えすみの日記

ふつーの主婦ですが、日本の未来を真剣に考えたい!

ロシアの原子力エネルギーの専門家の会見その3

2011-07-12 23:38:17 | ニュース
年内には冷却可能


週刊朝日・堀井:チェルノブイリは石棺という方法がとられましたが、福島はどの方法がいいでしょうか。そしてそれには何年くらいかかるでしょうか。


博士: まず、チェルノブイリと福島では異なる点があります。それは、福島の場合では、今現在も実際に行われている通り、原子炉を水で冷却しなければならず、今後数カ月の間は、この水冷却を継続しなくてはならないことは確実です。(水冷却することで)熱発散量が徐々に少なくなり、次第に注入する水量も少なくて済むようになります。いずれにしましても、これは数カ月単位で継続しなくてはなりません。その後、原子炉をどのように封じ込めるかですが、いずれにしても原子炉を封じ込めることが必要になってきますし、東京電力でもすでにその方法について検討を始めているという第一報が入ってきています。この作業にどの程度の時間を要するか、これを私のほうからお答えするのは難しいですが、たぶん、本年末ぐらいまでの時間を要するものと考えています。もちろん、これは単純な作業ではなく、困難を伴うものですが、同僚の皆さん(この作業にかかわっている全ての日本の方の意)であればやり遂げられるものだと思います。


吉本興業・おしどり:博士を含めたロシアの研究所での独自解析結果と、アメリカ主導の日本の事故解析結果で大きく異なる結果は出ていたりするのでしょうか。

博士: 福島の状況は、ロシアのロスアトム、クルチャトフ研究所、当研究所、(ロシアの)全ての機関が調査を行いました。当研究所は、また、ロスアトム、ロシア非常事態省とも共同で作業を行いました。そして、残念なことに発生してしまった水素爆発も、数値解析という方法から予測できていた事象です。同様の解析が、米国でも仏国でも行われ、米国がどのように分析・予測しているのか等、我々も相互に彼らと情報を交換しましたし、この解析内容は、IAEAにおける発表を含め、様々なフォーラムの場で発表されました。無論、全ての(この分野の研究に携わる)機関にとって、各々が学びを得るために大変関心の高い事象であり、調査を行いました。

解析に関する日本とロシアとの連携についてですが、ロスアトムは2人の専門家を日本へ派遣しました。1人はロスアトムの専門家、もう1名は当研究所の専門家です。ロスアトムは日本と連携を取ることを手配するために日本に来ましたが、残念ながらそれは叶いませんでした。でも、残念ながら実現しなかったのは、まあ、個別の問題ですので。放射線状況に係るデータは、もちろん、日本の文部科学省が発表したデータが主になりますが、それ以外に、福島第一原発の近辺での放射線状況を把握するうえで大変役立ったデータというのが、アメリカ合衆国エネルギー省が支援の一環として行った、ガンマ線測定による航空写真(訳者注:会見時、クラスノフ氏が「ガンマ線を示した航空写真です」と注釈をいれています)です。このデータも、誰でもアクセスが可能で、すべての研究者がこのデータを分析しています。この航空写真は、大変精度の高い地図状データで、アメリカは、もちろん日本国側に提供しただけでなく、3月20日からインターネット上で自由にアクセスな可能な情報として掲載しました。すべての研究者がこのデータを活用していますし、当研究所も、もちろん、活用しました。福島第一の近辺、つまり、20キロ圏内および30キロ圏内における放射線状況を知るうえで、大変役立つ、重要なデータでした。これは、飛行機およびヘリコプターを使って上空から撮影されたものです。

発電所内の放射線状況に関しては、東京電力から情報が出されました。モニタリングポストも(放射線量)地図もあります。もちろん、事故当初の情報の少なさには、ある程度問題がありましたが、当初は状況の特定をすることが難しく、一般的に考えても事故直後に全てのデータをそろえることは、簡単なことではありません。しかし、数日後には体制も整い、全ての人々がそれらの情報を得ることが出来ています。すべて、インターネット上で入手できる情報です。ですので、「情報がない」という声を聞くのは、大変驚きです。
確かに、事故当日から、予想される事態が判明していたわけでもありませんし、正しく厳格な情報を、またそれを法的根拠にもとづきということになると、それはとても困難です。チェルノブイリでも同様でしたが、事故直後は、判明できない点もありましたし、情報が錯そうしたりすることもありました。国際協力という点では、現在IAEAでも盛んに議論されておりますが、国際的な連携体制をより効果的なものにしていくことが必要です。事故の発生を受けて結成されるのではなく、恒常的に存在する機関として、各国の危機管理センターと連携を取った協力構造が必要です。これが今回の事故を通して得られた最も大きな教訓であり、これを具体的に実現していく必要があります。

事故の発生から、3日、4日、5日と経過するごとに、情報は十分な量に増えていきますが、発生当初の情報が少ないため、情報の少ない事故発生当日から効果的な活動ができる機関が求められます。もちろん、全ての原子力発電所の周辺に、放射線状況を自動制御システムで測定し、直接的に情報をインターネットに発信するシステムが装備されているべきです。ロシアの場合ですと、ロスアトム所有のすべての原子力発電所周辺における放射線状況のデータが、当研究所のサイトを通じて、自動的にインターネット上に掲載されるようになっております。これは、諸処の疑問になっている問題を最小限にとどめるために効果的な措置であると思います。無論、(このような方策をとっているのは)ロシアだけではありません。

必要以上に放射能を恐れないで


フリーランス・島田:お話を聞いていると、放射線の被害よりも、放射線を怖がるストレスの方が被害が大きいということでしょうか。だとすれば、避難地域の住民は何ヶ月程度で戻れるとお考えでしょうか


博士: この問題は、住民避難においてどのような基準を採択するか、に左右されます。これは、大変大きな、そして、もっとも深刻な問題です。今日、私の知る限りでは、(日本では)最初の1年で累積される放射線量が20ミリシーベルト以上であれば避難対象となるという基準が発表されています。この基準レベルは、国際的な勧告および科学的なデータにもとづき、50ミリシーベルト、もしくは、100ミリシーベルトという数値に設定しても問題にはなりません。100ミリシーベルト以上の地域に絞って避難対象としても問題ありませんし、まったく安全な数値です。上記いずれかの数値でも問題ありません。どのような基準値を設定するかで、どの地域の住民を避難させるか、どの地域を避難対象から外すかが特定されるわけですから、(これを定める時期である)今はとても重要な時期であると言えます。チェルノブイリにおけるもっとも大きな問題は、事故直後ではなく、90年以降から発生しました。というのも、90年に、放射能汚染レベルが1平方キロメートル当たり1キュリー以上、これは放射能の強さを示す単位ですが、この数値以上の地域に居住する住民すべてをチェルノブイリ事故の被ばく者と特定した法律が採択されたからです。実際には、その地域で懸念されるような被ばく線量はありませんでしたし、事故後25年経った現在、同地域の住民の 90%に関して、その年間被ばく線量が1回のCTスキャンの線量にも満たないということが分かっています。

(繰り返しますが)20年間、たった1回のCTスキャンにも満たない年間被ばく線量だったのです。しかし、法律として一旦制定されてしまった事項ですから、それを後に否定し覆すことは出来ません。法律でその地域の住民を被ばく者と特定したわけですから。これによって、本当に大きな問題が生じてしまったと言えます。ですので、今後、どのような基準が定められ、どの地域の住民を避難対象とするかで、この問題が今後どのように発展していくかが決まるわけです。そして、これは本当に重要な問題です。これはすべて、どのような基準を定めるかに左右されます。最初の1年の被ばく線量を50ミリシーベルト以上、もしくは100ミリシーベルト以上と定めることもできるわけですから。全身のCTスキャンを1回実施した場合の被ばく線量は、10ミリシーベルトです。

また、国際放射線防護委員会、先に名前のあがったICRPのことですが、同機関の勧告では、初年度の被ばく量が20ミリシーベルト以下であれば、措置を講じることも住民の生活に規制をしく必要もなく、20~100の間であれば、もし必要と判断するのであれば、放射線量を低減するための措置をとることが推奨され、100以上であれば、かならず放射線量を低減する措置を講じなくてはならないが、それが必ずしも避難をしなくてはならないというものではない、と示されています。放射線量を低減させる対策は様々存在しますので、線量を下げることは可能です。ですので、どのような基準を設けるかがとても重要です。
科学の経験、世界中の科学的な経験からも、放射線被ばく量が100ミリシーベルト、(累積ではなく)瞬間的に、急激に浴びた被ばく線量が100ミリシーベルトという意味ですが、これによる健康被害や後遺症が報告された例は一つもありません。ICRPでは、健康被害が絶対に起こらないようにあえて数値を低く設定しており、推奨する100という数値は、100を超えたからといって、すぐさま健康に害を与えるという訳ではなく、さらに十分すぎるほどの余裕をもって100という数値を設定しています。健康にぜったいに被害を及ぼさない絶対的な安全を保障するというのがICRPの手法です。ですので、100以上は避難対象であるという訳ではないのです。

ロシアそして欧州諸国における現行の規制に関して言うと、これはIAEAの設定した基準にそったもので、ここでの強制避難の基準値は500ミリシーベルトと定められていました。今、ICRPの最新の勧告では、より人体への防護を強めたものと私自身は解釈していますが、 100ミリシーベルトを超えないことが望ましいとしています。つまり、100ミリシーベルト以下であればいかなる健康被害も起こりえない、これは、全ての人々、つまり、子どもでも大人でも適用される数値です。もし20ミリシーベルト以上という基準を設定するとなると、これにより多大な問題が発生することが予想されます。大量の人々が避難対象となり、そうなると、社会的そして経済的な問題も発生してくるわけです。残念ながら、私たちもチェルノブイリを通して同様の経験をしました。当研究所の評価では、(今回の福島第一事故の影響で)最初の1年間で累積線量が100ミリシーベルトを超える住民の数は、 6000~7000人以内と推定しています。(クラスノフ氏の確認に応えて)1年間の累積線量が100ミリです。より詳細なことは、文部科学省およびその他の機関が知っていると思います。文部科学省には、大変すばらしい放射線量地図が存在します。

さらに申し上げたいのは、日本には素晴らしい専門家がいらっしゃいます。著名な放射線学者、また広島・長崎の経験は、ICRPやその他の世界中の学者たちの研究に多大な貢献を与えています。大事なことは、(避難に関する)結論を、何らかの政治的な意図や感情的なものから導き出すのではなく、科学的根拠にもとづき行うことです。無論、国民の感情を抑えつけるのではなく、国民には防護の方法などを科学的な根拠にもとづき説明していくことが必要です。そして、健康への被害がないにも関わらず、避難等の措置を取らせることで、住民に別の損害を与えうるということを理解しなくてはなりません。あわてて結論を出す必要はありません。今現在、1ヵ月または2ヵ月で何らかの健康被害をもたらすような線量は存在していませんので、あわてる必要はありません。住民の利益を慎重に考慮し、もちろん、健康面でも安全が第一であることは分かっていますが、社会的そして経済的な側面を考慮し、バランスのとれた決断をしていく必要があります。




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