永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

めばるたちよ。                                 6月21日

2011-06-23 | メバル
このところ凪ぎ続きだった海が少し荒れて来たという。

それを待っていた。
メバル釣りである。

もう久しくメバル釣りから遠ざかっていた。
4月5月のいい時期に仕事に追われていた。

3月30日、女釣り師と尺メバルを釣ったあの記憶が蘇る。

あのメバルのアタリ、アタックの衝撃、引きの手応え、あの魚体、まん丸い目、それらが身体中を巡り、もういても立ってもいられない。

勿論、そのポイントへと向かった。

釣り座に立ってみると我が期待はあっさり裏切られ、海は静かに凪いでいた。
でもベタ凪ではなかったし、魚の気配は感じることができた。
風も強いが、追い風だった。

ともかくジグヘッドにガルプ、ベビィサーディン白を付け投げてみる。
近くまで引いて来てコン!ときた。
小さいが明確な魚信、これがメバルのアタリである。
次のココン、で合わせる。乗った。が、軽い。18センチだった。海に戻す。

ふむ、魚がいないわけじゃなさそうだ。

二投目、またアタリ。でもちょっと違う、続けざまに当って来るが乗らない。
フグだった。ガルプはズタズタにちょん切られていた。

ならば、とプラグを付けた。
一投目、ヒット。23センチ。
久しぶりのメバルである。でかくはないがこの顔、このデカイ目、握った感触、なんだか嬉しい。



今回このサイズは煮付け用に持ち帰ることに。
うまいんだなこれが。



しかしその後は当らない。

プラグの質を変えてみる。深いレンジを狙えるやつ。
底まで落としリフトアンドフォール。
と、掛かった。
これも23センチ。




しかしその後は当らない。

またプラグの質を変えてみる。表層だが小さいやつ。
飛ばないので飛ばしウキでやってみる。

掛かった。でも20センチ弱。海に戻す。
その後、数匹。どれも小さい。


暫くするとプラグでも反応はなくなってしまった。

何となく思うのはルアーは小さい方がいいような・・・・
ベイトが小さいのだと想像する。

大きめのプラグやワームが効果を発揮するのはやはり荒れて活性の高い時だ。
海が静かなとき、大きいベイトは捕らえにくいのだろうし、メバル自身警戒心もあるのだろう、小さいルアーのほうが有利、というのが私の経験だ。

フグが去ったことを祈って、再びジグヘッドにガルプでやってみる。
一投目からガツンと引ったくって来た。23センチ赤。




どうやらフグはいないようだった。
数投目、また来た。今度は案外の引き。25センチ。ブルー。




暫くしてまた。24センチ。ブルー。




その後、小さいのは掛かるもののサイズが出ない。そのうち突然のように反応がなくなった。方向を変え、レンジを変えても同じである。



ともかく25を超えるやつにお目にかかりたいと思う。
魚がいないわけではない。どこかにきっといる。でも食いついては来ない。
そいつを引き出すことができない。

で、ワームを変えてみる。以前買ったものの釣れそうになく使わなかった、クルリと尾っぽを巻いた大型のワーム。デカイのを狙って。
と、やはり一投目で来た。が、やはりサイズは伸びない。23センチ。



で、案の定、そのアタリだけだった。
ふむ。


ここでちょっと休憩。ポットに詰めて来た熱いお茶を飲み、煙草を一服。
天頂近く白鳥座がゆったりと翼を広げ、ベガもアルタイルも美しく瞬いている。
もう夏なのだと気がついた。
後ろを振り向くと、山の端近く、アンタレスが「おれもいるよ」と赤く輝いていた。


凪では釣れないというのが小生の常識になっているが、本当にそうなのか、それは思い込みではないのか、という思いが引っぱる。
それでいろいろやってみる。でも小さいのは釣れるもののやはりデカイのは来ない。

活性が高くどんどん釣れている時はルアーを変える必要はない。同じやつの方がいい。
でも活性が低い時、ルアーを変えることは当たり前のこと。
種類や色など、いろいろとやってみる。
でも今回のようにそれが際立ったことはこれまでにない経験だ。
ルアーを変えた1.2投だけに反応があり、その後はなくなる。
そのパターンである。

それは魚はいるが食いつかないというまさに活性の低さを現している。
魚たちに余裕がある。もう何が何でも食いつきたいという状況ではないのだ。
私がメバルだとしても、初めて見る魚のようなものに、おっ!なんだ、なんだ、と近寄り思わずパクッとやることがあるにしても、同じやつが同じように泳いで来たら、ふん、と興味を示さないだろう。

もうやめようと思っていたところ、ジグヘッドボックスに入っていた自作のカブラを発見。最後にそれでやってみることに。
私はジグヘッドを自分で作ったりするが(安上がりなので)、そのついでに作ってみたやつだ。
作っては見たがどうにも釣れる気がせず使わなかった。

ステンボーシンカーを付けて投げてみると
あんりゃりゃ、一投目から食いついた。しかも活性のあるアタリだった。しかし、また23センチ。



そして連続ヒット。
いや驚いた。自作の適当に作ったカブラである。これほど効果があるとは思っても見なかった。




自作のカブラを改めてよく見た。
意識はしていなかったが、これはエビなんだと思った。
凪の澄んだ海ではやはり小さいものを食っている。エビは御馳走なのだ。

結局、それがその日一番アタリが長引いたルアーだった。


尺を狙ったが、それどころか25センチアップも釣れなかった。
しかしだ、
狙った通りデカイのが釣れるのは嬉しいに違いないが、それだけが釣りではない。
結果よりもナマの時間と体験である。

海や魚たち、空や星たちとどれだけの会話が出来たのか、
なにか新しい発見があったか、
心ゆくまで遊べたか、
そしてさらに言うなら、自分自身と出会えたか。
それらのことがいい釣りだったかどうかのキーワードだと思っている。

バケツに入った10匹のメバルたち。
メバルたちの顔を眺めているうちにふと思ったことがある。
こいつたちも放射能に汚染されているかも知れないなと。

3月11日を境に世界は変わっちまった。
これからも海の汚染は広がり続けるに違いない。
しかし、私はこのメバルを食おうと思う。
海とこの魚たちとこの先、死ぬまで付き合っていこう

と、強く思った。



難しい釣りだった。   磯スズキ再び。                  6月18日

2011-06-21 | スズキ
能登の春の磯スズキのシーズンは6月いっぱいまでか。

メバルも6月いっぱいである。
メバルもあれからどうなっているのか気になるところ。

しかしこのところ凪が続いている。
デカメバルは凪では難しい。
凪ならばスズキである。
常識で言えば逆であろうが、能登外浦での私の釣りではそうなんである。

というわけで、またスズキ釣りへと出向いた。
海の状態もあるが、なにはともあれ、今スズキ釣りが面白い。

やはりO君とである。
今回は彼と二人だった。

ポイントは前回と同じゴロタ磯。
ウエダーを付けてのランガンスタイル。

「今、夜の時間帯は干潮の前後で厳しい釣りになるかもです。」
とO君は言っていたがそうでもなかった。

最初に入ったポイントで数投目にはゴツンと来て、



60ちょい。


その数投後にまたヒット。



同じく60ちょい。


暫くして、またゴンと来たが、こいつは小さいのでリリース。

あら、3本続けてバラシがない。
バラシ病、治ったか。

O君もヒットしているようだったが、みんな小さいとリリースらしい。


その後、アタリは途絶え、移動する。

次のポイントは全くアタリなく、早々にまた移動。
すでにランガンでどんどん移動しているO君を追いかける。

「今日は回遊が望めないので、居着きを拾っていくしかないですね。」と彼。
ヒットはしてもサイズが今ひとつらしい。

とにかく、少しやってはまた移動、小刻みに移動した。

O君の言う難しい釣りと言う意味が分かって来た。
どこでやってもすぐに藻に掛かった。
藻に掛からず足元までルアーを引いて来られるラインはなかなか見つからない。
藻に掛かるのは当たり前、藻をぶち切りながらの釣りである。

こんな釣りはPEラインだからこそできるのだ。
藻に当るとすぐに分かる。掛かり始めをしゃくり、藻の先端をぶち切るのだ。
タイミングが遅れるともろに根がかりしてしまう。

私が藻と格闘している間にもO君はしっかりヒットさせていた。
案外のサイズらしく、取り込みに時間がかかっていた。
大きいやつは近くに来てから走り始める。
彼は慌てない。十分に走らせ、弱らせてからランディングするのである。
70センチ弱だと言う。

その直後、彼のロッドは再びバットから折れ曲がっていた。
重そうだったが案外素直にランディング出来たようだった。
「さっきのよりデカイです!!」と彼。
75センチ。
流石である。

私には小さいやつさえ当らない。
この厳しい状況では腕の差がハッキリ出るようだ。

それどころか、またガイドにラインが絡まったままキャストしてしまい
1つしかなかったヨレヨレミニは何処かへ飛んでいってしまった。
その夜はそのルアーしか反応がなかったというのに。

もともとロッドもリールもPEライン用ではない。ガイドは大きくラインが絡みやすいことを肝に命じておかねばならぬ。

おまけにバックラッシュである。縺れがひどくて簡単には治らない。ラインブレイクの反動でそうなったのだろう。
これがベイトリールの欠点である。
釣り続行不可能。

リールを交換するしかない。
車まで戻ることに。

と・・・「江崎さんのルアー、回収出来そうですよ。」とO君。
なんと飛んでいったルアーに付いているラインをルアーを投げ、うまく引っ掛けてくれたのだ。
いや地獄に仏である。

一度車に戻りタバコを一服。
この日、ヨレヨレにしか反応がないとO君も言う。
前回も凪だったが、その夜は特別鏡のような凪だった。
そのせいかも知れない。

予備にもって来ていたコンクエストDCをロッドに装着して、
さて出直しである。

12時を回っていてランガンの疲れもあったが、まだ気持ちが収まらなかった。

前回、最後にデカイのが釣れたポイントに行こうかと思ったが、その夜は先客がいた。
で、最初のポイントに戻ってみることに。比較的藻の少ないポイントだ。

思い切り遠くへキャストする。
コンクエストのブレーキ音はギュイーン!!とアンタレスより乱暴だ。形もクラシカルでいかにもベイトリールという顔である。釣りを始めた頃、専らこいつを使っていた。懐かしい顔である。
コンクエストはアンタレスより古いタイプで、飛距離はアンタレスの方が上と言われているが、どうもコンクエストの方が遠くに飛んでいるように思える。
こちらの方が私には合っているのかも知れない。

しかし、当らなかった。
「アタリあるかー!!」と聞いてみると
「ないですぅー!」とO君。

今夜はこんなもんかなあと思っていると
突然ゴツン!!ときた。

強い引きだった。
いいサイズに違いない。

走る走る。

ググゥッー!!グググゥー!!
その夜初めてスプールが逆転する。

「でかそうですね、慎重に!!」
O君の応援の声。

お陰でバラすことなくランディング。
強烈な引きの割には小さかったが
その日の納得の一匹だった。
70センチ弱。




その後は先程のヒットが嘘であったかのようにひたすら沈黙の海だった。

時計を見ると2時だった。

干潮時の超シャローでの難しい釣りだった。
前回のまるでメバル釣りのような数多いヒットはなかったが
いろいろ新しい発見のあった釣りだった。


O君、今回もありがとうでした。





いや、スズキ釣りは楽しい!!




(コンクエストDC201、セブンセンスMWB972)




ボンヤリ満月の下。磯のスズキは力持ち。         6月14日

2011-06-17 | スズキ
4月、5月と2ヶ月余り仕事に追われ釣りに行かなかった。


6月8日、奈良での展覧会も終わり、能登に帰って来てやっと一段落。
ともあれ釣りに行きたかった。

ここ数年、6月のはじめには釣り友O君と磯のスズキ釣りをやるというのが恒例になっている。
彼と打ち合わせ出かけたのは10日の夜だった。

今年からO君はベイトタックルでやっているという。面白いじゃないか。
ならば彼に合わせてベイトリールとロッドを引っぱり出した。

そもそも私は釣りを福井の釣り師つーさんに習ったが、始めはベイトタックルでのスズキ釣りだった。
ベイトでやるのが当たり前だった。
メバルやイカをやるようになって初めてスピニングリールを使うようになり、今ではそのままスズキもスピニングでやることが多くなったが、日中の荒磯でのスズキ釣りには今だにベイトリールを使っている。

O君にどうしてベイトになったのか?と聞いてみると
「スピニングでは釣れ過ぎて面白くないので、自分に制約というか、枠を作りたかったんです。それにベイトは面白いし。」と言う。
彼は春から夏にかけて毎年300~400本のスズキを釣り上げる猛者である。ピーク時は出かける度に二桁が普通なのだ。
そんな彼だから「釣れ過ぎるのが面白くない」という言葉がすんなりと入って来る。

場所は能登半島外浦のとあるゴロタ磯。O君のフィールドである。
現場に行ってみると状況は極めて悪いと言う。
1メートルの波があり濁っているらしい。普通スズキは荒れていないと釣れないが、ここは違うらしい。澄んだ凪がいいという。この時期ここのスズキは磯の小さなバチやエビなどを食っているらしい。濁っているとそれらは見えなくなりスズキが岸に寄って来ないのだ。

ともあれやろうとやってみたが、私は50センチクラスが3匹釣れたのみ。
一度でかいのが掛かったが、玉網入れの段階でバラしてしまった。
そんな状況でもO君は60センチクラスを5匹、流石である。



私にとっては久しぶりの釣りだったし、遠ざかっていた釣りの感覚を呼び戻すためのリハビリのような釣りでもあり、結構楽しかったが、冴えない釣りだったとO君はいう。
数日前に80センチアップが出たらしく、私にでかいのを釣らせたかったのだ。

で、次回、でかいのを狙おうと別れた。



そして次回は14日となった。
夜の8時に待ち合わせ、磯へと向かった。
その夜は状況は良かった。凪で追い風だった。

よし!今夜は70アップを釣ってやるぞ。
むくむくと闘志が湧いて来る。


ポイントはゴロタが帯のように点在する浅い磯である。水の中を腰まで浸かり歩いてゴロタ群の一番前のキャストしやすそうな岩に上がり前面の海にキャストするのである。
海側にちょっと離れたいい岩があり、その上に乗った。
この岩はこの辺では一級の釣り座だという。広角度でキャスト出来るし魚も多いらしい。

早速正面にフルキャストしてみる。ヒュイーンというデジタルブレーキの音とともにルアーが闇に消えていく。いい感じだ。
浅い磯なので早めにサミングし、着水とともに巻き始める。

が、根がかりである。藻であれば28ポンドのラインは藻をぶち切って回収も出来るのだがどうもそうではないらしい。うんともすんともである。
しかたなくラインは切れてルアーはロストである。その時は干潮の底、浅い磯がさらに浅くなっていたのだ。
初っぱなからこれである。このところロストはなかったので警戒心が足らなかった。

ラインを組み直し、新品のデュエル・ハードコアをつけて気を新たにキャストする。
と、今度はバチッと嫌な音がしてルアーは虚しく闇に消えてしまった。
ラインがトップガイドに絡んだままキャストしたのだ。
ああ・・・またラインの組み直し。
トラブルは往々にして重なるものだ。どこか間が抜けている。
リールもロッドもPEライン用ではなく、特にロッドのガイドにはラインが絡みやすいことを肝に銘じておかねばならぬ。

ラインを組み直している間にO君は既に魚を引き寄せている。
なんかなあ、気持ちは焦るがしかたない。

さあ、キャスト再開。
早巻きで根がかりを回避しながらの釣りである。
着水とともにグングン巻く。

数投目、掛かった。元気のいいやつ。でも引き寄せると小さかった。50センチクラス。
前回と同じようなサイズだ。
リリース。

数投後、またヒット。今度は幾分重かった。
足元まで引き寄せてライトを付けると魚体がギラリと反転する。 60センチくらいか。
玉網をとろうと背中に手を回すがうまく柄が掴めない。もたついている間にクンとフックアウト。あららら。

そのうちまたヒット。今夜は調子が良さそうだ。しかし、また小さい。
リリースしようと思ったが、フックが目の玉をえぐっていた。こいつはリリースしても死んじまうだろうとキープ。

その時、O君と誰かの話し声。
釣具屋の若大将かっちゃんがやってきたのだ。
ここから三人での釣りとなった。

その後、暫く間を置いてゴンと来た。まあまあのサイズ。今度こそと慎重に寄せるが、いざ玉網入れの寸前にバチンとまた外れてしまった。玉網の中にはルアーだけが残った。

なんかなあ、前回もデカイの足元でバラしたしなあ、バラシ病というのがあると聞いたが・・・・やな感じ。

ヒットするものの結局小さいの一匹だけである。

その後、アタリは遠のいたようだったが、粘っているうちに遠くでガツン。
こいつは今日一番の引きだった。
強引に寄せてなんとか玉網入れ成功。今度はうまくいった。
65センチ弱。体高もあってなかなかいいかたち。
先ずは今日の一本である。




しかし、その後はサッパリで移動することに。

夜の磯を水に浸かりながら移動するのはちょっくら骨である。
よく見えない底は凸凹だらけ。下手するとつまづいて転び、ウエダーといえ胸から水が入るし、手にしたリールも水没しかねない。
慌てない。ゆっくりと泳ぐように歩く。

歩きながらO君。
「始めは調子良かったんですがね。でも小さいですね。リリースばっかです。」
すでに10回ちかく掛けたらしいが、彼のストリンガーにぶら下がっているのは3本だ。
カッチャンのストリンガーには2本、私も2本。

「バラシが多いんだよな、背中の玉網を取るのにもたついてなあ」と私。
「ぼくは寄せている途中で玉網を取り、股に挟んで用意しときます。」と彼。
なるほど、と思う。
ある程度の距離があれば片手でロッドを保持していてもテンションは抜けにくい。それに比べて近くはテンションが抜けやすいのだ。
足元まで寄せたらさっと玉網に入れる。これに限る。

時計を見ると12時だった。
でもみんな帰る気は毛頭ない。
デカイのに出会いたかった。

次のポイントは同じゴロタ磯だが、浅い曲線を描いて切れ込んでいる湾である。
なんでもここはエザキワンドという名前がついているらしい。
昨年私が気に入って固執したポイントだからだ。
ちなみにカッチャン岩というのもあるのだとか。

昨年と同じ岩、湾の左先端の岩に乗った。なんだか懐かしい。

正面50メートルに大きい浮き根、その右手30メートルに小さい浮き根がある。なんだか魚たちがいそうな気配。
うむ、必ずいる。
湾の右先端にカッチャンが陣取り、その15メートル向こうにO君である。

ボンヤリとした満月が水平線の上にあり、ライトがなくても薄ボンヤリと景色が見える。凪だがまったりとした大きい波が時々やって来る。
正面の浮き根と右手の浮き根の間を方向を変えながらキャストする。

アタリはなかった。
しかしそのうち来るという強い予感があった。
ロッドを思い切り振り抜く。ヒュイーン!とリールが唸る。薄暗闇を飛んでいくルアー。着水と同時に早巻きで引いて来る。その繰り返し。延々と。黙々と。まったりと。
濃密な時間であった。

突然のように右浮き根近く、遠いところでガツンと来た。
まあまあのサイズか、強引に寄せる。が、半分まで来たところでクンと抜けちまった。

15分後、またヒット。今度は正面の浮き根の左手である。近くまで寄せたところでまたバレた。
ふふ、バラシ病。

さらに15分後、今度は正面で来た。
今度こそと半分くらい寄せたところで玉網を取り股に挟んだ。で、足元まで寄せその勢いで玉網に入れた。O君方式、確かにうまくいく。
でもサイズは大したことはない。60弱。




その後、魚信は遠のいた。

O君が叫ぶようにカッチャンに釣果を聞いていた。
「4匹です!!」とカッチャンの声が聞こえる。

小生はまだ一匹。うはは。ちと焦るじゃないか。

でもアタリはなかった。

静かな海である。
ボンヤリ満月が水平線に落ちてきた。
2時を過ぎた。そろそろ終わりの時間か。

と、ゴッツン!!
強い衝撃だった。
正面浮き根の右脇だ。
ロッドを立てて合わせる。うっっ!!重かった。
リールを巻けなかった。

ロッドを起こし、倒しながら巻き、またロッドを起こす。
ドラグがググッ!!グググッ!!と出て行く。スプールがいやいや逆転するのだ。ドラグを締める。
ラパラ、チタニウムブレイド1.5号は28ポンド、一杯に締めても問題はない。
全身の力で引き寄せる。俄に心臓が高鳴った。

しかし、途中でガンと動かなくなった。根に潜られたか・・・ここで慌ててはいけない。
ラインのテンションを緩め、暫くそのままにして、再度ゆっくり引いてみた。
するとやつはゆらりと動いた。また走り始める。
力の強いやつだった。全身で引き寄せる。

再びドラグが唸った。ドラグが止まるとまた寄せる。またドラグ。また寄せる。
右腕の筋肉が痛くなって来た。玉網を背中から引き抜き、用意する。
ライトを付ける。ライトの範囲に魚体が入って来た。
右手でロッドを持ち、魚を足元に誘導するがやつも最後の力を振り絞って右に左にと抵抗する。

しかし、私の勝ちだった。
玉網に入った魚体は堂々としてまさにスズキなのであった。70センチくらいか。




そして10分後、また来た。
そいつも重かった。でも案外素直に寄って来た。
近くになって走ったが、先程のような格闘ではなかった。
素直に玉網に入ったそいつは意外にも先程のやつよりでかかった。




いい感じである。
もっと釣れそうだったが、二人から「そろそろ止めにしませんかあ!!」と声がかかった。

この二匹で気持ちは収まった。
今夜の目標は70アップだったのだし、一応それは最後の最後で達成出来たわけである。

終えたのは3時前だった。

いや、楽しい夜だった。
O君、ありがとう。カッチャンもご苦労さんでした。

またやろな。






O君。



かっちゃん。






三人の釣果。小さいやつは深く傷ついたやつ。最大は75センチ。






ロッド; Gクラフト、セブンセンスMWB 972MLRF
リール; シマノ、アンタレスDC
ライン; ラパラ、チタニウムブレイド1.5号28lb 
リーダー; フロロカーボン20lb
ルアー: デュエル、ハードコア100シンキングペンシル、ジップベイツ、スライドスイムミノー85、邪道ヨレヨレミニ68など。