夏の苦労は水の泡

夏は日差しと対決するように

日焼け防止の完全防備だったのに



今日は随分油断して

日傘も帽子もなしで

臨んでしまって

焼けてしまうんじゃないかと

少し気にはしてた



でも

顔に夏とは違う

暖かな日差しを浴びていたら



皮膚が深呼吸しているようで

とても清々しくて



だから調子に乗って

日差しの中に

何を気にすることなく

ずっと居続けた



笑ってばかりの爽やかな一日



笑えていたのは

家に帰るまでのことで



赤くなった頬と鏡の中で

対面した時はショックで震え



楽しかった一日なんていらないから

元にもどしてと



一人叫んでいたことは

誰も知らない

生きていくには

ほんのちょっとの優しい言葉で

泣けてしまいそうな時がある



自分の中が空っぽで

何にもないから



急に血液を送り込まれて

心臓がドクドクし始めたような



生きていたことを

思い出したような



温かな生身の人間に戻る



ああどうかこのまま

このままの状態で

ずっといたい



それは

明日も明後日も



生きていてほしいって



誰かが

そう言ってくれたなら



これからもこのまま

きっと生きていける

思い込みを捨てよう

責任のかかってくる仕事を

中心になってやるように言われた



思わず無理ですって

叫びそうになったのを

口元を押さえぐっと飲みこんで



大丈夫ですって

暑くもないのに

吹き出すような汗にじませて

引きつりながらも笑みを浮かべた



私もいい歳をした大人

無理っていうのはやめようと

決めたばかりで



来年からは

もっともっと責任かかってくることに

覚悟も決めたはず



それなのにやっぱり不安で

逃げ出したい気持ちで

いっぱいになる



完璧になんてできるわけない

でも自分で納得できる結果にしたい



今まで楽してきたつけが

一気にやってきたよう



やり遂げよう

何としても



無理というのは

自分の思い込みなのだから

心からの笑顔になれる時

自分の仕事が好き



自分に合っているかと問われると

一応首をひねることになるけど



何度も

私には無理って

弱音も吐いてしまうけど



その度ごとに誰かかしらに

優しい笑顔で助けられて

引き上げられてる



私も助けられる側じゃなくて

助ける側に回りたい



でも私では

まだまだ足りないことだらけで

その機会はなかなか訪れない



せめてできることがあるとしたら



大丈夫ですか？

お手伝いできることないですか？

という声掛けと



いつも笑顔を絶やさないようにすること



そしていつか

助ける側に回れたら



その時こその笑顔は

心から自然にできたものだと思う

束の間の楽しみ

待っててくれる人が

いるって思える毎日は



疲れて歩く帰り道でも

スキップしたい気持ちになって



今日はどんな話をしようかなって

考えるのも楽しくなる



笑ってほしい喜んでほしい

私を必要としてほしい



エスカレートして

引いてしまわれないように

自分を抑えること忘れないように



そして気に入ってくれたなら

明日もまた待っててほしい



そんな些細な期待が

今の私を支えてる

笑っていられるように

勝てるはずだった



周りの誰もが

勝ちを疑わなかったし

私も負けるはずがないと

自信があった



油断していたとは思わない

ちょっとだけミスしたら

急に無理かもなんて

負けがチラついた



その瞬間

メンタルが崩れだして

あれよあれよという間に

負けていた



負けたという事実より

周りの腫物を触るような

気の使われ方に



申し訳なくて下を向いた



強くなろう

もっともっと



メンタルも強くして


笑っていられるように

イメージした未来の自分

ここ数年ずっと考えてた

どう生きていこうかって



考えれば考えるほど

生活を変えることが怖くなって



私には無理とか

自分を守ってばかりで



考えるのをやめたりしてたけど



最近やっと少しずつ

自分に自信を持とうって

私なら頑張れるって

自分に言い聞かせられるようになった



友人に覚悟を決めなよって

私は覚悟を決めたって言われ

後押しもされ



すごくやる気になってきた



準備を始めよう

月日はあっという間に過ぎていく



抜けてるところの多い私だから

少しずつ少しずつ



抜けを埋めていけるように

未来の自分につなげられるように



生きていこう

大切な今

倫理観のしっかりした人が好き

倫理のお話を聞きに行くのも好き

清く正しく美しくが理想



だけど

きっと私は倫理観が少し欠けてる



人を悲しませたり

傷つけたりは

極力避けたいけれど



それでも

自分の幸せを

感じる方向に走ってしまう人を

非難する気持ちにはなれない



来世では必ずこうしたいとか

不確かなものにしがみついて

今を諦めてしまうのが

もったいないって思うから



そうして

幸せを感じられるようになったなら



今をしっかり生きていこう

どうしてこんな気持ちになるのか

グループの中に

とても仲の良くなった

異性がいて



私と違って

物静かで生真面目だけど



考え方や感じ方が

すごく似ていて



共感するところがほとんど同じで

何を思っているか当てっこできるほどで



でも何よりいいなっと思うところが

奥様をとても大事にしているところ



中性的で男性を意識しないでいいところも

気に入っていた原因かもしれない



好きな本の話は楽しくて

彼はノンフィクションの感動物を

私に勧め

私は官能小説を

彼に勧めた



君の勧めた官能小説すごかった

今夜は奥さんと燃えてね

なんて笑い合った



遠慮もあって二人で会ったことはない

グループの中かラインだけ



そんなある日

仲間の一人が言った

彼に三人目の子供が生まれたって



なぜかすごいショックを受けた



生まれるまで

言ってくれなかったからじゃない



当たり前だけど

奥様とそういうことが

あったんだってことに



私と不倫するような人なら

気に入ったりしない



なのにこのもやもやは

やりきれない気持ちは



自分でも理解できない

イメチェン

ストレートの髪を

うっとうしいから束ねてたけど



そろそろ下ろしてもいいかなって

久しぶりにゆるくパーマもかけて

イメージを変えてみた



大人たちの反応は

気付いただろうけど

特に驚く様子もなく



でも子供たちの反応は

激しいものだった



うわーとかギャーとか

笑いながら抱きついてきたり

手を握ってきたりで



本当はこんな風だったんだぁって



まるで仮面ライダーが

普通の人間に戻った時の

この人だったのかみたいな



チラチラ見る子

にこにこする子

皆じっと見つめてくる



かわいいとまで言う子もいて

それはちょっと微妙な気がしたけど



何だかとっても

嬉しいやら楽しいやらの気分



ここにいると

私はどんどん

子供になっていくような



幸せに包まれる