永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

またしても。

2014-05-05 | メバル


このところ絵本の仕事にかかっていて、なかなか釣りに出られなかった。

しかし、この時期は私の経験では尺が狙えるいい時期である。行かないわけにはいかぬ。

それで途中の仕事を置いて2度ばかり出かけたが、いいのがさっぱり来なかった。

周囲の釣り師たちの今年は釣れないという噂も聞いている。

本当にそうなのか?

釣れなかった2度の釣行はいずれも凪ぎに近い状況だった。

もともと凪でいいのが釣れたためしがない。

一度、荒れた海でやってみないと分からない。

そう思っていた。


数日前、金沢の友人夫妻から遊びに来たいという連絡があった。

ならば、彼らにメバルの刺身を食わせてやろうと来訪の前日、天気予報を見るとタイミングよく海は荒れるという。

雨が降るわけでもなく、南風(追い風)であり、波だけが荒れるらしい。

これはチャンスである。

ポイントは前回、前々回、釣れなかったところである。

釣り座に立って見ると久しぶりに海は荒れ、眼下の海面はサラシが渦巻いていた。2.5メートルの波といったところ。

メバル釣りには荒れ過ぎだが、凪よりましに違いない。


先ずはプラグをつけ、追い風に乗せてフルキャスト。

大きく広がるサラシのさらに向こうへ着水させたい。

ゆっくり引いて、サラシとの境目あたりが怪しいエリア、気を入れて引く。

しかし、数投やってアタリなし。

ならば仕方ない、フロートリグに替えてフルキャスト。

単体ジグヘッドではサラシのさらに向こうまで飛んでくれない。

プラグよりゆっくりと引く。


数投目、リグがサラシに入った辺りで小さく当って来た。

暫し引くのを止めて、違和感が持続しているのを確認して合わせると乗った。

まあまあの引き。一気に浮かせ引き寄せ、抜き上げる。

26センチ。




次のキャストも同じところで当って来た。

乗ったものの、半分引き寄せたあたりでバレちまった。

入れ食いか、と思ったが、それは早とちり。


20分後、違う方向でガツンときた。一瞬間を置き、思い切り合わせると重い手応え。しっかりと針が食い込んだ。

ゴリ巻いて浮かせるが、なかなか浮いて来ない。

PEスペシャル93Houri-Islandの穂先がしなる。いい感じ。

浮かせたあとは慎重に寄せる。

ライトを付け、足元まで来たのを確認して抜き上げる。

28センチだった。



久しぶりのデカメバルの手応え。

入れ食いではないが、やはり前回とは違うのだ。

期待できるぞ、と心は弾む。



しかし、その後、パタッとアタリは消えてしまった。

レンジを変えたり、プラグでやったり、方向を変えたり、思いつくことはやってみるのだが、サッパリ当らない。

が、そこで帰る気にはなれなかった。

時折、煙草に火を付けながら、アテもなくひたすらキャストを続けた。



空を見上げれば、満天の星々。高いところに北斗七星がくっきりと輝き、

水平線の上の細い三日月の赤い光が海面に反射して筋を作っていた。


時計を見るとアタリが消えて2時間が経過していた。

サラシのエリアがさらに広がり、海は増々荒れて来たようだった。

そろそろ潮時か、と思えた。


リグを点検し、ラストの一投を気持ちを入れてフルキャストした。

しかし、アタリなし。同じである。

じゃあ、ラストのラストの一投を追加である。

しかし、さらにアタリなし。


じゃあ、ラストのラストのまたラスト、泣いても笑っても最後の一投だと、腰を入れてさらにフルキャスト。

惜しむように、ゆっくりと引く。

と、サラシの中で、コンと来た。

引くのを停める。

と、そーっと吸い込むような、イカのアタリのような、妙な感触。

そこでゴンと合わせる。

手応えあり!!ロッドに重さが乗った。

ロッドを頭の上に差し上げ、ゴリゴリと巻くが、これまたなかなか浮いて来ない。ここが面白いところ。

なんとか浮いたところで、魚がサラシの白い水面を滑ってくるのを確認しながら慎重に寄せた。

抜き上げると、ぐんなりと重く、魚体は尺クラスに違いなかった。




正月に尺クラスを立て続けに4つ上げたが、いずれも29.5センチで尺にはついに至らず、

今度こそ尺かもしれぬと期待したのだが、

計ってみると、うっひゃ~~~!!




またしても、29.5センチなのであった。


その後、さらに30分粘ってみるが、再びさっぱりとアタリなく、

波が足場まで上がって来るようになり、危険を感じ慌てて撤退したのだった。


帰り道、29.5センチだったことが我ながら妙に可笑しかった。

たった三匹の釣果だが、なんとか友人に刺身を馳走できそうだし、

この日は荒れ過ぎだったが、ともかく「荒れ」がキーワードということが少なからず確認できたわけで

心は軽かった。


振り返ると赤い月は水平線に沈んでいた。




(ひとりの時は自分の記念写真が撮れないが、今回、リモコンシャッターを試みてみた。しかし、なんか決まらない。)





春の海

2014-03-26 | メバル
2月の能登外浦は大荒れで気温も低く、魚たちもどこか遠くの深場で産卵後の静養でもしているようで釣りにならない。

今年は例年になく雪が少なく春が早かったので、3月に入ったらすぐにでも再開と思っていたが、なんだか気分が重く釣りに出かける気にならなかった。

振り返ってみれば、2月3月はいつもちょっとしたプチ鬱状態に陥るようだ。

毎日、真っ白な雪景色をボンヤリ眺めているうちに、ふと得体の知れない「虚しさ」が沸いて来るのだ。

それは若い頃から抱えて来た根源的な「虚しさ」である。

その虚しさは根源的であるが故に、これまでの人生に於ける、どんな歓喜も誉れも、すべてのものを色褪せさせてしまう。

「おれはこんなところで、一体、何をやっているんだろう?」と思う。

自分の中を覗いてみれば、確かなものなんてないのである。見事になんにもないのだ。

このまま、こんなところで朽ちてゆくのか、とも思う。

「私とは何か?」「今、ここに、なぜ存在するのか?」「何をすればいいのか?」

これまで何度考えたか分からない「問い」が浮かんでくる。

これまでと同じように解答なんてある筈もなく、分からないのである。

「問い」自体が答えであるような、そんな根源的な問いである。

と、こんなことを書いているが御心配には及ばない。

こんな状態は私にとっての生きるリズムだと思っている。

言ってみれば「版画家」などという仮面を脱いで、本来の私に帰る儀式のようなものなのである。

私に帰り、新たな私を始めるための。




ともあれ、私の2月3月は憂鬱であって、加えて犬の失踪事件、友人の離婚話、原発のことや、闇としか言いようのない日本の政情、また世界の内乱、戦争、などなど、

われわれ人類の愚かさがどっと流れ込んで来て、もうどうしようもなく・・・


忽然と湧くように

釣りにでも行ってくっかーー!!!

と、出かけたのだった。


穏やかな海だった。

そして穏やかな釣りであった。

時折の僅かな魚信に意識を集中する。

魚のイキイキとした躍動が嬉しい。




水平線の上に輝く北斗七星、その下の漁船の灯り。

厳しい冬が終わり、春の海に立つといつも浮かんでくる句がある。


『春の海 ひねもすのたり のたりかな』(蕪村)


メバルは春告魚と書く。

今、まさに新しい春なんである。


さて、私もまた、


新しい私を始めよう。







(最大は27センチ。刺身に煮付け。まあおかずにはなったか。)


私の正月物語

2014-01-09 | メバル
正月の釣りが尾を引いていた。

釣りは物語である。

やっていると自ずと物語が生まれ、釣り師はその物語を完結させたいと思う。

うまく完結できたり、できなかったり。

それがまた自分の物語になるのである。


尺に5ミリ足らないやつが3匹。

5ミリなんてどうってことないし、釣れるときはあっさりと尺は釣れるが、

今回はこの5ミリが遥か向こう、漠然とした途方もない距離に感じる。

たかが5ミリ、されど5ミリである。


ともかく尺越えをひとつ釣りたかった。

釣らねば私の人生は一歩も前に進まない、といったらちと大袈裟かもしれぬが、そんな気分だった。



実は一昨日(6日)でかけたのだが、予期せぬ寒さで手が凍え一時間で退散したのだった。勿論アタリさえなかった。

そして昨日、気温が緩んだので満を持して再び出かけたのだ。

ここ数年の釣行で思うことはこのポイントは普段はおちびさんしか釣れないが、正月前後だけは尺クラスが期待できるということ。

産卵を前にしてたっぷりと栄養を蓄えにこの浅い磯にやって来るに違いないが、その極端さが面白いところである。


長期の天気予報を睨むとおそらく、昨夜がそのポイントで尺が狙えるラストチャンスだった。




このところの数回の釣りはなんとか釣りが出来るという海況だったが、昨夜の海は静かで大人しかった。気温も前日とは違い指先が凍えることはなさそうだったし、なにより緩い追い風だった。

夕まづめ、いつもの釣り座に立ちキャストを開始。


最初はプラグでやってみるが反応なし。やはり活性は低そうだ。

で、フロートリグ。


始めは全くアタリらしきものはなかったが、完全に暗くなってからぼつぼつとアタリが来はじめた。

しかし、ヒットしてもみんなリリースサイズ。

そのうちサイズアップするが23センチどまり。




で、表層は諦め、底を狙うことに。

思い返せば昨年も一昨年も尺は底でヒットしたのだった。やはりあまり活性のない状況だったが、しつこく底をやっているうちにガツンと来た。

凪ぎ状態では活性は低い。決して魚がいないのではない。警戒心からか表層に出て来ず、底の岩礁の隙間でじっとしているのだ。

デカイやつほど警戒心は強い。だからこそ長く生きてデカくなれたのだ。

ならば、そんなやつの目の前にワームを持って行くしかない。いくら警戒心が強くても目と鼻の先にうまそうなものがぶらさがったら思わず食いつくだろう。

まあ、こちらの勝手な妄想かもしれないが、表層で駄目なら深いところだ。


リグをフローティングからシンキングに替える。

羽咋のあさの釣具で仕入れたドーヨ玉12g。リーダーは長めでジグヘッドは0.9gを付けた。ワームは言わずと知れたガルプ、ベビィサーディン。(言うのも恥ずかしいくらい)

とにかく遠いところである。フルキャストして着水後カウント10~15。ゆっくりと引き始める。

時々ジグヘッドが海底の岩礁にコツ、コツと当って来るくらい。

このシンキングリグは素晴らしい。ゆっくり引いてジグヘッドが軽く底に当る状態を保ってくれるのだから。

根掛かりのリスクはあるが、早めに察知してロッドを煽ってクリアする。


フォールを待って引きはじめた途端、ココン!ときた。直後、ぬっとした感触。合わせる。重さがロッドに伝わった。

思った通り一投目から来た。遠くの底だ。

ホーリーアイランドを立てて浮かせる。根にいるやつだから浮かせるのに少し時間がかかる。

この時間が面白いところ。デカメバル釣りの醍醐味だ。



尺にはちょっと足らないようだが、いい魚体、28か。

その後、ぼつぼつ25センチ前後。

その後、一段と重いやつに根に潜られた。元々根に潜んでいるやつはあっという間もなく根に潜ってしまう。ロッドを立てて巻く暇もない。

底はそのリスクが大きい。


切られたリーダーを付け直し、キャストを再開した直後だった。

ヒット直後は大したことなかったが

巻いているうちにグンと重くなり、さらに重くなって

立てたロッドを支えるのに腕が疲れるほど強烈な引きとなった。

潜るなよ、と祈りながらひたすら巻いた。

魚体が浮くまで長い時間がかかったようだった。

おそらく、ここ数回の釣行で一番の引きだったと思う。

足元まで寄った魚体を見てやった!!と思った。

ヘッドライトの光の中、身を翻して黄金色の腹を見せたが、そのデカさ。

抜き上げもぐんなりと重く、暴れて落とさないようグワシと握った。





その掴んだ感触は、ついに来たか。と確信に近いものだったが、

前回のことが頭をよぎるわけで、喜ぶのは早いと気分を引き締め、たっぷりと水を入れたバケツに入れて釣りを続行。

計測は後の楽しみ、この時合いを逃したくはなかった。


しかし、その後アタリは徐々に遠のいて、7時半になると海もベタ凪状態となり、ぱったりアタリは消えてしまった。

左手遠くの磯でヘッドライトが点いたり消えたりしているが、彼は釣れているのだろうか。

空は晴れて南の空にシリウスが一際大きく輝いていた。


リグをフロートに戻したり、ワームの大きさを替えてみたり、プラグでやったり、イロイロやってみるのだがついにアタリは戻らず、9時過ぎ諦めた。


車に戻ると、丁度左の磯でやっていた釣り人も帰って来た。

「ゴロスケさんでしょう」と彼。

防寒帽で顔を覆い目だけを出しミイラ男のようなその人は輪島の釣り師Bさんだった。

久しぶりで何やら話していると、そこにまた釣り師がやって来た。

輪島の磯を知り尽くし地元では知らぬ人のいない釣り師池山さんだった。

彼も実に久しぶりの顔だった。

以前、彼に色々輪島の磯や釣りのことを教わったこともあり懐かしい顔である。

勿論、池山さんとBさんは釣り仲間である。





彼らの前でちと気が引けるのであったが、さて計測である。

彼らも正月の泣き尺3つのことはブログで知ってくれていたので興味津々というところ。

先ずは最初の尺に足らないだろうと思えたやつ。



28だろうと思っていたが29センチだった。

それならこいつよりはっきりと大きく感じた本命は尺を越えているかも、と期待に胸は膨らんだのだが・・・



うっひゃ~~!!またしても29.5センチ、だった・・・・。


なんと5ミリの遠いことか!!!

なんだか我ながら笑えてくるのをどうしようもない。



池山さんにブツ写真を撮ってもらった。背後霊はBさん。



その後、暫く三人で楽しい釣り談義の一盛り。


Bさんは明日仕事があるからと帰り、池山さんは深夜にアタリが戻るかもしれないと釣りを開始したので、俄然私もやる気が蘇り、しまいかけたロッドを再び出して釣り場へ戻った。

まだ尺の可能性はあるのだ、と。

遅れて釣り場に戻ると、すでに彼はメバルをヒットさせているようだった。


確かに彼が言うようにアタリは戻って来ているようで、底を狙うと頻繁に当って来る。

しかし、ヒットしても小さいのばかり。


でもなんだか楽しかった。メバルたちと遊んでいるように思えた。


池山さんと並んでロッドを振ったのはいつのことだったろう。光浦でやはりメバルを釣ったのだった。随分昔のことだとその頃を思い出した。


どのくらいやったのだろう、彼のやめるという声を潮時にやめることにした。

28センチがひとつ掛かったが、このベタ凪の海にもうこれ以上デカイのが来そうな気配は消え失せていた。




ひょっとしてまだチャンスがあるかもしれないが、

私の正月の物語は決着がついた気がした。

決着つかないままの決着。そのほうが面白い決着かもしれぬ。



春になったら、新たなポイントで尺といわず、35センチを狙ってやろうと考えている。

まだそこでメバルを釣ったことはないが、以前から気になっている磯である。

池山さんもその磯には確かに怪物がいるという。


楽しみである。






大晦日の海水浴、正月の泣き尺3つ。

2014-01-05 | メバル
昨春は仕事に追われて正月以降メバル釣りに行くことができなかった。

いや、追われてというより仕事が面白かったのかも知れぬ。メバルのことが気になりながらもついぞ出かけなかったのだ。

しかし、一年の仕事も全て終わった年末、メバルのことが沸々と頭を巡り抑えることができない。

昨年、師匠つーさんの奨めでゲットしていたブリーデンPE Special Houri-Island 9.3フィートの出番である。袋から出して振ってみる。シャープでバランスが良さそうだ。

リールもグリスアップし、フロートリグのシステムを作ったり、ジグヘッドやプラグを点検、準備万端整えチャンスを窺っていたが、海は大荒れが続き出かけられなかった。

ところが、大晦日になって少し天気が緩んだ。気温は7度、波も3メートルに落ちた。

これならなんとか釣りが出来るかもしれないと出かけた。

ここ数年、大晦日のメバル釣りは恒例になっており、釣果も悪くなかった。少々のことがあっても出かけたかった。

それに海を眺めながら独り年を越すのは悪くない。

今メバルシーズンの遅ればせながらの初陣である。


輪島方面、とあるテトラに立ったのは辺りが暗くなりはじめた頃だった。

沖は荒れていたが、メバルを狙うエリアは1.5メートルの波、丁度いい感じだった。

PE Special Houri-Island は素晴らしかった。ロングロッドながらシャープな振り抜け、そして軽かった。これまでメバル釣りに9.3フィートを使って来たがこいつは紛れもなく理想の9.3フィートロッドに違いなかった。

海の状況からフロートリグしか考えつかない。このロッドは細めのラインにジグヘッド単体が合いそうだが、長いリーダーを付けたフロートリグもキャストし易い。

ヒュンと風を切る音、薄暗闇を遠くに飛んでゆくリグ。いい感じ、嬉しくなって来る。

最初から頻繁に当って来る。小さいアタリも敏感に届いて来る。先ずは25センチが来た。




その後、リリースサイズばかりが入れ食い状態だったが、少し間を置いて再び頻繁に魚信がある。

久しぶりのメバル釣りということもあるが、手に伝わって来る魚の生体反応が楽しい。








25センチ前後ばかりだった。

ドーヨ玉シンキングを使って少し深いところを狙ってみる。

カウント10~15でゆっくりと引く。時々ジグヘッドが底の岩礁に当る。

と、やっとデカイのが来た。



28センチ。


その数投後、さらにデカイやつがヒットするが、ちょっと油断した隙に根に潜られ動かなくなった。

暫くテンションを抜き、煙草に火をつけて待ってみるが動かず、とうとうラインブレイクで逃がしちまった。


このポイントは浅い磯だ。根に潜られないために強いロングロッドを使っているというのになんてことだ。

Houri-Island は素晴らしいが、うっかり油断するとこのロッドでさえ根に潜られる。

ヒットするや否やゴリ巻きをし、まずは浮かせることが肝心なのだ。

一度浮かんでしまえば、あとはバレないように慎重に寄せればいいのだ。

過去、ここで何度も根に潜られたのについうっかりしちまった。


でも確かにデカイのがいる。


システムを組み直し、キャスト再開。

やはり深いところを狙った。

魚信は遠ざかることなく続き悪くない状況だった。

しかし、ヒットするのは25センチ前後。





そのうち荒れはひどくなって来たようで時々波が膝まで来るし、風も強くなって来た。

ちょいと一息、煙草に火をつける。嗚呼!!煙草がうまい。


さてここからが勝負、腰を据えてかかろうとしたその時、

左前方からの突風に身体のバランスを失い、持ちこたえられずそのまま海へ落下しちまった。

テトラのてっぺんに立っていたので踏ん張りが利かなかった。落下というより自分から海へ飛び込んだという具合。

胸辺りまで水浸しになっちまった。慌てはしなかったが波もあってテトラに這い上がるのに手間取った。

幸いにもロッドもリールも無傷だった。無意識に守ったものと思える。だがリールは瞬間海に浸かったかも。

厚いパッチを履いていたお陰か、思ったほど冷たくもなくそのまま釣りを続行しようかと思ったほどだが、ここは諦めて帰ることに。8時半だった。

とはいってもすぐには帰らず

しっかり釣果の写真を撮ることは忘れなかった。







大晦日のちと早過ぎる海水浴だったなと自分ながら笑えるのである。

2013年のアホな締めくくりだったが、なんだか私らしいと思う。







そして正月、1月3日。

昨年、一昨年と正月に尺が釣れた。

なんだか正月は相性がいいようである。

この日、朝からの雨模様だったが気温が緩んで、波も2.5メートルに落ちた。何も根拠はないのだがこの日がチャンスだと思えた。


大晦日と同じポイントである。

釣り座に立つと海の状況は前回と同じくらい。時折波が膝まで来るが風も追い風で予想通り寒くなかった。

前回と同じフロートリグでキャストを始める。

前回のように最初からのアタリはなかったが、そのうちぼつぼつと当って来た。

でも食いつくが乗らない。たまに乗っても小さいやつばかり。

でもそのうちいいのが来るだろうと確信できるだけの雰囲気があった。


30分後、25センチクラスが3匹立て続けに来て、その後遠いところでクン!と重いやつ。

よし!!

すかさずロッドを立ててゴリ巻き水面に浮いたのを確認してゆっくりと慎重に寄せる。

抜き上げるとグワンと重くて掴んだ感触は尺クラス。久しぶりの堂々とした魚体だった。

計測は後まわし、水を張ったバケツに入れる。



数投後、再び重いやつ。こいつも尺クラスだがちょっと足りないか。



予想通り今日はデカイのが来る日なのだ。心は自ずと弾んで来る。


その後、雨が強くなった。あられ混じりの雨らしく、あられがカッパの背に当ってパチパチと音を立てる。

風も強くなり時折左前方から突風がやって来る。大晦日はこの風にやられて海に落下したが、今回は気持ちの準備がある。

強い突風が来てもいいように安定した足の位置を確認し、腰を低くして身構えた。

突風が収まるのを待ってキャストするが、天候の変化とともに時合いは遠のいたようだった。


気が付くと後ろで人の声。

振り返ると、釣り人がひとりなにやら叫んでいる。

「隣でやってもいいですかあ~」やっと声が聞き取れた。

礼儀正しい釣り師である。「どうぞ、どうぞ」と応える。


こんな雨あられの日に先客がいるポイントでも何とか釣りたいという強い意志を感じた。

おそらく遠くからやって来た人なんだろう。地元の人とは考えにくい。


さて、キャストを続ける。が、魚信はパッタリと消えてしまった。

だからといって釣れなくなったわけじゃない。暫く待っていると再び爆釣モードに入ったりするのだ。

そのまま魚信が戻らないこともあるが、待つこと、粘ること、それがメバル釣りのキーワードのひとつだ。


雨は一時止んだものの、突風は一段と激しくなり、海も荒れて来た。波は膝を洗い、時折ぶつかって来る波の飛沫が顔にかかった。

たまらず上に上がって休憩、煙草に火をつける。嗚呼!!なんて煙草がうまいんだ。


最近煙草吸いは悪者のような扱いを受けるのだが、私はそれに決して屈しない。

煙草は個人の文化であって外からどうこう言われる筋合いのものじゃない。

煙草が身体に悪いというなら、マクドナルドやその他のファーストフード、コンビニを駆逐してから言って欲しい。

ともあれ、外からのファシズムのような言われ方やヒステリックな言われ方は信用しない。

勿論、好き嫌いの話なら分かる。嫌いな人のことは考えなくてはならぬ。

磯に煙草の吸い殻を捨てたまま帰る釣り人がいるが、それは駄目である。

釣り師は磯を汚してはならない。携帯灰皿は必需品であり、吸い殻は持って帰らねばならぬ。


閑話休題。


後からやって来た釣り師の顔、どこかで見たような・・・・金沢の釣り師Yさんだった。イカ釣りでよく一緒になる釣り師である。

金沢の市役所に勤務し、暇があれば能登に釣りにやって来る。その情熱たるや私の比ではない。

「ゴロスケさんでしたかー、車にステッカーが貼ってなかったので分かりませんでした。」と笑顔を見せる。

我が愛車、ポンコツハイエースには私がデザインした脱原発のステッカーが後ろにも横にも前にもベタベタと貼ってある。

後ろのやつはでかくて目立つのだが、前のは小さい。イカポイントの駐車場は前から突っ込むがこのポイントではバックで停めておいたので前部の小さいやつが目に留まらなかったのだろう。


風が少し収まったようだったのでキャスト再開。

波が強くなってきたのでジグヘッドを替える。0.5gから0.9gへ。リーダーも長めに。

魚が何処にいるのか分からないが、何処かに潜んでいることは間違いなかった。

ともあれ少しづつ方向を変えながら遠いところ、フルキャストである。

そしてゆっくりと移動させるように引いて来る。波の動きのままにジグヘッドは上下に動く。波に任せ、少しづつ移動させる。

荒れているときはそれがいいように思われる。


やがて魚信は少しづつ戻って来たようで、小さいやつが掛かりはじめた。

数投後、遠いところでコツンと来て、なにやら怪しい雰囲気、ちょっと間を置いて思い切り合わせるとガツンと食い込んだ。

デカイやつだった。ロッドを頭の上で立てゴリ巻いた。それでバレるなら仕方ない。ともかく浮かせること。

魚も必死で潜ろうとする。その手応えは重く強かった。


一瞬、大晦日の根に潜られたやつが脳裏をよぎる。そうはさせるか。

薄暗い海面に魚が浮いたのを確認し、そこからは慎重に寄せる。うまくいった。


足元まで寄せて一気に抜き上げた。PEスペシャルがぐんなりと曲がる。宙に浮いた魚をしっかりと握った。そのごっつい魚体は尺だった。



この時合いを逃すまいとキャストを続けた。

正式に計ってみないと分からないが、ひょっとして尺が2匹。気分は良かった。


その後も25センチ前後がぼつぼつ続く。

ところが、そこでまたもや突風。

こいつは強烈で風に押されてまた落下しそうになった。波もさらに強くなって、足元も波にさらわれそうである。

この状況では釣りにならず、ついにその釣り座から撤退。


しかし、ここで帰る気にはなれない。ひどい状況だが寒くなかった。今日というチャンスを前にして引き下がるわけにはいかない。

ひとまず上がってYさんと暫し釣りの話などしているうちに再び風が収まって来た。


さて再びキャスト再開だが、最初の釣り座は諦め、テトラの上からやってみることに。

海面から遠くなったが落下や波を被る心配はない。前方に突き出したテトラが邪魔になるがキャストが出来ないわけじゃない。9.3フィートはこんな時に都合がいい。

23センチがひとつヒットするが、アタリは俄然渋くなった。


暫くしてふと Yさんを見ると彼のロッドが絞り込まれ形のいいデカメバルを抜き上げていた。

よし!これからが勝負だと気持ちを入れ直し、ワームを変えてみる。

ガルプの枠である。こいつは荒れた時に効いたりするのだ。

そのフルキャストの一投目、着水して引きはじめたところでゴンときた。ばっちり。

合わせるとこいつもデカかった。立てたロッドの先がハゲシク絞られお辞儀をする。いい感じ。これがメバル釣りの醍醐味だ。

高いところえいやっ!!と抜き上げるとこいつも尺クラスだった。三匹目の尺クラスである。



そして次のキャスト、やはり遠いところ、コン!ときた。こいつもよく引いたが26センチ。



ガルプの枠がバッチリはまったと見え、次のキャストもヒット。三連ちゃんである。やはり着水直後のココン!だった。

またまた重かった。素早くゴリ巻いた。寄せると大きい魚体が右左に走りながら近づくのが見えた。

驚いたことに、こいつも尺クラスだった。一体何と言う日なんだろう。




そこで強烈な突風。釣りを中断して収まるのを待った。

しかし、突風は強い向かい風となり、キャストが難しくなって来た。

風の間隙を縫ってキャストするが、リグが遠くに飛んでくれない。ラインは風にハゲシク煽られルアーが何処にあるのかさえのか分からない。

そして、釣りをするより風を待つ時間の方が長くなった。

勿論、アタリは消えちまった。

それでも偶然のように25弱をひとつ上げたが、

そこで諦めた。11時前だった。

待っていれば、また風が収まるかもしれないし、まだ大物はいるに違いないが、潮時だと思った。



車に戻り、正式に計測してみた。ひょっとしたら尺4匹、そうであるならミラクルだとワクワクしながら計ってみたが、

しかし、現実はそうは甘くはないのだった。

尺クラスの一匹目、29センチ。


2匹目。29.5センチ。


3匹目、29.5センチ。


4匹目、29.5センチ。


うっひゃ~~!!!

尺に届きそうで届かない。このもどかしさ。

ひとつくらい尺を越えていても良さそうなものだが、

海の神の悪戯か、日頃の行いが悪いせいか、

まあ、尺越えはそのうちだ。






Yさんは続行するらしい。今夜は徹夜のつもりで来ているのだとか。まだまだやる気満々の笑顔であった。その情熱には敬服である。

記念写真を撮って別れることに。小生も大自慢写真を撮ってもらった。独りでやっているとこんな写真は撮れないのだ。


Yさん。28センチ。




もう少し粘ればよかったか・・・・後ろ髪を引かれながら

荒れる海と風の中で独りキャストを続けるYさんの後ろ姿を遠くに見てその場を去った。



ともあれ


大晦日も正月も私にとってメモリアルな釣りになったことは確かである。








2013年正月の釣り。

2013-01-09 | メバル
10月末から2ヶ月ぶりの更新である。
その間、山口での展覧会中、ギャラリーオーナー繁さんと長門にメバルを釣りに出かけただけで、釣りというものから遠ざかっていた。
まあ仕事に追われていたのだ。

山口、松山での展覧会も終わり能登に帰って来たのは正月の2日で、我が家はすっぽりと雪に覆われあたり一面真っ白だった。

ここにきてやっとのんびりできたわけだが、そうなると自然に釣りへの想いが湧いて来る。
そういえば昨年の正月、31センチを釣ったのだったと、その思い出も蘇る。

5日、天気が緩んだので出かけることにした。
勿論、31センチを釣った輪島の浅い磯だ。

このポイントはいつもは小さいのしか釣れないが、正月明けに限ってデカイのが来る。産卵をしにやって来るのだ。

釣り座に立ってみると1.5メートルの波、軽い向かい風、悪くなかったが、雪がちらつき30分もやっていると早くも手がかじかんで来た。

時折掛かるのも小さいやつばかり。

そのうち雪が強くなり、背中をシャビシャビと叩く。



そう思い通りには行かないわな・・・・・
駄目かな・・・・・・・

そこで風が追い風に変わり、手の凍てつきが緩んで来た。
すると途端にやる気が出て来る。
よし!!と前方の遠いところへフルキャスト。潮の流れが複雑と思えるところだ。

浅い磯である。10グラムのフローティング飛ばしウキに1メートルのリーダー、0.5グラムのジグヘッドにはガルプベビィサーディンを付けた。
今のところ一番信頼の出来るリグだ。
PEスペシャル93フィートは浅い磯での飛ばしウキやスプリットリグにはもってこいのロッドだ。

少し引いたところで、小さなアタリ。
そのまま、そしてまた小さなアタリ、少し待って合わせる。

乗った。突然重かった。
ロッドを高く上げ、ゴリ巻きする。
ここで何度磯に潜られ逃がしたことか。
バッドが少し曲がる。
でかいぞ。

遠くから魚の暴れながらの白い筋が近づいて来る。
なんとかバレずに抜き上げる。

落とさないよう慎重に握る。
その感触はまさに尺クラスだった。



早速、足場の安定したところへ運び計ってみる。
尺をほんの僅か超えていた。
ジャスト尺というところ。



いや、驚いた。
いきなりである。

思い返せば、昨年もそうだった。
全く釣れず、粘っているうちにそいつだけがやって来た。

さてと、釣り座に帰ろうとしたところ、テトラにへばりついた藻に滑りそのまま海の中へ落下。



しかし、なんとか膝下までの浸水で済んだし、ロッドもリールも守った。えらい!!


で、釣りを再開。
水の入ったブーツは思ったほど冷たくはなかったが、30分もやっていると流石に冷えて来る。
リグをシンキングの飛ばしウキか、スプリットに替え底を狙いたかったが、再びかじかんだ手は上手く仕事をしてくれそうもなかった。

25センチを1つ追加したところで切り上げることにした。

いつもなら二匹目の尺、いや、それ以上の大物を狙って粘るところだが・・
とにもかくにも寒さに負けたのだった。


(ともあれ嬉しいわけで記念写真。ところで小生が付けているこのヘッドライト。JENTOSというメーカーのセンサー付きだがこいつが素晴らしい。いちいちかじかんだ手でスイッチを押さなくてもいいのだから。)



その2日後の7日、再び同じポイントへ出かけた。
ブーツも洗い乾かし、そのポイントに合った体制を整え、準備万端で出かけた。

日が落ちて暫く経った頃である。
海も1.5メートルの波、追い風、気温もすこし緩んで2日前より良さそうだった。

先ずはフローティング飛ばしウキ。
正面にフルキャスト。
その一投目、ガツンと来た。
26センチ。
いい感じだった。



しかし、その後は小さいのばかり。
時折22~3センチが来るがパッとしない。
2日前と状況は変わらないが、そのうちデカイのが来そうな予感はあった。

そのうち、底辺りを狙ってみようとシンキング飛ばしウキに替えてみるが、状況は変わらない。
かえってアタリはサッパリと消えちまった。

2時間粘って、そんなものだった。

一度足場の安定したところに戻り、ちょっと休憩、煙草に火をつけ考えてみる。
何故釣れないのか。

昨年の31センチはシンキングの飛ばしウキに掛かった。
今回は駄目である。うんともすんとも反応がない。
分からない・・・・・

再び釣り座に戻ってプラグを付けてみた。
しかし、これも反応がない。

潮の流れを考えてみる。
暗くてよく分からないが、ゆっくりと左へ流れているようだった。

飛ばしウキの弱いところは流され易いことだろう。
底を狙ってシンキングにしても流されればうまくいくはずがない。
遠くの底を叩くにはスプリットだろう。

3.8グラムのシンカーを付け、リーダーは30~40センチと短くする。ジグヘッドはやはり0.5グラム。

追い風に乗って前方へフルキャストする。
なるべく遠いところを狙いたい。
少し待って引いて来る。
時々コンコンと底の岩礁に当りながらくる。そんな感じ。
単体ジグヘッドのように。

と・・・・当って来た。

コツン、コツコツ、

合わせると乗った。重く引きは強かった。
デカイか!!
ゴリ巻きするが、あと10メートルのところの沈み根に潜られバラしてしまう。

底で掛かったやつは浮かせにくい。
よほど強引に早くやらなければ潜られちまうのだ。

数投後、アタリとも言えないような微妙な感じ、合わせると乗った。
こいつはうまく寄せる。


26.5センチ。

暫くしてガツンと来た。
26センチ。

その後、再び、根に潜られバラした。
どうも10メートルのところに横たわる沈み根が問題だ。

そこで根掛かり、ラインブレイク。
PEを編み直し、スプリットリグをセットし再びキャストだが
その頃から風が変わった。
強い向かい風。手がかじかんで来た。
アタリも次第に遠ざかる。

そろそろ潮時か。

しかし、手に息を吹きかけ、風の止む隙間を待ってもう少し。

右の方角でコツンと来た。ちょっと待ち、合わせる。
ロッドに重さが乗った。
すかさずロッドを高く差し上げゴリゴリと巻く。
バッドが僅かに曲がるのを感じた。
強い引きだ。
とうとう来たか!!
グングン巻く。

なんとか10メートルのところの沈み根を通過、上手く抜き上げた。
しかし、握った感触、尺クラスじゃないのが分かる。


28センチ。

ここからがいいところ。
と思うが、風はますます強く、突風で身体が持っていかれそうになる。
身の危険を感じた。

それが潮時だった。

前回は寒さに折れ、今回は風である。

しかし、正月の二回の釣り、それなりに面白かった。
最初は運良く尺が来て、二回目はスプリットの威力を感じさせてもらった。

次回からスプリットの世界が広がりそうだ。







小さなアタリ。

2012-06-15 | メバル
福井の仕事から帰って来て久々釣りに出た。

釣りに出るタイミングは波のこと。
私のポイントは凪では全く期待出来ない。

ポイントに立ったのは8時半。
予想通り1.5メートルの波、足下の磯には適当なサラシが出来ていた。

釣れる雰囲気が漂っていた。
久しぶりに海面はザワザワと動いていた。

先ずはいつもの方角、オープンな海へ向かってフルキャストする。
風は弱い向かい風だが、問題はなかった。

10グラムのフロートリグである。
1メートルのリーダーに0.5グラムのジグヘッド。ワームはお馴染みのガルプ、ベビィサーディン。
このポイントはデカイのはいつも遠くでヒットすることが多いし、地形的にもフロートリグかプラグが一番安定している。

数投しているうちにアタリが出だした。

やっぱりな。

続けてヒットするが20~23センチばかり。

今日はこのサイズの群れなのか、と少し気落ちするが
そのうち一段と小さいアタリ。

コ、コ!と。
そして妙な間合い、銜えているのかも、と合わせを入れると
ロッドに重さが乗った。
また小さいやつだろうとリールを巻くが、そうではなかった。
格段に重いやつだった。
慌ててゴリ巻きする。
手応えは尺クラス。
しかし、海面に浮かせようと強引に寄せる途中、抜けちまった。

デカイのもいるのだ。
すかさず、次のキャスト。
同じ方向、ゆっくりと引いて来る
同じポイントでまた小さなアタリ。
ココ、コ!
引くのを止める。
再び、コ、コときて、暫し待ってみる。
音沙汰なし。ここで合わせると再び乗った。

こいつはさらに重かった。
思うようにゴリ巻き出来ない。
ロッドを煽って寄せる。
PEスペシャル93がしなった。

なかなか浮かせられない。
そのうち、なにか障害物に当ったような重さが加わった。
恐らく、前右方向10メートルのところ水面すれすれに横たわるテトラだろう。
右前方から魚を寄せて来るときはこいつを乗り越えなくてはならない。
いつものゴリ巻きでそれは乗り越えられるのだが、こいつは違った。

そこでテンションが抜けた。
「あーっ!!」思わず叫んじまった。
ラインブレイクだった。
リーダーの先、スナップの結び目が切れていた。

小さい群れに混ざるようにデカイ群れもいる。
気を取り直し、また同じところへキャスト。

三度、同じところで同じような小さなアタリ。
集中し、アタリのリズムに合わせる。確実にと少し遅れ気味の合わせ。
こいつも乗った。
こいつも重かったが、先程のやつほどではなかった。
25~6センチか。
一気にテトラを乗り越え足元まで寄せ抜き上げた。

魚体を見て、予想外のデカさに驚いた。





29センチだった。


ラインブレイクのやつの重さとの比較で小さいと思ったのだが
勘違いだった。

二回のバラシと29センチ。
その連続ヒットは尺クラスの群れがいるということだ。
今夜はチャンスの夜なのだ。

と、期待に胸は膨らむのであったが
その後アタリは忽然と消え失せちまった。

でも帰る気はしなかった。
そのうち、もう一度時合いが来るに違いない。
それを待ってみることにした。
こんなチャンスは滅多にないのだ。

その後ぽつりぽつりと当るが25センチどまり。
引ったくるような激しいアタリもあったが、それはやはり25を越えないやつだった。


そして12時を過ぎた頃、再びあの小さなアタリ。
来た!!

集中する。
妙な違和感のようなあのアタリだ。
こいつもうまく乗った。
やはり一際重かった。
バレずに抜き上げることができたが



28センチだった。


その後、ついに尺クラスの時合いは来なかった。


釣り始めの続けて3度の小さなアタリ、
ほんの15分、
それが今夜のハイライトだった。

メバルシーズンの最後、梅雨のメバルは
デカイのが来るが、時合いは極めて短い。


嬉しがって写真など撮っている暇はないのだと
痛感した。

うっひゃ~~。



ソルトベイトフィネス。

2012-05-15 | メバル


昨年あたりからベイトフィネスという言葉が目にちらついていた。

これはあくまでもブラックバスのカテゴリーだが、ベイトリールが好きな私としてはちょいと気になるんである。

ベイトリールは小さなルアーを使えないというのが常識だが、
最近、極めて軽いスプールが開発され、小型ベイトリールにそれをつけて5グラム前後の小さなルアーでも使えるようになったのだ。

何故そこまでしてベイトリールなのかというと、それなりの理由がある。


さる軽量スプールのメーカーが言うベイトフィネスのメリットである。


A:ラインセレクトの自由度は6~10ポンドラインの中から自由にラインを選べ、ストラクチャーやシチュエーション、バスの大きさに対して、 ラインブレイクを激減させ、根ズレ強度に優るフロロカーボンの使用を可能とした。

B:手返しの効率UPでキャスト回数を稼ぎバスとの遭遇率を飛躍的に向上させた。

C:距離感のコントロール時、サミングで距離や弾道を的確にコントロールが出来る。

D:ベイトの方が飛ぶと言う新事実。ベイトではガイド抵抗も少なく、6ポンド以上の使用時ならベイトの方が飛距離を出せる。

E:ロッドの本数が限られるオカッパリでは、高い汎用性(ライトリグ~小型ハードベイト)やラインブレイクの不安が少ないベイトフィネスのメリットが最大限生かされる。


ベイトフィネスにはデメリットは無いのか?

 ベイトリールのデメリットはバックラッシュ。ベイトフィネスであってもバックラッシュを抑止することが最大のテーマであり、スプールレスポンスとブレーキセッティングが不可欠であります。
 ベイトフィネスに対応するリールの条件はスプール自重(ライン含む)による回転慣性が小さい事です。回転慣性が小さければ回転の立ち上がりも早く軽くキャストしただけで飛距離も充分に得られます。


ということらしい。
メーカーの言うことを頭から信じることは出来ないが、確かになあ、と思えるところもある。



私は釣りのイロハを越前の釣り師つーさんに習ったが、そのイロハの中にはスピニングリールは存在しなかった。
スズキ釣りから始まったが、リールは何の問題もなくベイトリールだった。
磯でスズキを狙うため、専ら11フィートや13フィートのロッド(Gクラフト、セブンセンス)にベイトリールを付けてスズキを釣っていた。

その後、メバルをやるようになりジグヘッドなどの極小ルアーを使うことで初めてスピニングリールを使うようになった。

今はメバルやアオリイカなどの釣りが主流になってきてスピニングを使うことが多いが、それでもスズキを釣るときは今だにベイトリールを使ったりもする。

要するに、基本的にベイトリールが好きなんである。

だから当然のこと、このベイトフィネスをメバル釣りにと考える。
2グラムのジグヘッドがキャスト出来るというのだから使えない筈はないだろうと。

私にとってのメリットはまず6~10ポンドのフロロを使うのだから根掛かりに強いだろうし、ラインブレイクをしてもすぐに直せること。システムがシンプルだということ。
そしてPEラインに比べ値段が安いということ。
また、サミングやフリーフォールがし易そうだし、大物とのやり取りもスプールを抑えることでコントロールし易いのではないかと想像する。

メーカーお抱えの釣り師たちがスピニングより飛ぶと言っているが、それはちょいと信用出来ないな。

とにかく、やってみる価値はありそうだし、新しいことに挑戦するのは想像するだにワクワクするではないか。
そしてこの冬、想像が膨らみワクワクがバクハツしてとうとうフィネススプール装着の中古のリールを手に入れてしまった。(アブガルシア、エリート)

しかし、ロッドが問題だった。
バス用なので、みんな短くて長くても7フィートだ。
私は基本的に長いロッドが好きで、メバルでも一番多用しているのは9.3フィートだ。
ベイトリールとのバランスもあるのだろうが、8フィートは欲しいところ。
で、いろいろ考えているうちに、ある知り合いのことを思い出した。

彼は大阪で手作りロッドの店(マタギ)を経営していて改造などもやっていると聞いていたので、早速電話してスピニングロッドをベイトフィネス用に改造出来るか聞いてみると友人価格でやってくれるという。

それならばと、改造してもらうことに決め、8.3フィートのロッドを送ったのだ。

それから数ヶ月後、ついにその改造されたロッドが届いた。
日にちは掛かったが、丁寧な仕事でとても改造とは思えない仕上がりだった。

前置きが長くなっちまった。


そんなわけで、昨日天気もよく凪だったのでベイトフィネスの試し釣りに出かけた。

場所は輪島のとある漁港。突堤の先のテトラ。投げ易く、水深も適当にあり試し釣りには最適な場所である。

先ずはメバル用6グラムのプラグを投げてみる。
これは問題なく飛んでくれる。とてもいい感じでバックラッシュの心配は全くなかった。
しかし、軽量スプールはラインを沢山巻けないという欠点がある。
スプールの軽さが命なので、6~10ポンドラインでせいぜい40メートルくらいか。
今回は8ポンドを40メートル巻いてみた。
フルキャストすると殆どラインが出てしまうが、そのことを頭に置いておけばそう問題はなかった。

その後、5グラムのフロートリグをキャストしてみる。
これも問題なく飛んでくれる。使えそうだ。

次に問題のジグヘッド。
先ずは4グラムのジグヘッドをキャストしてみる。
狙ったところより左にずれて着水するが、そのことを頭に入れてキャストすると大体狙ったところには落とすことができる。
30メートル前後は飛んでくれる。

そして3グラムのジグヘッド。
この日のメインの試験だ。
やはりキャストするのにコツがいる。
左に流れて着水する傾向は4グラムより強い。恐らく常に掛かるブレーキのせいだろうと思われる。
投げる時、テイクバックを大きくし、早めに指を離す必要がある。
手首だけで鋭く投げようとするとバックラッシュだが、大きいアクションでロッドにルアーの重さを乗せてキャストすればバックラッシュはなかった。
飛距離は20メートル、上手くキャスト出来た時で25メートルくらいか。
慣れればもう少し飛ばせるだろう。
メバルを釣る場合、殆どはテトラ際や磯際で釣るわけで、20メートルも飛べば問題はないのだ。
遠方を狙うのでないならば、かえって無駄がなくていいかもしれない。


今回の試しの殆どの時間は3グラムジグヘッドの練習だった。これに慣れれば2グラムも使えるようになるだろうと。

このスタイルはフロロラインということもあり、どちらかというと横の釣りではなく縦の釣りに適しているように思える。
キャストし、テンションフォールやフリーフォールで底まで落とし、シェイクさせたり、ワインドで引いてみたり、ずるずる引いたり、大きくリフトさせフォールさせたり、なんだか小さなイカ釣りのようなアクションだが、全体にそれらのアクションがやり易いと思った。


表層ではまったく釣れる気配のない漁港内のベタ凪の海だが、底ではなにかと反応がある。

先ずは小さなカサゴクン。



その後、こいつ。


小生のルアーでの最小記録だろうな。

そして記念すべきベイトリールでの初メバル。


ちっちゃ。

ソイクンも来た。これも小さいやつ。



続いて今度はまあまあの引き、ソイクン。




赤メバルクン。




そしてロッドも絞り込まれ、なかなかのファイトを見せたカサゴクン。27センチ。



その他、時折アジなども。



今回はキャストなどの試しが目的で釣ることは問題外だったが、このスタイルで実際魚が掛かるのは初めてのことで小さいながらも楽しいのだった。

なにせ底での釣り、何度も根掛かりしたが、流石にフロロは強くて殆どはフックを伸ばしながらも回収出来たが、それでもジグヘッドのロストは二度あった。
しかし、PEラインのようにラインの途中からブレイクなんてことはなく、ジグヘッドとの結び目が切れただけでその修復の簡単なこと。
これは面倒くさがり屋の私にとっては大きいメリットだ。



さて、これからの実際のデカメバル釣りにどのくらい使えるのか分からないが、テトラ際や磯際、底を狙うなど、根掛かりし易い場面では出番がありそうだし、
プラグやフロートリグなども比較的近距離を狙う場合、回転良く使えそうだ。



次回はこのスタイルで尺を狙ってみよう。









友の笑顔

2012-05-09 | メバル
ちょっと遅くなっちまったが、やはり書いておこう。
友の笑顔があまりに印象的だったから。

連休に京都から友人福ちゃん一家が遊びに来ていた。

彼らに釣りたてのメバルの刺身を食わせてやりたいと一家のお父さんである福ちゃんとでかけた。

彼はサビキでのアジ釣りくらいしかやったことがないので
いきなり暗闇でのキャストは無理だろうと少し明るさが残っている時間に出かけた。

海の状況は悪くなかった。
このところの凪が前日突然荒れて、その日ちょうど収まって来たところ。
1.5メートルの波か、適当なサラシが出来ていて風も追い風だった。
なんだか釣れそうな雰囲気が充満していた。

ただ、先客がいた。今年初めての先客だ。
しかし、どういうわけか左の釣り座だったので、われわれは右の釣り座を陣取った。
メバル釣りなら右の釣り座の方が本命なのだ。運がいいとしか言いようがない。
後から聞いてみると、彼は朝まづめの青物が本命で、その場所取りに前夜の夕方から来てメバルやアジを釣って朝を待っているのだという。
青物なら左の釣り座なのだ。このところ朝まづめにヒラマサやガンドが釣れるらしく、それを狙っての釣り師も多いらしい。
いや、前の晩から場所取りとは気合の入った釣り師である。

我々はあくまでもメバル。
まだ明るさの残っているこの時間、先ずは福ちゃんに飛ばしウキだけを付け、キャストの練習をしてもらう。
私は様子見にキャスト開始。

思った通り、暫くすると頻繁にアタリはじめ、先ずはヒット。23センチ。



次のキャストもヒット、22センチ。



サイズは小さいが、活気がある。時合いだ。

友人もバランスが悪いながらもなんとか飛ばしウキを海へ運ぶことができるようになったようだったので、リグを装着、早速やってもらう。
今がチャンス、なんとしても彼に釣ってもらいたいわけだ。

ところがなかなかうまくいかない。
足元の磯に根掛かりしたり、ライントラブルの連続で、とうとうラインがぐちゃぐちゃに縺れてしまった。
既に辺りは暗くなり、暗闇へのキャストなわけで、初心者には何がなんだか分からないというのも当然のこと。

縺れをほどき、リーダーを付け直してやりたいが、今が時合いである。
メバルの時合いは短い。
彼らに刺身を食わせたいし、彼に釣ってももらいたい。

この矛盾、焦りを彼は読み取ってくれ、直すのは後にして今は釣ってくれと言う。

この時合いは言葉に甘えることにして、釣ることの一連の動作を見学してもらい、とにかく釣る。


23センチ。


24センチ。みんなでかくはないが、形がよかった。

その後小さいの数匹、やはり短い時合いだった。


その後、最初の時合いほどではないものの、アタリはぽつぽつあり、ぽつぽつ掛かった。


やっとデカメバルらしいやつ、26センチ。


23センチ。


25センチ。

まあこんな感じで、まあまあコンスタントに掛かるのだがサイズは26センチどまりだった。

中クラスの群れだったようだ。


先客もメバルのタックルに変えてメバルを狙うが掛かっている様子がない。
彼の釣り座からの方向にはメバルはいないのだろう。
後からやって来てこちらだけが釣り上げているのはなんとなく気持ちが落ち着かず、彼に声をかけ場所を譲ってみるのだが、やはり釣れない。

不思議なのだ。彼も飛ばしウキを使い、ワームも同じ、投げる方向も同じなのに釣れない。
何故か掛かるのは私だけなのだ。

福ちゃんにヒットしないわけはハッキリしている。ルアーが魚のいる場所に届かないからだ。
しかし、先客はキャストを見ても相当のベテランである。しっかり届いている筈なのに、釣れない。
こういったことはよくある。原因は分からない。

微妙なレンジの違いかと、ジグヘッドまでのリーダーの長さも同じにしてもらったのだが、やはりかからないのだ。
私が彼の立場なら、頭に来て帰るところだが、彼はその状況を笑っている。
まあ、本命が青物だから余裕があるのだろう、いや、ひょっとして相当練れた釣り師なのかもしれない。

福ちゃんは相変わらずトラブルの連続で飛ばしウキのストックもなくなって来た。
優しいやつでそのことに気を使うのだが、問題はない。
なくなったら、なくなったときなのだ。

それより、彼がまともな釣りが出来ないことが残念だった。
やはり、初めてでいきなり夜のキャストは難しかったとみえる。
で、一度、見本に私がキャストしてしてみせ、彼に引かせてみた。
すると、かかった!!


22センチ。

とにもかくにも初めて釣ったメバルだが、彼の顔は満足していない。


その後、私が根掛かりラインブレイク。
ラインを編み直している間、
彼の叫び声!

見ると、彼のロッドが絞り込まれているではないか。
ロッドの曲がりから案外でかいのではないか。
巻けー!!巻けー!!と思わずでかい声を出しちまった。

そしてバレずに上がって来た。
26センチ。

ついに彼が釣ったのだ。彼自身のキャストで。



やはり、先程の顔とは違い、心からの笑顔である。
ともあれ一匹釣るという彼の目標は達成されたのだった。
そして、私としてもこの写真を撮るのがその夜の一番の目標だったのだ。


その後、アタリは遠のいたので、プラグでやってみると



先客さんもプラグに付け替え、
すると、掛かった。

「やっと掛かった!」と満面の笑顔でメバルを我々のバケツへ。
ありがとう。


その後、とうとう飛ばしウキもなくなり、アタリもなくなったのでオシマイにした。


全体に久しぶりのメバルの活気だったが、ついに尺クラスにはお目にかかれなかった。
釣果は22~26センチ20匹だった。




明くる日、福ちゃん一家はたらふくメバルの刺身を食べ、京都に帰って行ったのだった。


福ちゃん、これに懲りずにまたやろうな。

次回はきっとうまくキャスト出来るよ。




つーさんのぎゃふん

2012-04-14 | メバル
前回釣った28センチをミクシイにアップしたら、福井のメバル師つーさんからコメントがあった。
「へへ、勝ったー!!」と。

で、よく見たら彼は明くる日29.8センチをあげていた。もう尺メバルといっていい大物である。

ふむ、流石つーさんやるもんだ。しかし、そう言われると口惜しいではないか。

これはもう、彼をぎゃふんと言わすしかないではないか。

なんてことを考えていると俄に沸々と闘志が湧いて来るのであった。


で、昨夕、彫刻刀をパタリと置いて出かけたのである。

場所は勿論、前回と同じ。
二年前、落下して右足首を骨折したので「右足の崖」と名付けている本命ポイントだ。

7時前、いつもの釣り座に立つと波は1.5メートル。
足下のサラシの範囲はそう広くはなく、海全体がザワザワとして活気があった。
こんな海は釣れるんである。
今夜はじっくりこの海と付き合おうと決める。

しかし、風が予想外に向かい風だった。メインの方向の真向かいである。
でも3メートルくらいだからキャストは出来る。
真正面からの風は飛距離が出ないが横風よりは釣り易い。

いつもの通り、先ずは6センチ7グラムのプラグを投げてみる。
向かい風だから、なるべく弾道低くライナーで。
思いのほか飛んでくれるようだった。
しかし、音沙汰なし。

そういえば、前回の魚の腹から小女子が出てきたことを思い出し、
ルアーボックスになにか細いやつないかと探してみれば、あった、カーマ60。
そいつを付けて投げてみると直ぐにアタックしてきた。
最初のアタックはバレたが、次もアタック。こいつは乗った。
最初のやつの方がでかかったが、まあいいだろう。


22センチ。


ところが、アタックは続かない。この二投だけ。

いろいろ違うプラグを付け替え投げてみるも同じ。

で、やはりフロートリグ+ガルプでやってみる。
ここは足場が高く、でかいのがヒットするポイントは遠いので、ジグヘッド単体というのは考えにくい。
6.7年前、この場所に出会ったことが飛ばしウキを使う切っ掛けになったのだが、向かい風となれば尚更のこと。

それでも海は沈黙であった。
しかし、帰る気には毛頭ならない。
この海は釣れるという半ば確信めいたものがあった。

一時間後、本命方向、遠いところでコン!と来た。
そこで合わせない、次のコン、ですかさず合わせる。乗った!
ゴリ巻く。強引に寄せる。バレる間も与えない。
抜き上げる。魚の全存在がロッドにかかる。いい感じ。




28センチだった。


やはり釣れないはずはないのだ。
と納得するが、その後パッタリ。

ほんとぱったり。

で休憩。
いろいろ考えてみる。何故釣れないのか。
熱いコーヒーをグビと飲む。
タバコも一服。

しかし、分からない。
空は薄曇りででっかい星と惑星だけが宙空にボンヤリと浮いていた。
我が頭もボンヤリで冴えた考えは出て来ない。

もう一度、プラグからやり直す。
潮目を狙っても、サラシ際、磯際、テトラ際を通しても、レンジを変えても、思い切り遠くを狙っても、プラグを替えても、音沙汰はなかった。

一時間後、再びフロートリグに替えてみると当ってきた。


25センチ。

28センチと25センチ、前回と同じようだが、前回とは海が違うのだがなあ。

時計を見ると丁度9時を過ぎたところだった。
まだ釣りはじめて2時間あまりだが長い時間やっているように思えた。

寒かった。気温は7℃でさほどでもないが、二時間向かい風の中に立っているとじんわりと冷えて来るようだ。
上着も真冬用ではなかった。甘かったか。
今夜はじっくりと粘るつもりだったが、この寒さにくじけそうになる。

さらに小一時間後、偶然のようなアタリ。
こいつも25センチ。





その後、風も強くなってきたし、その釣り座は諦め、移動することに。


帰り道通過する高いテトラ。

今年に入って何度か入ったが、釣れなかったポイントだ。
でも怪物がいそうな、そんなポイントでもある。

思った通り、ここは追い風であった。
途端に身体が温かくなり、闘志が湧いて来る。

そして、ここからがこの釣りのメインイベントだった。


早速、正面のテトラの浮き根辺りにフロートリグをキャストする。
海面まで10メートルはあり、上からの釣りなのでストラクチャーがあまり気にならない。
こここそ、飛ばしウキの真骨頂である。

ソロソロと引いて来る。ストラクチャーに近くなるとさらにゆっくり。

コツッ!と来た。
ガンと強く合わせると顎にしっかり食い込んだらしい。
ゴンゴン引いて、エイヤー!と10メートルを抜き上げる。

途中、テトラに擦りもするがかまわず巻き上げる。
重くても途中で躊躇してはイケナイ。一気に巻き上げる。
PEスペシャル93はこのポイントにもってこいのロッドだ。

重い魚がテトラをすり抜けるように上がってきた。大きいぞ。
手元で暴れて落とさないようすかさずフイッシュキーパーで口を掴む。
よく見ると思ったよりデカイではないか。



平らなところへ持って上がり、測ってみる。
29センチだった。



よし!!やはり今日の海はいいのだ。
チャンスの夜なんである。
なんだかどでかいのが来そうな雰囲気がある。


釣り座に戻り、キャスト再開。

数投後、同じ地点でまたカツン!と来た。
今度はちょっと待って
ゴゴゴゴと来たところで合わせる。ガツンと。

ここはしっかりフッキングさせないと抜き上げの途中でバレて落ちてしまうのだ。
海に落ちればいいが、テトラに当ったりすればオシマイである。なるべくそれは避けたい。

こいつも重かった。
グングン巻き上げる。魚が上がってきた。


こいつも計量サイズ。


28.5センチ。


尺クラスが来そうな予感に包まれ身体が熱くなってきた。


暫く間が空き、25センチ。



そして27センチ。





来そうで来ない。あとちょっと。


時計を見ると丁度12時だった。


そこでトラブル。
テトラに根掛かり、ラインブレイク。
PEを編み直し、再開するが、また足下のテトラに根掛かり、しゃくって外した拍子にリグとラインが縺れてしまった。
なんとか縺れを直そうと格闘すること20分、どうにもならず、ラインを切り刻んで綺麗にしたが、PEをまた編み直すのも面倒なので、PEラインを直接リグに結び、キャスト再開。

ところが、このやり方はちょっとしたことで直ぐにリグとPEが絡み縺れてしまうことに気が付いた。
リーダーを付けるのは自由にプラグやジグヘッド単体に付け替えられるからだが、それだけではなかった。フロートリグを付けた場合、縺れにくいのだ。

またひどい縺れになり、あーら面倒臭いと、これを機に帰ろうと思ったが、思い直した。

こんなチャンスの夜はそうそうないのだし、つーさんをぎゃふんと言わすサイズはまだである。
まだ余力も残っていた。


平らなところへ上がり、腰を据えてPEをもう一度編み直し、しっかりとリグを作り直した。
そんなこんなに小一時間費やしてしまった。

さてと、気を入れ直し、キャスト再開。


しかし、すったもんだやっている間に、すっかり海の様子は変わってしまった。

ワームを変え、落とすポイントを変え、延々とキャストするが全く反応はなかった。


それでも一時間後、突然引ったくるやつがいた。
重さからひょっとしてと思いながら巻き上げたが、


28センチ。

届かない。


その後一時間アタリなく、そこで諦めた。

2時半だった。



というわけで、ついにつーさんに届かなかった。

あの時トラブルがなかったら、と思うが、それも自分が未熟なせいである。


まあな、


つーさんのぎゃふん、は後の楽しみにとっておこう。



そのうちだ。





いよいよ水温も上がり、メバルたちの活気も少しは出てきたように思われる。

例年に比べると2~3週間遅れているような気がする。








しぐれてゆくか 再び

2012-02-08 | メバル
2月6日、気温が緩み降り続いていた雪が雨になった。
ということは波も落ちる。1メートルだという。

2月は半ば諦めていたが、俄然釣りへの熱情が蘇る。
晩飯後、降りしきる小雨の中、呆れ顔の連れ合いを尻目に出かけた。

なんだ、雨くらい
である。

前回と同じ、怪物を狙えるポイントである。
久しぶりの釣りにワクワクするのであったが、
2月の釣り、やはり渋かった。

キャストを始めて30分、やっと小さいの。
22センチ。



いないわけでもなさそうだ。

が、いるわけでもなさそうだった。
どこをどうやっても反応なし。


あまりの渋さにフロートリグを諦め、ヤケクソ半分プラグを投げてみた。
ブルースコードC60。思い切りのフルキャスト。
表層にいそうにないので、カウント15でゆっくりと引く。

と、食いついた。


23センチ。

小さいが、久しぶりのブルースコードでのヒット。

で、その次も。
こいつはデカメバルの引きと重さ。


26センチ。

暫く間を置いて


ヤリイカだった。うっはー。

その後も乗らないがバイトはあった。

今日はプラグのパターンか、
と思いきや、

沈黙。


前回のメバルの胃からアミ(小エビ)が出てきたのを思い出し、
ジグヘッドケースの中にあった自作のカブラをフロートリグに付けて投げてみた。


(錆びていたが、なんとか使えそうだった。)

すると、すぐに食いついた。



24センチ。

次も、


23センチ。

その後も続き、4連ちゃん。

やはり、アミパターンだったか、よし!
と、心沸き立つが


また沈黙。


再び、ワームに戻り、プラグをやり、カブラもやってみるが、この沈黙は深く大きかった。

小雨は時折大粒になって防寒ジャケットの背中でパラパラと音を立てた。


移動した。

高いテトラへ。
雨に濡れたテトラ、滑って落ちたらオシマイだ。
慎重の二乗で釣り座につく。

水面からの高さはゆうに10メートル。
ルアーを回収するに途中突き出したテトラが邪魔をする。
極めて釣りにくいポイント。
ライントラブルやルアーのロストは覚悟しなければならない。
一般の感覚ではここで釣りをしようと誰も思わないだろう。
だからこそ怪物と出会える可能性は高い。

PEスペシャル93はまさにこんな釣りのためのロッドだ。
まずはフロートリグ、12グラムのスーパーボールにカブラを付け浮き根周りを狙ってみる。過去、ヒット率の一番高いエリアだ。

風は緩い追い風だし、海は適当に荒れて悪くなかった。

しかし、事件は起こらない。

カブラをジグヘッド+ベビィサーディンに替えてみる。

ここは前方に細長い磯が斜めに横たわっており、テトラとV字を形作っている。
そのV字の一番奥を狙ってキャストする。
この方向は障害物が多くできることなら避けたいところだが、幸い風向きが良くトラブルにはならないようだった。

その一投目、きた!!

乗った!でかい!!
こいつを待っていた。

根に潜られないようゴリ巻く。
薄暗い海面、魚の躍動が白い筋となって10メートル下の足元に近づいて来る。
この方向は抜き上げの途中、必ず宙空に突き出したテトラに擦ってしまう。
躊躇していたらそこで落としてしまう。
一気に巻き上げ、抜き上げるしかなかった。

いっちにのさん!!
ロッドを跳ね上げ高速で巻き上げる、
魚の全重量がロッドに掛かる。

しかし、案の定、魚体がテトラに当った瞬間抜けちまった。

おそらく、口の横にフッキングしたものと思える。
ここでは、特に大型は上顎にしっかりフッキングさせないかぎりランディングは難しい。

気落ちはしなかった。
でかいのがいることが分かったからだ。
雨に濡れそぼった心は再び活気を取り戻した。

しかし、その活気も虚しく空振り。
1時間半ひたすらでかいのを狙ったが、25センチ一匹。




防水の筈の防寒ジャケットもじんわりと雨が浸透し、グローブもグチョグチョになっていた。
前回のような凍り付く寒さではないが、すでに指先の感覚が鈍く力が入らない。


依然止む気配のない雨の中を車へと向かった。


しかし、メバルというやつ、分からない。
プラグに食いついたかと思えば、カブラになり、最後はワームにしか反応がなかった。
こんなにもクルクルと変わっちまうのだ。


帰って26センチの胃の中を見ると、こんなやつ。

5~6センチの小さな魚、おそらく波の花。
プラグに食いついたわけだ。
他のやつの胃は空っぽだった。