大きなバッグ

あなたのバッグは

ドラえもんのポケットみたいで



皆の必要なものが

どんどん出てくる



体温計ある？割りばしある？

はさみある？爪切りある？



汗かいたのならこのお手拭使いなよ

気持ち悪いならエチケット袋あげる



皆はまるで自分のお母さんのように

何の遠慮もなく当然のように

あなたに甘える



だから私も一度甘えてみようと思った



頭が痛いの



あなたはすぐに頭痛薬と風邪薬の

二種類をバッグから出してくれて



私は頭痛薬を一錠受け取り

代わりに板チョコを渡してみた



あなたはすごく嬉しそうに

チョコ食べたかったって笑った



その時思ったんだ



あなたが誰かのために

バッグから物を取り出したなら



私はあなたのために

チョコをバッグに入れたいって



あなたの優しさの詰まった大きなバッグに



私の思いもちょっぴりだけど

入れてみたいって

癒してあげたい

いつも元気で明るいあなたは

みんなの心を癒す人気者で



あなたがそばにいるだけで

楽しい雰囲気になる



そんなあなたは

また勝負に負けたけど

ひょうひょうとして皆と笑ってて



だから私もあなたのこと

気にすることもなくて



それなのに

あなたが一人で

静かに涙を流しているところを

偶然見てしまった



ばかな私は

目が痛いのだと

目薬あげなきゃなんて近づいて



口を押さえて

声を押し殺していることに気が付いた



暑い時も寒い時も痛い時も辛い時も

大丈夫って笑ってるから



人一倍努力家で人に弱味を見せない

プライドを持っているあなたが



そう

悔しくないわけはなかったのに



一番気持ちのわかるはずの私が

あなたを癒してあげないといけなかったのに



あなたは今まで誰かに

癒されることはあったのだろうか



名前を呼んで

驚く顔したあなたを



私はふんわり抱きしめた

取り消したい

ワンクリックで人を選んで

ダブルクリックでその人の

心がわかるソフトがあればいいのに



そしたら

その人と実際に話す前に

シミュレーションできるのに



言ってしまった言葉は

いくら取り繕っても

取り消せなくて



その人との関係も

元に戻らなくて



それは

お互いのことを

あまりよく知らない時に

起こることで



それがなぜいけなかったのか



自分の生きてきた環境や

性格や物の考え方で



とらえ方が違ってしまうから



どうしたらいいかわからない私は

その人のことを

ただずっと待っているだけ

親友

虫の知らせだろうか



ずっと連絡していない

それこそラインになってから

ラインもしていないほどずっとの



中学からの親友に

急にラインしようと思い立った



今度こちらで行われることになった中学の同窓会は

遠くに住んでいる彼女には無理かなと思ったが

それを話題にしようと決めた



離婚したのよ



ラインの途中の

突然の告白だった



既読がついたまま

しばらく画面は止まったままだったはず



彼女は働いていただろうか

実家は資産家だから大丈夫か

こちらには戻ってこないのか

子供はまだ小学生か

お父さんいなくて大丈夫なのか



聞きたいことだらけで

パニックになりかけたが



私がやっと打った言葉はこれだけだった



そっか



それから昔話を打っていたが

たまらなくなった私は彼女に電話していた



わーとかきゃーとか何してるのよーとか

あははははとか

会話になっていない叫びをお互い上げた後



グスグスグスグス鼻すすったりして



今日はいい天気だったから花粉症でさ

ばかなのに風邪ひいちゃってさ



会いたいね



会いたいね



恋人同士かって

また笑って



同窓会　

あんたに会うために参加するから



彼女のこれからの人生が

ずっと笑っていられるものでありますようにと



ただただ祈ってる

誤解

背中がザワザワするのは

その人がチラチラと

こちらに視線を投げてくるせい



何だろうって目を向けると

照れたように手で頭をかいたりして

カッコつけながら私の前を通り過ぎていく



頭のおかしい人がいる



急にぶるっと寒気を覚えて

震える足で後ずさりしたが

帰るわけにもいかなくて



でも

仕事をして冷静さを取り戻してみると

ここに頭のおかしい人はいないはずだし

あの人って　



顔の覚えられない私が

最初の頃　何回も間違えた人だ



そういえば

この人だったかなぁって

考えながらじーっとみてしまう私に

昔友人が良く言った



そんなに見惚れるのやめなよ



そういうことかって気づいたら

可笑しくなった



誤解を解きたいところだが

話したこともないのに何て言えばいいのか



そのうちおさまるだろう



面白いからまあいいかっと

放っておくことにした

ごめんなさい

子供の頃は

中のよく見える透明な

もろいガラスに包まれていた



だから

何度も何度もガラスのわからない人に

割られ砕け散ってばかりで

中身の私が傷だらけになっていた



それが

歳を重ねるごとに

もろい透明なガラスだったはずのものは

つぎはぎだらけなのだけど

それが綺麗な模様になって

中身が見えなくなって



おまけに

超合金のような硬いものに変化していて

ちょっとやそっとでは触れられない砕けない



もちろん

中身も傷つかない気にならないものになっていて



だから

自分も経験してきたことだったにも拘わらず



今、若い人のガラスに気付かない自分が



何ともはがゆく悔しい

遠い記憶

嵐のような夜で

窓に激しい雨が打ちつけられる



その音は

私を見張っていた誰か知らない人が

ドアをどんどん叩いているようで



そっとカーテンを少し開け

外を見渡してみる



街灯の辺りが照らされているだけで

後は闇ばかりで



誰もいないっと思った瞬間に

振り向いたら部屋の中に

誰かいるような気がしてきて



窓を鏡に

部屋の中を確認してから

ゆっくり振り向いてみる



誰もいない



そんな当たり前のことに

安心している自分に

笑ってしまう



激しい雨は

子供の頃の一人で過ごした

怖い夜を思い出して

不安で怯えている自分を思い出して



もう今は

大丈夫だとわかっているけど



大人になった私の中には

まだ子供のままの私が居座っているのを

感じるんだ

未来の自分

あのババア　早く死ねばいいのに



友人の姑の愚痴はいつも熾烈で

胸を撃ち抜かれたようなショックを覚える



姑に同情している訳ではない



何年も先の自分が

嫁に言われているような

そんな錯覚に飲み込まれてるからで



そんな言葉を聞く度に思う



それは一人の男を

夫であり息子であるを

取り合っている感覚なのかもしれないし



大嫌いになってしまった夫を

生んだ母だからこその

憎さなのかもしれないって



自分で動ける限りは

子供夫婦と孫には関わらず



動けなくなった途端に

大病を患って死ぬというのが

きっと理想のパターン



体を鍛えてお金を貯めて

誰にも迷惑かからないように



未来が

厳しい現実を用意しながら

まだかまだかと大口を開けて

待っている

素敵なプレゼント

偶然が重なって今日は一日

時間と人に捕らわれることのない

フリータイム



なんて素敵なプレゼント



目覚ましかけずに

思いっきり朝寝坊して

気分よくのんびり起きたら



天気は晴れで

またまた嬉しくる



洗濯物がからっと乾くし

何より

気分も晴れる



なんて素敵なプレゼント



鼻歌歌いながら

ケーキやお菓子を作ったりして



どんどん楽しくなる



のんびり本を読んでいたら

結構な時間になっていて



楽しい日だったなって



そろそろ両親に

作ったケーキを持っていこう



生んでくれてありがとうって



そう

今日は私の誕生日

みんな同じ顔に見える

人の顔と名前を

覚えるのが昔から得意ではない



興味がないから

覚える気がないんだよって

言われて



そうかもしれないって

納得した



興味のないことは覚えない

ということが癖になっているのか



脳がそうなるように

自然にＳＴＯＰをかけるようになっているのか



いつしか初対面の人の顔は

イメージで覚えてるだけになっている



話をしなきゃいけない2回目に会う人は

面倒なことを言わないでくださいの顔をした

若い男性だったはず



見渡してみたらそこかしこに

そんな人ばかりがうつむき加減でいて

間違えながらやっと探して



質問をたくさんしてみたが

面倒なことを言わないでくださいの顔した人は

いろんなことを知らなくて



たけどプライドだけは高いようで

今度までに調べておきますと仏頂面で



もっと笑ってみたり

もっと堂々と話してくれないかなって



顔と名前を覚えることに

協力してくれないかなって



また次間違えながら

探さなきゃいけないことに



勝手だけど

こっそりため息をついた