ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

 2008年10月から「第2マキペディア」として続けることにしました。

教育の広場、第 191号 ジャーナリズムの学力低下

2005年06月23日 | 教育関係
 先月、国際的な機関による生徒の学力調査の結果が2つ発表
され、日本の生徒たちの学力の低下がはっきりと出たために大
騒ぎになっています。

 文科省はその対策として、というより政策の検証のために
(と称して)全国学力テストを実施しようと考えているようで
す。

 朝日新聞は12月18日付けでこの問題について、その学力テス
トを中心にして3氏(中山文科大臣、陰山英男土堂小学校長、
苅谷剛彦東大教授)の意見を載せています。

 また、12月19日の教育欄では、その国際的な調査で1位にな
ったフィンランドの教育事情を紹介しています。

 この2つを読んで私の考えた事は「ジャーナリズムの学力低
下」ということです。

 なぜそう考えたかと言いますと、18日の紙面では、「全国的
な学力調査」という「新しい政策」を述べている中山大臣の文
章と、それの前にするべき事を要求している他の2人の文章を
同時に並列しているからです。

 こういう状況では、新聞社はまず2人の意見を載せて、中山
大臣にはそれへの答えを書かせるべきだったと思います。3つ
の意見を同時に並列的に載せるのは討論の前進に役立たないと
思います。実際に議論は全然かみ合っていないのです。

 12月19日のフィンランドの教育事情のルポについて言います
と、ほんのちょこっと取材して、関係者にインタビューしてま
とめただけだと思います。

 日本の教育についての自分の問題点を持って、その点を中心
的に取材して解明しようとしたとはとても思えません。

 フィンランドでは教育関係の予算は 0ECD 諸国の平均値であ
り、総標準授業時間は 0ECD 諸国の中で最短だそうです。それ
なのになぜ世界1なのでしょうか。

 特に紹介されているのは、理解度に合わせた指導を受けるの
が一般的に行われていること、教師が話し合って得意な分野を
活かしていること、生活と学習を関連させること、その前提と
して、教育についての決定権が地方に移されていることくらい
です。

 今後の方向としては、教師の質の向上に努めたい、給与水準
を上げ、非常勤を減らして終身雇用を増やしたい、ということ
でした。

 しかし、こんな事を紹介されただけで日本の改革の方向が分
かるでしょうか。

 こういう事を聞いたのなら、日本とフィンランドでの教師の
給与水準を比較し、教師のなかでの終身雇用者の率と非常勤者
の率を比較するべきでしょう。それをしなくては何の参考にも
ならないと思います。

 フィンランドではなぜ教師の質が高いのでしょうか。これを
追求してくれなくては困ります。1つは、多分、先に引いた「
教師が話し合い」という点にあるのだと思います。

 つまり、学校教育は校長を中心とする教師集団が行うものだ
ということがどうなっているかを調べることが必要なのです。

 更に、教育行政の全体像も見る必要があるでしょう。それな
のに新聞記者にはそういう問題意識がないのです。

 又、多分、住民の監視のあり方もあるだろうと思います。そ
のシステムも取材してほしいものです。

 ジャーナリストの不勉強を感じることが多くなりました。先
の文科省の方針についても次のような事を指摘するべきだと思
います。

 文科省は対策を打ち出す前に、これまでの政策を反省し、識
者の意見を聞くべきだと思います。何か事が起きると、それの
責任追及を回避するために、直ちに「新しい対策」とやらを打
ち出して、誠意があるかのように装い、人々の関心をそちらに
そらすのは文科省のいつものやり方です。

 かつて、神戸小学生連続殺傷事件が起きて、その犯人として
当時中学3年生だった少年が逮捕された時、直ちに「心の教育
」を打ち出して文部省批判を防いだのはその典型的な例です。

 民間企業だったら担当した人は何らかの形で、最低でもボー
ナスの減額とかで、責任を取らされると思います。役人の世界
ではこういう事はめったにないのはおかしいと思います。

 さすがに最近の裏金問題などでは減給も起きていますが、政
策上の問題では責任を取ることは少ないと思います。

 NHKに対しては受信料拒否という手段が我々国民にありま
すので、ついに追い込まれて反省番組を放映し、会長も辞任に
追い込まれましたが、役所の失政や責任逃れを追及する手段は
ないのでしょうか。

 昨日の新聞では文科省が全国の学校をめぐって何かタウンミ
ーティングみたいなことをして現場の意見を聞くことにしたそ
うです。しかし、これで本当の事が分かるのでしょうか。

 これまでにも現場の意見は聞いてきたのではないのでしょう
か。その聞き方の反省をしないでタウンミーティングをするの
が適当なのでしょうか。そういう事について新聞はどう考えて
いるのでしょうか。

 新聞社自身は外部の人の意見を聞いていることになっていま
すが、それがどこまで役立っているのでしょうか。もし役立っ
ているなら、文科省に自分たちの聞き方を教えてあげたらどう
でしょうか。
(2005年01月10日発行)