつこく狙ってみるが、アタリはその一度だけだった。

結局、3時間粘って25センチが一匹。

海の状況がいいにもかかわらず釣れない時は、ホントに釣れないんである。



場所を移動した。

前回の入れ食いテトラに期待した。

前回は追い風だったが、今回は向かい風である。
最初のポイントとは逆になるのだ。

海面まで15メートルの高さである。
この高さで向かい風は厳しい。
空中に長く伸びるラインはもろに風の影響を受け、難しい釣りであった。

しかし、なんとかルアーを海面に落とすことができれば、それがどの方向へ流されても、食いついて来ると確信していた。

数投目、案の定、食いついて来た。
15メートルをえんや、えんやと抜き上げる。
向かい風のせいで、テトラに何度か当り、こすりながらの抜き上げである。
25センチ。



前回ほどではないが、まあまあの活性である。

23センチ。



26センチ。




その後、風を利用し思い切り右方向、テトラの足元にルアーを落としゆっくりと引いていると、ガツン!!ときた。
強い引き。ドラグが軋む。走る。絞られるロッド。
なんだ、なんだ!!
大物だった。引き寄せる。心臓が早鐘を打った。
足元まで寄ったが、そこでテンションが抜けた。
あんらら~~。

おまけに、ルアーを回収する途中、飛ばしウキがテトラの隙間に挟まったとみえ、仕方なくライン切れ。


ラインを編み、飛ばしウキのシステムを作り直し、さて再開。

一瞬、風が弱まったので、正面遠くに投げてみる。うまく飛んでくれた。
引いて来るとテトラの沈み根があり、そこで食いついて来た。
激しいアタック、手応え十分、こいつもでかかった。
走る走る。負けじと引き寄せる。
0.6号、14ポンドのラインに合わせ強く締めたドラグが出る出る。

尺か。いやそれ以上かも。怪物の期待が膨らむ。
バレるなよ。
足元まで寄ったところで、抜き上げに掛かった。
一気に巻き上げる。
ロッドに掛かる全重量。折れ曲がるロッド。重かった。いいぞ。

しかし、何回か巻いたところで重さが消えちまった。

軽くなったラインを巻き上げてみると、
かろうじてリーダーは残っていたものの、飛ばしウキも、ジグヘッドもなくなっていた。
2.5号のリーダーが切れちまって魚は海へと落ちたのだ。

いくらなんでも魚の重量に耐えきれず切れたとは思えない。
抜き上げの時、ラインがテトラに擦れ傷ついたのだ。
それに魚の重量が重なった。単なる重量ではない。暴れる時の重量は二倍になる。

それにしても魚体を見たかった。
どんなやつだったのだろう。


その後もトラブルは続いた。
ラインブレイク2回、飛ばしウキのロスト4つ、ジグヘッドのロスト数個と散々であった。

しかし、最後の最後、28センチがあがって来た。





そして、持っていた飛ばしウキを全てなくしたところで終わりにした。


高い釣り座での風との格闘、やはり難しい釣りだった。

がしかし、事件も多々あり、
嗚呼!!なんという夜だったのだと、愉快なのであった。

正面の中空、斜めに傾いた北斗七星も北極星を挟んで水平線近くのカシオペアも笑っているようだった。


今回、大物を三度取り逃がした。
このポイントには何か得体の知れない怪物が確かにいる。
尺メバルのレベルを超えたやつ。
メバルではないかも知れない。
釣れそうで釣れない。
そいつは一体どんなやつなのか?

とにかくそいつを釣り上げてみたい。
ラインやリーダー、ジグヘッドなど、もう少し強いものにして望もう。




なんだか

闘志が湧いて来る。








ロッド:テンリュウ、ルナキア9.3フィート
リール;ダイワ、イグジスト2506ダブルハンドル
ライン;ラパラ、マルチゲーム0.6号13.9lb
ジグヘッド:自作(がまかつJIG29サイズ2+がん玉0.5~1g)、尺ヘッド0.5g
飛ばしウキ;ウレタンゴム製ラグビーボール(自分で鉛を埋め込んだりして11~15g)
ワーム;ガルプ、ベビィサーディン他いろいろ。