笑顔

「お友達と遊ばないの」


口を真一文字に結び
目をぱちぱちさせて


幼き時の私が
突っ立っていた


「笑ったらお友達と
　遊べるよ」


「できないなら
　目を細めて思いっきり
　いーってしてごらん」


目を細めていーってしてみた


お友達が遊ぼって
手を繋ぎに来てくれて
そのまま二人で駆けて行った


それから笑えない時は
いつもこの方法で笑った


あの時
笑い方を教えてくれたのは
誰だったのだろうと
よく考えた


ふと今思う
あの時の会話は


自分自身の心の中の
会話だったんじゃないかなって

誕生日

一年に一回
時計の針を左回りに


ぐるぐるぐるぐる
生まれたその時まで
巻き戻してみる日


あなたの選んだ両親から
あなたの望んだ環境で
感動的な誕生をした日


初めての眩い光に包まれて
誰もが笑顔で
温かい言葉が飛び交う


あなたのご両親の声が
聞こえる


幸せに
どうか幸せに


そして私からあなたへも


生まれてきてくれて
ありがとう

夢

きれいなものを見て
きれいだねって
共感できたり


楽しい時に
楽しいねって
笑い会えたり


苦しい悲しい時に
大丈夫？って
心配し合ったり


そんなささいなことを
繰り返しながら


あなたと
暮らしてみたい

出会い

初めて会った
はずなのに


なぜだろう


何だかとても
懐かしい


忘れていた
何かを思い出させて
くれるような


大切な
何かを教えて
くれるような


そんな出会い


だから
あなたの未来が


穏やかな光に
包まれた
温かいもの
であるように


私はずっと
願っています

今

あなたが私に
気がついて


少し照れたような
笑みを浮かべる


そして次の瞬間
無邪気な
どびっきりの
笑顔


きれいなきれいな
幸せの光が


きらきらきらきら
私の心に
差し込んでくる


ああ


今この時を
私はけして


忘れはしない

金木犀

金木犀の薫る
この季節


また今年も
一本


庭に植えようと
思います


あなたの好きな
金木犀を


あなたが
癒されるのを
願いながら

理想

女中のように
よく動き


白を黒と言われても
嫌な顔一つせず
はいと従い


怒りをぶつけられても
治まるまで
静かに聞き


いつも
幸せねって
笑ってる


かなわない


お母さん


あなたは私の
理想です

あなたの幸せ

いにしえの彼方より
定められている
運命の人が


あなただったら
いいなって


ぼんやり考えた


ああ、でも


あなたの好きな人が
あなたの運命の人だと
いう方が


やっぱり
いいなって


思い直した

忘れ物

どこかに
置いてきちゃったみたい


ついうっかり
ミスはするし


「聞いてるの」って
　言われるし


あなたは
大丈夫？


一緒に
捜しに行きませんか


私たちの忘れ物


心を

流れ

今の幸せは
夢破れたからこそ
得たもの


空を見上げると
時々ふっと
思い出す


胸の中の
小さな痛み


今の私は
あの頃より
ずっと強い


すでに
新しい夢が
流れ始めている