永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

こんな時だからこそ。3匹目の尺

2011-03-18 | メバル
さて3月、デカメバルの本格的なシーズンである。

2月後半から掛かっていた絵本のラフスケッチも10日には一応終わり、さて海に出かけてみるかと思っていた矢先この大事件である。
未曾有の大災害、それに原発事故がおいかぶさる、呆然として声も出ない。


おれとして今のところ出来ることと言えば節電、節油くらいか。


数日気分が重かったが雪が止み温かくなった日
海へ向かった。
こんな時に、と思うが、
いや、こんな時だからこそ、なのだ。

尺メバルを狙おう。

行き先は能登半島先端に近い本命ポイント
まっしぐらそこへ向かった。

現場に着いたのは夜の9時半。
いい天気だった。

まだ時折雪が降るが
海は確実に春の顔になっていた。
満月に向かう月が中空ぽっかり浮かび
穏やかな海面を照らし出している。

ふと蕪村の句を思い出す。
「春の海 ひねもす のたりのたりかな」
ふむ、そのとおり、のたりのたりである。

そして、10メートルの津波を想像してみる。
そいつが水平線彼方からこちらに向かって押し寄せて来る。
おれならどう逃げるか、いや逃げられないだろう。

数年前の夏、サザエを採っていて、高波に呑まれたことがある。
波に呑み込まれるあの感じ、思い出す。
苦しかった。
海中揉まれながら、ああ、死んでしまうのかと思った。
あの時は窒息寸前、運良く海面に飛び出すことができて助かったが、
津波だったら、あのまま死んでしまうのだろうな。


先ずはプラグを正面にキャストした。
そうっと引いて来るが反応なし。
方向を変え数投やってみる
が、やはり返事なし。

気を入れ直し、ワームに替えて、表層を探ってみる。
右前方のテトラから遠く離れたところ、コンと来た。
反射的に合わせると乗った。
25センチ(目尺)まあまあのグッドサイズ。



次のキャストも、



25センチ。

また次も。

だが、途中でバレてしまった。

入れ食いである。

が、そこまで。
その後、パッタリとアタリは途絶えた。


その後二時間、ジグヘッドの重さを変えたり、ワームを変えたり、プラグにしてみたり、プラグも替えてみたり、スプリットショットにして思い切りボトムを狙ったり、レンジ、方向を変え、いろいろ引き出しにあるものをやってみるが、魚信らしきものはなかった。

分からない釣りだった。パターンが全く掴めない。

でも、帰る気にはならなかった。
ここにいて、海を眺めていたかった。
潮騒を聞いていたかった。



月は水平線の上に傾き、
頭上には春の星たちが輝いていた。
柄杓星の柄のゆるやかなカーブを辿って春の大曲線。
一際強く瞬いているのはアルクトゥルスかスピカか。

「私たちは星の燃えかすからできている。星と我々は仲間なのだ。」
と宇宙物理学者カール・セーガンは言った。
星の輝きは美しい。
自然は圧倒的に美しい。
しかし、同時に酷い顔も見せる。
人間に対し、容赦というものがない。

それはそうだ、人間のために自然があるのではないものな。
人間は大いなる自然のほんの一部に過ぎないのだ。
生も死も自然のダイナミックなサイクルの中の一時の相に過ぎないのかもしれぬ。



風が強くなってきた。右からの横風である。
時々春一番のような突風になる。

一番重い飛ばしウキでやってみるが思うところにキャスト出来ない。

流石に帰ろうか、と最後の一投。
思い切り右にキャスト、それが風に流されて正面に落ちる。
引くとどんどん左に流される。
と、コツン、久しぶりのアタリだった。
25センチ。(目尺)釣れんことはない。



こうなると、欲が出る。
もう少し粘ってみようと。

風は回り、追い風になった。右後方からの風。
風はますます強くなり左前方一方向しかキャスト出来ないが釣りはなんとか出来る。
深いところ、浅いところ、ゆっくり引いたり、早く引いたり、引かなかったり、そしてまたプラグでやってみる。

しかし、アタリもコスリもしやしない。


一時間くらい経ったか、
月がオレンジ色になり水平線ちかく落ちて来た。

風に乗せ風に任せ思い切り遠くへ投げた。
そして思い切り表層を引いてみた。
ゆっくり、そうっと、

と、ゴゴ・・・

合わせる。
重さがロッドに乗った。よし!

遠くなので思い切り巻いた。
暗い水面を滑るように魚は近づいて来た。
その日一番の重さだったがせいぜい26~7か・・・
足元まで寄ったところを引き抜いた。

足場が高く、引き抜くと同時に巻き上げなければならない。
いつもの感じで足元まで引き上げたつもりだったが、魚の姿がない。
上がっていなかった。
竿はぐんなり曲がったまま、魚はまだ足場の崖の途中に引っ掛かっていた。

慌てて巻き上げる。そこで初めてこの魚の大きさと重さを知った。
堂々たる魚体と不敵な面構え
間違いなく尺クラスだった。




早速測ってみる。
思った通り30センチを数ミリオーバーしていた。




先日の釣りバッグのロストでメバル用のメジャーもロストし、スズキ用のでかくて重いメジャーしかなかったが、とりあえずそれをジャケットのポケットに入れておいた。
いや、持って来て正解だった。

今年の尺の目標は5匹だが、早くも3匹目である。
それも嬉しいが、なにより本命ポイントで釣れたことが嬉しかった。
3年ぶりだが、全くいなくなったわけではなかった。
このシーズンはいいのかも知れない。

時計を見ると1時だった。

風はますます吹き荒れ、ルアーどころじゃない、気を許すと身体が海に持って行かれちまう。
そこまでだった。


車への帰り道、星たちはますます輝きを増し、夜空に瞬いていた。

同時代を生きて来た人たちが大勢死んだ。
彼らが日々努力して築いて来た暮らしも喜びも夢も希望も、一瞬にして呑み込まれちまった。
土に帰り、星屑に戻っちまった。
おれもどのみち早晩そうなるだろう。
でも、今回はたまたま被災から免れ、健康にも恵まれ、生きている。

復興には長い時間がかかるだろう。
これからどんな手助けが出来るか分からないが

ともあれ、

おれの生命(いのち)をしっかりやろう。


そう思った。

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6 コメント

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頑張ってますね(^^) (愛俊丸)
2011-03-18 19:54:10
お疲れ様です

オカッパリメバル君もボートの青物君も 5連敗で・・・
戦力喪失してます( ̄▽ ̄;A

単体ジグヘッドが基本で頑張ってますが(=^・・^=)
頭打ちです!

何か打開策??ありますか??
毎回ボーズのジギング行きませんか(^^?

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Unknown (チロさん)
2011-03-18 20:58:27
めばる達の生命力のある瞳。
地震も原爆も知る由もなく、彼女らはこの僕らをどう見ているのでしょうね。

生命感と生命感のぶつかり合いのような釣り。

僕も貴方のログを読み久しぶりに海へ行こうと思います。

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愛俊丸さん (ごろすけ)
2011-03-19 01:50:26
小生も釣れん時、釣りはやめた!!と喚いています。
すぐに忘れますが。うっはっは。

打開策と言われても、難しいですね。
特にメバルの場合、現場のその時その時でパターンが違ったり、変わったりしますからね。

その時のベイトが分かればやり方も分かるのでしょうが、
それがなかなか難しいです。
それは小生のこれからの課題でもあります。

今のところ、いろいろやってみる他ありませんね。
小生もこれからジグヘッドでボトムを狙うやりかたをいろいろやってみようと思っています。

なに、きっとそのうち釣れますよ。

ジギングですか、ボートで?
お誘いありがとうございます。
面白そうですね。

でもここ暫くは仕事が詰まって無理のようです。
タイミングを見てちょっと半日メバル釣りくらいなら行けますが。

そのうちお願いします。
といってもオフショアジギングロッドなんて持っておりませんが。








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チロさん (ごろすけ)
2011-03-19 02:19:30
メバルたちの目、でかくて美しい。
睨めっこすると負けますね。決して釣られたと思っていない。誇り高き眼差しです。
いや、体全体も美しい。魅力的。
メスだからだろうか。うっはー。

釣りが好きな大きい理由は
海に生命たちの躍動を感じるからだと思います。
小さなものから大きなものまで、いろんなものたちが生きている。
瀬戸内海の浜で育ったせいか、それを感じるだけで温かいと言うか、ホッとできるんです。
具体的にはライン一本で海と繋がり、時々、魚たちの生体反応を直に感じることができる。それがとても楽しいんです。
そして魚たちの美しい姿を見、食べることができる。

どんどん海へ行ってください。
小生も行きますよ。







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Unknown (chun)
2011-03-21 18:40:55
良いメバルですね!
ボクも海行ってきます!!
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chunさん (ごろすけ)
2011-03-22 10:11:46
産卵後ですね。
腹パンパンと違い、スンナリしていますが、バランスが取れた形ですね。

海行ってください。
がんがん。

我々は海ですよ。

chunさん真面目だからなあ。仕事。
たまにはサボりましょう。うっひゃー!!
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