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永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

満天の星たちよ。

2012-01-19 | メバル
17日、突然波が落ちた。

連日3~4メートルだったのが、夜には1メートルになるという。
冬の能登外浦、こんなことは滅多にない。

これは何が何でも出かけねばならぬ。

怪物を狙える本命ポイントはこの時期到底釣りにならず3月までは諦めていたのだが、ひょっとしたらと期待した。

直行してみると案の定、波は1.5メートル、適当に荒れて悪くない状況。
実に半年ぶりの釣り座だった。
風邪は右後方からの緩やかな追い風。

時刻は9時。
空は晴れ上がり、満天の星が煌めいていた。
北極星を真ん中に挟んで北斗七星とカシオペアが水平線の上で向かい合っている。
ただ、風が冷たかった。


さて、釣りである。

このところの釣りから、渋いことは覚悟していたが、
案外、そうでもなかった。

ぼつ、ぼつ、とアタリがあり、ぼつ、ぼつ、と掛かった。






(改めてメバルの顔は魅力的だと思う。一匹一匹個性がある。今回は彼女たちの顔を意識して撮ってみた。)


入れ食いとはいかないし、サイズも22~23センチと今ひとつだが、このところの渋さを思えば、久々の釣りらしい釣りであった。

フロートリグメソッドである。
長めのリーダーに重めのジグヘッド(0.9グラム)、ガルプベビィサーディン。
始めは大きめのものを付けていたがアタリなく、ベビィサーディンに変えた途端にアタリが出始めた。

サラシ際でもなく、潮目でもなく、漠然と暗い遠くの海面でのみアタリがあった。
アタリがあるのはフルキャストして着水後の数巻きしたエリアだけだった。
方向も一つ。ちょっと外すともう当たらない。

小さい群れなのだろう。
同じ位置にキャスト出来れば続けてアタリがあるが、それも暫くすると当らなくなる。
そしていろいろ探っているうちに少しズレた方向でまたアタリがあり、暫くするとまた当らなくなる。

いずれもアタリのある方向は着水地点10メートルの幅はあるものの大体一方向である。
ほんの小さい群れが狭い範囲を行ったり来たり、移動しているように思えた。


強くはないが冷たい風だった。
星が綺麗な夜は冷え込むのだ。
予報では夜の気温は2度だったが、そんな筈はなかった。
熱い茶で身体を温め、かじかんだ手に息を吐きながらのキャストである。

と、小さくコツッ!と小さいアタリ。
少し遅れ気味に合わせるとしっかりと乗った。
重かった。それまでのやつと引きも違う。
ゴリ巻きしながらもドラグが出る。
高い釣り座である。足元まで引き寄せたのを確認してロッドを下げ、
いっち、にの、さん、で高速で巻きながら一気に抜き上げる。



でかかったが、尺には及ばなかった。



28センチ。産卵前だ。

でかいのもいる、
と期待するものの、その後はまた22~23センチに戻っちまった。
やはり同じ方向、同じ距離、ぼつ、ぼつ、と掛かった。










暫くアタリが途絶えたので、プラグを投げてみる。
かろうじてベビィサーディンに反応があるということはベイトは小魚に違いない。
しかし、反応なし。
ベビィサーディンより大きめの小魚系のワームにすると数度当って来た。
が乗らない。

再び沈黙。

場所を移動する。高いテトラ。
ここは昨年晩春から初夏にかけてデカイのがゴロゴロ上がったし、数匹怪物を逃したポイントだ。
この状況なら、と期待したが甘かった。
全くアタリさえなかった。

さてどうするか?

帰ろうか、寒いしな・・・・

時計は12時を回っていた。

帰りの方角、南の空にはオリオンが瞬き、その左下にはシリウスが一際大きく青く輝いていた。久しぶりに見るシリウスだった。
突然、元気が湧いて来た。
高いテトラで暫くやっていたお陰でかじかんでいた手も少し楽になっていた。


もう少しやってみるか。
このポイントで釣りが出来るなんてもう暫くないかも知れんし。
全く釣れんわけでもないし。
それにそのうち時合いが来て、でっかいのがガッパ、ガッパと食いつくかも知れんし。

元の釣り座に戻った。

だが、時合いどころか、ぼつぼつと当っていたのさえ何処かへ行っちまった。

正面、北の空は相変わらず雲一つなかった。
満天の星はますます輝きを増し、北極星を中心にして、北斗七星とカシオペアがゆっくりと半時計回りで回転していた。

深夜、独りで釣りをしていて霊的なものを見る人がいる。
私は鈍いのだろう、あまりそのような経験はない。
暗闇に独りでいても、基本的に寂しさは感じないのだ。

何故ならば、星たちがそこにいるからだ。
我々の存在は星の燃えかすから出来ている。
星たちと我々はぶっつづきでありとても近しい関係なのだ。
要するに、星たちは仲間なんである。

我々はいつも人間たちが作った価値観に翻弄されウロウロと生きているが
我々の生命は人間が作ったものではなく、宇宙という壮大な運行の中で生まれ、それとともにある。
宮沢賢治は「銀河をこそっと胸に収めて生きていこうではないか」と言ったが
私もそうありたいと願う。



すでに息を吐きかけてもかじかんだ指には力が入らない。
リールのハンドルをスムーズに回せなくなっていた。

最後のフルキャストで一匹。



それで終わりにした。
2時だった。


車に戻ると、フロントガラスの内側が表面結露し、それが凍り付いていた。





帰り道、道路標示はマイナス4度を示していた。


どうりでな。
うっひゃ~~。






帰って後、魚の胃を調べてみると小さいエビ(アミ)が出て来た。カブラを使ってみるべきだったか。






しぐれてゆくか

2012-01-16 | メバル
このところ降り続いていた雪が雨に変わった。

雪まじりの雨である。

雪が雨になるということは気温が上がったわけで、荒れていた海も少しは大人しくなる。

時雨の中、正月に尺が上がったポイントに出向いた。
2メートルの波だったが、緩やかな磯湾の奥なので釣り座は1メートルくらいか。
雨は小雨になり、背後からの風に乗って舞うように落ちて来る。
釣りをするに問題のない状況だった。

フロートリグから始める。ワームはガルプ、サンドワーム。
数投目、ヒット。
ちっこいやつ。



前回よりはいいか、と思うが
その後、さっぱり。

30分後、シンキングリグに変えてみる。前回尺がヒットしたリグである。ワームも同じガルプ、ベビィサーディン。
この磯はフロートよりもシンキングのほうがヒット率は高い。

しかし、音沙汰なし。

そのうち、雨が強くなって来た。
雪まじりの雨粒が背中を激しく叩く。
中断。
車に逃げ帰る。

でも、帰らない。
大晦日も、正月も極めて渋かった。
ほんの僅かなアタリしかなかったが、そいつがでかかった。
ここで帰るわけにはいかない。
渋いのは覚悟の上だ。

車の中で煙草を一服。熱いお茶を飲んだ。
車の屋根を叩く雨の音を聞きながら少しウトウトしたか。

30分後、雨は小降りになった。
気を新たにキャスト再開。

しかし、状況は変わらなかった。

潮目を狙っても、沈み根やテトラ際を狙っても、レンジを変えても、ワームを変えても、ジグヘッドの重さやリーダーの長さを変えても、思いつく限りのことをしてみるがアタリらしきものはなかった。

魚がいないのか?
いや、そんな筈はない。
ただ、食って来ないのだ。
何故、食いつかないか?

分からなかった。

ひょっとして届く範囲にベイトがいないのかも知れぬ。
実際、ベイトのことがよく分からない。

つーさんの話では12月の越前海岸はゴカイ類だったという。
ならば能登外浦もゴカイだろうとそれを想定してやっていたのだが、
事実、前回の尺の胃からは何も出て来なかったし大晦日の尺の胃も空っぽだった。

半分ヤケクソでプラグを付けて投げてみた。
ブルースコードC60。
このところ出番がなかったが、デカメバルを釣り始めた頃何匹も尺をあげた懐かしいプラグだ。いざという時はやはりこいつなのだ。

でも、アタル気配はなかった。

やはり駄目か、と思ったとき、
ゴゴン!と来た。

合わせるとデカメバルの重さがロッドに乗った。
強い引き、尺クラスか!!
よっしゃ!!

と・・・・・

海面を波しぶきが走った。

あんら、違った。

引き寄せ、抜き上げようとして上がらない。
フクラギだった。
ロッドを下げ、リールを目一杯巻いて、気合いを入れて再び抜き上げる。
PEスペシャルは大丈夫とタカをくくっていたが、危ないところだった。



綺麗な魚体、美味そうだ。
瞬間、こいつの刺身の映像が頭をよぎる。

が、突然暴れ下に落としてしまう。そのショックでラインブレイク、ブルースコードと共に海に帰っちまった。

フクラギが来ているのか。
すぐさまレイジー60を付け、フクラギを狙った。

直後のキャストで再びヒット。
フクラギと思って引き寄せ、抜きあげにかかり魚の顔が海面から出たところで
フクラギではないことが判明。でかい口、スズキだった。
フッコクラスだったのでそのまま抜き上げるが、リーダーがブレイク、また海へ落としてしまった。

しかし、2.5号のフロロがこうも簡単に切れてしまうものか。

どうやら、メバルじゃなくてこいつらの日のようだった。

車まで玉網を取りに戻り、本格的にスズキやフクラギを狙った。

がしかし、その後アタリはぱったりと消えちまった。
どこからか回遊して来て、ひと回りして何処かへ行ってしまったらしい。
短い時合いだったのだ。
用意してかかると時既に遅し。よくあることだ。

その後、メバルに戻るが、遠くで一度小さいアタリがあったものの、その後は相も変わらず反応はなかった。

一時止んでいた雨が再び降り始めた。

ヘッドライトの明かりの中を白い筋の束となって雨粒が落ちてゆく。
グローブに雨が沁みてかじかんで来た。

いくら粘るのが得意でも、もういいだろう。

結局、空のバケツを抱え車に戻った。
11時だった。

まあな、こんな日もある。



帰り道、雨は雪になった。



「うしろすがたの しぐれてゆくか」(山頭火)









正月、雪の尺

2012-01-04 | メバル
正月は比較的穏やかな天候だったが、4日から再び荒れるというので3日の夜、出かけた。

北陸の日本海は荒れ出すと手に負えない。4~5メートルの波になるのだ。

ここ数年、正月の釣りは事件が多く期待出来るということもあった。

先ずは勿論、大晦日に尺を釣り上げたポイント。
波は1.5メートル、悪くなかった。
しかし、大晦日と同じ、渋かった。

フロートリグではじめたが、どこに投げても、どんなワームを使っても場所やを変えてもジグヘッド単体でやってもアタリらしきものはなかった。

2時間粘って、最後に最初の場所に戻り、最初のフロートリグに戻してやってみると、大晦日の尺がヒットしたテトラ際の同じところでゴゴと来た。やっとのアタリである。
うまく乗り、重い手応え、またしてもと期待するが、
28.5センチだった。





その後、30分粘るが、アタリなし。

大晦日と殆ど同じパターン。
2時間粘ってアタリは一度、その一匹がいいサイズ。

その場を諦めた。
時計を見ると9時半。
まだ帰る気にはなれなかった。

連れ合いがメバルの煮付けを食いたいと言っていたので
20センチクラスでもキープしようと思っていたのだが、
一匹では話にならない。


輪島方面に移動する。

昔良く通った浅い磯だ。
何年か前の正月、つーさんと尺揃い踏みをやったポイントでもある。
普段は小さいのしか釣れないが、正月から1月一杯はデカイのが期待出来る。
産卵しにデカイのがやってくるのだ。

海は適当に荒れ、雰囲気は悪くなかった。


先ずはフロートリグを投げた。
PEスペシャル93は12グラムのスーパーボール飛ばしウキリグをジグヘッド単体のように何の違和感もなく遠くへ運んでくれる。
こんな竿は振っているだけで嬉しくなって来る。

しかし、ここも渋かった。激渋。
ここなら煮付けにする小さいやつくらいは釣れるだろうとタカをくくっていたのだが、そのアタリさえなかった。

そのうち釣り人が一人やって来て、キャストを始めた。

2時間経過。

釣り人も釣れた様子はなく、私も全く釣れなかった。

釣り人は1時間もやっただろうか、諦めた様子で帰って行った。
普通の感覚の釣り人なら、そうするのだろう。

しかし、私は帰らない。

ちょっとルアーを投げて釣れなかったらすぐに移動する人がいる。
魚がいるところを探して歩くのはルアー釣りの特徴だが
ことメバルに関してはそれがいいかどうか、と思っている。

メバルの場合、釣れなくてもそこにいないとは限らない。
多くの場合、そこにいても食いつかないだけなのだ。
それが何かの契機でスイッチが入り、活性が急上昇する。
それを時合いというが、メバルの場合それが顕著なのだ。

2時間アタリなく、その後、突然爆釣という経験したのは何も私だけではないだろう。

場所を追っかけると、タイミングがズレれば、釣れないタイミングを追っかけることになりかねないし
ポイントのこともしっかり把握出来ない。

過去にいい思いをして場所も雰囲気がある。
そんなお気に入りのポイントがあるなら、そこでじっくりと構える。少々アタリがなくても粘ってみる。
どうして釣れないか考え、思いつく限りのことをしてみる。
そうしてその時のパターンを探す。パターンはその時その時で違うし、変化もする。
そのうち時合いも来るだろう。(じぇんじぇん来なかったりして)

じっくりと場所と対峙する。付き合ってみる。

場所を追っかけるより、その方が確率が高い。
その場所とも仲良しになれる。
それが私のスタイルだ。

といっても、私もすぐに移動することはある。
釣り座に立った途端、駄目だと直感する時、
或は気象条件、風や波で釣りにならない時、
そんな時はすぐに移動する。
あたりまえか。

ともかく、私の得意技は粘ることなんである。

講釈はこれくらいにして、釣りに戻ろう。


フロートリグ、プラグ、単体ジグヘッドでやってみたが、どれも駄目だった。
でも海の様子からメバルがいないとはどうしても思えなかった。


私はメバルを始めた当初から飛ばしウキを多用してきた。

始めはフロートタイプの飛ばしウキだったが、いろいろ経験しているうちに、でかいやつは深いところにいるという一つの思い込みが出来て、シンキングタイプを使うことが多くなっていた。

しかし、昨シーズンの正月、荒れた海、フロートタイプで2匹の尺を上げ、荒れた海ではフロートタイプが効果的であることを実感した。それもあまり引かないやり方である。
それ以来、フロートタイプが主流になっていた。
飛ばしウキの最初に戻ったわけだが、最初とは大いに内容が違う。

だから今シーズン、大晦日も、今回も当たり前のようにフロートタイプを使った。

しかし、ここはどうだろう。
そう深くはない磯で、底は沈み根や岩が入り乱れている。
そして活性は極めて低い。

恐らく、メバルたちは海中に出ることなく沈み根や岩の隙間に入りにじっとしているのだろう。
表層あたりを餌らしきものがゆらりと移動するくらいでは出てきはしない。

ならば、岩の隙間の、メバルの鼻先まで持って行ってやろうではないか。

久しぶりにシンキングタイプ(メバトロボール、ファーストシンキング)をつけてフルキャストしてみた。
リーダーは60センチと短めだ。

カウント15でゆっくりと引く。
時々ジグヘッドが底の岩礁に当ったり、引っ掛かりそうになりながら、遠くからゆっくりと底を転がすように、撫でるように引いて来る。
ジグヘッド単体ではこれができない。

と、ココン!と当って来た。やっぱりな。
が、乗らない。

それが2度続く。

で、ワームを変えてみる。
ワームはそれまで大きめのイソメやゴカイ系のサンドワームやクリームだったが、小さいベビィサーディンを付けた。

すると、案の定、食いついた。

おお!!
久しぶりのメバルの引き、いい感じ!!

20センチ弱のちっこいやつだが
それでもやっと釣りの雰囲気になって来た。

気がつけば雪がちらほら降っていた。
でも帰る気はしなかった。これからなのだ。
背後から斜めに海面に舞い落ちる雪を見ながらのキャストだ。




そして、12時を回った頃だった。

そう遠くない沈み根の向こうあたり、ジグヘッドがコンコンと根に当たった瞬間
ゴッ!と来た。

そう大きくはないが、はっきりとしたアタリだった。

合わせると、重さが乗った。
始めは大したことない重さだったが
少し寄せたところで俄然重くなった。
根に潜ろうと下へ突っ込んだのだ。

しかし、そうはさせじと浮かせにかかる。
一度、動かなくなったが、一瞬テンションを緩めると再び動きはじめた。
一気に引き寄せる。

強い引きだった。
バレるなよ!!

足元に来たのを強引に抜き上げた。
空中にぶら下がった魚の大きさ、迫力。
見るからに尺は越えていた。



自分ながら驚いた。
まさか、と思った。

正直なところ、
その夜は釣れてもせいぜい煮付け用の小さいやつくらいだろう、と半分諦めていたのだ。

俄然、心臓が高鳴った。
暴れて落とさないように慎重に握りしめる。
安全なところに運び測る。



31センチだった。

31センチを超えたのは何年かぶりのことだ。

このサイズがこのポイントで出るなんて想像もできないことだった。


(これは記念写真を撮らないとイケナイ。前回に続き自分で撮る。今度はうまく魚の全体が入った。しかし右腕が邪魔だな。)

今ひとつ実感がわかないまま
釣りを再開する。

雪は牡丹雪となり、容赦なく暗闇から落ちて来た。
だが寒くはなかった。

降る雪構わずキャストを続ける。
しかし、集中できなかった。
海面に吸い込まれていく雪があまりに美しかったし、
予期せぬ突然の大物で頭が混乱していたのだろう。


気持ちを入れ直し、釣りに集中し直す。

その後、再びデカイのがかかったが
沈み根に潜られ、バラしてしまった。
やはりどこか気が抜けていたのだろうな。

雪はますますひどくなり、海面が見えなくなって来た。
シャビ!シャビ!シャビ!と背中に当たる雪の音。
背中にも雪が積もっているようだった。




もう一匹尺を、と粘ったがそろそろ限界だった。
足は大丈夫だったが、グローブがグチョグチョに濡れ手がかじかんできた。思うように指が動かない。

25センチが釣れたところで終わりにした。

1時半だった。


愛車、ハイエースを4WDに切り替え、雪の道を帰った。

渋い釣りだった。
釣果はたったの三つ。
しかし、1つは飛び切りでかかった。

大晦日と同じような釣りである。

尺越えがいないわけじゃない。
じっと何処かに潜んでいる。
ただ、簡単には食って来ないだけだ。
だが、食って来ないとは限らない。
何かのタイミングで必ず食いついて来る。

何かのタイミングが分からないのだが・・・・


大晦日と正月の二匹の尺は
そのことを実感させてくれた。

幸運だったし、粘りが功を奏した釣りだったとも言えるだろう。







大晦日の尺。

2012-01-02 | メバル
皆さん、新年あけましておめでとうございます。


と、新しい年は明けたのだが、
昨年の大晦日の夜、昨夜のことであるが、
その不思議とも言える釣りのことは書いておきたい。


昨年、輪島イカ釣りダービーが終わってからというもの釣りに出かけられなかった。

12月の福井ゲッコウカフェ展覧会に向けて新作版画に取り組んでいたからだ。
この展覧会は私にとっていろんな意味で重要な仕事であり展覧会だったのだ。

そのために展覧会が終わるまではと釣りを封印した。

11月に入ってあちこちでデカメバルが沢山上がっていた。
今年はメバルの当たり年らしいとの噂も耳に入る。

小生の昨年のメバルの目標は尺を5匹だった。
正月から調子は良く、夏までに4匹は釣り上げ目標は楽勝に思われた。
後一匹だが、それを釣りに行くことは出来ぬ。
悶々としながら仕事に向かった日々だった。

12月26日、福井展覧会は終わった。皆さんのお陰で楽しく盛り上がり意味深い展覧会となった。
能登に帰って来たのは28日だった。
能登は積雪60センチ、あたり一面真っ白の冬景色だった。

さて、釣り再開である。
すでにニューロッド、ブリーデンPEスペシャル9.3フィートも手に入れていた。
身体の奥から釣りへの想いと感触がじんわりと蘇って来る。
しかし、海は荒れていた。
4~5メートルの波が続いていた。

それが大晦日になって俄に落ちた。
1.5メートルだと言う。

言うまでもなく晩飯後、雪を蹴って出かけた。


先ずは本命ポイントに直行した。
だが、予想に反して波は高かった。
6メートルの足場まで波が上がって来る。
海面は怒濤逆巻き荒れ狂っていた。
一投も出来ず、諦めた。

春に怪物を狙って通った高いテトラも同じ状況。
サラシの渦であった。
それでもと思い、一時間ほどサラシの中へ飛ばしウキリグを投げてみるが全くアタリはなかった。
デカメバルは波がある方がいいが、これは論外であろう。


移動する。


帰り道の途中のイージーテトラ。

ここは緩やかな奥湾なので波はさほどでもなかったが、崖崩れの工事中で道路の常夜灯がなくなっていた。
常夜灯の微かに海面を照らす灯りが魚を集めていたのだが、残念。

ともかく真っ暗の中、キャストを始める。10時だった。

波で一番下のテトラに降りられないので上からのキャストである。
風もあるので飛ばしウキに長めの1メートル強のリーダーを付けた。
ジグヘッドは重めの1グラム、ワームはガルプサンドワーム2インチだ。

やっとまともな釣りである。
PEスペシャル93は12gの飛ばしウキを軽く遠くへ運んでくれる。
この長さは足場の高いところや磯にいいのは勿論、飛ばしウキにももってこいである。

基本的に私は長いロッドが好きである。
磯でのスズキ釣りには13フィートを使っているし、メバルも始めた当初から9.3フィート(テンリュウ・ルナキア)を使って来た。
出会ったポイントの足場が高かったということもあるが、加えて能登外浦の寒い季節は波と風が強く、飛ばしウキを使うことが多かったからだ。

波はテトラにぶち当たり帯状のサラシを作る。そのサラシの際をゆっくり引いて来る。引くというより少しづつ移動させる。

ここは前方に浮き根などのストラクチャーがない。余程の群れが回遊して来ていない限り、前方ではヒットしない。
魚はテトラの下に潜み、波とともにやってくる餌をじっと待ち受けている。
テトラにぶち当った波はテトラ際をゆっくりと移動し集まって来るのがこのポイントなのだ。と、思っている。

福井での展覧会中、つーさん宅に寝泊まりさせてもらったのだが、彼は毎夜のように釣りに出かけ、デカイのをガンガン釣っていた。噂通りの当たり年。
それに昨年の正月、ここで尺を2匹釣ったことが思い出され、期待に胸は膨らんだ。

さてどうか?・・・・

しかし、さっぱりであった。

時々当るのは藻ばかりだった。

ワームを定番のベビィサーディンに変えてみたり、場所を変えてやってみるが同じである。


でも帰る気にはなれなかった。
移動する気にもなれない。
釣りが可能でデカイのが期待出来そうなポイントを他に思いつかない。

ここは粘ることに。
気温はマイナス一度、いつもなら冷たさに足が痛くなるのだが、今回は違う。
福井から帰る日、つーさんお薦めの山用の防寒靴を一つ仕入れ、そいつを履いているのだ。なんでも零下40度に耐える靴だとか。
ちょっと大袈裟とは思ったが、寒さに足が痛くなり、まるで我慢大会のような釣りはご免被りたかった。

足が温かいと手も温かい。
足の痛さに悩む方には是非おススメしたい靴である。


(ソレル、スノーブーツ・カリブー)


話は釣りに戻る。

足は温かいが、釣りは寒かった。
釣れる気配がない。

水平線の向こうに漁船の灯りだけが点々とボンヤリ空を照らしている。

11時を回った頃、ワームを変えてみた。
福井の釣具屋さんで仕入れた「クリーム」というブラックバス用のワーム。ミミズのような8センチくらいのやつ。
ガルプに比べ芯はしっかりとして針持が良さそうだし、全体にはグナングナンして見るからに釣れそうだ。

気持ちを新たに極めてゆっくりとテトラ際を引いて来る。

と、アタリ。

ククッと来た。

合わせると重さが乗った。
いきなり重かった。
流石のPEスペシャルも絞り込まれたが
余るほどのパワー、安心してそのまま抜き上げる。

水面から魚体が出て来た瞬間、
尺だ、と思ったほどの堂々としたやつだった。




(嬉しくて自分で撮ってみるが、やはりうまく入らない。うっはー。)

暴れて落とさぬよう、慎重にしっかりと左手に握り
上の平らなところに運び測ってみた。



しっかり尺だった。

よし、時合いか!!もう一匹!!

と気分は盛り上がったが
その後は再びサッパリであった。

空は晴れあがり頭上には北斗七星が上がって来た。アルクトゥルスにスピカ、
私の星座、獅子座も少し斜めになって近くにいた。前足のレグルスが青く輝いている。
春の星たちである。

時計を見ると12時を回っていた。

海とメバルと星たちと年を越したのだ。

その後一時間粘るが音沙汰なし。

諦めた。

しかし、可笑しな釣りである。

たった一度の魚信、
そいつが尺だった。


群れに当れば沢山釣れる。
しかし、群れの中に尺クラスは稀である。
まして、尺を越えるような怪物は群れず単独で潜んでいるのかも知れぬ。
我々の想像を超える場所に。

メバルにも個性があろう。明るい性格、皆と楽しく浮かれ騒ぐようなやつは大きくはなれない。
極めて用心深く賢いやつ。人間の誘いなど見向きもせず、暗いところにじっと潜み孤独を愛するやつ。し、渋いぜ!!
そんなやつが20年も生き延びて怪物になるのだ。
今年こそは35センチを超えるようなそんな怪物に出会ってみたいものだ。



ともあれ大晦日の夜、11時過ぎ、
忽然と年間の目標尺5匹が達成出来たのである。



海よ、今年もよろしく。




ロッド:ブリーデンGRF-TR93 "PE Special"
リール;ダイワ セルテートフィネスカスタム2506+ダブルハンドル
ライン;ラパラ PEマルチゲーム0.6号 リーダー フロロカーボン3号
飛ばしウキ:スーパーボール12グラム リーダー フロロカーボン2.5号1メートル前後
ワーム:ガルプ サンドワーム2インチ、ベビィサーディン、 「クリーム」
ジグヘッド;尺ヘッドRタイプ1グラム


【お知らせ】

本文にも登場するつーさんは身内のごとき親しい友人であるが、釣りの師匠でもある。
彼に出会わなかったら釣りという極めて愉快かつ豊饒な世界を知らずに生きていることだろう。
その彼が昨年、釣りのメジャー雑誌「イカプラス」にデビューしたことはすでにブログに紹介した。
今回はイカプラスの増刊号「東海・北陸のライトゲーム」にメバリングの記事を書いている。
彼の本領はやはりメバルである。
凪をメバル日和というが、日本海のデカメバルは波の立つところで釣れる。
タイトルは「波を釣る」。荒れた海、フロートリグでの釣り方を彼の繊細な感覚と幾多の経験から導き出される洞察で分かり易く書いてくれている。(3ページカラー)
北陸の荒海でデカメバルを狙う熱き貴方に是非手に取ってもらいたい。
貴方の釣りに新しき何かを提供してくれること請け合いだ。よろしくです!!





テトラのてっぺんで。                           7月8日

2011-07-10 | メバル
山道から里道に出て海に出るまで暫く走らなければならない。
窓を開けると田植えが終わった田んぼの水面を渡って来る初夏の風が気持ちよかった。

海に出るとまず波の様子を見る。
その夜は2メートルの波ということだったが、実際は凪いでいた。もうベタ凪に近い。

ここまで来ると引き返すわけにも行かず、ポイントに向かって海岸線を走る。
地形によって波の高さは違って来る。それを期待したが、どこまで走っても凪ぎに変わりはなかった。

しかし、このところの新ポイント、高いテトラの下の海は違った。
周囲は凪いでいるが、ここだけはサラシが立っていた。
うねりがあり、それが海面から顔を出し細長く横たわる磯に当り、テトラと磯に囲まれたその海域はサラシが広がり、波立つ海面には活気があった。

先ずは前回爆釣であったガルプ、ジギングブラブ2インチを付けて前回のヒットポイント沈み根辺りに投げてみる。
すぐに食いつくと思っていたが、食いついては来なかった。
前回良かったから今回も、というわけにはいかないようだ。
メバルは特にその場その時でパターンが違ったりする。
その時のベイトに由るのだろうが、よくは分からない。

そのうち、ジギンググラブは無惨な姿になってしまう。
またフグである。
困るのであるが、諦めない。まだ始めたばかりなのだ。

ならばと、自作のカブラを投げてみる。ここでプラグを使う気にはなれない。テトラに擦れてすぐにボロボロになってしまうからだ。
しかし、カブラもダメだった。こいつを使うには少し荒れ過ぎなのかも知れない。

ふと、カルティバのロックンベイトが思い浮かんだ。
人気がないようだが、気に入っているのでいつもバッグに入れてある。
尻尾を小刻みに振りながら泳ぐ可愛いやつで、フグにも強そうだ。

左手は宙空に突き出したテトラが邪魔をして投げにくいのだが、ラインが擦れるのを覚悟で敢えてその方向へ投げてみる。
着水とともにゆっくり引いて来る。
いきなりゴツンときた。
合わせると重さが伝わって来る。
ゴリ巻きして、抜き上げである。
えいやっ!!とリールを巻いたが、海面を離れると重くてままならない。
それでも巻くが、中空に突き出したテトラをなかなか超えてくれない。
テトラの腹を擦り引っ掛かり、下がり、また上がって来る。
と、その時、カクンと抜け落ちてしまった。

ああ!!と思う。
またである。


願わくは魚がそのまま海に落ちてくれることだ。
まだ巻き上げはじめたところだったし、おそらく大丈夫だったろう。
そう思いたい。

おそらく、柔らかい口の脇にフッキングしたのであろう。
この高さを落とさずに抜き上げるには堅い上顎にしっかりとフッキングさせる必要がある。
そのためには向こう合わせではなく、アタリに集中してこちら主導で掛けねばならない。


どうやらこの方向にはフグはいないようだった。
或はロックンベイトがお気に召さないのかも知れない。


すかさず、次のキャスト。同じ方向。同じライン。
ヒット。
今度は猛烈な早さで巻き上げた。
25センチ。
フッキングを確かめる。なんとか上顎に掛かっていた。




その次もガンときた。
こいつは重かった。
今度は心して巻き上げる。
テトラに引っ掛かりそうになり、一度落ちかかるが、なんとか巻き上げた。
デカメバル用のルナキアでも大丈夫かと思うほど折れ曲がった。
こいつはしっかり上顎にフッキング。




ひょっとしてと、バックからメジャーを出して、暴れる魚を押さえつけながらなんとか計測写真を撮る。
しかし、28センチを僅かに越えたに過ぎなかった。
前回、計測写真はその場ですぐ撮らんといかんなあと痛感したわけで、気を入れてやってみるとこれである。





その後もヒットは続いた。

26センチ。



25センチ。



そしてまた、一際重いやつ。
よし!!今度こそはと期待しながら抜き上げた。




測ってみる。

しかし、また28センチであった。





その後、遠くを狙ってフルキャストすると、向こうの磯まで届いて根がかり、
ラインブレイクとなってしまった。
テトラの上でラインを編み直し、再び釣りに戻ったが、
何故かアタリはぴたりと止まってしまった。

フグがいるからか?
そうではない。

フグはいなかった。
しかし、どの方向に投げても、ワームを替えても、
反応はなくなった。

何故か?暫くテトラに座り込んで考えた。
いろいろ考えられるが結局のところ分からない。
突然スイッチが入って爆発し、突然スイッチが切れて静まり返った。
そういうことだ。

メバルの時合いは短いとよく言われる。
ほんとそうなのだ。
時合いは祭りで、終われば後の祭りである。
先程までの熱気と興奮は何だったのか、
終わった後の一種形容し難い寂しさもメバル釣り独特である。

今回も怪物に出会えなかった。
でも、まだ諦めるわけにはいかない。
ここには必ず怪物がいるのだし、
この海はまだメバルたちの宴が続いているのだ。


空には星はなく、暗闇と波のざわめきだけである。
初夏の柔らかい風が吹いていた。



しかし、私は深夜独り、こんなテトラのてっぺんで何をしているのだろう?


なんだか可笑しかった。






怪物を狙う。                  7月4日

2011-07-06 | メバル
昨夜から、嵐のような風が吹き、叩き付けるような激しい雨が降り続いた。
もう春一番とは言わないし、夏一番というのも聞いたことがないが、この嵐は確かに夏一番であった。

午後遅くになってパタリと風は止み、雨も上がった。

ふむ・・・
こんな時は、釣りに出よう。
ふと、そう思った。なんだか予感めいたものがあった。

怪物に出会えるのではないか、と。

晩飯後、遅い時間に出かけた。


9時過ぎ、先ずはこのところご無沙汰のポイント「イージーテトラ」から始める。
ここは今年の始め尺が二匹釣れたが、その時海は釣りが難しいほど荒れていた。
あれほどの嵐の後である。あの時のような荒れを期待したが、
1メートル弱、少々波立った凪ぎといったところだった。

しかし、ともあれ投げてみる。
尺ヘッドDにビームスティックを付け、まずは底をスローに引いてみる。
数投目、左テトラ際を通していると、ガツときた。
合わせた途端ドラグがどんどん出る。

あらっ!! ドラグを締めるのを忘れていた。慌てて締める。
ドラグを締めている間、根に潜ったようで引いても動かない。
で、テンションを緩め、少し間を置き、ゆっくりと上げるように引くと重さが着いて来た。
うまくいった。案外の重さ、一気に寄せる。
おっと、28センチ。このポイントでは上出来サイズだ。






案外いいのかも知れないと気分は一気に上昇するのであったが、
その後、さっぱり。

折角の尺ヘッドDだからと、ワインドでやってみるがうんともすんともである。
今のところ、ワインドの効果が実感出来ない。

そのアタリのなさは、魚は釣れたやつしかいなかったのでは、と思われるくらいであった。
勿論、小さいやつは時々掛かるのであるが。

早々に諦め、怪物を狙って本命ポイントへ。

先ずは定番の釣り座。
風は緩やかな追い風、悪くない。
波は1メートル。荒れ気味の凪である。

活性がなくはないのだが、
でかくて23センチ。





前回、取り逃がした大物が食いついた底も狙ってみるが、アタリすらなかった。


この荒れではこんなものかと早々に諦め
さて、新ポイントのテトラへと移動。

釣り座に立って下を見ると、やはり高いなあと思う。でも高いからこそ広範囲を攻められるし、障害物もあまり気にならないという利点もある。
下の海はそう荒れてはいないが、何かいい雰囲気があった。海面がソワソワというか、ザワザワと囁き合っているようで、こちらも胸騒ぎがするのであった。
風は緩い向かい風。飛ばしウキをキャストするに殆ど問題のない風だった。
ここで怪物を狙うために用意した飛ばしウキリグをセットする。
ラインはラパラマルチゲーム0.6号14ポンド、リーダーを3号にし、ジグヘッドはカルティバ、クロスヘッド2gに以前買って使わなかったガルプのブラックバス用ワーム3インチ(8センチ)を付けた。
まずは正面に投げてみる。思った通りしっかり飛んで放物線を描いて下の海面に落ちてゆく。ゆっくり、ほんのゆっくり引いて来る。くるか・・・・・・・

いや、こなかった。
暫く方向を変えやってみるがアタリなし。

で、ジグヘッドとワームを変えてみる。少し小さいやつに。
自作ジグヘッドサイズ2にガルプジギンググラブ2インチ6センチ。テールのクルリと曲がったやつだ。

正面少し左には沈み根が数カ所かたまってあるのだが、根がかり覚悟でそのラインを通してみる。
と、がっつん、と引ったくった。
15メートルをグングン巻き上げる。
23センチ。小さい。




そして次のキャスト。
また来た。
引き寄せ、巻き上げる。

巻き上げにかかると、その重さがよく分かる。
途中、テトラにどでん、どでんと引っ掛かりながら上がって来るのであるが、それにしても重かった。
落ちるなよと祈りながら、えんや、えんやと巻き上げる。
上がって来たやつは思った通りでかかった。
どでんとしたやつだった。

早速、バッグからメジャーを出して測ってみる。
テトラの上で暴れる魚を計測するのは難しい作業である。
足元は丸い曲面であるし、下手すると魚は滑り落ちてしまう。
魚を左手で押さえ、右手でメジャーを添えるのである。
勿論、写真を撮る余裕はなかった。
尺であった。30センチをほんの僅か超えていた。



ジグヘッドを見ると重さに耐えかねたのか伸びていた。
この高さを暴れながら上がって来たのである。無理もない。




思った通り、ここには大物がいた。
しかし、狙っているのはそのレベルではない。もっと強烈な引き、重さ、怪物だ。


次のキャストも続いてヒットした。
24センチ。




その次も。
26センチ。





もう入れ食いであった。




そしてその次。

こいつも重かった。
再び、メジャーを出して計測、29センチ。
先程の尺より幾分小さいものの、全体は体高が高くてこいつの方が形はよかった。




しかし、その次のキャスト、ロッドを振り抜いた瞬間、ラインが切れてルアーは闇に消えちまった。
おそらく、ガイドにラインが絡んだままキャストしたのだろう。

しかし、入れ食いである。ここで釣りを止めるわけにはいかない。
怪物への期待はまだ膨らんだままである。

ラインを組み直し、リグを作り直し、再びキャストを始めた。


しかし、

先程の入れ食い活気は何処へやら、忽然とアタリは消えてしまった。
たった数分しか経っていないというのに。
何者かにばっさりと切り捨てられたかのような理不尽さであり、すでに祭りの後であった。


諦めきれずヒットポイントをしつこくやっても時々当って来るのはフグばかり。
一発でちょん切られるワーム。ああ、勿体ない。

あっ、と思う。

フグなのだ。

そういえば、フグがうろつくポイントでこれまでメバルが釣れたことがない。
フグたちがやって来て海面を支配すると、メバルたちはフグと争ってまでワームに食いつこうとはしないのだ。
極めて遠慮深い、奥ゆかしい性格なんである。
特に、デカメバルともなれば奥ゆかしく用心深い性格故に長生き出来たのである。


ならばと、プラグを投げてみるが、もうメバルたちは引っ込んだまま出て来ようとはしなかった。


諦めた。残念無念。魚がそこにいるのは分かっているのだが、
フグたちはワームが美味かったのか、そこを去る気配がなかった。



平らな場所に戻り、一応計測写真を撮っておこうと改めて尺を測った。

ところが、である。
既に口を開いて堅くなった尺は僅かに尺に届かないのであった。
うっひゃ~~!!!




死後硬直で縮んだのか、見間違いだったのか、
こういうのを「後泣き尺」というのだろうか。

まあ、いいではないか、大した問題じゃない、うむ・・・・
と自分にいい聞かせながら車へと向かったのだった。


釣り始めはどんよりと重く真っ暗な空だったが帰りはすっかり晴れ上がり、頭上には夏の大三角が煌めいていた。


怪物には出会えなかったが、



いつか、きっと。


である。

























めばる二夜。 怪物がいる。            6月25日、28日

2011-07-01 | メバル

「メバルの刺身が食べたい。」
金沢から来ていた友人が私を見てそう言った。

ならばと出向いた。6月25日だった。

このところ毎日間断なく雨が降り続けていたが
丁度、午後過ぎから止んだところだった。

ポイントは前回と同じ「右足の崖」である。
メバルシーズンの終盤である今、私のシーズンを気分良く締めくくるためにも
尺をもう一匹あげたかったし、この時期、尺を狙えるポイントはここの他なかった。

前回このポイントは期待はずれの凪だったが、今回は丁度いい荒れ具合だった。
1~1.5メートルの波、サラシがいい感じで渦巻いていた。しかし、風が悪かった。強い向かい風。
6センチ7グラムのプラグもまともに飛んでくれない。自作のシンキング飛ばしウキ15グラムもサラシの向こうまで届かなかった。
ここでデカイやつが来るのは遠いところだというのに。

活性が強いときはサラシの中でもアタックして来るが、今回は全くダメである。
釣り座を変えてなんとかキャスト出来る方向に投げてみるが、ラインは風に流され、反応はなかった。

流石に2時間、アタリもなければ諦める。

諦めかけた頃、俄に風が弱くなった。

チャンス到来と風に向ってサラシの向こうへフルキャストする。

数投目、やはり遠いところでコンときた。待ちかねたアタリだ。
しかし乗らない。
同じところを何度も通す。
と、ココン。やはりきた。今度は乗せる。
遠くから引き寄せる。案外の手応え。魚は暗い海面を滑るように近づいて来る。
27センチ。




しかし、その後が続かない。
一時間後、25センチが一匹。




その後、再び風が強くなり、諦めた。

2匹だが、なんとか友人に刺身を作ってやれるではないか。

空はどんよりと厚い雲が覆い、細かな雨も落ちて来た。
車までの道を急いだ。

と、帰り道右手の大きなテトラ群にふと目が止まった。

普段、この巨大なテトラは危険過ぎて釣り人はあまり近寄らない。
私も過去何度か降りてゆく道を見つけて中段ではあるが、釣り座を見つけキャストしたことがある。
確かにあまり人が来ないところだし、メバルのポイントとしては最高で、デカメバルの入れ食いも経験している。
しかし、始めからそこに行く心構えと体力がないとひとりで行く気にはならない。
正直、何度か登り降りしたが、だからといっていつもうまく登れる自信が今ひとつないのである。
もし、足を滑らせ落ちたら、それで終わりなのである。要するに怖いんである。
それにその降り道も今では確かな記憶がないのである。

もしテトラからキャストすれば丁度いい感じの追い風となる。
ひょっとして降りなくても、テトラの上からキャスト出来ないか、と思った。
で、探してみると、あった!!

比較的安全で簡単に行ける釣り座。しかも足下の海は沈み根、浮き根があり、魚が好んで集まりそうなポイントである。
ただし、問題が一つ。足場の高さである。
それはもうメバル釣りの釣り座としては考えられないほどの高さである。
おそらく15メートルはあるであろう。ルアーをピックアップするにも巻き上げる途中、ルアーはテトラの隙間に引っ掛かるかも知れないし、こすることはまず避けられない。魚が掛かってもそうであろう。およそ人はここからキャストしようとは思わない。
勿論、ジグヘッド単体などは問題にならない。かろうじて重いプラグか飛ばしウキならなんとかなりそうだった。
私の飛ばしウキはウレタンゴム製のラグビーボール型のやつで、衝撃には極めて強いし重さも10グラム以上である。
こんなところにはもってこいであった。

試しに投げてみた。
追い風ということもあって、案外綺麗に飛んでくれる。
飛ぶというより、放物線を描いて遥か下へと落下するのである。

着水するのに時間はかかるが、案外問題なくキャスト出来ることに驚いた。
ゆっくり引いてみる。
暗闇の中、何処にルアーが落ちたのか、どの辺りをルアーは動いているのか遠過ぎて分からない。
頼りは長いラインを伝わって来る細かな信号と勘である。

どのくらい引いて来たか、おそらく足元のテトラ近くまで来て、ゴゴン!!と引ったくられた。
合わせると重さがロッドに乗った。よし、と巻き上げる。グングン巻き上げる。
いつもは引き寄せ抜き上げるわけだが、それとは違い、巻き上げる。長い距離をぐんぐん巻くんである。
魚の重さがもろにロッドに掛かり、予想通り、何度かテトラをこすりながら魚はあがって来た。
26センチ。



巻き上げる時間は長いものの、デカメバル専用のロッドである。折れる心配はない。
尺でも大丈夫だ。

とにかく、素早く巻き上げなくちゃならない。魚がテトラに擦らないように。


二投目、また掛かった。
23センチ。



三投目。
25センチ。




案の定、入れ食いとなった。










どれも25センチ前後であったが
先程までの釣れない釣りが嘘のようであった。

10匹も続いただろうか、突然時合いは終わり、静かになった。
暫くするとまた釣れるだろうと思ったが、
もう十分だった。


この釣り座は発見であった。
いつもは通り過ぎていたが、ちょっと発想を変えてみると
それが宝のポイントなのだった。

でかいのは釣れなかったが、このポイントにはきっと大物がいる、そんな確信めいたものを感じられ
それが嬉しいではないか。

明くる日、友人は刺身と煮付けに舌鼓をうち、大いに喜んでくれたのである。




そして3日後、28日。


予報を見ると、今度こそ追い風である。
波も1.5メートルらしい。

出かけた。

またまた「右足の崖」である。

いつもの釣り座は予想通りの追い風。波もいい具合に荒れていた。
サラシの15メートル先には潮目が横たわっている。
状況は申し分ない。これを待っていたのだ。

よし!!
と、まずはプラグを定番の方向、潮目を狙って投げてみる。
風に乗ってルアーはよく飛んだ。
ここは大物は遠くで掛かることが多い。
すぐにでもアタリがあると確信していた。

ルアーが潮目に差し掛かり、
くるぞ、くるぞ・・・とドキドキしながらルアーを引く。


がしかし、

サッパリ、であった。
時々、小さいのが掛かる程度。

状況がいいからと言って、いつも釣れるわけじゃないんだな。
潮目だからといって、そこにいつも魚が溜まっているとは限らない。
いない時はいないし、釣れない時は釣れないんだ。
当たり前のこと。

考えうる全てのことをやってみたが、ダメである。

しかし、一度、底を引いているうちに食いついて来たやつがいた。
そいつは手応えからデカメバルのレベルを確かに超えた大物だった。
メバルなら軽く尺越えだったと思えるが、やり取りの間とうとうバレてしまった。

3月30日の女釣り師との釣りでも、大物を逃がした。あの時は寄せる途中、障害物であるテトラの根に引っ掛かり、バラしてしまったのだった。

手応えからしてスズキでもないし、クロダイでもない。それは確かだ。鈍重でありながら、下への強い引きである。おそらく根魚だろうと思われる。メバルか、ソイか、キジハタか、アイナメか、タケノコメバルか、どちらにしても大物である。
メバルなら35センチ級の怪物に違いない。


バラした後の強烈な手応えの印象が長く尾を引いた。


思い返せば、このポイントでのこんな経験はこれまで一度や二度ではない。
ラインが切られたり、バラしたり、フックが伸ばされたり、一度も上げることができなかった。


そいつをもう一度と同じ底をしつこく狙ってみるが、アタリはその一度だけだった。

結局、3時間粘って25センチが一匹。

海の状況がいいにもかかわらず釣れない時は、ホントに釣れないんである。



場所を移動した。

前回の入れ食いテトラに期待した。

前回は追い風だったが、今回は向かい風である。
最初のポイントとは逆になるのだ。

海面まで15メートルの高さである。
この高さで向かい風は厳しい。
空中に長く伸びるラインはもろに風の影響を受け、難しい釣りであった。

しかし、なんとかルアーを海面に落とすことができれば、それがどの方向へ流されても、食いついて来ると確信していた。

数投目、案の定、食いついて来た。
15メートルをえんや、えんやと抜き上げる。
向かい風のせいで、テトラに何度か当り、こすりながらの抜き上げである。
25センチ。



前回ほどではないが、まあまあの活性である。

23センチ。



26センチ。




その後、風を利用し思い切り右方向、テトラの足元にルアーを落としゆっくりと引いていると、ガツン!!ときた。
強い引き。ドラグが軋む。走る。絞られるロッド。
なんだ、なんだ!!
大物だった。引き寄せる。心臓が早鐘を打った。
足元まで寄ったが、そこでテンションが抜けた。
あんらら~~。

おまけに、ルアーを回収する途中、飛ばしウキがテトラの隙間に挟まったとみえ、仕方なくライン切れ。


ラインを編み、飛ばしウキのシステムを作り直し、さて再開。

一瞬、風が弱まったので、正面遠くに投げてみる。うまく飛んでくれた。
引いて来るとテトラの沈み根があり、そこで食いついて来た。
激しいアタック、手応え十分、こいつもでかかった。
走る走る。負けじと引き寄せる。
0.6号、14ポンドのラインに合わせ強く締めたドラグが出る出る。

尺か。いやそれ以上かも。怪物の期待が膨らむ。
バレるなよ。
足元まで寄ったところで、抜き上げに掛かった。
一気に巻き上げる。
ロッドに掛かる全重量。折れ曲がるロッド。重かった。いいぞ。

しかし、何回か巻いたところで重さが消えちまった。

軽くなったラインを巻き上げてみると、
かろうじてリーダーは残っていたものの、飛ばしウキも、ジグヘッドもなくなっていた。
2.5号のリーダーが切れちまって魚は海へと落ちたのだ。

いくらなんでも魚の重量に耐えきれず切れたとは思えない。
抜き上げの時、ラインがテトラに擦れ傷ついたのだ。
それに魚の重量が重なった。単なる重量ではない。暴れる時の重量は二倍になる。

それにしても魚体を見たかった。
どんなやつだったのだろう。


その後もトラブルは続いた。
ラインブレイク2回、飛ばしウキのロスト4つ、ジグヘッドのロスト数個と散々であった。

しかし、最後の最後、28センチがあがって来た。





そして、持っていた飛ばしウキを全てなくしたところで終わりにした。


高い釣り座での風との格闘、やはり難しい釣りだった。

がしかし、事件も多々あり、
嗚呼!!なんという夜だったのだと、愉快なのであった。

正面の中空、斜めに傾いた北斗七星も北極星を挟んで水平線近くのカシオペアも笑っているようだった。


今回、大物を三度取り逃がした。
このポイントには何か得体の知れない怪物が確かにいる。
尺メバルのレベルを超えたやつ。
メバルではないかも知れない。
釣れそうで釣れない。
そいつは一体どんなやつなのか?

とにかくそいつを釣り上げてみたい。
ラインやリーダー、ジグヘッドなど、もう少し強いものにして望もう。




なんだか

闘志が湧いて来る。








ロッド:テンリュウ、ルナキア9.3フィート
リール;ダイワ、イグジスト2506ダブルハンドル
ライン;ラパラ、マルチゲーム0.6号13.9lb
ジグヘッド:自作(がまかつJIG29サイズ2+がん玉0.5~1g)、尺ヘッド0.5g
飛ばしウキ;ウレタンゴム製ラグビーボール(自分で鉛を埋め込んだりして11~15g)
ワーム;ガルプ、ベビィサーディン他いろいろ。




めばるたちよ。                                 6月21日

2011-06-23 | メバル
このところ凪ぎ続きだった海が少し荒れて来たという。

それを待っていた。
メバル釣りである。

もう久しくメバル釣りから遠ざかっていた。
4月5月のいい時期に仕事に追われていた。

3月30日、女釣り師と尺メバルを釣ったあの記憶が蘇る。

あのメバルのアタリ、アタックの衝撃、引きの手応え、あの魚体、まん丸い目、それらが身体中を巡り、もういても立ってもいられない。

勿論、そのポイントへと向かった。

釣り座に立ってみると我が期待はあっさり裏切られ、海は静かに凪いでいた。
でもベタ凪ではなかったし、魚の気配は感じることができた。
風も強いが、追い風だった。

ともかくジグヘッドにガルプ、ベビィサーディン白を付け投げてみる。
近くまで引いて来てコン!ときた。
小さいが明確な魚信、これがメバルのアタリである。
次のココン、で合わせる。乗った。が、軽い。18センチだった。海に戻す。

ふむ、魚がいないわけじゃなさそうだ。

二投目、またアタリ。でもちょっと違う、続けざまに当って来るが乗らない。
フグだった。ガルプはズタズタにちょん切られていた。

ならば、とプラグを付けた。
一投目、ヒット。23センチ。
久しぶりのメバルである。でかくはないがこの顔、このデカイ目、握った感触、なんだか嬉しい。



今回このサイズは煮付け用に持ち帰ることに。
うまいんだなこれが。



しかしその後は当らない。

プラグの質を変えてみる。深いレンジを狙えるやつ。
底まで落としリフトアンドフォール。
と、掛かった。
これも23センチ。




しかしその後は当らない。

またプラグの質を変えてみる。表層だが小さいやつ。
飛ばないので飛ばしウキでやってみる。

掛かった。でも20センチ弱。海に戻す。
その後、数匹。どれも小さい。


暫くするとプラグでも反応はなくなってしまった。

何となく思うのはルアーは小さい方がいいような・・・・
ベイトが小さいのだと想像する。

大きめのプラグやワームが効果を発揮するのはやはり荒れて活性の高い時だ。
海が静かなとき、大きいベイトは捕らえにくいのだろうし、メバル自身警戒心もあるのだろう、小さいルアーのほうが有利、というのが私の経験だ。

フグが去ったことを祈って、再びジグヘッドにガルプでやってみる。
一投目からガツンと引ったくって来た。23センチ赤。




どうやらフグはいないようだった。
数投目、また来た。今度は案外の引き。25センチ。ブルー。




暫くしてまた。24センチ。ブルー。




その後、小さいのは掛かるもののサイズが出ない。そのうち突然のように反応がなくなった。方向を変え、レンジを変えても同じである。



ともかく25を超えるやつにお目にかかりたいと思う。
魚がいないわけではない。どこかにきっといる。でも食いついては来ない。
そいつを引き出すことができない。

で、ワームを変えてみる。以前買ったものの釣れそうになく使わなかった、クルリと尾っぽを巻いた大型のワーム。デカイのを狙って。
と、やはり一投目で来た。が、やはりサイズは伸びない。23センチ。



で、案の定、そのアタリだけだった。
ふむ。


ここでちょっと休憩。ポットに詰めて来た熱いお茶を飲み、煙草を一服。
天頂近く白鳥座がゆったりと翼を広げ、ベガもアルタイルも美しく瞬いている。
もう夏なのだと気がついた。
後ろを振り向くと、山の端近く、アンタレスが「おれもいるよ」と赤く輝いていた。


凪では釣れないというのが小生の常識になっているが、本当にそうなのか、それは思い込みではないのか、という思いが引っぱる。
それでいろいろやってみる。でも小さいのは釣れるもののやはりデカイのは来ない。

活性が高くどんどん釣れている時はルアーを変える必要はない。同じやつの方がいい。
でも活性が低い時、ルアーを変えることは当たり前のこと。
種類や色など、いろいろとやってみる。
でも今回のようにそれが際立ったことはこれまでにない経験だ。
ルアーを変えた1.2投だけに反応があり、その後はなくなる。
そのパターンである。

それは魚はいるが食いつかないというまさに活性の低さを現している。
魚たちに余裕がある。もう何が何でも食いつきたいという状況ではないのだ。
私がメバルだとしても、初めて見る魚のようなものに、おっ!なんだ、なんだ、と近寄り思わずパクッとやることがあるにしても、同じやつが同じように泳いで来たら、ふん、と興味を示さないだろう。

もうやめようと思っていたところ、ジグヘッドボックスに入っていた自作のカブラを発見。最後にそれでやってみることに。
私はジグヘッドを自分で作ったりするが(安上がりなので)、そのついでに作ってみたやつだ。
作っては見たがどうにも釣れる気がせず使わなかった。

ステンボーシンカーを付けて投げてみると
あんりゃりゃ、一投目から食いついた。しかも活性のあるアタリだった。しかし、また23センチ。



そして連続ヒット。
いや驚いた。自作の適当に作ったカブラである。これほど効果があるとは思っても見なかった。




自作のカブラを改めてよく見た。
意識はしていなかったが、これはエビなんだと思った。
凪の澄んだ海ではやはり小さいものを食っている。エビは御馳走なのだ。

結局、それがその日一番アタリが長引いたルアーだった。


尺を狙ったが、それどころか25センチアップも釣れなかった。
しかしだ、
狙った通りデカイのが釣れるのは嬉しいに違いないが、それだけが釣りではない。
結果よりもナマの時間と体験である。

海や魚たち、空や星たちとどれだけの会話が出来たのか、
なにか新しい発見があったか、
心ゆくまで遊べたか、
そしてさらに言うなら、自分自身と出会えたか。
それらのことがいい釣りだったかどうかのキーワードだと思っている。

バケツに入った10匹のメバルたち。
メバルたちの顔を眺めているうちにふと思ったことがある。
こいつたちも放射能に汚染されているかも知れないなと。

3月11日を境に世界は変わっちまった。
これからも海の汚染は広がり続けるに違いない。
しかし、私はこのメバルを食おうと思う。
海とこの魚たちとこの先、死ぬまで付き合っていこう

と、強く思った。



女釣り師とミラクルナイト               3月30日

2011-04-01 | メバル
福井の女釣り師みずのがやって来た。

彼女は能登外浦おいらのフィールドと相性がいい。
これまで数度やって来て一緒に出かけたが
昨年のメバル29.5センチといい、イカの爆釣といい、
ことごとく彼女にとってメモリアルフィッシングとなった。

1月末にもやってきたが、思わぬ悪天候と大雪で
釣りは断念、代わりに雪掻きを手伝ってもらった。

今のところ、福井越前海岸はとんとデカメバルが釣れないらしい。
彼女も度々出かけてみたものの20センチを越えないのだとか。

だから、今回こちらでの釣りにははち切れんばかりに胸を膨らませていた。


ところがこちらも胸を張っていいぞ!!とは言えない状況だった。
前回も寒さの中、粘りに粘って、なんとか時合いに当たったが、
あの寒さの中の粘りを彼女に強いることは出来ない。

で、彼女がやって来る2日前、本命ポイントに様子見釣行に出かけてみたが
大潮は過ぎ、月もなく真っ暗な海は凪いで、予想通り釣れなかった。
加えてマイナス2度という気温に身も心もかじかんでしまった。
やはりここは月と波がないと駄目なのだ。




さて、どうするか。
様子見釣行からして本命ポイントはキビシいだろうし、大物は狙えないが灯りもありそこそこ楽しめる場所にしようか、くるくると迷うのであった。

予報を見ると気温はいくらか上がったようだし、追い風である。それにこのところ凪いでいた海も少し荒れて来た。
1.5メートルの波らしい。

月はないが、その他の条件は悪くない。

で、ともあれ本命ポイントへ行ってみようと決断。



晩飯後出かけ、現場に着いたのは9時だった。

車から出ると風を見る。予想通りの追い風だった。よし。

はやる心を押さえ、静かにポイントに向かう。
海を見る。凪ではなかった。暗闇の中、白い波頭が幾重にも見える。よし。

釣り座に立つと、足下はサラシの渦であった。サラシの際まで15メートル、およそ1.5メートルの波と見た。
風は背後から狙う方向へ3~4メートルの強さ。
それになんといっても寒くないのが嬉しかった。

月明かりはないものの、ひょっとして釣れるかも知れない。
心は弾んだ。


まず、みずのに右側の本命釣り座に立ってもらい、一番可能性のある方向へキャストしてもらう。
遠くの民家の灯りがかろうじて届き、微かに照らす海面だ。
10グラムの飛ばしウキで遠く、サラシのうんと向こうを狙ってもらう。30~40メートルの距離か。
表層をゆっくりと引いてくる。
この状況ではこれが一番可能性が高いとみた。

おいらは左側の釣り座から左のテトラ際を狙う。
こちらは民家の灯りも全く届かず、文字通り真っ暗な海である。
まずプラグを投げてみるが音沙汰なし。

そのうちみずのがヒット。
20センチ弱。



でかくないが、それでも「今年の自己記録」と嬉しそう。

ともあれ釣れた。
やはり海の状況は悪くない。
2日前と違って海に活気があった。



彼女と並び、おいらも飛ばしウキをセットし本命方向へ投げてみる。
ワームはカルティバのロックンベイト2インチ。
尾を振りながら泳ぐ小魚系のワームだ。

風に乗せてフルキャスト、40メートルは飛んだか。
表層をゆっくり引いて来る。時々引くのをやめる。そしてまた引く。
すると、コツっと当って来た。
で、また当って来る。合わせる。乗った。
遠くだ。おそらく25メートルか30メートル辺り。



ブルーバック25センチ。まあまあのグッドサイズ。

暫くしてみずのにまたヒット。
22センチ。





そしてダブルヒット。




その直後25センチ。ブルー。




そしてみずの。
23センチ。確実にサイズアップしている。




おいら26センチ。



25センチ。




27センチ。



26センチ。




みずののアタリが止まっていたが、プラグをつけて
20センチ。
小さいが、彼女にとって初めてのプラグでのヒットだ。





コンスタントに釣れるが、ワンサイズアップを狙ってガルプの枠を差し、思い切り遠くへ。
リールを少し巻いたところでゴゴときた。小さいアタリだが雰囲気があった。
これはと思い、大事に合わせようと少し間を置き、しっかりくわえ込んだタイミングでクンと合わせた。
ドラグが鳴り、これまでなかった重さと引き。しっかりフッキングしているようだった。
ゴリ巻きし、力任せに抜き上げる。
重かった。

思った通り尺クラス。ブルー。よし!!


(左上の黄色いやつがガルプの枠。小さい突起のところにベビィサーディンが並んでくっ付いていた。)

測ってみると、29.5センチは越えているものの30センチに僅か届かない。
泣き尺。

みずのが泣き尺ではなく、「ほぼ尺」だと前向きな言葉でホローしてくれるが
しかしな、どう言ったところで尺には届かない。


気を新たに尺を狙った。
チャンス到来なんである。

尺クラスの群れが何処からかやって来て、
今まさに眼前の海中に悠然と屯しているんである。
その姿が見えそうであった。

数投後、やはり来た!!
先程と同じようなアタリ
慎重に合わせる。
グンと重さがロッドに乗った。よし!!

またドラグが鳴る。
かまわずゴリ巻きする。

暗い海面、魚は白い筋となって近づいてくる。

バレるなよ。祈る気持ちだった。
足元まで寄ったのを確認して抜き上げた。
折れ曲がる83ディープ。うまく上がった。
またブルーの尺クラスだった。




計測。
今度は先程より5ミリ大きく、確かに30センチを僅かにオーバーしていた。
ジャスト尺。よし!




その後、みずのもヒットするが・・・



デカイのが来ない。
釣っても釣っても25センチを越えてくれない。


あくまで、今夜の主役は彼女なんであり、彼女に釣ってもらわなければこの釣行の意味は半減しちまう。


殆ど同じタックル、同じメソッド、同じ方向、同じワームなのに何故か彼女に来るのは小さいのばかり。
考えてみれば、彼女は近くでヒットし、おいらは遠くでヒットしている。
とすれば、飛距離か。

彼女のキャストを見ると、悪くないがちょっとテイクバックが多すぎるような気がした。
意識を前方遠くにし、テイクバックを少なくして腕だけでなく体全体を使って素早く振り抜き、弾道低く遠くに飛ばすことをレクチャーする。


時間は12時を過ぎていたが、帰ろうなんて気はさらさらないという彼女だった。

「とにかくみずのが25センチオーバーを釣らん限り今日は帰らんぞ」と宣言し気合いを入れ直す。


彼女のキャストは格段に良くなり
振り抜く音もヒュンとキマってきた。

二人ともガルプの枠を付けていたが、状況は変わったと見え、なかなかヒットしない。
コツコツ当って来るものの銜えるところまではいかない。
メバル釣りはどんどん状況が変わるんである。

で、彼女にガルプの小さいやつ、ベビィサーディンに替えてみたらどうかと。


小さいガルプに付け替えた彼女はキャストを続け、おいらは休憩、キャストする彼女の背中を見ながらポットに入れた甘コーヒーを呑んだ。
月はなく春の星々が綺麗な夜だった。

真上には北斗七星の柄の彎曲をそのまま目でなぞって伸ばしたところのアルクトゥルス、そしてスピカが煌煌と瞬いていた。
一昨日とは打って変わって寒くない。

活気のある海を前に心は弾み、内からポカポカと暖かい。
こんな夜は滅多にない。



と、みずののロッドが折れ曲がっていた。
ロッドの曲がりからして25センチは越えていた。
必死で抜き上げる。

ブルーの27.5センチ。いきなり25オーバーと来た。



やっと釣れたと喜ぶみずの。


一応これで帰ってもいいのだが、
彼女の顔はまだまだ、と言っていた。


その直後、再びみずののロッドが折れ曲がった。バッドからだ。
それは先程の27.5よりさらにでかそうだった。
懸命にリールを巻くみずの。
こんな真剣な顔見たことない。

「一気に巻け、巻けー!!負けんなー!!」
と励ます。

そして抜き上げた。うまくいった。
薄暗闇にデカイ魚のシルエットが浮かんだ。
ライトに照らしてみるとその迫力たるや凄かった。
デカイ目がギラリとこちらを睨む。

測ってみる。おお!!!
30.5センチ。文句なしの尺越えブルーであった。




みずのは予想だにしなかった現実を前に、顔は紅潮し、膝はガクガクと震えていた。

そして、暫くして目の前の事件をしっかり受け止めるや
やったー!!やったー!!と欣喜雀躍飛び跳ねるのだった。
もう身体全部が笑っていた。






考えてみれば、彼女と釣りに出かけると、結局いつも釣り負けていた。
何故だかイカもメバルも一番でかいのは彼女だった。

今回はおれだろうと思っていると、これである。
僅かだが、みずのの尺のほうがデカイ。

で、先輩のプライドをかけて最後の力を振り絞った。


数投目、ゴッと掛かった!!

慌ててゴリ巻く。
ドラグが唸った!!
重かった。
でも巻く、ぐんぐん巻く。
巻きながらドラグがジジー、ジッと出て行く。
構わず巻く。

鈍重な引きと重さ。メバルに違いなかった。
しかし、これまでの尺とは迫力が違った。
こいつはでかい・・・

一瞬、師匠つーさんが言った言葉が脳裏をよぎった。
「能登にはきっと35センチを超えるような怪物がいますよ。」
そして、その怪物の圧倒的な魚体が目に浮かんだ。

バックン!心臓が鳴った。


引いて来る途中、一カ所、テトラの背を超えなければならない。
これまで尺クラスも強引に寄せることでなんなく超えて来た背だが
今回は違った。
そこで止まった。背の向こうで魚は踏ん張った。いや重さで引っ掛かった。

まずい!!
だが構わずロッドを立てて引いた。
と・・・・・・

スコン!!
抜けてひっくり返りそうになった。
あんらら~~~~

暫しボーゼン。心臓の高鳴りはしばらく収まらなかった。

気を取り直し、キャストするがそれまで。
釣れるには釣れたが、27.5センチどまりだった。




午前2時を回り、風向きが真横に変わったのを潮に打ち止めにした。



それにしても、
2日前は全く駄目だったこの海が
打って変わってのこの活況である。
これが釣りであり、特にメバル釣りの深さであり面白さである。

今回、釣れたのはリリースした小さいやつを除いてみんなブルーバックだった。
ということは、居着きというより回遊してきたやつだと思われる。

もうひとつ、このポイントは月がないと駄目と思っていたが
それは単なる思い込みだった。
月の明かりよりも重要なのは風向きと荒れの状態だと。


結局、女釣り師みずのにまた釣り負けちまったわけだが
二人揃っての尺。
おいらとしては今期4匹目の尺であり
今期の目標達成まで後一匹と迫ったのだった。



まさに


ミラクルナイトだった。












(追記)

2日後、みずのが帰っていった日の夜、ミラクルナイトの続きを期待して一人で出かけてみたが・・・・

サッパリ釣れなかった。

うっひょ~~!!




風の中で。                            3月21日

2011-03-23 | メバル
3月に入ってのこの満月を待っていた。


二匹目のドジョウを狙って、前回と同じ本命ポイントへ。

風が強かった。
予報では弱い向かい風だったが、行ってみればまともにキャスト出来ないくらい強かった。
波も予報とは違い荒れていた。時折、ぶつかって来た波が5メートルをかけ上がり足元を濡らす。


前回は半月を過ぎた頃だったが、明るかった。
今回は満月だったが厚い雲に覆われ暗かった。

今回は単体ジグヘッドで底を狙ってやろう、イカ釣りのようなやり方で、とイメージしていたのだが足場の高い釣り座である、強い向かい風はそれをきっぱりと拒否した。

かろうじて前へ投げることができるのは、
例のフットボール飛ばしウキ(13グラム)か重いシンカーをつけたスプリットショットか、
或は7グラムクラスのプラグか、
選択肢はそのくらいだった。

しかし、どのやり方も駄目だった。
アタリひとつありゃしない。

時計を見ると9時。2時間が経ったわけだ。
気温は2度と我慢出来ないほどではないが、2時間強い向かい風に晒されると流石に寒さがじんわり身にしみる。
時々、ポットに入れて来た熱いコーヒーを流し込むが、それでも身体の芯から冷えて来るのをどうしようもない。

始めからの負け試合、
最後にお気に入りのプラグを思い切り投げてみて、それで退散しようと思った。

風に向かって思い切りロッドを振り抜いた。
プラグは低い弾道で風の下をくぐり抜け、思いのほか遠くへ飛んだようだった。
ゆっくり引いて来る。
どのくらいリールを巻いたか、突然ショックがロッドに伝わる。初めてのアタリ。
反射的に合わせるとしっかりと乗った。
もうグングン巻く。
薄暗い海面に白い波が立った。案外遠いところ。
そこから海面を滑って来るのが白い筋となって見える。
足元まで寄ったのを確かめ、えいやっ!!と抜き上げる。
案外重かった。

27.5センチ、グッドサイズ。




小生の場合、最後の一投で掛かることがよくある。
といっても
ほんとはラストの一投のつもりが、それで掛からないと
潔くないと言うか、諦めが悪いと言うか、
ラストのラスト、ということになり、さらに掛からないと
ラストのラストのラストだあ、なんてことになり
結局、5投くらいしたりするのでラストの一投ではないのかも知れんな。うっはっは。

ともあれ、こうなると帰れない。

「時合い」かもしれんと、期待して粘ってみる。
しかし、違った。当たらない。

一時間が経った。

再度飛ばしウキをセットし、自家製の重めのジグヘッド1グラムに何処のメーカーだったか大きめのぶよぶよしたワームを差した。
風に向かいフルキャスト、着水と同時にリールを巻きはじめる。表層だ。
すると、コンと小さく当たってきた。待ちに待ったその夜二度目のアタリであった。
暫し手を止め待つ・・・・と
ココンと再び当たってくるそのタイミングで合わせる。
しっかり乗った。ゴリ巻く。
抜き上げる。ロッドが深く折れ曲がった。
でかい!!尺か!



と思ったが、
測ってみると28センチだった。





三時間やってたった二度のアタリ。
二度ともちゃんとフッキングしてくれ、二匹ともいい型である。こんなことも珍しい。
アタリは極めて少ないが、当たれば大物の可能性がある。
そんな日なのかも知れない。

で、また帰れない。

さらに一時間後(11時)風が少し弱くなってきた。
そうなると俄然キャストしやすくなってくる。
遠くだったポイントが近く感じる。

その途端ガツンときた。



26センチ。


次のキャストもゴン。



26センチ。


その次も、



25センチ。

こうなると身体は熱くなって来て、寒さを感じない。
ふと空を見上げると、いくらか雲も薄くなってまん丸お月さんがボンヤリと顔を出していた。

そして
27センチ。



24センチ。







と、ヒットは続いた。

ついに、時合いが来たのだったが、
サイズが上がらない。
徐々に下がって行く。

一時間後、風は再び強くなり、
それとともに時合いは終わっちまった。

いや時合いではないのかも知れぬ。
魚はいるのかもしれない。少し遠いところに。
ただ、向かい風でそこに届かないだけなのかも。
風が弱くなったときだけ届いたのかも知れない。

そう思っても風はますます強くなり、二度とルアーは遠くに飛んでくれなかった。


全く駄目だったが、突然釣れ始めるということはメバルにはよくある。
今回はその典型だろう。


春にしてはすこぶる寒かったし、前回に続いての尺とはいかなかったが
楽しかったな。