鳩山首相 所信表明演説 『気持ち伝わる』『具体性は?』
2009年10月27日 朝刊
官僚の下書きを廃止し、親しみやすさと分かりやすさを前面に出した26日の鳩山由紀夫首相の所信表明演説。演説に登場した当事者や各分野の人からは「分かりやすかった」「もっと具体的に話してほしかった」などの声が聞かれた。
■支え合う社会
障害者を積極採用し、鳩山首相が演説で取り上げた川崎市高津区のチョーク製造会社「日本理化学工業」の大山泰弘会長(74)は「支え合う社会の例として紹介されたことは人生最大の喜びだ」と語った。
大山会長は一九五九年、都内の特別支援学校の教諭に「生徒たちは働けなかったら親と離れ離れになるんです」と頼まれ、知的障害者を採用。現在、七十四人の社員のうち知的障害者は五十四人を占める。
「取り組みを応援してくれる取引先も増え、業務の幅が広がった」。大山会長は障害者雇用への政治の後押しに期待した。
■命を守る政治
不況や規制緩和で収入が下がる一方のタクシー業界。「政治の基本は国民の命を守ることと、鳩山さんは感じている」。東京都大田区のハイヤー運転手の男性(62)は、ラジオで演説を聞いた。
別の品川区の男性運転手(72)は「国民と一緒にという気持ちが伝わってきた。ただ、すべてできれば素晴らしい国になるが、現実は分からない」。
年金問題で老年者控除の復活が触れられなかったのが気になった。「マニフェストには書いてあったので、元に戻してもらいたい」
■子ども手当
若い子育て世代の期待が膨らむ子ども手当。一~五歳の三人の子どもをもつ千葉県松戸市の主婦有家敬子さん(31)は「目玉政策の割には、さらっと触れただけで具体性がなかった。まだ本当にもらえるか分からないし、いつまでもらえるのかも分からない」。
夫婦共働きの同県習志野市の会社員三宮花子さん(28)は「女性が働きやすい環境を整えてもらう方がありがたい。病気になっても子どもを預かってもらえる託児所が会社の中や近くにあるといい」と注文した。
■医療・環境
さいたま市南区の開業医多田智裕さん(38)は「自民党の医療費抑制政策を撤回したことは非常に評価できる」としながらも、新型インフルエンザ対策では「現場を知らない役人が仕切り、混乱している。できる限り現場の意見を聞いてほしい」と訴えた。
環境問題に取り組む気候ネットワークの平田仁子さんは「『私の政治的リーダーシップ』『日本経済にとってチャンス』といった言葉は今までの首相にはなく、強い意思表示をしてくれた。具体的な実行に期待したい」と語った。