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永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

こんな時だからこそ。3匹目の尺

2011-03-18 | メバル
さて3月、デカメバルの本格的なシーズンである。

2月後半から掛かっていた絵本のラフスケッチも10日には一応終わり、さて海に出かけてみるかと思っていた矢先この大事件である。
未曾有の大災害、それに原発事故がおいかぶさる、呆然として声も出ない。


おれとして今のところ出来ることと言えば節電、節油くらいか。


数日気分が重かったが雪が止み温かくなった日
海へ向かった。
こんな時に、と思うが、
いや、こんな時だからこそ、なのだ。

尺メバルを狙おう。

行き先は能登半島先端に近い本命ポイント
まっしぐらそこへ向かった。

現場に着いたのは夜の9時半。
いい天気だった。

まだ時折雪が降るが
海は確実に春の顔になっていた。
満月に向かう月が中空ぽっかり浮かび
穏やかな海面を照らし出している。

ふと蕪村の句を思い出す。
「春の海 ひねもす のたりのたりかな」
ふむ、そのとおり、のたりのたりである。

そして、10メートルの津波を想像してみる。
そいつが水平線彼方からこちらに向かって押し寄せて来る。
おれならどう逃げるか、いや逃げられないだろう。

数年前の夏、サザエを採っていて、高波に呑まれたことがある。
波に呑み込まれるあの感じ、思い出す。
苦しかった。
海中揉まれながら、ああ、死んでしまうのかと思った。
あの時は窒息寸前、運良く海面に飛び出すことができて助かったが、
津波だったら、あのまま死んでしまうのだろうな。


先ずはプラグを正面にキャストした。
そうっと引いて来るが反応なし。
方向を変え数投やってみる
が、やはり返事なし。

気を入れ直し、ワームに替えて、表層を探ってみる。
右前方のテトラから遠く離れたところ、コンと来た。
反射的に合わせると乗った。
25センチ(目尺)まあまあのグッドサイズ。



次のキャストも、



25センチ。

また次も。

だが、途中でバレてしまった。

入れ食いである。

が、そこまで。
その後、パッタリとアタリは途絶えた。


その後二時間、ジグヘッドの重さを変えたり、ワームを変えたり、プラグにしてみたり、プラグも替えてみたり、スプリットショットにして思い切りボトムを狙ったり、レンジ、方向を変え、いろいろ引き出しにあるものをやってみるが、魚信らしきものはなかった。

分からない釣りだった。パターンが全く掴めない。

でも、帰る気にはならなかった。
ここにいて、海を眺めていたかった。
潮騒を聞いていたかった。



月は水平線の上に傾き、
頭上には春の星たちが輝いていた。
柄杓星の柄のゆるやかなカーブを辿って春の大曲線。
一際強く瞬いているのはアルクトゥルスかスピカか。

「私たちは星の燃えかすからできている。星と我々は仲間なのだ。」
と宇宙物理学者カール・セーガンは言った。
星の輝きは美しい。
自然は圧倒的に美しい。
しかし、同時に酷い顔も見せる。
人間に対し、容赦というものがない。

それはそうだ、人間のために自然があるのではないものな。
人間は大いなる自然のほんの一部に過ぎないのだ。
生も死も自然のダイナミックなサイクルの中の一時の相に過ぎないのかもしれぬ。



風が強くなってきた。右からの横風である。
時々春一番のような突風になる。

一番重い飛ばしウキでやってみるが思うところにキャスト出来ない。

流石に帰ろうか、と最後の一投。
思い切り右にキャスト、それが風に流されて正面に落ちる。
引くとどんどん左に流される。
と、コツン、久しぶりのアタリだった。
25センチ。(目尺)釣れんことはない。



こうなると、欲が出る。
もう少し粘ってみようと。

風は回り、追い風になった。右後方からの風。
風はますます強くなり左前方一方向しかキャスト出来ないが釣りはなんとか出来る。
深いところ、浅いところ、ゆっくり引いたり、早く引いたり、引かなかったり、そしてまたプラグでやってみる。

しかし、アタリもコスリもしやしない。


一時間くらい経ったか、
月がオレンジ色になり水平線ちかく落ちて来た。

風に乗せ風に任せ思い切り遠くへ投げた。
そして思い切り表層を引いてみた。
ゆっくり、そうっと、

と、ゴゴ・・・

合わせる。
重さがロッドに乗った。よし!

遠くなので思い切り巻いた。
暗い水面を滑るように魚は近づいて来た。
その日一番の重さだったがせいぜい26~7か・・・
足元まで寄ったところを引き抜いた。

足場が高く、引き抜くと同時に巻き上げなければならない。
いつもの感じで足元まで引き上げたつもりだったが、魚の姿がない。
上がっていなかった。
竿はぐんなり曲がったまま、魚はまだ足場の崖の途中に引っ掛かっていた。

慌てて巻き上げる。そこで初めてこの魚の大きさと重さを知った。
堂々たる魚体と不敵な面構え
間違いなく尺クラスだった。




早速測ってみる。
思った通り30センチを数ミリオーバーしていた。




先日の釣りバッグのロストでメバル用のメジャーもロストし、スズキ用のでかくて重いメジャーしかなかったが、とりあえずそれをジャケットのポケットに入れておいた。
いや、持って来て正解だった。

今年の尺の目標は5匹だが、早くも3匹目である。
それも嬉しいが、なにより本命ポイントで釣れたことが嬉しかった。
3年ぶりだが、全くいなくなったわけではなかった。
このシーズンはいいのかも知れない。

時計を見ると1時だった。

風はますます吹き荒れ、ルアーどころじゃない、気を許すと身体が海に持って行かれちまう。
そこまでだった。


車への帰り道、星たちはますます輝きを増し、夜空に瞬いていた。

同時代を生きて来た人たちが大勢死んだ。
彼らが日々努力して築いて来た暮らしも喜びも夢も希望も、一瞬にして呑み込まれちまった。
土に帰り、星屑に戻っちまった。
おれもどのみち早晩そうなるだろう。
でも、今回はたまたま被災から免れ、健康にも恵まれ、生きている。

復興には長い時間がかかるだろう。
これからどんな手助けが出来るか分からないが

ともあれ、

おれの生命(いのち)をしっかりやろう。


そう思った。

2月はな・・・

2011-02-09 | メバル
一月の後半、雪が降った。
どっと降った。
ピーク時、積雪1.85メートル。
もう釣りどころではなかった。
雪掻きや雪下ろしが続いたが、雪は美しく、これぞ冬、を堪能した。






2月に入り雪も小休止、パタリと止んで気温も上がって来た。
海も大人しくなった。

そろそろ絵本作りのラフスケッチに入らないといけない時期だが、しかし、
その前に・・・・・釣りである。うっは。


2月2日。

目指すポイントは一ヶ月前に尺が釣れたテトラである。
胸は期待に膨らんだ。果たしてまだでかいやつはいるのか?

いなかった・・・・・。

連日4~5メートルだった波は突然ベタ凪になっていた。

釣れないことはないが、



たまに手応えのあるやつが掛かるが、あげてみると20センチちょい。






そのうち、それらしいのが一匹。25センチ。




その後はどうにもならない。

帰った。


例年2月は釣れない。
産卵が終わって深い岩陰で休んでいるのだろう。
特にでかいやつは姿を消すようだ。
尺を狙うのは3月に入ってからだ。


2月4日。

とはいっても、いい天気である。
波1.5メートル、追い風。気温4度。
そう聞くと、出かけずにはいられない。身体が行ってしまうのだ。

これまでと場所を大きく変えてみる。
輪島方面、磯の中の小さな漁港。
ここはでかいのは期待出来ないが、ほんのたまに尺クラスが掛かったりする。
いつだったか、師匠つーさんと尺をひとつづつ釣り上げたことがあった。
それを期待した。

しかし、こいつである。
ふむ・・・



しかし、波や風の様子がとてもいい。粘ることに。


一時間後、飛ばしウキで思い切り遠くを狙ってみる。
単体ジグヘッドでは決して届かないエリア。
表層は反応がなかったが、底を狙うと反応があった。

合わせると乗った。
遠くから引き寄せる。手応えの割には小さかった。

23センチ。




同じところにフルキャスト。
カウントダウン20。思い切り底である。

またアタリ。ココンと。
合わせる。
今度はデカメバルの引きだった。

26センチ。




おお、このパターンか。
いい感じ。
よし、これからが釣りだ。

と、魚をバケツに入れようと後ろのテトラに移動すると、
波間にプカプカ浮かぶワームケースが目に入った。
よく見るとなんと自分のケースだった。

慌ててロッドの尻で引っ掛けなんとか回収。ふう。
そこでハッと気が付いた。
そのケースはバッグの中に入れておいたはず、
バッグは背後のテトラの上に置いておいた、口は開いたままだった・・・

その場所を見ると、無情にもバッグの姿はなかった。

あんりゃりゃ!!まさか・・・・参った。

まじまじとシンケンに海の底やテトラの周囲を捜すが、ついに見当たらない。

要するにテトラの背は丸い。滑って落ちたのだ。そして海に沈み波に何処かへ運ばれた。
沈む途中、開いた口からワームケースだけが浮かび上がった。
そう考えるしかなかった。

波は1.5メートル、潮騒で落ちた音もかき消されたのだろう。全く気が付かなかった。
バッグが沈んだのだから、落ちて随分時間が経ったのだろう。
魚をバケツに入れに背後に移動しているのに気が付かなかったのだ。
嗚呼!!なんとしたことか。

プラグケースにはぎっしりと気に入りのプラグが・・・・
それだけじゃない。仕掛けや道具など、ありとあらゆる状況に対応出来るように詰め込んであったのだ。

暫し、呆然。

一瞬、潜って捜してやろうか、と思ったが、真冬である。そこまでの根性はなかった。

でも、考えてみればこれは小生の癖である。
何かに集中すると周囲のものが見えなくなる。とこれまでさんざん言われて来た。
昨年暮れにはスズキ用のプラグケースを波にさらわれたし、いつだったかエギケースもだ。玉網なんか3つもロストした。
なんか自慢しているみたいだな。

しかし・・・・
気を取り直して釣り再開。

22~3センチを数匹釣った後、根掛かり、それしかなかったジグヘッドをロスト。
で、終わるしかなかった。

家に帰り着いて、とりあえず釣りをするに必要なものを常日頃お世話になっているネットショップ、アングラーズサライに注文し、釣りの体制を作り直した。
これまでああだこうだと揃えたルアーや道具を一度に無くすのは経済的にも精神的にも痛いことだが、新しい体制を作るというのは悪くはない。
これまでのやり方をいろいろ考え直すいいチャンスだ。

ルアーや道具を身から離さないというのは鉄則だが、沢山入った重いバッグを背負ったままというのは難がある。
いろんな状況を考えると、あれもこれもということになるが、これまでの現場の経験から、ほぼ使うことのないものは省いて身軽にし常に身から離さない。
これを心がけようではないか。



必要最小限の体制が整い、また釣りが出来るようになったのは6日だった。

バッグは使わなくなっていた大きめのやつで間に合わせることに。
ルアーもその他の道具も厳選してなるべく少なくした。
背負ってみるとちょっと古いタイプだが悪くはないし、なにより以前より随分と軽くなった。


さて、気分一新、再スタートである。

と、再び尺メバルのテトラへ向かった。

2月は釣れにくいが、波2~1.5メートル。追い風3メートル。夜の気温3度。
この時期には滅多にない好条件だった。

ポイントに立ち海を見ると尺が釣れた状況に似ていた。
ひょっとすると・・・・

まずは6センチ、7グラムのプラグで様子を見る。

反応なし。

で、尺が釣れたパターン、フローティングの飛ばしウキでサラシの表層を狙ってみる。

反応なし。


その後、シンキング飛ばしウキで底から中層を狙ってみるとぼつぼつ当たって来た。
20センチ前後。釣れなくはないらしい。









そのうち、やっとそれらしいのが。
26センチ。



そして25センチ。



アタリはあるのだが、引き寄せる途中バレてしまうことが多い。
食いが浅いらしい。


水平線の空が真っ黒になり、遠くで稲光。

気にせず釣りを続けていたが、雷さんは近づいて来て、閃光とともに鋭い雷鳴。
そして激しい雨。あっという間にびしょぬれ。
すかさずリールを巻き上げて車に逃げ込んだ。

小生は雷は苦手なんである。
能登に引っ越して来て、ここの冬の雪雷様の凄まじさに圧倒され苦手になっちまった。美しいがコワイ!!
確率としては無視してもいい数字なのだろうが、なんだか自分に向かって来るような予感がある。
小生に落ちれば100パーセントなのである。
基本的に確率は信用しない。

でもここで帰る気はしなかった。
もう少し。

30分ほど車でうとうとしたか、いつの間にか雨は上がっている。
外に出ると、雲の間から星がボンヤリと輝いていた。カシオペアのひとつだろう。


釣り再開。
11時だった。
釣り座を変える。
31センチが釣れた馴染みの釣り座だ。

しかし、ここも渋かった。

これまででかいのが掛かったポイントを狙うが駄目であった。

爆釣時は特別の大物はまず来ない。

ぼつぼつの状況で、突然そいつはやって来る。

そう思って粘るが、やはり22~3センチがぼつぼつであった。






帰ろうと思うと釣れ、また帰ろうとすると釣れる。
そんな帰るに帰れない状況であったが、その後、突然の大物どころか、さっぱりアタリは途絶えてしまった。
雨もまた降り出した。時計を見ると2時だった。

もう限界だろう。

終わってみれば8時間やっていたのである。
釣りの時間は速い。
あっという間に数時間は経っちまうのだ。

たっぷりの釣りであった。

時間の割には貧果である。
でも、メバルの煮付けはうまいんだ。




ところで、釣りの間、バッグは背負ったままだった。
軽くなったせいか思ったほどの負担ではなく、仕掛けを変えるときなど前に回してロッドホルダーにロッドを差して両手が使えたりして存外楽で便利なのであった。
要はバッグを背負うという感覚に慣れることだと気が付いた。





そして、8日。(昨夜)

気になるポイントがあった。

メバル釣りを始めた頃よく通った漁港である。
突堤の先にはオレンジの灯りが周囲を柔らかく照らし出しとても雰囲気がある。
昨秋はここでイカを沢山釣ったし、スズキも釣った。
しかし、メバルはいつしか小さいのしか釣れなくなってしまった。
大好きな場所なんだが、いつの間にか足は遠のいてしまった。

無性にそこへ行きたかった。
釣れなくても一度は行っておかねば、と思わせる場所なんである。

予報を見ると明日から再び寒波が来るようで、海も荒れると言う。

今日を置いてはいつ釣りに出られるか分からない。


先ずは先日バッグをロストしたポイントへ寄ってみた。
その時は釣りを中断されたので、その続きである。

先ずはジグヘッド単体で近くを探ってみる。
ここは足元ではデカイのは来ない。
そう思うが一応。

で、やっぱりな。



しかし、もう少し。

すると、



うっは!!ちっちゃいクロソイ君であった。
でもれっきとした今期初ソイである。

で、飛ばしウキ、シンキングをセットし中断の続き。遠くの底を狙う。

前回の活気はないものの、







いずれも20~23センチサイズ。

このポイントは正面遠くの底でしか反応がない。



そのうち、このサイズでさえ掛からなくなった。


移動。


目的の漁港へ。

この時期、午後9時ともなれば誰一人いない。
気温0度。風が沁みて手もかじかむ。こんな夜に釣りをするなんて気違いと思うだろうな。うっひゃ~~。

釣り座のテトラに立ってみるとじんわりと懐かしい。
過去、何度となく立った釣り座である。
寒いが心はほんのりと温かかった。

で、キャスト開始。
さて、どうか。
過去、ここで釣った最大は27センチだが、そんなやつが来るかもしれない。

と、第一投で元気のいいアタリ、来た!!

うっは、こいつだった。やっぱりな。



アタリは頻繁だった。

でも釣れるのは20センチに満たない。

そのうち、



先程のソイ君よりは大きいが、18センチ。
そうだ、ここはソイのポイントでもあった。
過去30センチ前後をよく釣ったな。

単体ジグヘッドでも飛ばしウキでも変わりはしない。
頻繁に当たって来る。

釣れるのは15センチ前後。大きくて18センチ。
まあ、合わせるタイミングの練習にはなるし、
それに、小さくても精一杯の魚の躍動が伝わって来る。
これもまた楽しいのだ。


こんなに小さいやつでも、ガツンと食いついて来る。



よく見ると小さくても立派なメバルなんである。
その美しいこと可愛いこと。




でも、帰ることにした。
手もかじかんできたことだし。


最後の一投、ちょっとは大きい引きを期待した。
小生の場合、後ろ髪の最後の一投でデカイのが掛かることがよくあるのだ。

ココン、と来た!!
合わせる。
乗った。

しかし、

上がって来たのは、



やっぱりな。うっはっは。



海沿いの帰り道を飛ばしながら、なんだか心は満ち足りていた。
時計を見ると11時だった。

時折タヌキが道を横切って走る。
釣りからの帰り道、よく動物たちを見かける。
タヌキにキツネ、イタチやテン、アナグマに出会うこともあるし、フクロウも見かける。
彼らに出会うとなんだか嬉しい。



さて、2月のメバル釣りはひとまず収まった感じ。


明日から絵本作りにかかろう。
先ずは骨格作り、ラフスケッチだ。
なんといっても魚の絵本なのだ。
秋出版の予定。

うまくいくか・・・・



その夜はぐっすりと眠った。


虚弱な野良猫の子だったアーサーも元気である。






雪の初釣りはドラマチック。久々の尺。           1月3日

2011-01-04 | メバル
久しぶりの釣りだった。

今年の初釣りであるし、12月の遠征仕事の帰り越前海岸でつーさんとメバル釣りをやったものの、我がフィールでの初メバル釣りだった。


新年になっても5~6メートルの波は収まらなかったが、3日になって突然のように波が落ちた。予報では2メートルという。

メバルの場合、2メートルでも荒れ過ぎだが、5日からまた寒波だという。
この機を逃してはいつ釣りに行けるか分からない。

その日、やっつけなければならない仕事を済ませ、夕方から雪を踏んで出かけた。
寒波で出かけられない間、降る雪を見ながら仕掛けや道具の手入れなど、準備は万端であった。

思い浮かぶポイントは他にもあったが
産卵前であろうから浅い磯のほうがよかろうと
まずはイージーテトラに向かった。

大物は釣れないだろうが、まずまずのサイズが期待出来るし、
正月休みでもまずここには人は来ない。

日が落ちてから現場に到着。
予想通り人っ子ひとりいなかった。
しかし、いつもの釣り座はもろに波を被り降りられない。
背後の一段高いテトラからしかキャスト出来なかった。
テトラにぶつかった波は際3メートルの幅でサラシを作っていた。
このポイントでこんな荒れた状況は初めてのことだった。

風も左前方からの向かい風である。
ともかく3グラムのジグヘッドにガルプを付けて投げてみることに。

でも足場の高さと向かい風で飛ばず、サラシの中でジグヘッドの感触を掴めない。
すぐにやめて、飛ばしウキを付けた。

12グラムの手作り飛ばしウキ。市販のラグビーボールの飛ばしウキに錘を埋め込んでシンキングにしたやつである。
リーダーは約1メートル、先には0.5グラムのジグヘッドを付けた。ワームはやはりガルプ。

キャストすると向かい風の中、少しは飛んでくれる。
カウントダウンして底を狙った。
このポイントはいつも底で食って来る。
ジグヘッドがボトムの岩をコンコンと擦るくらいでいい。

数投目、左方向のテトラに近い底でゴニョっとしたアタリ。
すかさず合わせると乗った。
重い塊が暴れながら上がって来た。



27センチ。
このポイントでは最大級のサイズ。
一匹目から調子いいではないか。

しかし、その後はサッパリであった。
釣れなくはないが、20センチ弱のリリースサイズばかり。
時折、重い手応えもあるが決まってバレてしまう。
食いが浅いのか。

2時間半、やってみるが駄目だった。

仕方なく移動。
このテトラ帯では他の場所であまり釣れたことがないのだが、まだまだ帰る気はしなかった。
予報では夜の気温は2℃ということだったが、寒さは感じないどころか、温かい感じさえした。

テトラ帯の左端に立った。ここは前面のテトラが海藻で濡れて滑りそうなので、先程よりさらに高い釣り座となった。
ここは波がまともにぶつかるところでサラシが渦巻き、20メートルのところに潮目も出来ていた。
ぶつかった潮はテトラ際を右に流れているようだった。

何となく雰囲気があった。
このサラシを狙ってみよう。

そこで、先日福井越前海岸でつーさんと行った釣りのことが脳裏に蘇った。
あの時も相当に荒れていた。小生は釣れなかったがつーさんはでかいのを釣った。
彼はクロダイ用のフローティングの飛ばしウキを使って引かない釣りを展開、それがその時のパターンだった。
波に任せ、表層を漂わせるのだ。そして時々しゃくって上下に動かす。
つーさんの冴えた技だった。

このポイントは底でしか食わないと思い込んでいたが、どうだろう。
たかだか水深2~3メートルの浅場で荒れた状況、底もくそもないだろう。
表層1メートルあたりを漂わせるというのは効果的に違いない。
波が勝手に動かしてくれるし、上下にも動いてくれる。
ジグヘッドが早く移動しないのでメバルたちに食わせる間をたっぷりと与えられる。
あるエリアを効率的に攻めるにはいいに違いない。

つーさんは釣り場で拾ったクロダイ用の飛ばしウキ(クロダイ釣り師がロストしたもの)を沢山持っていて、小生も数個頂戴したのだが、それでやってみることにした。

メバル用飛ばしウキのフローティングは軽過ぎる。その点、クロダイ用は重量があって使い易い。


高い足場から、先ずはテトラ際の根掛かりの危険のない正面あたりにキャストしてみた。
そして極めてゆっくりと、そっと引いてみる。時々はまったく引くのをやめてみる。しゃくって上下に動かしてもみる。
底での根掛かりの危険はまったくないので安心して放っておけるのだ。
正面に投げたはずが回収する頃には右手のテトラ際をやってくる。
潮の流れは案外強い。

数投目、遠いところでアタリ。
乗ったが、途中でバレてしまった。


その直後、再びヒット。
テトラ際まで引き寄せるが抜き上げるのが難しい。
どうしても前のテトラに当たってしまう。
えいやっと素早く巻き上げなければならない。



25センチ。


暫くして



23センチ。

9時を過ぎて時合いが来たのか。
それともこのパターンが当たったのか
俄然、釣れる雰囲気になって来た。

ともあれ、極めてゆるりと引いて来る。
特にサラシに入ったところでは引くのをやめ暫く放っておく。
そして、またゆるりと引く。
引くとジグヘッドは浮き上がり、引くのをやめるとフォールする。

して、掛かった。一際重いやつ。
ゴンゴン巻いて抜き上げる。
落ちるなよ!!

うまくいった。



安全なところまで上がって計ってみた。                  
29センチ。
よし!! 心が躍る。




その後、25センチ弱を2匹、掴む寸前で落としてしまう。
うまく海に落ちてくれればいいが、テトラに当たったらおしまいだ。
玉網を使うのは面倒だが、使うことにする。

左斜め方向を狙ってみた。
やがて正面にくる。
ちょっと引く、止める、また引く、を繰り返していると、
藻に掛かったような変なアタリ。
合わせてみると乗った。
こいつも重かった。
すかさず巻く。ゴリゴリ巻いた。

えいやあー!!と抜き上げる。
玉網に受ける。
おっと、でかかった。

                                              
また上に上がって計測。
なんと、そやつ30センチを僅かに越えていた。
何度も測ってみるが間違いなかった。
30.5センチ。

嗚呼、実に久しぶりの尺である。
しかも、このポイントで・・・・・
信じられないが、事実だった。





その日はおそらく特別な日なのだ。
こんな日は滅多にやってこない。

二匹目の尺を狙った。

これまで尺が二匹釣れたことが三度ある。
一匹釣れたということは、もう一匹釣れる大チャンスなんである。

30分後、潮目が近づいて来たのでそこを狙ってフルキャスト、やはりゆっくり引いて来てサラシの境目あたり、ゴンときた。

こいつもデカメバル。
計測。28センチ。

                                     

さらに30分後、近いところでガツンと食いついた。
こいつは引きが強かった。
テトラ近くまで引いて来てこれまで一度も出なかったドラグがジィージィーと唸った。
ドラグかまわずゴリ巻である。
一気に抜き上げる。
空中、玉網に受けるのを二度空振りしたが、大丈夫。
ジグヘッドは上顎ど真ん中を貫通し、外すのに苦労するほどしっかりフッキングしていた。



こいつもでかかった。
尺だ、と思ったが計測してみると、ちょっと足らなかった。
29.5センチ。

 

                          
もう少し。
釣れそうなんだが・・・・

しかし、その後、アタリはパタリと途絶えた。

時折掛かるのは藻と豆メバルばかり。


釣れる度に写真を撮り、上に持ってあがり計測する。
そんなことをせず、すぐに釣り続けたらもっと釣れただろう。
メバルの時合いは短い。などと思ってみるが詮無い話である。

空はどんより暗くなり、雪が降って来た。
ヘッドライトを付けると、雪が光る線となって海に突き刺ささる。

止めようか・・・・・いやもう少し、もう少し。

真夜中を過ぎて雪が激しく背中に当たるが寒くはなかった。
寧ろ、背中に当たるパラパラという音のリズムが心地よかった。


その釣り座を諦め、最初の釣り座に戻った。
やはりフローティングの飛ばしウキパターン。

ぼつぼつヒットはするものの20センチクラスだった。
やはりここは尺は期待出来ないか・・・・

帰ろうか・・・

いや、もう少し。

何かが引っぱる。

まだ余力はある。

雪は小降りになったことだし。


そして、12時半だった。

テトラ際に気を取られていたが、真正面を狙ってみることに。
そう遠くないところ。
ソロソロ引いて正面のサラシの境目あたりでストップ。
暫くそのままに。

反応がないので、そろっと引いてみる。と・・・・
もわっとした感触。

反射的に合わせると重さが乗った。
藻ではない。メバルだった。

重くもがくのを強引に寄せた。潜る暇を与えない。

重い、重い。
ばれるなよ!!

祈りながら抜き上げた。
玉網に受ける。うまくいった!!

堂々たる魚体だった。
一目で尺クラスと分かる。



早速測ってみる。
魚体の真ん中を口先から尻尾まで・・・やはり30センチを超えていた。
31センチ。
スケールを魚体の下に置き、写真を撮った。





嬉しさより、なんだか不思議だった。
まさかこの釣り座で・・・・・


こうなったら三匹目を狙ってみるか。

と、しつこく粘ってみるが、
神様はそこまでお人好しではないのだ。うっは。



帰り道、流石に午前2時ともなれば
行き交う車もなく、うっすらと積った雪を踏んで
ゆっくりと帰った。

幸せな夜だった。


釣れない日も多いが、たまにはこんな日もあるのだ。






ロッド;ブリーデン グラマーロックフィッシュ83ディープ

リール;ダイワ セルテート2506+ブリーデンダブルハンドル

ライン;ラパラ チタニウムブレイド0.4号11lb

飛ばしウキ:自作ラグビーボール12グラム(シンキング)、クロダイ用飛ばしウキ8グラム(フローティング)

リーダー:フロロカーボン8~10lb 1メートル弱 

ジグヘッド;自作ジグヘッド(がまかつJIG29+ガン玉)0.5グラム 他1グラム未満

ワーム;ガルプ ベビィサーディン2インチ 他







北斗七星の夜               6月16日

2010-06-18 | メバル
大阪での二つの展覧会。その長い滞在から帰ってきた。
帰りに福井に寄り、つーさんとイカ釣りでもやろうと思っていたが、
生憎、タイミングが悪くそれも出来なかった。

福井はまだ親イカは釣れていないらしいが、相変わらず彼はデカメバルを釣り続けており、
独りテトラに立ち、延々と釣り続ける彼の背中を想うと、俄然、小生もやる気が沸いて来るのであった。

帰ってくるや荷物もほどかず、いても立ってもいられない気持ちで海へ向かった。

先ずはデカメバル本命ポイント、ライトフットの崖である。

海は凪ぎ、初夏の柔らかい風が後方から吹いていた。
空も分厚い雲が細い三日月を覆っている。
真っ暗。

まずはアスリートリップレスを付けて第一投、ゆっくりと引いてみた。
このポイントは凪で釣れたことはない。
しかし、手前磯際まで引いてきたところでガツンと来た。
おっと!!
ロッドを立てリールを巻く。案外重い。
魚は必死に根に潜ろうとするが、そうはさせない。
バラさないように気をつけて抜き上げる。
堂々とした魚体だった。
計ってみると27センチ。

いつもならここでそいつの写真が来るところだが、カメラを忘れてしまった。

一投目から来るとは、今日はいい日なのかもしれない。
しかし、その後はアタックして来るもののサッパリ乗らない。
ワームに替えてやってみるとかからないでもないが、20センチ弱の小さいやつばかり。
粘ってみる。
時折、25センチ弱がかかる。でもデカイやつはかからない。

・・・移動。

イージーテトラ。
ここは2.5グラムのジグヘッドにガルプでやってみる。
一投目、左テトラ際を狙う。
ココン!小さいアタリ。二度目のココンで合わせる。乗った。
重いが大したことはなかった。
26センチ。

その後暫くはどの方向でも頻繁にアタリがあり、柔らかく合わせると確実に乗って来る。
みな25センチ弱。
サイズが今ひとつだが、頻繁にアタリがあるのはやはり楽しい。
メバルの引きというものをしっかり感受する。

そして足元で一際でかいアタリ。ガツンと引ったくった。
沖へと走る。ロッドがしなる。
おお!!でかいぞ。
そやつ水面で跳ねた。スズキだった。
走るのをいなしながら、ゆっくりと引き寄せる。勿論玉網などない。
水際のテトラまで降りて、リーダーをとり、直接口を掴もうとした途端、激しく跳ねてジグヘッドが外れちまった。


その後、フグの猛攻で暫くアタリは止まったが、左方向テトラ際の底を丹念に探っているうち、わずかなアタリ。
でも乗らない。
しつこく同じところを狙っていると、また魚信。そこでストップして少し待つと案の定コンコンときて、次のコンで合わせる。
乗った。こいつは重く強く引いた。左のテトラの根に潜ろうとするのをロッドを沖に突き出し引き剥がす。
デカイぞ、心は踊る。

いち、に、の、さん!で抜き上げ、空中しっかりと左手でキャッチする。ここで暴れて落とすとそれまでだ。
頭に藻を被ったそいつは不敵な面構え。
藻の隙間からでかい目がこちらを睨む。
しかし、力の割には身体は小さかった。計ってみると26センチ。
尺クラスに違いないと思ったのだが。
まあ、こんな勘違いはよくある。


いつの間にか空は晴れて、水平線の上に北斗七星が傾いていた。天頂右を天の川が横切り、悠々と白鳥が羽を伸ばしている。
季節はすでに夏なのだ。

そろそろメバル釣りも終わりである。




釣果は27センチを頭に15匹キープした。

25センチの呪い解ける。みんなと釣った。

2010-05-05 | メバル
デカメバルのシーズンだというのに、仕事と天候のタイミングが悪くなかなか釣りに出かけられなかった。

このGW、師匠つーさんと弟子たちが遊びにやって来た。
で、2日の夜、遅くからみんなと釣りに出かけた。

目指すは勿論デカメバル本命ポイント、ライトフットの崖である。
予報は1.5メートルの波、6メートルの風だったが、
現場についてみると、風はなく波も静か過ぎるほどだった。

総勢5人、それぞれの場所に立ってキャストをはじめるが
誰にもアタリらしいものはなく重い空気が流れた。

駄目か・・・・

しかし、そのうち右テトラの向こう、深いところを引いていた小生にコツンとアタリがあった。
それは根に当たるコツンではなく、確かに魚のアタリであった。
いけるかもしれない・・・
数度、同じ方向、同じ深さをゆっくりと引いていると、再びココンと来て、慎重に合わせるとグッと乗った。
久しぶりのデカメバルの手応えである。竿先がしなやかに曲がる。
足元まで引き寄せ、高い足場を抜き上げる。
26センチだった。




・・・・26センチ・・・あんら!!

なんと、今年あれだけクリアできなかった25センチの壁をあっさりクリアしちまっていた。
25センチの呪いは解けたのだ。
いとも簡単に。なんということもなく。
まあ、解ける時はこんなもんだろう。

すると、隣でやっていたセント君もヒットしたようで竿先が曲がっていた。
セント君はバス釣りはやったことがあるがメバル釣りは初めての今回飛び入り参加の青年である。
初メバルが26センチの赤メバルであった。



その後、25センチが掛かり
暫くして、テトラ際深いところ、コココンと来る。
引くのをやめて間を作ると、やはりまたココンと来たその瞬間、合わせる。乗った。
こいつは重かった。有無を言わせず引き寄せ
えいやっ!!と抜き上げる。
でかい魚体だった。
つーさんやってきて「尺はあるある」と言ってくれるが、
メジャーで計測してみると、29.5センチ。どう計っても5ミリ足らん。うっは。





そのすぐ後赤メバル26センチ。




セント君も25センチをあげていた。

どうやら、小生とセント君のヒゲボウズ組が調子良かった。
その夜は我々のキャストする方向にメバルたちがいたようだ。

そして、再び小生に重い手応え。ほんの近く、足元で食ってきた。
抜き上げの重さでひょっとしたらと思ったが、
計ってみると、28.5センチ。



その後アタリは遠のいたが帰る気はしなかった。
緩い春風は気持ちよく、星たちも綺麗だった。
左上に北斗七星、真正面に北極星が瞬いていた。
まぎれもない春の海なのだ。

セント君とつーさんが渋い状況ながら、いろいろ場所を変え方向を変え、ぼつぼつ釣り上げる。

しかし、前回、29.5センチを釣り上げたミズノと、ともちゃん二人の女釣り師についぞアタリは来ない。
ふむ・・・・・

と、小生とつーさんが同時にヒットする。
これは愉快な事である。2匹とも25センチ。
うっはっは。



そして、ついにともちゃんの竿がぐんなりと曲がったのだ。
おお!!かかった!!バラすなよ!!
なんだか落ち着きリールを巻き上げるともちゃん。
上がってきたのは赤メバル26センチだった。
ともちゃんの自己記録である。



その後、全くアタリは遠のいたようなので帰ることに。

決して活性のある状況ではなかったが、全体的にはまあまあだったか。
小生にとっては一年ぶりの尺クラスだったし、なにより25センチの呪いが解けたのは幸いだったな。

ついにミズノにアタリが来なかったのは残念だった。
前回尺クラスを釣り上げ、今回はボウズである。
理由は分からない。これが釣りの面白いところ。
いろいろ考えてみて、次回リベンジしよう。

セント君は初めてまともな海釣りをしたと言っていた。
これから彼は海釣りにはまるだろうと思われる。
この秋はイカ釣りにきっとやって来るだろうな。





意志の力  

2010-03-17 | メバル
女釣り師の事件の直後、今が尺のチャンスかもしれないと息子の麦と出かけてみたが、
ライトフットの崖は打って変わってベタ凪ぎ状態だった。
ここはべた凪ではまずいいのは釣れない。

麦は一年間の鰹一本釣り漁船での仕事を終え、この4月から琉球大学へ復学するらしく、
おそらくこの先数年は帰ることもないだろう。
これが最後のメバル釣りだと、尺を釣ってやるぞと鼻息荒かったが、
しかし現実は厳しかった。
全くアタリらしいものはなかった。

でも粘った。
底しか可能性はなかった。
根掛かり覚悟で底を引いた。
何度も根掛かりし、ジグヘッドをいくつかロストし、ロストしないまでも岩に伸ばされたフックを直しながらのキャストであった。
強いラインを使っているので、ラインが切れることはなかった。(0.4号11LB)

2時間も粘ったか、少しアタリがでてきた。
食いは浅いが、そのうち乗せた。
23センチ程度。

そのうちもう一匹。同じサイズ。

でかくはないが全く釣れないことはないらしい。
そこで左を狙っていた麦と釣り座を替わる。

左のテトラ際は難しいが、掛かればデカイ。
このポイントに慣れない麦では厳しいだろう、おれが狙っちゃろうと。
で、タイトに狙ってみる。
やはり底だ。
でもかからない。

と、麦が声を上げた。
彼を振り返ると、まあまあサイズがぶら下がっていた。
計ってみると26センチを越えていた。



大したサイズではないが、メバルの時間が来たのかもしれないと活気づく。

しかし、その後アタリなく、それっきりであった。

帰りにイージテトラに寄ってみるが、ここはさらにベタ凪、水も澄み切っていて
全くお話しにならなかった。


その後天候は冬に戻り海は荒れまくった。
もう釣りどころではなかった。

女釣り師の事件のコーフンも尺の夢も次第に遠ざかり、
もっぱら部屋にこもり本の世界に没頭していた。
ヘッセに捕まったのだ。

「シッダールタ」からはじまり「知と愛」にはまり込んだ。
天才的思索家ナルチスと愛と苦悩の芸術家ゴルトムントの物語である。
小生も芸術を仕事とする者の端くれである。
ゴルトムントの放浪は愛と苦悩、自由と孤独、死と命の輝きに満ちて
もはや、単に本を読むというより、一緒に放浪しているようであった。
そして、芸術とは何か、作るとは何か、を改めて考えさせられ
それは、日頃怠惰をむさぼり、いい加減な暮らししかして来なかった小生にとって
ヘッセに叱られているようでもあった。

ゴルトムントの旅は終わり、そろそろ仕事にかからねばと思いながらも
つい「デーミアン」に踏み込んでしまう。
この物語も面白い。ふむふむ、と思っていたところ、

突如、二人の青年が現れた。3月14日のことである。
羽咋の釣り猛者O君と羽咋の釣具センターあさの、の若大将かっちゃんであった。
二人はやる気満々の笑顔で「メバル行きましょう!!」と言う。
天気予報を見ると1メートルの波。いけるかもしれない。
しかし、釣りの準備も心の準備もできていない。まったく。
でも、二人の笑顔を見ると行かずばなるまい。

二人と近況を喋りながら、FGノットを編み直したり、飛ばしウキのシステムを作ったり、ワームやジグヘッドを揃えたり。

みんなで晩飯を食って、いざ、でかけた。

羽咋はこのところデカメバルが釣れないのだと言う。
目標は25センチです。と二人は言う。
ライトフットのポイントで掛かれば25センチは難しくない。

そのライトフットの崖に着いたのは10時半だったか。大物を狙うにはやはりここしかない。
前回、麦と出かけた時は凪で駄目だったが、今回は荒れ過ぎだった。
おまけに新月、真っ暗である。
月が雲に隠れて真っ暗というのと違って、ほんとに真っ暗、暗なのである。
足下の海は怒濤のサラシであり、時折高い足場を波が駆け上がって来る。
でも、ベタ凪よりはましである。
サラシの向こうへ、飛ばしウキをフルキャストする。

しかし、アタリはなかった。
いろいろ深さや方向を変えたり、プラグに変えてみたり。
激渋。
三人とも全くアタリはなかった。
風も向かい風になり、手も凍えて来た。

移動。
イージーテトラへ。

このポイントもこのところパッとしないが
新月はここにはもってこいの条件だし、波も1メートル弱、悪くなかった。

しかし、ここも渋かった。

でも、ほんの時折、テトラ際と足元近くの底でわずかなアタリがある。
小さいやつか。
そのわずかなチャンスを丁寧に拾うように、乗せる。
なんとかその夜の一匹目。24センチ。予想よりデカかった。



その後、20センチ。
この釣り座はなんとか釣れなくはない。
近くでやっていたかっちゃんを呼んで、その釣り座でやってもらうことに。

小生は右隣の釣り座で祭りにならないよう右手を狙う。
右テトラ際、底を根掛かり寸前でゆっくり引いているとコツンと来る。
23センチ。



かっちゃんにもアタリが来て一匹釣り上げる。
15センチ。リリース。
また一匹、18センチ、リリース。

今夜はこんなものか、居着きの小さいやつしかいないらしい。

と、思っていると、何処か遠くでやっていたO君がやって来た。
「釣れましたよ。25センチオーバーですかね。」
と笑顔で魚を差し出し見せてくれる。
堂々とした魚体。25センチを遥かにオーバーしている。
メジャーを出して計ってみる。
27.5センチだった。
「なんとか目標達成です。」と嬉しそうに目を輝かした。



ここで29センチをあげたことがある。しかし、活性の高い時だった。
こんな激渋で27.5センチとは、流石猛者である。

「どこで?」と聞くと「テトラの左端で。足元っす。足元しか駄目ですね。」と言う。
そしてまた何処かへ消える。

そのうち、かっちゃんもかかった。
ロッドがいい感じに折れ曲がっている。
おっ!!やった、やった。
抜き上げ慎重に握る。
引きの割にはさしてでかくはなかった。
23センチ。



でも、かっちゃんの今年の自己記録らしく、顔一杯で喜んだ。

その後、かっちゃんも小生もぼちぼち。
みんな20センチ弱。リリース。

と、再びO君がやって来る。
「また釣れました。」と。
見せる魚はまたデカイ。27センチだ。
「今度はテトラ右端で。やはり足元で、根掛かり覚悟でシェイクでやると掛かりました。」
その他、20センチが数匹釣れたのだとか。

その後、粘りに粘る二人だったが掛からない。
小生も場所を変え、足元を探ってみるが小さいのばかり。
そのうちテトラの上で足元がふらついて来た。
疲れたと感じる。このところ、読書三昧で睡眠不足が続いていたことを思い出す。
限界だった。夜明けも近づいていた。

帰りの道、気温表示は1℃であった。

結局小生はまたまた、また、25センチの呪いを解くことはできなかった。

その夜の釣りで学んだことがひとつあった。
イージーテトラは釣れる場所がだいたい決まっている。
はじめは、いろんな場所でやってみて、そのうちよく釣れる場所が分かって来る。
そうするといつの間にか、一番効率のいい、そこでしかやらなくなる。
そこでしか釣れない、という思い込みが次第に固まり、そうなるのだ。

その夜のように、活性が極めて低く、テトラ際、足元でしかアタリがないというのは、テトラの陰に隠れてじっとしている居着きのやつを狙うことになる。数は多いとは言えない。釣ってしまえば暫くはそこにはいないのだ。
そんな時はひたすらテトラの足元を狙って移動し捜すしかないのだ。拾うように。

このところ小生の頭の中はヘッセとの格闘で一杯だった。
釣りへの気持ちが希薄になっていた。
お付き合いの釣りになってしまったのだ。

O君はこのポイントは一度来たことがある。
現場の状況もよく把握していた。
釣りは1に場所、2に餌(ルアー)、3に腕と言われるが
その前に、意志の力というものがある。
大物への憧れ、釣りたいという想い、必ず釣ってやるという強い意志、
釣りへの、人から見れば馬鹿げたほどの、切実で強く深い熱情である。

仕掛けを作ったり、準備したり、そこから釣りは始まる。
釣りへのイメージを作り、そこへ精神を集中させていく。
釣れるというのは単なる偶然ではない。
釣りへの強い意志力が偶然を呼ぶのだ。それは必然と言っていい。

O君は猛者として知られる青年だが、彼は釣りがうまいのは言うまでもないが
その前に、考え、動き、全力で、必死に魚を求めるのであり、それが猛者の所以なのである。

帰り着くと夜が明けていた。
残った雪の上でみんなの釣果を眺めた。
大した釣果ではないが、豊かな濃い釣果であった。



さて、次回はかっちゃんにデカイの釣ってもらわなければ。
もう少し温かくなって、またやろうと約束した。

女釣り師MZ 29.5センチ

2010-03-05 | メバル
福井に女釣り師がいる。
まだ初心者だが、釣りへの想いは熱く真っすぐなんである。
我々が、夜だし、テトラだし、危ないよ、女なんだし、なんて言っても
決してひるんだり、動じることなく
ひたすらその目は釣りへの憧れに静かに燃えているんである。

彼女の名前はMZ。
福井の釣り師つーさんの弟子であり、小生とは弟子仲間というところ。

その彼女がデカメバルを釣りたいという。
メバル用マイロッドを買って、数度つーさんと出かけたらしいが
何せ福井は激戦区、夜ということもあってやはり女性初心者には厳しいものがある。

先日、やっとのことで初メバル16.5センチを釣り上げたのだとか。

その彼女がやって来た。

福井越前海岸に比べれば、能登外浦は人は少ないし、のんびりとしている。
釣りやすいかもしれない。
彼女の願いはデカメバルを一匹釣りたい、と明確であった。

このところ小生自身、25センチしか釣れないので
デカメバルと言っても甚だ自信はなかったのだが
まだ16センチしか経験のない彼女ならば、25センチくらいで十分満足してもらえるだろう。
それならイージーテトラでやっていればなんとか釣れるだろうと。

「彼女がでかいメバルを抱いてニンマリしている写真を撮ること。」
それがその夜の小生の目標だった。

やってきた夜は荒れてどうにもならなかったが一夜明けると収まって来た。
その日の天気予報は波1メートル、南風、曇り、気温4度となんとか釣りができそうだった。
満月だが月は出ないだろう。
となると、イージーテトラがばっちりなのだ。ここは道路の常夜灯がボンヤリと海面を照らしているので月があるとポイントが散漫になって釣りにくい。

FGノットを編み直し、用意万端整え、いざ!!とばかり出かけた。

山を抜けて海への道を走る。
彼女と釣りの話をしながらも、頭の中はベートーベンが鳴り響いていた。
シンフォニー7番。小生の好きな曲である。

10年前、毎年のように博多で展覧会があった。
高速を飛ばして12時間。ひたすら走った。
走りながらよくこの曲を聞いた。
眠気が覚めたし、心の奥底から行くぞ!!と勇気のようなものが湧いて来た。
数日前、友人が所属するオーケストラの演奏会に行って来たが
その演目が7番だったのだ。

第一楽章の怒濤のような旋律が頭を駆け巡った。


イージーテトラは波はなく、彼女にとって最高の状況と見えた。
一番釣りやすい釣り座に立ってもらいキャストしてもらう。
彼女の釣り上げてあげる歓声が今にも聞こえてきそうだった。

しかしその夜に限って渋かった。渋過ぎた。
アタリがないんである。
ここは他が駄目でもなんとか25センチサイズを釣ることのできるポイントなんである。

粘っているうちに彼女は根掛かりし、ラインブレイク。ノットを編み直す。

そのうち、小生に掛かる。テトラ際のタイトなラインだ。



うっは、25センチ弱。またこれだ。

暫くしてまた当たる。



23センチ・・・・。

その後、20センチ、数匹。リリース。

それ以上粘っても意味がなさそうなので移動することに。

アテにしていたイージーテトラが駄目となると、さて何処へ・・・・

輪島方面の灯りのあるポイントにするか、それともライトフットの崖に行ってみるか・・・
灯りのポイントは釣れるだろうが小さい。ライトフットは全く駄目かもしれないが、なにせ尺本命ポイントなのである。
月のない真っ暗状態で釣れたことはないが、ひょっとしたらデカイのが掛からないとも限らない。

どちらがいいかと彼女に尋ねたら
考えるまでもなくライトフットと言う。
そうなのだ。確実な小物より、未知の大物に賭けるのが釣り師というものだ。

ライトフットは足場が高い上にサラシが渦巻いている。その向こうを狙わなくてはならない。
彼女の短い細いメバルロッドでは歯が立たない。
予備にもって来ていたイカロッド、カラマレッティ8.6フィートに10グラムの飛ばしウキを装着する。

釣り座の足下は予想以上にサラシが渦巻いていた。
こんな荒れたところでメバルを釣ろうなんて普通の人は考えないだろう。そんな海である。

可能性のある方向はひとつであった。
右手斜め。その方向、サラシの向こう側へキャストしてもらった。
勿論、飛ばしウキをキャストするのは初めてである。
暗闇に向かってとにかく投げるのである。ルアーが何処に落ちたか見当もつかないだろう。
でもしかたないのだ。

でも、確かにちゃんと飛んでいるようだったので
小生は左手のテトラ際を手作りプラグで狙うことに。
左手は波がさらに強く、ルアーは波とサラシにもみくちゃになる。
なんだか、気持ちは重くなる。

と・・・彼女の声。
振り返るとロッドから足れたライン、飛ばしウキの80センチ下にメバルらしきものがぶら下がっていた。
おお!!釣ったか!!
にっこにっこの彼女。
正真正銘、20センチのメバルであった。
ふむ、いないわけではないらしい。

その後、釣り座に戻り、キャストを再開した瞬間、また彼女の声。今度は悲鳴に近かった。

また振り返ると、
なんと、彼女の足元でデカイ魚がドテンバタンと跳ねているではないか。

おお!!ま、まさか!!
素早くリールを巻きとり行ってみると、その、まさかであった。
ふてぶてしくもドデカイ、堂々とした、美しい、懐かしい、憧れの魚体であった。

一目見て尺クラスだと分かる。
彼女自身、なにが起こったのかという顔である。

「やったな!!尺かもしれん」というと
やっと嬉しそうに頷く。





メジャーを出して計ってみる。
29.5センチ。尺に5ミリ足らないが、これはもう尺と言っていい。



それから、もう欣喜雀躍、飛んだり跳ねたりの彼女であった。

いや驚いた・・・・。

昨年、何度ここに通ったか。でもついにこのサイズにお目にかかることはなかった。
もうここにはこのサイズはいなくなってしまったかと思ったりもした。
しかし、いたのだ。
このサイズが。そのことは嬉しいことだった。

そいつをメバル釣りに慣れたとは言えないMZが釣り上げた。
そこにはいくつもの偶然が重なった。
初めての飛ばしウキ、尺を釣り上げるには小さすぎるジグヘッドが延ばされなかったこと
ゆっくり引いたらしいが根に潜らなかったこと、高場を抜き上げるにイカロッドが功を奏したこと、
普通、いくつもの偶然が重なり尺メバルを逃すのだが、今回は逆であった。


その後も彼女は投げる度にヒットした。
2匹目、三匹目、四匹目、入れ食いである。
みんな25センチ前後。

群れがいるのだ。
小生も彼女と並んでキャストをはじめる。

だが、彼女に掛かるものの、小生には掛からない。
不思議である。
おなじリグに同じワームなのにである。

彼女は何処に投げているのか分からないと言う。
投げ終えて引くタイミングから表層に違いはないのだが、
そこに小さな群れがいるのだろう。
的確にそのスポットにルアーが落ちているのである。

およそこのあたりだろうと見当をつけキャストしてみるが、小生には当たらない。

これと同じようなことは昨年秋にもあった。
やはり彼女とイカ釣りに出かけた時のことである。
その時も彼女はまともにイカを釣った経験はなかった。
シャクリを教えたが、上手くシャクレない。
ある時間帯、その彼女にしかヒットしないのである。
上手くシャクレない、そのシャクリにイカは反応したのである。

釣ることに慣れる、上手くなる、それがかえって邪魔をすることもあるのだ。
知らぬ間に、こうしないと釣れないという思い込みができあがり、そいつが邪魔をする。


そのうち、ぱたりとアタリは止んだようだった。

暫くして、やっと小生にヒットするが、先ほどの群れとは関係なさそうだ。



でも、25センチに満たない。

そこで雨が降り出した。
ライトに照らし出される雨の軌道は太かった。

しかし、ここで止める気には到底なれなかった。
その夜は千載一遇のチャンスなのかもしれなかった。

雨の中、黙々とキャストを続けた。

彼女は手がかじかんで来たと、休憩に入る。

方向を変え、レンジを変えてやっているうちに
時々、掛かる。
が、みな中サイズだった。

気がつくと、全身が濡れ鼠となっていた。
彼女のこともあるし、もう限界かと思えた。

その時、乗った。
まあまあの引き。
もう尺でなくていい、せめて25センチは越えてくれ、これが最後なのだから、
念じながら抜き上げた。

見た目、いい感じ。
25センチは越えたか。



計ってみる。
・・・・24センチ。
いつもメジャーは冷酷なんである。

それが潮時であった。


帰り道、厚い雲の割れ目から顔を出したお月さんが笑っていた。

なんだかな、小生の25センチの呪いは未だ溶けそうもないが、
身も心も軽かった。

彼女はひょっとしての29.5センチを釣り上げたのだし、
この大事件は彼女の一生の思い出になるに違いない。
「彼女がデカイの抱えてニンマリ笑う写真を撮る」という目標も、目標以上に達成できたのだ。

というわけで、彼女に完全にやられちまった夜だった。
帰りの車の中、やはりベートーベン、高らかに鳴り響いていた。

明くる日、29.5センチは刺身にして食ったが、(うまかった~!!デカイのは一味違う、甘い)
彼女はメモリアル記念にとメバルのメバルという骨を取り出した。
なんでもつーさんに教わったらしいのだが、
胸びれの付け根あたりに、メバルの形をした骨があるのだ。
勿論、デカイやつほどでかいメバルのメバルである。

そいつを綺麗に洗い、コーティングまで施して
持ち帰ったのだった。

これは彼女の一生の宝となるだろう。



ここまでしてもらったら、メバルもさぞ本望に違いない。




















ブログ復活。2月のメバル 25センチの呪い

2010-03-05 | メバル
昨秋のイカ釣りの後、メバルを釣りに出かけ、釣り場で風に煽られ落下、足首を骨折してしまった。
歩けるようになるまで1ヶ月、釣りに出かけられるようになるまで2ヶ月かかった。
しかしその後、仕事に忙殺され、また仕事が面白く、とうとうその年は釣りに行けずじまいになっちまった。

そして新年を迎え、いざ釣り復帰と出かけてみれば、日本海は例年になく大荒れで釣りにならない。
少ないチャンスを狙って出かけてみるも、釣りのできるポイントは限られており、デカイのが釣れない。
数は釣れるのだが、せいぜいが25センチどまりである。

そして2月。
2月は寒い。気温が4度以下では手が凍えて釣りにならない。そのうえ産卵期である。海も荒れまくる。
というわけで小生にとってメバルオフの月なのだが
今年は大雪で家の周囲はまだ1メートルの残雪があるというのに、
20日ごろから季節は突然春に切り替わった。
気温が上がり、波が静かになれば、やはり心は海へ向かう。

まずは21日、イージーテトラに出かけてみる。
ここは少々の波があっても釣りのできるところ。
その夜は1.5メートルの波。足に波を被りながらもなんとか釣りができる。
このくらいの波でデカイのが期待できるポイントはここしかない。

渋いが、底を丹念に探っていると、ぼちぼちかかる。











しかし、どれも25センチを越えない。
このポイントは尺は無理だとしても、27、8センチは釣れなくもないのだ。
粘ってみる。

すると、少し引きの強いやつ。いい感じだ。



25センチに少し足りない。
でも、いい感じなって来た。
気分が乗って来た。



25センチ。

その後アタリは止まった。
粘ってみる。
30分。

帰ろうか。
いやもう少し。

妙な違和感。
デカイやつのアタリは小さいことが多い。
ひょっとして、合わせてみる。
乗った!!うっひょ~~!!



5センチのカサゴの赤ちゃんだった。



その3日後、24日は珍しく凪ぎ予報。
風もないという。

迷うことなく一直線に尺本命ポイントへと向かった。
ここは複雑な潮の流れのためか、周囲は凪ぎでもサラシが渦巻いている。
周囲が1.5メートルならば、もうここは荒れ狂って釣りにならない。

ポイントの手前まで来て車を停めた。
夕日があまりにも美しかったからだ。
冬の水平線に沈む夕日である。
荘厳であった。
この夕日にであっただけでも来た甲斐はある。



実は右足首を負傷したのはこのポイントなのである。
そうだ、気を抜いたら危ないのだぞと気を戒めるために、
これからこのポイントのことを「右足(ライトフット)の崖」と呼ぶことにしよう。

今年初のこのポイントである。半年ぶりだろうか。
昨年春は本命ポイントであるにかかわらず、ついにデカイのにお目にかかれなかった。
今年はどうか。

海の状況は悪くない。波は1メートル。潮は動き、足下を適当なサラシが渦巻いている。
ここは全くのべた凪では釣れたことがない。

いつものラインを通して来る。
状況はやはり渋かった。
表層では全くアタリなく、深層を角度を変えて引いているうちに時折当たって来る。
その時折のアタリを大事に掛ける。食いが浅く、三分の一はバレてしまうが。

一匹目。



25センチ弱。

二匹目。



25センチ弱。

三匹目。



四匹目。



ううむ、またしても25センチ弱。

デカイのがいないのか、腕が悪くなったのか、たまたまのタイミングなのか
それとも何かに呪われているのか。

と、ぐっと気持ちが落ち込んで来たところ
コン!!と引ったくるようなアタリ、合わせる、乗った、デカイ!!
こりゃあちょっと次元の違う引きだ!!グングン引っ張る!!
ゴリ巻き。
寄せる。抜き上げる。重いぞ!!
こりゃあ尺は完全に越えている。間違いなし!!
心臓が踊った。



しかし、現実は甘くはなかった。
確かに尺は完全に越えていたが
そやつはセイゴだった。40センチ。がっくし。



その後、粘ってみる。
気持ちを入れ替えて、粘ってみる。
諦めない。これが釣りの最高のテクニックなんだと。

そうすると、また時折掛かる。



しかし、やはり25センチを越えないのであった。

渋くとも、このポイントでこのくらい当たれば、必ず27~8センチの一匹二匹は釣れていた。

これはもう、呪われているとしか考えようがないではないか。

25センチの呪いか。

なんだか帰りの足が重かった。

風の中 危ないテトラ        7月12日

2009-07-14 | メバル
奈良での展覧会も無事終わり、帰ってきた翌日早速出かけた。
およそ一ヶ月半ぶりの釣りである。

展覧会後、大阪の釣り友M氏の船で神戸空港辺りに乗り出すつもりが雨で中止になり、
帰りの福井越前海岸でのつーさんとの釣りも雨で駄目だった。

禁断症状というほどのものではないが、
流石一ヶ月半もロッドを握らないとなんだか身体がおかしい。
ボンヤリとだが、頭も身体も海へと向かう。

メバルである。
そろそろメバルのシーズンは終わりであるが、
その終わったことをちゃんと知りたい。

向かったのはいうまでもなく尺メバル本命ポイント。

海の道を走る。
久しぶりの海である。
日は落ちていたが、まだ残照で微かに水平線が見える。
思わずアクセルを踏む足に力が入る。

まずは途中のイージテトラに寄り様子を見る。
が、全くアタリなし。魚の気配がない。
やはり、メバルは終わったか・・・

で、本命ポイントへ。
釣り座に立ったのは9時過ぎだったか。
波は1メートル。いい感じだが向かい風が強かった。
持参したカッパがあっという間に風に吹き飛ばされ飛んで行っちまった。
カッパは着ていかねばならぬのだ。暑くとも。

まずはプラグでやってみる。
アタリなし。

で、ワーム。
20センチ弱がちょこちょこ掛かるが、デカメバルのアタリはなかった。

2時間後、足元の磯際で突然のようにゴツンと掛かった。
なんだなんだ、カサゴか・・・・
メバルだった。26センチ。
魚体は赤く、カサゴのような、いやメバルなのであった。



ここで釣った尺の半分は所謂のブルーバックではなく茶色だったが、こんな浅い赤色ではない。
不思議な赤であり、それがまた美しい。

その一時間後、また赤メバル。25センチ。




3時間粘って、2匹。
それも赤メバル。
こいつは磯に居着いているやつだ。
回遊している群れはブルーバックでそいつに出くわさない限り爆釣はない。

12時を回って潮は止まったようだった。

メバルは終わったのだ。
帰ることに。
今年はついに尺にお目にかかれなかった。
まあ仕方ないか、こんな年もあるのだ・・・・

車まで帰りかけて、ふと、先日ハッサク君と行った巨大テトラに目が止まった。
風は強いし、月も分厚い雲に覆われ真っ暗である。
一人では危ないか・・・・釣れそうもないしなあ・・・・
しばし躊躇したが、体力はまだ残っていた。

えいっ!!行ってかませ!!

慎重にテトラを降りた。
降りられるギリギリのところまで降りても水面から10メートルの高さである。
風はますます強くなっていたが、幸いにもここは追い風である。
ただ、時折突風が吹いて身体が押される。
気を張って足を踏ん張っていなければそのまま海へ落下することになる。

まずはプラグを投げてみる。
反応なし。
やはりだめか・・・・

で、飛ばしウキにジグヘッド、ガルプを付けて投げる。
正面の海。向こうに磯が囲むように顔を出している。
ソロソロ引いていると、ガツンとあたった。
重い引き、久しぶりの元気のいい手応え。
もう、ぐるんぐるん巻いた。
足元まで寄ったのを確かめ、えいやあ~!!と10メートルを抜き上げる。
落ちるなよ!!

左手で魚体をしっかり掴んだ。
釣り座はテトラ、暴れて落とすとそれまでである。
太い魚体、いつものブルーバックだ。
25センチ。



2投目、続けてヒット。24センチ。



3投目、25センチ。



4投目、ズルッと抜ける。

5投目、26センチ。



6投目、引ったくるような強烈なアタリ。アジだった。28センチ。



もうどこへ投げても釣れそうであった。
この突然の爆釣に眠気も吹っ飛んで心は沸き立ったのだが、
ここでアタリは突然止まった。

いや、止まったというより、フグの猛攻である。
ガルプが食いちぎられ、釣りにならない。
付け替えてもワンキャストももたない。
ガルプの匂いを嗅ぎ付けたか、いつの間にかクサフグが集まってきたのだ。



ではと、プラグに付け替えるが、やはりプラグには反応がない。

タバコに火をつけ、一服する。
空はどんより曇り、今にも雨が落ちてきそうだった。
依然風も強い。
後ろからの突風の度に足を踏ん張るのであるが、太もも内側の筋肉が痛い。

展覧会からの帰り、福井に寄ったのだが、つーさんの嫁おみつさんの朝のエアロビクス、腹筋メニューに付き合った。
例のマッチョ黒人のエアロビクスだが、相当ハードで情けないことに後半はついて行けなかった。
その後、腹筋と太もも筋肉が張って痛いんである。とほほ。

さて、再びガルプを付けてキャスト再開。
フグたちは少し散らばったようで、相変わらず食いちぎられるものの、方向を変えると暫くは大丈夫な様子。
フグたちをかわしながらの釣りである。

で、23センチ



24センチと続き



手前テトラ際でゴンとでかいアタリ。
ジーッ!!とドラグが鳴った。これまでと違う重さ、でかいぞ!!
思うようにリールが巻けない。根に潜られないようロッドを立ててゴリゴリ巻く。
が、しかし、途中で抜けちまった。
あんらら~~力が抜ける。

その後、27センチ。


そして、またフグの猛攻。やれやれ。
雨も降りだした。
潮時である。


尺クラスは釣れなかったが、
久しぶりのメバルの感触は十分味わえた。
夏の風の中の釣りであった。

まだ、デカメバル釣れそうである。



釣果は27~23センチ10匹+アジ28センチ。20センチオーバー計15匹。20以下はリリース。



ロッド:テンリュウ、ルナキアLKT93M
リール:ダイワ、セルテート2506
ライン:ラパラ、チタニウムブレイド0.4号  リーダー:フロロ2.5号
飛ばしウキ:ハッサク工房ウルトラシンキング15g
ジグヘッド:がまかつJIG29#2+がん玉0.5g
ワーム:ガルプ、ベビィサーディン、自作デカワーム(ベビィサーディンの枠)

この1センチ。          6月2日

2009-06-04 | メバル
それから三日後の夜である。

今年は未だ一匹の尺も釣り上げられないでいるが、せめて一度ぐらいはその顔を拝んでみたい。

今年は釣れない年だと思っていたが、案外そうでもないのかもしれない。

三日前の感触が尾を引いて
釣れる予感が身体を渦巻いていた。

メガメバルが釣れるキーワードのひとつは「適当な荒れ」である。
凪で釣れたことはなかったが、前回そのことがさらに鮮明になった。

波予報を見ると1メートルから1.5メートルであった。
月は半月を越え、さらに丸くなっている。
そして、快晴である。

本命ポイントでやってみよう。
尺にお目にかかれるかもしれない・・・・


本命ポイントに向かう途中、車から見える海の様子は予報とは違って凪いでいた。
月もすでに昇っているはずだが、分厚い雲に覆われその姿はなかった。
予報とはこんなもんである。

月のない本命ポイントはまず釣れない。
で、まずボウズ逃れの磯で様子をみることに。

前回と同じ釣り座に立ち、まったりと静まり返った海にキャストしてみるが、
三日前のあの目くるめく活況は夢幻だったのか、さっぱりアタリはなかった。

あちらこちら場所を変え探ってみるが、やはり同じこと。
魚がいる気配さえなかった。

小生は粘るのが得意ではあるが、こんな状況では粘りようもない。

さて、どうするか・・・・時間はたっぷりあった。

見上げると、薄曇りにぼんやりお月さんが西の空に傾いていた。

ここまできたんだからやはり本命ポイントへ行ってみるか、
あそこは周りが凪ぎでもサラシができていたりするもんな。

しかし、本命ポイントも同じような海であった。
これまで魚の食いついてきたラインとポイントを思い出しながら
丹念に探ってみるが、15センチほどの小メバル数匹のみ、でかいアタリはなかった。

やはり粘る気はせず帰ることに。

今年に入って、ここででかいのが釣れない。
これまで尺を何匹も釣りあげたポイントである。
今日こそはと思って来てみたが、またしても駄目であった。

今月末は奈良ギャラリー夢雲での展覧会である。
仕事に追われ、もう来れないかもしれぬ。
とすれば、そのまま今年はもうシーズンオフとなる。
このまま終わるのか、と思うと寂しいではないか。

今日は釣れない日である。
気分さっぱりと帰り道を急いだ。

ボウズ逃れの磯を通り過ぎ、そのうちイージーテトラに差し掛かった。
月は既に沈んでいた。ここは道路の常夜灯がほんのりと海を照らすので月がない方がいい。
ちょいとやってみるか。
どうせ釣れないだろうが、時間も余力もあった。

ところが、である。一投目から魚信があるではないか。
テトラ際のライン、ココン!!とくる。
でも乗らない。

そのまま引き続けると、二度、三度、小さく当たってくる、
で、四度目のコココ・・・・で一瞬引くのを止めると、食いついた。
案外の強い引き。
テトラの下に潜ろうとするのをロッドを海側に突き出し、強引に引き出す。
途中テトラの根に引っかかるがうまくいった。

前回、抜き上げて掴んだところで魚が暴れ落下することが数度あったので
柄の短い玉網を使った。海面に届かないので抜き上げ玉網の中に落とすのだ。

27センチだった。

そういえば、前回の一投目も同じだった。同じところで同じ27センチ。
ここは左手テトラ際、近いところにこのサイズがいるのだ。



その後、俄然ワンキャストワンヒットになった。
ラインは同じ左テトラ際である。

時々バレるが、24センチ、23センチ、23センチと続き



テトラと少し離れたところ底付近で一際重いやつが掛かった。

重くて一瞬、メバルじゃないかも、と思った。
魚が反転するたびに堅く締めたドラグがジィー、ジィーと引き出される。
でかいぞ!!
胸が鳴った。
水面を割って姿を現したそいつはまぎれもなく尺クラスだった。
近くに置いた玉網を左手に持った。
その瞬間だった。
魚は左右に激しく首を振り、外れちまったのだ。
あんら~~~~、腰が抜けちまった。

ジグヘッドを見ると強いはずのデコイのフックがぐんなり伸びていた。

堅いロッドは弾きやすいが、それは食いつくときだけの話ではない。
玉網を取るわずかな間、水面にステイさせることになるが、
ラインテンションの緩んだステイが激しく暴れる余裕を作り、
堅いロッドは魚の動きを十分に吸収できず、フックアウトしてしまう。
玉網を使わず、一気に抜きあげた方がよかったのかもしれない。

しかし、驚いた。
ここは確かにいいサイズが安定して釣れてはいたが、
まさか、こんなやつがいようとは・・・・・

1匹いたということは、まだいるかもしれない。
回遊してくる群れの一塊は大体同じサイズで構成されているのだ。
気を取り直し、キャストを続けた。

ところが、その後23センチが2匹続いた後、アタリは急に遠ざかり、掛かるのは藻ばかり。
と、気がついた。
前回もその前も、釣っているといつのまにか藻の塊が集まり、絡んで来た。
生えている藻ではない。浮いて流れているやつだ。
ということは、ここは周囲の流れが集まるところなのだ。
ということは、小魚が集まり、寄るところ・・・ということになる。
ここは思いのほかいいポイントなのではないか。

粘ること30分。

すると・・・

正面の底、近いところで藻に掛かったような、でも違う、合わせると生体反応、強烈に走った。
バレたやつと同じような引き、同じようにドラグが鳴った。
でもちょっと軽いか。
今度は慎重に海面で暴れるのを竿でいなしながら玉網を取り
一気に抜き上げ玉網の中へ。
フックはしっかりと上顎を貫いていた
尺かも・・・・・
心は踊った。



で、計ってみると・・・・
29センチ。
あんら~~・・・・
また1センチ足らん。

たかが1センチ。
だが、これがなかなか越えられない1センチであり
釣り師を泣かす1センチなんである。

前回のボウズ逃れの磯、今回のイージーテトラと
確かに尺クラスが存在したのである。

これまで、尺を狙えるポイントは限られていたが、
条件とタイミングさえよければ、
案外、他にもまだまだあるに違いない。
そのことは嬉しい発見だった。

しかし、尺メバル。

まだ諦めた訳じゃないぞ。

メガメバルは6月一杯は釣れるのだ。

ふふふ、まだ時間はあるんである。

でも、仕事がなあ~~~。




釣果は29センチ、27センチ、24センチ、23センチ4匹、計7匹。





ロッド:ブリーデン.グラマーロックフィッシュTR83deep(初期タイプ)
ライン:ラパラ、チタニウムブレイド0.4号  リーダー:フロロ2.5号
ジグヘッド:デコイ、マジックミニ2.5g、ロックマジック2.5g、がまかつミニフットボール2.6g
ワーム:ガルプ、ベビィサーディン、自作デカワーム(ベビィサーディンの枠)
プラグ;ブルースコードC60、自作プラグ(おーい!!メバル60)
プラグでもやってみたが全く反応なし。