これまで、カルシウムや鉄と比べて亜鉛の働きにそれほど重要性を持たなかったのです。しかも、現代では「フィチン」という物質が亜鉛と結合して吸収を妨げていということです。
このフィチンという物質は「パン」などの小麦粉やインスタント食品にかなり含まれていて、日常の食生活で摂取しやすい物質となっています。
そのため、亜鉛を含む食べ物を摂っても、フィチンを含む食物を摂ると、亜鉛が体内に吸収されなくなり、亜鉛不足の状態が発生します。それは、現代人にとって最も不足しやすいミネラルの一つとなっています。
アメリカの調査によると、子どもやティーンエイジャーの3人のうち2人が亜鉛不足という報告があります。また、日本でも、ひとり暮らしの学生やOLに亜鉛不足が増えていると指摘されています。
亜鉛は、すべての細胞にあって、全酵素4,000種類のうち2,000種類以上の酵素の補因子となっています。そして、亜鉛はどのミネラルよりも多くの酵素を助けているのです。亜鉛は、タンパク質の合成や、遺伝子の複製、細胞の増殖、生命の誕生、傷口を治す、免疫を高める、男性を元気にし、精力を高める、味蕾を成長させるといわれています。また、亜鉛は、成長ホルモン、インスリン、性ホルモンの正常な働きに欠かせないミネラルといわれています。
昔から、亜鉛を含む薬剤である亜鉛華軟膏が、傷の治癒にきわめて有効であることは経験的に知られています。傷を治すには、多量のタンパク質の合成が必要で、このとき活躍する酵素の多くが亜鉛を必要としているからです。