永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

釣りに出かける理由。

2011-10-11 | アオリイカ
釣りに出かけるにいろいろと理由がある。

私の場合、釣りはブログのタイトル通り、私が直球で幸せになれる行為だが、だからといって毎日釣りをしている訳じゃない。
釣りに出かけるには何かの動機と契機がある。

その日、連れ合いのパート仲間の女の子が泊まりに来ることになった。彼女は最近離婚し、近々金沢に引っ越してやり直すのだという。
引っ越す前に連れ合いと是非話がしたかったらしい。
女同士の積る話もあるのだろうと、その夜私は釣りに出た。

イカ釣りシーズン後半はイカも成長し深場へと移り、夜釣りが主流になるが
この時期、まだ夜釣りには早かった。

しかし、ぼつぼつ来た。





サイズも少し上がって来たようだ。


日中の釣りと違って夜釣りはラインを伝わって来る微妙な魚信が頼りとなる。
視覚的な情報が少ないので、かえってイカとのやり取りに集中できる。

基本的には底を狙う。まず深さを測る。カウントしてどのくらいで底に到達するか。
同じ深さでも風や波、潮流に寄って落ちるスピードは違う。
だからその時、その時のカウントがある。

その夜はカウント40で底に着いた。
カウント35で鋭い2段シャクリやタンタンタンと振り幅の小さいジグザグダートでエギを動かし、またフォールさせる。そしてまたエギを動かす。
エギを鋭く動かすことと、シャクリのパターンを作らないこと、また夜の場合はエギを小さく動かすことが肝心かと思われる。
そして底の少し上あたりの位置を保つ。

フォール時、ラインには常に軽いテンションを掛けているが、そのテンションに違和感を察知したら、それがアタリである。
もわっと重くなったり、急に軽くなったり、突然引ったくったり、また、そうっと引っぱるような感触。

私はそうっと引っぱるようなアタリが好きである。
その時はラインを少し出してやり、ワンテンポ置いて合わせる。
するとぐっと重さが乗る。してグイグイ引っぱる。
こいつが楽しい。

違和感を感じても乗らない時がある。その時はエギの周囲にイカたちがいることをしっかりイメージして誘ってみる。エギをあまり移動させず鋭く動かして待つ。それを繰り返す。
それでも乗らない時はエギを追っかけて来ていることが多いので、足元まで気を抜かないことだ。

底でアタリがなければ、表層も狙ってみる。
水深3メートルくらいのレンジ。
時折、このレンジで入れ乗りすることがある。

しかし、この夜は表層はサッパリだった。

ベタ底でなんとかぼつぼつである。





曇り空で月もなくただ暗い海だった。
目の前に広がる闇と波のざわめき、そして我がロッドが空を切る音だけだった。

連れ合いの同僚はほんわかとした空気の可愛い女性である。
離婚は旦那の浮気が原因らしい。
結婚して4年目だという。
2年悩んだ挙げ句、別れることを決意したのだとか。

まあ生きていればいろんなことがある。
いいことも悪いことも。
そしてまた、いいことも悪いことも二つ続かない。

離婚は若い彼女にとって一大事だったに違いないが、なんてことはない。
今の世、掃いて捨てるほどある。
そのうちいい男と出会いまた結婚すればいい。
故河合隼雄氏も理想の結婚は二回目の結婚だといっているではないか。
美味いイカ食って新たな出発だ。

と、・・・・掛かった!!



うっは!!マイカ。

この夜の釣果は20センチ弱が15杯。

翌日、彼女はシャキシャキのイカ刺しをたらふく平らげ、でかいお椀のご飯もお代わりし、
いい顔で帰って行ったのだった。





その2日後、横浜で暮らしている娘たんぽぽが幼馴染みの結婚式で帰って来た。
久しぶりに帰って来た彼女に何が食いたい?と訊くと
「イカ刺し食べたい。」と言う。

誰かに美味い魚を食わせたい、というのは私の釣りに出かける大きい動機である。
してそんな時は多くの場合、釣れるんである。
いや、釣れるまで帰らないのかも。

彼女が食べるに5杯もあったら十分だろうとタカをくくり
軽い気持ちで昼前に出かけたのだが、これが甘かった。

先日40杯釣れたポイントであるが、
釣り始めに20センチが釣れ



いい調子だと思いきや、
その後、サッパリ釣れない。

ここは確実に釣れるポイントだと確信していたが、
このポイントでも昼を過ぎると駄目らしい。
風も悪かった。
右からの強い横風。

しかし、テトラ帯の中程でやっている人には時々釣れているようだった。
いないわけではないが、私の守備範囲ではなかった。
私の釣り座はいつも通りテトラ帯の先端なのである。

だからといってテトラ帯の中程の、その釣り師の隣に移動する気にはならない。
しかし5匹は釣りたい。
とうとういても立ってもいられず、テトラ帯の根元に移動した。
ここは浅いが目の前に潮目があり、あぶくの帯ができている。
そのあぶく帯を狙ってみようと思ったのだ。

がしかし、ここもサッパリである。
なんだかな、どこかタイミングがズレている。
釣りは追っかけてはイケナイ。というのが持論である。
まあ人生も同じだな。
うまくいっている人の真似をしたり追っかけても駄目である。自分なりのやり方で生きる。

気持ちを落ち着け、先端の釣り座に戻った。
ここは潮の流れもあり深くていいところなのだ。ここでじっくりでかいのを狙おう。
改めて目の前の海と対峙する。
海と自分と。それだけの世界。

沖に向かって風上の正面、低い弾道でキャストする。
3.5号のエギは案外飛んで釣りになる距離に着水する。
カウント50、ベタ底を狙ってみる。

掛かった。

案外の重さ、20センチだった。



その後もぼつぼつと掛かり始めた。




いつの間にか隣の釣り座に若いカップルが登場していた。
なんだか楽しそうにやっている。
彼女と釣りに出かける。それほど楽しいことがあろうか。

ぎっちょの彼氏のキャストが独特で面白く、イカ釣りに慣れた様子で時折イカを引き寄せていた。
なんでも毎週末金沢からここにやって来てイカ釣りをやっている二人なんだそうだ。
道理でここのテトラを知り尽くしている感じだったし、的確な釣りであった。



この日は土曜であったが、いつになく道路には車が多く走っているし、ざわついた雰囲気があった。
珍しい車の渋滞を見て「明日はダイワ主催のイカ釣り大会が輪島で開催されるので、ポイントの下見にやって来てるんです。」と彼が言う。
毎年この時期に行われる大会で金沢富山から釣り師が250人程度参加するらしいが、なんと彼は昨年のチャンピオンで彼女は3位だったのだとか。
勿論、明日の大会にもエントリーし、連覇を狙っているのだそうだ。

彼は18センチが釣れてもリリースし
「こんなんじゃ優勝出来ませんね」と笑うのであった。
で、そんな彼氏を嬉しそうに見守る彼女なんである。
ナイスカップル、いいね、このやろー!!

そうこうしているうちに周囲は薄暗くなり、二人は爽やかな印象を残し姿を消したのだった。
名前はフクシマさんというらしい。またどこかで会えるだろう。

で、私。
この時点で既に5杯はクリアしていたが、なかなか帰れなかった。
この一投で帰ろうと思うと掛かり、
また最後の一投で掛かるんである。

で、最後の最後でまた掛かる。
そいつは根を引き剥がすような重さがあり、引きもこれまでになく強かった。バレるなよと慎重に引き寄せ、よいしょと抜き上げる。
思ったほどの大きさではなかったが、それでも今季の最大であった。


21センチ。

で、泣いても笑ってもこの一投で
またこいつが掛かり、これで終わりにしたのだった。



マイカ。


釣果は結局20杯。

釣れたとは言えないが、目一杯の釣りだった。


言うまでもなく、たんぽぽは美味い!!美味い!!の連発でイカ刺しを貪り食ったのだった。
まず横浜ではこんなプリプリのイカは食えないのだ。







ところで、福井のおみつさんからメールが届いた。おみつさんはつーさんの嫁さんである。
今年の12月、彼女のギャラリー・ゲッコウカフェで展覧会をすることになっている。
メールの最後にはこう書いてあった。

「釣りもいいけど版画もね!」

うっひゃ~~!!






【お知らせ】

師匠つーさんが釣り雑誌にデビューした。
つーさんは釣り師としてすでに北陸周辺では知られた存在だが、釣りだけでなく文学や哲学にも造詣が深く、いい文章を書く。
そのことは彼のブログ「星空キャスティング」に明らかだ。(ブックマーク参照)

その彼が雑誌に記事を書くというのはまさに水を得た魚のごとくなんである。
雑誌の名は「イカプラス」。東海・北陸のイカ釣り情報満載の釣り雑誌売れ行きナンバーワンのメジャー雑誌である。
今回の記事はアオリイカ釣りについて。特に秋のイカ釣りシーズン後半の釣り方として常識となっている底をとるやり方をひっくり返し、表層を狙うという提案が目を引く。
彼の釣りの素晴らしさは常識をしっかりと踏襲しながら、それに固執しない視野の広さと柔らかい感性で独自のテクニックを開いていくところにあるが、イカ釣りでも惜しみなくそのテクニックが披露されているわけだ。

このブログに立ち寄った貴方に是非、手に取っていただきたい。貴方の釣りにとって何か光るものを手に出来ること請け合いである。

12月には彼の真骨頂デカメバル釣りの世界がさらに大きい紙面で展開される予定だ。
楽しみに。