安倍晋三の日朝首脳会談開催意欲は拉致問題に懸命に取り組んでいますというアリバイ作り

2018-06-12 09:30:40 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 ご存知のように安倍晋三が一方で初の米朝会談に臨むトランプに対して金正恩に拉致問題の解決に向けた提起をお願いし、自身は日朝首脳会談開催に意欲を示しているが、あくまでも前者を優先させた拉致解決の模索となっている。。

 2018年3月5、6日と文大統領特使団トップとして北朝鮮を訪問した大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が3月6日の記者会見で北朝鮮は朝鮮半島非核化の意思を明確にし、北朝鮮への軍事的脅威が解消されて体制の安全が保障されれば、核を保有する理由がない点を明確にしたことなどを発表。

 その鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室が記者会見3日後の3月9日に訪米、核・ミサイル実験の停止を提示する内容と米朝首脳会談を提案する金正恩の親書をトランプに渡した。対してトランプはその提案を受諾、今年5月までに首脳会談に応じる意向を表明した。

 安倍晋三は日朝首脳会談について例の如くのように「対話のため対話は意味がない」との態度を取っていたが、2018年3月22日付「共同47NEWS」記事が日本政府は日朝首脳会談について複数のルートを通じて北朝鮮側に意欲を伝達していると伝えた。記事は日本人拉致と核・ミサイル開発問題の解決を求める狙いだと解説している。

 この記事配信4日後の3月26日の参議院予算委員会では安倍晋三は日朝首脳会談の可能性を問われて、「北朝鮮との間では北京の大使館ルートなどさまざまな手段でやり取りを行っているが、詳細は差し控えたい。話し合いのための話し合いは意味が無く、日本にとって極めて重要な問題は拉致問題の解決だ。米朝首脳会談の機会に拉致問題が前進するように全力で取り組んでいきたいし、そのための来月の日米首脳会談にもしていきたい」(NHK NEWS WEB)と答弁している。

 日朝首脳会談での直接交渉による拉致解決よりも米朝首脳会談でトランプが拉致問題を提起、そのことをキッカケに日朝間で拉致交渉が進展することを願う、前者により重点を置いた発言となっていて、やはり米朝首脳会談を優先させている。

 安倍晋三は4月22日、拉致被害者家族らと約1時間程面会して懇談し、その後東京都内開催の北朝鮮による拉致被害者家族会や支援団体「救う会」などが主催する「国民大集会」に参加し、スピーチしている。

 先ず拉致被害者家族との懇談でのスピーチ。

 安倍晋三「先般、(4月)17日から訪米し、そして2日間にわたってトランプ大統領とじっくりと膝を交えて首脳会談を行ったところでございます。その際、北朝鮮の問題について日本の主張、立場をしっかりとトランプ大統領にお伝えしました。

 特に拉致問題について、是非この千載一遇の機会を捉えて、この拉致問題について議題に乗せ、解決を強く迫ってもらいたい。正に千載一遇のチャンスと捉え、この初めての米朝首脳会談において、この問題について金正恩(キム・ジョンウン)委員長に、日本が考えた解決に向けて伝えてもらいたい、ということをお話しさせていただいたところでございます」――

 「国民大集会」でのスピーチ。

 安倍晋三「米朝首脳会談で拉致問題を提起する、そしてベストを尽くす、と力強く約束してくれました。そして記者会見においても、昨年来日した際に、皆さんと対面されたことを思い浮かべながら、できる限り早期に御家族の再会を望む、拉致被害者の帰国に向け可能な限り全てのことをし、彼らを日本に帰国させる、あなたに約束する、こうテレビカメラの前で表明をしてくれました。この日米首脳会談の共同記者会見においては、米国でもCNN等で全国にライブで放映されるわけであります。そしてそれは北朝鮮の人々も見ている。正に世界に向かって米国の大統領がこの問題を解決する、被害者を家族のもとに返す、ということを約束してくれたと、こう思います。

 しかし、問題は首脳会談が行われ、そこで米国から提起されても、北朝鮮がどのように受け止め、実際に行動していくかであります。そしてこの拉致問題は正に日本の問題であり、日本が主体的に行動を取っていかなければならない問題であろうと、こう思うわけであります。今後一層、日米で緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の即時帰国に向け、北朝鮮への働きかけを一層強化していく考えであります」――

 「国民大集会」のスピーチでは、「拉致問題は正に日本の問題であり、日本が主体的に行動を取っていかなければならない問題であろう」と言いつつ、両スピーチを通してトランプの拉致提起を優先させ、そのことにより依存した解決の模索となっている。

 5月14日午前の衆院予算委員会で、

 安倍晋三「この歴史的な米朝首脳会談を生かして、北朝鮮にかかわる諸問題を解決していく、そのいわば前進となる会談にしていくべく、我々も全面的に協力をしなければならない、こう思っています。

 ・・・・・・・・

 そして、拉致問題についてでありますが、拉致問題の重要性については、再三再四、トランプ大統領との会談の際に説明をし続けてきたわけでございまして、認識について完全に一致できている、こう思っていますし、トランプ大統領自体も、米朝の首脳会談においてこの問題を提起するとはっきりと言われています。先般、ボルトン補佐官がテレビに出演した際にも、当然この拉致問題についても話すことになるとテレビで明言もしているということは御承知のとおりだろうと思います。

 最終的には日朝で話し合わなければこの問題は完全に解決することはできないと思っております。日本独自の努力で解決もしていかなければいけない。もちろん、米国や韓国や中国、国際社会の協力は必要ですし、実際に、今までになく、米国も韓国もよく理解をしていただき、協力をしていただいていると思いますし、日中韓でも初めて共同文書にも入ったわけでございます」――

 「最終的には日朝で話し合わなければこの問題は完全に解決することはできない」と言っているが、あくまでも「最終的には」――“最後の最後には”ということであって、それまでは拉致問題進展は米朝首脳会談に期待をかけ、その交渉を優先させるという文脈となっている。

 自らの外交力で日朝首脳会談の開催に漕ぎつけ、拉致解決に向けた自身の交渉に賭けるという対北朝鮮交渉の構図とはなっていない。

 安倍晋三は訪米した6月8日のトランプとの首脳会談後の共同記者会見で拉致問題について次のように発言している。

 安倍晋三「トランプ大統領は世界の中で最も理解していただいている指導者だ。首脳会談で日本の考え方を時間をかけて話し、トランプ大統領にも十分理解して頂き、米朝首脳会談で提起することを約束していただいた。

 拉致問題は安倍内閣の最重要課題だ。最終的には私とキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の間で解決しなければならないと決意している」(NHK NEWS WEB

 安倍晋三の頭の中にある拉致問題解決に向けたスケジュールに関する構図は何も変わっていない。

 安倍晋三自身が3月26日の参議院予算委員会で、「北朝鮮との間では北京の大使館ルートなどさまざまな手段でやり取りを行っている」との発言で示している、あるいは政府による複数のルートを通じた北朝鮮側への伝達で示している日朝首脳会談開催の意欲にも関わらず、北朝鮮側の反応が芳しくないことからのあくまでも米朝首脳会談でのトランプの働きかけを優先させて、「最終的には私とキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の間で解決しなければならない」と日朝首脳会談を後回しにする従来の構図を引きずることになっている要因に違いない。

 安倍晋三とトランプとの日米首脳会談6月8日2日前の6月6日、「産経ニュース」記事が北朝鮮機関紙のメッセージを伝えている。

 朝鮮労働党機関紙労働新聞「外相の河野を初めとする安倍一味がほっつき回り、『対北圧力維持』と『拉致問題』を執拗に喚いている。

 (対トランプ米政権緊密協力の要請に対して)時、既に遅しだ」

 朝鮮中央通信「『拉致問題』ごときを持ち出し、対決に狂奔するなら世界の嘲笑を受ける」

 「わが民族同士」サイト「(国際社会に対北圧力を呼びかけることで)もたらされるのは『日本疎外』現象だけだ。

 拉致問題は2002年の日朝平壌宣言に基づき既に解決された。過去に我が国を占領し耐え難い苦痛を与えた罪悪をまず謝罪して賠償すべきだ」――

 勿論、金正恩の声を代弁していると見なければならない。

 各機関紙を通した言っていることの趣旨は、勿論のこと、安倍政権の「検証可能、且つ不可逆的な方法での核の完全放棄」を求める対北圧力一辺倒政策への反発であり、その反発が拉致解決に北朝鮮を閉鎖的な態度にしている主原因であろう。

 いわば安倍政権の完全非核化要求と拉致解決要求は北朝鮮にとっては相対立する要求となっているからこその反発であって、もし北朝鮮が完全非核化に応じる意思を持っているなら、相対立する要求であることが解けて、拉致解決を国家経済回復の大きな一助とするカードを引かない手はないことになる。

 応じる意思を持っていないからこそ、核の完全放棄を求める安倍政権の対北圧力一辺倒政策に対する反発であり、「拉致は解決済み」という態度であろう。

 いくらトランプが米朝首脳会談で金正恩に対して拉致問題の解決を提起したとしても、金正恩が完全核放棄の意思を持たない限り、安倍政権の対北圧力一辺倒政策と対立することになって、北朝鮮が握っている拉致カードは温存の憂き目に遭うことになる。

 断るまでもなく、拉致が解決されたとしても、非核化が実現しない限り、日米、その他の経済的な圧力政策は続くことになるからだ。マスコミの多くの論調にあるように北朝鮮としては時間を掛けた段階的核放棄を装うことで、その間に少しでも圧力が弱まることを狙うだろう。

 安倍晋三にしても、核の完全放棄の要求と拉致解決の要求が相対立する要求であることぐらいは北朝鮮機関紙の論調からも理解しているはずだ。にも関わらず、相対立する要求であることを無視して核の完全放棄の要求と拉致解決の要求の両方を掲げて、「最終的には日朝で話し合わなければ拉致問題は完全に解決することはできない」と、さも拉致解決に向かうかのような発言を繰返している。

 要するに題名に掲げたように安倍晋三の日朝首脳会談開催意欲は拉致問題に懸命に取り組んでいますというアリバイ作りでしかないということである。

 6月8日から10日にかけて行った「NHK世論調査」で安倍晋三が拉致問題の解決に向けて日朝首脳会談の開催に意欲を示していることに対しての評価を尋ねている。

 「大いに評価する」4%
 「ある程度評価する」52%
 「あまり評価しない」19%
 「まったく評価しない」9%

 「大いに評価する」4%+「ある程度評価する」52%=56%
 「あまり評価しない」19%+「まったく評価しない」9%=28%

 評価の傾向が圧倒的に多数を占めている。

 人それぞれの解釈がある。森友問題・加計問題で下げている内閣支持率を下げ止まりにしている要因はさも拉致解決に向かうかのような発言を繰返していることに対しての国民の支持かもしれない。

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加計孝太郎の安倍晋三との面会否定:疑義・異論・反論を受けつけないその言いっ放しは否定を成立させ得ない

2018-06-11 09:35:16 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 愛媛県の中村知事が参議院の要請に基づいて2018年5月21日に提出した加計学園に関わる文書には2015年2月25日の日付で、加計学園理事長と安部井晋三が15分程度の面談を行い、加計孝太郎から獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。安倍晋三から「そういう新しい獣医学大学の考えはいいね。」とのコメントあったことが記されていた。

 安倍晋三も加計孝太郎もこの面談を否定し、5月26日になって加計学園は、〈当時は、獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探しておりました。そのような状況の中で、構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば、活路が見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と(今治)市に誤った情報を与えてしまったように思うとのことでした。その結果、当時の担当者の不適切な発言が関係者の皆さまに、ご迷惑をお掛けしてしまったことについて、深くおわび申し上げます。〉といった面談を否定するコメントを発表した。

 5日後の5月31日には加計学園事務局長渡邉良人が愛媛県庁を訪問して謝罪、その後記者たちに安倍晋三・加計孝太郎の“なかった面会”の情報発信源は「3年前のことですから、多分、自分が言ったんだろうというふうに思います」とか、「もしあのとおりのメンバーから言えば、もう僕しか言うのはおらないだろうということで」とか、不確かながらの曖昧肯定で自分だと認めた。

 記憶そのものを限りなく曖昧にすることで、記憶の対象である面会のニセ情報自体をさも重要ではないと思わせる魂胆で謝罪に臨んだのかもしれない。

 この加計学園事務局長渡邉良人の5月31日愛媛県庁訪問・謝罪の前日5月30日、立憲民主党と国民民主党の国会議員が加計学園加計孝太郎に対して加計学園が5月26日に愛媛県の内部文書に記載されている安倍晋三との面談を否定するコメントを発表した経緯の説明などを求める質問状を提出したという。

 対して加計孝太郎は6月4日、ファックスで回答したと2018年6月5日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。

 「学内で検討した結果、事実関係を公表すべきとの考えに至った。国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば活路が見いだせるとの考えから、実際にはなかった安倍総理大臣との面会や会食を引き合いに出し、愛媛県などに誤った情報を与えてしまったことについて、深くおわび申し上げます」

 5月26日の加計学園の面談否定のコメントとほぼ同じ内容、同じ趣旨となっている。

 これまで何度かブログに書いてきたが、愛媛県と今治市に安倍晋三と加計孝太郎のニセ面会情報を吹き込み、信じ込ませたとしても、愛媛県も今治市も国家戦略特区制度を用いた獣医学部認可に何の権限も持たないのだから、「国家戦略特区を用いた申請に切り替え」たとしても、両自治体がニセ面会情報をどう利用できるものでもない。できるとしたら、加計学園獣医学部認可が事実「首相案件」となっていたなら、認可実現に備えて自治体として如何に資金援助ができるか、額はどのくらいか、公的支援の算段をすることぐらいであろう。

 もし2015年2月25日の面会が事実で、安倍晋三が加計孝太郎と獣医学部について話し合ったとなると、今治市新設の獣医学部の事業主体が加計学園であることを知ったのは面会から約2年後の2017年1月20日開催の「第27回国家戦略特別区域諮問会議」でそのことを認められたときが最初であるとしてきた国会答弁、その他の発言が全て虚言となって、安倍晋三としても加計孝太郎にしてもどうしても面会を事実とすることがはできない事情にある。

 そのような事情からの面会否定なのか、実際にそのような事実はなかったことからの面会否定なのか、後者の否定とするためには、「国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば活路が見いだせるとの考えから」のニセ面会情報の愛媛県と今治市への提供だとするなら、その先の説明が必要となる。

 愛媛県と今治市にニセ面会情報を提供した場合、獣医学部認可に向けでどう活路を見い出すことができると目論んだのか、その目論見の順を追った説明である。

 勿論、獣医学部認可にそのニセ面会情報が結果的にどう役立ったのか、どの程度役立ったのか、あるいは何も役立たなかったのかの説明も必要となる。

 いわばニセ面会情報の「活路」獲得の貢献度である。

 ところが、5月26日の加計学園の面会否定のコメントにしても、6月4日の加計孝太郎のファックスを使った面会否定にしても、面会否定の言いっ放しで終えている。

 どのような疑義・異論・反論も受け付けない否定の言いっ放しは否定としての体裁を取りようがない。受け付けて初めて、否定は否定としての体裁を整える。

 警察がある犯罪の重要参考人として警察に呼び、取調べを行う。その参考人による犯行の事実を否定する言いっ放しのみでその人物の犯行ではないことを認めるだろうか。

 あるいはその重要参考人が社会的地位ある有名人で警察での取調べを嫌って、犯行を否定する警察向けのコメントを発表したとすると、そのコメントのみでその人物の犯行ではないと認めることができるだろうか。

 それと同じで、いくら加計学園や加計孝太郎が面会否定のコメントを発表しようとも、疑義・異論・反論を受けつけないその言いっ放しは否定として罷り通らせるわけにはいかない。

 事実面会がなかったことなら、正々堂々と国会に出てきて疑義・異論・反論を受けつけた面会否定を展開すべきだろう。

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東京目黒5歳児虐待死:大人の子どもの生命(いのち)に対する想像力の貧困さが虐待死やイジメ自殺を招いている

2018-06-09 13:01:53 | 社会
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 6月6日(2018年)、5歳の女児に様々な虐待を加えて死に至らしめた保護責任者遺棄致死容疑で東京・目黒区のアパートに住む両親が警視庁捜査1課に逮捕されたとマスコミによって一斉に報道された。

 マスコミ報道を纏めてみると、日常的に顔を殴るなどの身体的暴行と満足な食事を与えないこととひらがなの勉強の強要、さらに電灯のない部屋での生活の強制等々の精神的・肉体的苦痛を5歳の女児の精神と肉体に日々与え、病院に連れて行くなどの措置を取らずに3月2日に低栄養状態などで起きた肺炎による敗血症で死亡させた。

 死亡時の体重は約12キロ。5歳児の平均体重が約20キロとの報道があるが、精神的・肉体的苦痛が8キロの差を女児に与えた。

 各報道から死に至らしめるまでの経緯を見てみる。

 父親は33歳。母親は25歳。5歳女児と1歳の長男の4人家族で香川県善通寺市に住んでいた。但し両親の実子は1歳の長男のみで、5歳女児は母親の連れ子であった。

 5歳女児は昨年2月と5月の夜に屋外で1人放置されている姿が2回目撃されていて、「父親に叩かれた」などと話していたために警察は父親を傷害容疑で書類送検、その後不起訴処分となったが、県内の児童相談所が両親に対して児童福祉法に基づく指導を行った。

 子どもが母親の連れ子で、父親にとって継父という家族関係は虐待が起こりやすいパターンの一つとなっている。思うに母親が5年前の20歳という若さで自分以外の男とのセックスで生んだ子だという思いに一旦囚われ、その思いに支配されると、疎外したい方向に気持が動くのではないのだろうか。

 疎外感が何も相手にしない無視か、それとは逆の過剰な干渉による無視という関係を招く。多くが日々顔を合わせるなると、無視よりも過剰な干渉を手段とした無視に走って、それが様々な虐待の姿を取ることになるといったところではないだろうか。

 特に男の方がセックス経験が遅く、少ないと、女のセックス経験の年齢的な早さと豊富さに囚われた場合のコンプレックスの防御反応としてその他の男とのセックスで生まれた子どもに対して何らかの攻撃行動を取ることで手に入れることができる優越性で以って心理的なバランスを取るといったことが起きるように思える。

 33歳の父親は香川県生まれで香川県善通寺に住み、食品会社に1年半程勤めてから昨年12月に退職。同月、単身で東京の目黒区に引っ越した。年が明けた1月23日に25歳の母親と5歳の女児、1歳の実子である長男が移り住み、家族4人の生活が始まった。

 香川県内の児童相談所は今年1月に児童福祉法に基づく指導措置を解除した。但しこの児童相談所は品川児童相談所に引き継ぎを行っていたということだが、指導措置対象者が地元から離れたから地元の児童相談所としては指導措置を解除したという意味なのか、虐待の恐れがなくなったと評価・判断して指導措置を解除し、このことを含めて品川児童相談所に引き継いだという意味なのか、各記事を読んだ限りでは頭の悪い当方には理解できない。

 但し2018年3月5日付「毎日新聞」記事が、専門家の発言として「香川の児相が警戒レベルを下げたため、転居先の児相の危機感が薄れた可能性がある」と伝えているところを見ると、虐待の恐れがなくなったと評価・判断して指導措置を解除したことになる。

 だとしても、品川児童相談所自身は何ら想像力を発揮せずに香川の児童相談所の解除に対して機械的に対応していたことになる。

 実際に品川児童相談所が機械的に対応していたかどうかを見てみる。

 品川児童相談所は今年2月9日に家庭訪問を実施している。この訪問について2018年6月6日付「NHK NEWS WEB」は品川児童相談所は母親から「関わってほしくない」などと言われたと伝えている。

 他の記事によると、品川児童相談所は5歳女児に合うことができなかった。このことと「関わってほしくない」という母親の発言を繋げると、口調や態度の強弱は別問題として母親から面会を拒否されたことになる。

 品川児童相談所は「関わってほしくない」という言葉で5歳女児との面会を拒否されたことをどのような想像力を以ってしてどう解釈したのだろうか。

 5歳女児は今年4月から小学校に入学予定だったというから、もし児童虐待が行われていなかったなら、「関わってほしくない」などと言った拒絶的態度を示さずに、「私たちは立ち直りました。子どもも元気で小学校の入学を楽しみにしています」ぐらいは口にしたはずで、その証明として面会も受け入れたはずだ。

 だが、そのような態度は示さなかった。それに今までの例から言うと、子どもとの面会拒否は多くの場合、虐待を隠すことが目的となっている。

 児童虐待は子どもの肉体と精神へのあるまじき残酷な変化として傷跡や衰弱や怯え等の犯行の痕跡を残し、こういったことが面会を嫌い、拒否する態度となって現れることぐらいは児童相談所の人間なら知っているはずで、母親の態度にそういった想像力は働かせなかったようだ。

 同「NHK NEWS WEB」記事は品川児童相談所の「香川から引き継がれて虐待のリスクが高いかどうか、判断している最中に事件が起きた。今後、対応が適切だったか調査していきたい」との発言を伝えている。

 母親によって目の前で示された拒絶的態度を直近の基本的情報と看做して児童相談所として持っている最大限の想像力を働かせて直ちに判断しなければならないにも関わらず、「香川から引き継がれ」た情報に基づいて「虐待のリスク」を判断しようとしていたが、その「最中に事件が起きた」としている。

 責任感の質だけではなく、直ちに判断できなかった貧困な想像力は目に余る。

 品川児童相談所は2月9日の家庭訪問から11日後の2月20日に目黒区内の小学校の入学説明会にも様子を確認しにいったが、参加したのは母親だけだと、2018年6月7日付け「時事ドットコム」記事が伝えている。

 要する品川児童相談所が入学説明会で5歳女児の様子を確認しようとしたということは保護者と新入生が一緒に出席していることを期待したからだろうが、5歳女児は出席していなかった。

 単に子どもを連れて行かずに母親だけが出席したということかもしれないが、2月9日の家庭訪問で母親が「関わってほしくない」と言って面会を拒否したことと考え併せると、児童相談所の立場上、虐待を疑うことのできる新しい情報の可能性の一つに加えなければならなかったはずだ。

 だが、子どもの生命(いのち)に対してそこまでの想像力を働かせることができなかった。

 父親は昨年12月に退職して東京に引っ越しする前は食品会社に1年半程勤めていて、それなりの給与を手にし、そのカネで生活していたことになる。母親がパートか何か勤めをしていたのかはマスコミは伝えていない。

 東京に引っ越ししてから、木造アパートに居を構えたが、地元の不動産関係者の話として、「間取りは2DK(35平米)で家賃は8万5000円相当が相場で、税金の支払いの滞納がたくさんあり、生活保護を受給していたという話を聞いている」と、「AERA dot」記事が伝えている。

 仕事に就いていなくて生活保護を受け、保護費を生活を始末することで浮かせて税金の支払いに回さずに滞納している生活態度となっている。児童相談所はこういった情報を入手していたのだろうか。

 育児不安や生活不安、あるいは生活困難、夫婦仲といった何らかの危機的状況がもたらす親の精神的ストレス・苛立ちが子どもに対する虐待という攻撃の形を取り、そのことによってストレス・苛立ちを解消するパターンが多く存在するが、自身の実際の生活態度に反して自尊心だけが高い人間はより弱い存在である妻や子どもへの虐待で自らの優越性を手に入れ、その優越性で以って自らの自尊心を満たすケースを見受ける。

 上記「AERA dot」記事が近隣の飲食店関係者の話として父親が「メディア関係の仕事をするために以前勤めていた食品会社を辞めて東京にきたと話していた」と伝えているが、このエピソードは父親の自尊心の高さを伝えて余りある。勿論、児童相談所が感知できない情報であったとしても、父親の生活態度だけは虐待のリスクを判断する情報として手に入れていなければならなかったはずだ。

 目の前の出来事から虐待のリスクを判断する想像性を働かさなければならないにも関わらず働かせることができず、機械的対応しかできない。 大人たちの子どもの生命(いのち)に対する想像力の貧困さが招いている虐待死の一例以外の何ものでもないだろう。

 最後に5歳女児はしつけと称して、毎日午前4時頃に自分で起きて体重を測ったり、ひらがなを書く練習をしたりすることを命じられていて、ノートには次の書き込みが残されていたという。対して約には断たないが、当ブログに記録しておくために[NHK NEWS WEB」記事から転載しておく。

 「もうパパとママにいわれなくても
 
 しっかりとじぶんから

 きょうよりはもっともっと 
  
 あしたはできるようにするから 
 
 もうおねがいゆるしてください おねがいします 

 ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして

 きのうぜんぜんできてなかったこと

 これまでまいにちしてきたこと なおします

 あそぶってあほみたいだから

 ぜったいぜったいやらないから やくそくします」

 自身の存在を認めようとしない父親に対して5歳の女の子が自分を認めさせようと自分ができる精一杯の努力をしている。

 だが、その精一杯の努力は潰えることとなった。大人たちの子どもの生命(いのち)に対する想像力の貧困さがこれからもイジメ自殺や児童虐待死を招いていくに違いない。

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安倍晋三が加計孝太郎との面会・会食を否定しても、獣医学部事業主体が加計学園なのは17/1/20以前に認識

2018-06-07 12:08:53 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 愛媛県による2018年5月21日参院予算委員会提出の加計学園獣医学部認可に関わるいわゆる「愛媛県新文書」に記載の安倍晋三と加計学園理事長加計孝太郎との面会は安倍晋三や加計学園側が否定しているようになかった事実で、加計学園事務局長渡邉良人が言っているように獣医学部認可を有利に運ぶためのデッチ上げのニセ情報だったのか、別のアプローチによって改めて考えてみることにした。以前ブログに書いたことと重なる部分があるが、ご容赦願いたい。

 これまでの経緯を振り返ってみる。面会は「愛媛県新文書」№17に記載されている。

 「報告」                   

 「獣医師養成系大学の設置に係る加計学園関係者
  等との打ち合わせ会について」
                   27.3
                   地域政策課

1 加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告
 したいとの申し出があり、3月3日、同学園関係者と県との間で打
 ち合わせ会を行った。

2 加計学園からの報告等は、次のとおり。

①2/25に 理事長が首相と面談(15分程度)。理事長から、獣医師
  養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、
  国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは「そ
  ういう新しい獣医学大学の考えはいいね。」とのコメントあり。
 また、柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示が
  あったので、早急に資料を調整し、提出する予定。
 
②下村文科大臣が一歩引いたスタンスになっており、県において
  も、官邸への働きかけを非公式で実施いただけないかとの要望
  があったが、政治的な動きが難しい旨回答。
③検討中の大学付属施設(高度総合検査センター等)の設置には、
  多額の費用が必要であるが、施設設置に伴う国からの補助がな
  い中、一私学では困難であるので、国の支援が可能となる方策
  の検討を含め、県・市の財政支援をお願いしたい。

  なお、3月4日には、同学園と今治市長が面会し、ほぼ同内容
  の説明があった。
  
3 おって、3/3に開催された国家戦略特区諮問会議では、特区法
 改正案に盛り込む追加規制緩和案が決定されたが、新潟市の国家
 戦略特区(獣医学部設置に係る規制緩和)は、含まれていない。
 今後、26年度までに出される構造改革特区提案(愛媛県・今治
 市)に対する回答と合わせて、国家戦略特区の結論も出される模
 様。

4 ついては、加計学園の具体的な大学校構想が示されたことから、
特区提案の動向を踏まえ、今後の対応方針について、今治市とし
っかりと協議を進めていきたい。

 面談結果等についての報告の経緯は加計学園側からの申し出で打合せ会を開き、愛媛県側はそこで知らされた事実を文書にしたということになっている。

 但し安倍晋三が加計孝太郎と2015年2月25日に面会して獣医学部について話し合ったとなると、国家戦略特区諮問会議によって四国今治市への獣医学部新設決定を受け、内閣府が2017年1月4日に事業主体を1月11日期限で公募、加計学園のみが事業主体として1月10日に応募し、それを認めた2017年1月20日開催の「第27回国家戦略特別区域諮問会議」で加計学園が今治市新設獣医学部の事業主体であることを初めて知ったとしている安倍晋三の国会答弁、その他の発言が全て虚言(他人を欺く言葉。ウソ)と言うことになって、至ってマズイことになる。

 安倍晋三も加計孝太郎も、共に面会を否定した。オオカミ少年みたいなもので周囲からなかなか信用されなかったからだろう、5月26日に加計学園は面談を否定するコメントを発表。

 平素より学園の教育活動にご理解とご協力を賜り誠にありがとうございます。

 一連の愛媛県文書にある打ち合わせの内容について、当時の関係者に記憶の範囲で確認できたことを下記の通りコメントいたします。

 当時は、獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探しておりました。そのような状況の中で、構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば、活路が見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と(今治)市に誤った情報を与えてしまったように思うとのことでした。その結果、当時の担当者の不適切な発言が関係者の皆さまに、ご迷惑をお掛けしてしまったことについて、深くおわび申し上げます。

 なお、学生たちの平穏な教育環境を確保することが大字の責務と考えますので、夢と希望に満ちあふれて、勉学に励んでいる在学生を、どうぞ温かく見守っていただきますようお願い申し上げます。

 要するに獣医学部新設を構造改革特区への申請から国家戦略特区への申請に切り替えて活路を見い出すために安倍晋三と加計孝太郎の面会などという「誤った情報」――ニセ情報を愛媛県と今治市に吹き込んだと言うことになる。

 但し愛媛県も今治市も獣医学部新設認可に何の権限も持っているわけではない。面会が何らかのいい影響を与えるのではないかという期待は持てるが、それ以上を出ない。最終的な権限を有しているのは内閣府主催の国家戦略特区諮問会議であり、諮問会議に影響力を与え得る首相や首相秘書官、あるいは内閣府の国家戦略特区担当相などが間接的には何らかの権限を持っていると言うことができる。

 もし安倍晋三と加計孝太郎の面会がニセ情報であり、面会の一方の当事者である安倍晋三を除いて獣医学部新設認可に間接的権限を持っている首相秘書官の柳瀬唯夫、さらに内閣府国家戦略特区担当相などにそのニセ情報を吹き込んで認可に向けた「活路」を見い出そうと謀ったということなら、吹き込まれた側はニセ情報か否かは簡単に見極め可能な立場にあるゆえに奇妙な謀り事ということになる。

 加計学園のこのコメントに対して愛媛県の中村知事が不快感を示し、加計学園は記者会見を開いて経緯を説明すべきだと発言した。対して加計学園側は5月31日午前、事務局長の渡邉良人が愛媛県庁を訪れて安倍晋三と加計学園理事長加計孝太郎とのニセ面談情報を(本人はそうは言っていないが)愛媛県と今治市に流したのは自分だと謝罪した。

 「朝日デジタル」(2018年5月31日)記事が謝罪の動画を載せていたから、文字に起こした。

 渡邉良人「このたびは愛媛県に対し多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳なく思っております。お詫びを申し上げます。(一礼)

 あの、実際、総理と理事長が面会をしたということについてはですね、これはこちらの方で、えー、そういうことを言ったのかなと、いうことで、覚えてなかったんですね。3年前のことですから。

 それで、ちょっと、あの、ま、県の方がですね、ああいう文章を、何もなく書くということはないということで自分が思い出す限りはですね、あのときに、多分、自分が言ったんだろうというふうに思います。

 県の方がですね、何もないところで書くいうことはあり得ないと、いうふうなことから逆算しましてですね、もしあのとおりのメンバーから言えば、もう僕しか言うのはおらないだろうということで――」

 記者(テロップ)「国会で説明責任を果たすべきだとの意見があるが?」

 渡邉良人「そうですね。何もそういうふうなことがないもんですから、説明をする必要もないんじゃないかなと思うんですけども、結局そういう思いで以ってですね、説明したんじゃないかなと思います」

 記者(テロップ)「渡邉事務局長自身が嘘をついた?」

 渡邉良人「えー、まあ、ウソ、ウソをついたと言いましょうか、あのー、結局そういう思いで以ってですね、説明、県に説明したんじゃないかと思います」

 記者(テロップ)「ウソを元に公金が出された」

 渡邉良人「ウソで以ってですね、認可になっているとは思ってませんで」(聞き取れない箇所あり)

 一国の首相と自分のところの加計孝太郎との面会というニセ情報をデッチ上げて愛媛県と今治市に吹き込む大それたことを仕出かしておきながら、そのことの深刻な反省の色も見せずにのらりくらりした態度の発言となっている。

 対して愛媛県の中村知事は6月4日、渡邉良人の謝罪に対して県庁で記者団の取材に応じている。

 中村知事「学園のコンプライアンスをクリアにすることが学園の信頼につながる。この問題をクリアしないとガバナンスの問題になるので真摯に対応してほしい」(NHK NEWS WEB

 そして学園側に対して加計理事長本人が記者会見を開いて一連の経緯を説明することや獣医学部の設置認可が妥当なのか、文部科学省に確認するよう求めたことを明らかにしたという。

 だが、加計孝太郎は記者会見を開かずに愛媛県の内部文書に記載されている安倍総理大臣との面談を否定するコメントを発表した経緯の説明などを求める野党国会議員提出の質問状に6月5日、ファクスで回答した。「NHK NEWS WEB」(2018年6月5日)

 加計孝太郎ファクス「学内で検討した結果、事実関係を公表すべきとの考えに至った。国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば活路が見いだせるとの考えから、実際にはなかった安倍総理大臣との面会や会食を引き合いに出し、愛媛県などに誤った情報を与えてしまったことについて、深くおわび申し上げます」

 何のことはない、5月26日の面談否定のコメントと同内容となっている。違っている点は加計孝太郎がファクスで野党国会議員に回答するまでは2015年2月25日の安倍晋三と加計孝太郎との面会のみ否定していたが、このファクスでは会食までニセ情報としていることである。

 この会食については後で触れる。

 獣医学部認可に何の権限も持たない愛媛県と今治市にニセ情報(「誤った情報」)を吹き込んで信じ込ませたとしても、「国家戦略特区を用いた申請」に切り替えようが切り替えまいが、認可に向けた「活路」を見い出せるわけのものではない。認可権限を直接的に持つ部署に所属する人物にか、その部署に影響力を与え得る人物にニセ情報を吹き込まなければ、情報としての役には立たないし、ニセ情報を設定した意味をも失う。

 だが、事を有利に運ぶ利用促進剤として最終的にどの段階にまで、その段階のどのような人物にまでニセ情報を吹き込もうとしたのか、吹き込むことができたのかの真相は何も明らかにしていない。

 2015年3月3日に開いた加計学園関係者と愛媛県との打ち合わせ会で愛媛県は2月25日に行われた安倍晋三と加計孝太郎との面会を知ることとなり、1カ月後の2015年4月2日に愛媛県と今治市の職員、さらに加計学園関係者が首相官邸を訪問、首相秘書官の柳瀬唯夫と面会することになった。

 そのことを記した愛媛県新文書には、「県・市と加計学園との事情打合せにおける渡邉事務局長主な発言」として、〈先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったことに対し、理事長から柳瀬秘書官にちゃんと説明しておくように言われている。同秘書官からも、本日、その点を質問される可能性があり、県・今治市から、100%の回答にはなっていないが、ちゃんと昨年12月26日にペーパーにより文部科学省に直接説明している旨を回答してほしい。〉との文言が記されている。

 ここに出てくる「会食」が加計孝太郎がファクスで「実際にはなかった」と否定している「会食」ということなのだろう。

 柳瀬唯夫〈秘書官からも、本日、その点を質問される可能性があり〉と記していることから、「県・市と加計学園との事情打合せ」は首相官邸訪問と同じ2015年4月2日に行われたことが分かるだけでなく、下村博文の「けしからん」発言が柳瀬唯夫にある程度伝わっていることを渡邉良人は承知していたことになる。

 安倍晋三と加計孝太郎との会食もニセ情報だったと否定している以上、下村博文の「けしからん」発言にしてもなかった事実であるか、別の機会に下村博文が「けしからん」発言をし、その際加計孝太郎から加計学園事務局長の渡邉良人に対して柳瀬唯夫にちゃんと説明しておくように指示したことになる。

 文書№9の愛媛県新文書に《柳瀬首相秘書官の主な発言(総理官邸)15:00》が記載されていて、加計孝太郎の加計学園事務局長渡邉良人への指示に関して次のように触れている。
 
 渡邉良人が〈(加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、その対応策について意見を求めたところ)、今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよい。〉との助言を柳瀬唯夫は与えている。


 と言うことは、下村博文の「けしからん」発言は事実として存在していたことになる。例え安倍晋三と加計孝太郎の面会と会食が事を有利に運ぶためにデッチ上げたニセ情報だったとしても、この助言の前に柳瀬唯夫は同じ《柳瀬首相秘書官の主な発言(総理官邸)15:00》の中で、「本件は、首相案件となっており」と発言していることに注目しなければならない。

 最初に〈本日は、地方創生関連の一部改正法の議員説明が予定されており、多忙を極める内閣府藤原次長に面会できたのは良かった。〉と発言し、次いで、〈本件は、首相案件となっており、何とか実現したいと考えているので、今回、内閣府にも話を聞きに行ってもらった。今後は、こういった非公式の場ではなく、藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。魅力的なものを持って行って相談してほしい。〉と発言している。

 《県・市と加計学園との事情打合せにおける渡邉事務局長主な発言》に、〈柳瀬秘書官に対しては内閣府藤原次長を紹介をいただいたことに対してお礼を述べたい。〉と記載してあるとろから、内閣府藤原次長との面会をセットしたのは柳瀬唯夫であることが分かる。訪問者側が礼を述べたのに対して柳瀬唯夫の最初の発言があったということであり、次からの発言が訪問者たちに伝えるべき肝心な用件ということなのだろう。

 その最初に「首相案件」であることを持ってきた。

 柳瀬唯夫はこの「首相案件」なる文言について2018年5月10日の衆議院参考人招致で次のように発言している。

 柳瀬唯夫「そもそも言葉といたしまして私は普段から首相という言葉は使わないので、私の発言としてはややちょっと違和感がございます。そういう意味で報道されております愛媛県の職員の方のメモですけども、ちょっと趣旨として私が伝えた形とは違う形で伝わっているのかなという気がいたします」

 「言った」とも、「言っていない」とも、断言する形での肯定・否定を決して用いない。「首相案件」という言葉に「違和感ある」とか、「趣旨として私が伝えた形とは違う形で伝わっている」とか、極めて曖昧、極めて遠回しな言い方で否定する巧妙な手を使っている。

 柳瀬唯夫が「首相案件」と発言したことをいくら否定しようとも、愛媛県職員が柳瀬唯夫と同じテーブルに座って、直接耳にした発言をメモに取り、あとで纏めて文書にしたであろう事実性は簡単には崩すことも否定することもできない。もし崩し、否定するとしたら、柳瀬唯夫が参考人招致の国会で認めた2015年4月2日の愛媛県と今治市の職員、さらに加計学園関係者との首相官邸での面会という事実性をも崩し、否定しなければならないことになる。

 そして既に触れたように訪問者たちに伝えるべき肝心な用件として何よりも最初に「首相案件」であることを伝えたと言うことは、柳瀬唯夫は加計学園獣医学部新設を「首相案件」であることを前提に話を進めていたことになり、このことをどう否定しようとも、愛媛県職員が柳瀬唯夫と同じテーブルに座って、直接耳にした発言をメモに取り、あとで纏めて文書にしたであろう事実性の手前、やはり2015年4月2日の首相官邸訪問自体をなかった事実としなければ、否定は成立しないことになる。

 「首相案件」を前提に話を進めていたこと自体、安倍晋三と加計孝太郎の面会・会食がなかったとしても、安倍晋三は今治市新設の獣医学部の事業主体が加計学園であることを2017年1月20日よりも遥か前に認識していたことになる。

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麻生太郎の佐川宣寿国税庁長官人事「適材適所」は身内感覚 国民感覚は“不適材不適所”そのもの

2018-06-06 11:42:52 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年6月5日付「NHK NEWS WEB」記事が、6月5日の衆議院の財務金融委員会で麻生太郎が佐川宣寿を国税庁長官に任命した人事について認識を問われて、「適材適所だったと思う」と答弁したと伝えいた。

 当日の衆院財務金融委の動画をダウンロードして、どう答弁したか見てみた。

 海江田万里「昨日、財務省から森友学園案件に関する決裁文書の改竄等に関する調査報告が公表されました。初めて改竄という言葉を使いましたが、私どもは以前から改竄ということをずっと言っておりました。

 で、麻生大臣は昨日3時半から財務省において記者会見をしました。そして冒頭15分程ですね、記者の質問にも受けておりましたけど、冒頭発言がありました。その冒頭発言の最後のところで、私も麻生大臣、辞任の弁があるのかと思っておりましたけれども、そうではありませんで、『私のリーダーシップで財務省が一丸となって、これから信頼回復に努める』、こういう発言がありましたね。

 私はそれを聞きまして、ま、耳を疑いましたね、これ。麻生総理が、これまでこの森友学園の問題に関してこの真相究明のためにどれだけやっぱりリーダーシップを取ってきたかということ、私はハッキリ申し上げまして、麻生総理、麻生大臣のリーダーシップというのは、皆無であったんじゃないだろか。むしろ隠蔽を増長する、そういう方向の働きをやっていたんではないだろうか、いうふうに思います。

 で、この森友学園の問題では3月の9日にですね、当時の佐川国税庁長官が麻生大臣のところに辞表を提出をしました。3月の9日です。私は前から、この佐川国税庁長官は不適任だよ、国税庁長官としては不適任だよということを何度も申し上げてきました。その度に麻生大臣は適材適所だ、いうことを言ってきたわけですが、3月9日、辞表を持ってこられて、何でこの3月9日です?

 まさに確定申告の一番最後の、最終盤のところに入ってきて、その国税執行の最高責任者が辞表を持ってきたのかというふうに麻生大臣はお考えでしたか」

 麻生太郎「佐川前国税庁長官の不適切、適切ということに関しましては、先ず、私供、国税庁長官として少なくともこれまでの経歴等々を考えて、また国税庁長官としての職務に関しましてはキチンと対応してきていた、というように思いますし、そのような評価も頂いておったところでありますんで、それに関して適材適所であったと、そう思っております。

 3月9日になぜ出したかっていうことに関しましては、それはご本人でないとなかなか分からんところでございますし、御本人としてもそれまでの色んな経緯を考えて、自分なりの判断をしたんだところでありますし、そのことに関してどういうような心境で、あの時点で出したについては計りかねます」(以上)

 麻生太郎は「国税庁長官としての職務に関しましては」「適材適所であった」と、財務省理財局長の職務とは区別している。但しいくら能力のある人物であったとしても、財務省理財局長として国民から疑義を持たれた官僚の国税庁長官への任命を「適材適所」と言うことができるだろうか。

 例えばの話、女性記者への「セクハラ発言」疑惑で2018年4月18日に辞任した財務省事務次官福田淳一を別の公的機関の責任者に据えることを以って、国民に対して「適材適所」と言うことができるだろうか。

 公務員である以上、上に立つ者の責任として国民に対しても部下に対しても規範となる行動が求められる。

 麻生太郎は3月の9日に佐川宣寿から辞表を受け取り、辞任を了承したあと、午後7時40分から財務省で記者会見を開いている。一部抜粋。

 「The Page」

 麻生太郎「本日、佐川国税庁長官から理財局局長時代の国会対応に丁寧さを欠き、国会審議の混乱を招いたこと、また行政文書の管理状況についてさまざまな指摘を受けていること、さらに今回、取り沙汰されている決裁文書の国会提出時の担当局長であったことなどを踏まえて、国税庁長官の職を辞し、退職したいとの申し出があり、本日付で退職させております」

 麻生太郎自身、佐川宣寿を理財局長時代、問題のあった人物だと認めている。特に国政の重要課題を審議する場である国会への「対応に丁寧さを欠き、国会審議の混乱を招いた」ことは一部局の責任者としての経歴に重大な汚点を記す失態となったばかりか、国民に対して礼を失する態度となる。

 だが、それを汚点とも、失礼な態度ともせずに「適材適所」として財務省理財局長から国税庁長官へと栄転させた。麻生太郎の感覚は社会通念に反してはいないだろうか。

 「朝日デジタル」が〈学校法人・森友学園(大阪市)との国有地取引の際に財務省が作成した決裁文書について契約当時の文書の内容と昨年2月の問題発覚後に国会議員らに開示した文書の内容に違いがある〉と報じたのは2018年3月2日である。

 この報道を受けて、森友問題追及の国会審議が一段と紛糾したが、財務省は当初、国会議員らに開示した文書のみしか存在しないとして書き換えを否定していたが、野党の激しい要求に調査を約束、「朝日デジタル」報道の3月2日から10日後の3月12日になって、去年2月以降、14件の決裁文書に書き換えがあった等の調査結果を報告、謝罪した。

 いわば佐川宣寿が2017年2月以降、財務省理財局長として国会答弁に立ち、野党の森友学園国有地売却に関わる疑惑追及に抗してどのような政治家の関与もない、適正な売却だったとの主張を繰返していた間に決裁文書の改竄が行われた。

 佐川宣寿が国税庁長官を辞任したのはこの3月12日の3日前である。既に財務省は文書改竄の調査に取り掛かっていて、改竄した文書の存在の報告を佐川宣寿が受けていたことは3月9日の夜、報道陣の取材に応じた際の発言が示している。

 「産経ニュース」(2018.3.9 22:53)(一部抜粋)

 佐川宣寿「理財局長時代の国会対応に丁寧さを欠き、国会審議の混乱を招いたこと、行政文書の管理について指摘を受けたこと、(森友学園に関する財務省の)決裁文書の国会提出時の担当局長であったことを踏まえ退職したいと大臣に伝えた。今回処分を受けたことや確定申告期間中の辞職となったことをおわび申し上げる」

 記者「担当局長だったときに書き換えたのではとの指摘もあるが、当時の認識は」

 佐川宣寿「捜査を受けている立場なので差し控えたい」

 記者「森友学園への土地の売却は適正な価格であったと確信しているか」

 佐川宣寿「「そういう思い。理財局長時代はそう考えていた」

 記者「虚偽答弁した認識は」

 佐川宣寿「そういう批判があることは承知している」

 記者「特定の政党などへの忖度(そんたく)はあったのか」

 佐川宣寿「「忖度とはどういう意味か。国会での質問には誠実に対応したと思っている。国有財産の処分に関する質問には『法律、ルールに基づいて管理してきた』と答弁してきた」(以上)

 記者が「担当局長だったときに書き換えたのではとの指摘もあるが、当時の認識は」と尋ねたのに対して佐川宣寿は「捜査を受けている立場なので差し控えたい」と答えているものの、文書改竄の認識に立った反応なのだから、財務省から佐川宣寿に報告が入っていたことの証拠であろう。

 東大卒のキャリア官僚で確かに優秀なのだろう。だが、国権の最高機関である国会という場で上に立つ者の責任として国民に対しても部下に対しても規範となる行動を取るべきところを、少なくとも国民の目からは批判を受ける行動に終始した。

 これは重大な過失以外の何ものでもない。財務省理財局長から国税庁長官に栄転する当時、既に国民の批判は激しいものがあった。それを躱(かわ)しての麻生太郎による国税庁長官人事なのだから、「適材適所」だと頑張るのは身内には通用したとして、国民感覚から“不適材不適所”としか受け止めることはできないはずだ。

 麻生太郎は行政の不信を招いた責任という点だけではなく、国民感覚を理解できないという点でも財務大臣としての資格はない。

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財務省6月4日公表森友学園国有地売却報告書:不都合な事実を隠した「特段問題となるものではない」の奇々怪々

2018-06-05 12:12:43 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年6月4日、財務省は森友学園への国有地売却に関する決裁文書改竄や交渉記録廃棄に関わる報告書を公表したとマスコミが一斉に伝えた。「時事ドットコム」記事から見てみる。

 記事は、〈報告書は安倍晋三首相が昨年2月、国会で「私や妻が関係していたなら、首相も国会議員も辞める」と答弁した後、学園側との交渉記録の廃棄が進められていった実態を指摘。ただ、財務省は首相官邸に対する「忖度」はなかったと結論付けた。〉と解説している。

 〈報告書によると、昨年2月の首相答弁を受け、理財局の中村稔総務課長が理財局内や近畿財務局に首相夫人の昭恵氏の名前が入った書類の存否を確認。中村稔総務課長は政治家らの問い合わせ状況などを示すリストを作成させ、当時理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官に提出した。佐川氏はこうした文書について、「保存期間1年というルールに従うべきだ」との考えを示したため、総務課長は交渉記録を廃棄するよう指示されたと受け止め〉た。

 〈佐川氏は改ざんに関し「昨年2月から3月にかけて積み重ねてきた国会答弁を踏まえた内容とするよう念押し」していた。〉

 しかし記事は決裁文書改竄の時期を「昨年2月の首相答弁を受け」との表現で、それ以降としているが、この「首相答弁」とは2017年2月17日の衆院予算委員会を指す。当時民進党の福島伸享が質問している。

 福島伸享「この小学校の名誉校長とされているのが安倍昭恵先生という方で、右を見ると、安倍晋三内閣総理大臣夫人と書いております。この理事長の籠池先生の教育に対する熱い思いに感銘を受け、このたび名誉校長に就任させていただきましたと。

 この事実、総理は御存じでしょうか」

 安倍晋三「この事実については、事実というのはうちの妻が名誉校長になっているということについては承知をしておりますし、妻から森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしいという話を聞いております。

 ただ、誤解を与えるような質問の構成なんですが、私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います」

 と言うことは、改竄は2017年2月17日以降ということになるが、同日付「NHK NEWS WEB」記事によると、〈去年2月26日の日曜日、理財局の職員が近畿財務局の職員に出勤するよう要請し、決裁文書の改竄を具体的に指示したという〉ことになっている。
 
 と言うことは、佐川宣寿が「昨年2月から3月にかけて積み重ねてきた国会答弁を踏まえた内容とするよう念押し」したと言っていることは改竄を具体的に指示した2017年2月26日以降も、3月にかけて決裁文書に記録された事実経緯に基づかない虚偽の国会答弁を適宜行っていたことになる。

 勿論、記録された事実経緯どおりの答弁をした場合は不都合が生じることからの事実隠しの虚偽答弁と言うことであろう。

 但し昨日の当ブログに書いたように「昨年2月から3月」にかけた佐川宣寿の国会答弁と、その国会答弁と一貫性を持たせておかなければならない安倍晋三や麻生太郎の国会答弁はどのような記録に基づいて作成されたのだろうか。

 あるいはただ単に一旦は目を通した決裁文書に記録されている事実経緯どおりの、いわば目を通したどおりの答弁をした場合は各方面に悪影響が出てくる恐れから、決裁文書の事実経緯と異なる事実隠しの虚偽答弁を当初から“積み重ねた”と言うことなのだろうか。

 だとしたら、決裁文書を一旦は目を通した時点で不都合な事実と不都合でない事実を点検、不都合な事実を隠したそれぞれの国会答弁書を作成し、国会答弁として使用したものの、国会で問題になるにつれて情報公開制度に基づいた情報開示請求された場合、「保存期間1年というルール」を楯に開示不可能を宣告したとしても、決裁文書に記録された実際の事実と国会答弁の事実に違いが厳然として存在する以上、その違いがどこで漏れるか、あるいはリーク情報として世に漏れ出ない保証がないことから、文書を改竄、改竄した文書を国会に提出することで改竄した事実を実際の不都合な事実とすり替える際どい離れ業を演じて責任問題の発生を回避したということになるのだろうか。

 当然、考えられる不都合な事実は決裁文書改竄によって隠されることになった安倍昭恵に関する記述と政治家の関与に関わる記述が主として占めることになる。財務省公表の「報告書」のこれらのことに関する一部を見てみる。文飾は当方。

 「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」(平成30年6月4日 財務省)

 (3)平成29年以降の状況

 ⑩森友学園案件が国会審議で大きな議論となり、内閣官房長官の記者会見でも多数質問がなされる中で、平成29年2月22日(水)には、本省理財局と国土交通省本省航空局から内閣官房長宮への説明が行われた。説明者側からは、森友学園案件の経緯のほか、取引価格の算定は適正に行われていることや、総理夫人付や政治家関係者からの照会に対して回答をしたことはあるが、特段問題となるものではないこと等について説明した。

 「IV.応接録の廃棄等の経緯」
 
 (2)政治家関係者との応接録の廃棄等の経緯

 ②平成29年2月17日(金)の衆議院予算委員会における内閣総理大臣の上記答弁以降、本省理財局の総務課長から国有財産審理室長及び近畿財務局の管財部長に対し、総理夫人の名前が入った書類の存否について確認がなされた。これに対して、総理夫人本人からの照会は無いことや、総理夫人付から本省理財局に照会があった際の記録は作成し、共有しているが、内容は特段問題となるものではないことを確認したほか、近畿財務局の管財部長からは、その他の政治家関係者からの照会状況に関する記録の取扱いについて相談がなされた。

 さらに、上記の同年2月21日(火)の国会議員団との面会の状況も踏まえ、本省理財局の総務課長から近畿財務局の管財部長に対して政治家関係者をはじめとする各種照会状況のリストの作成を依頼し、本省理財局の国有財産審理室長に当該リストが送付された。

 本省理財局の総務課長は、その後速やかに、国有財産審理室長に対して政治家関係者からの照会状況に絞り込んだリストを作成するよう指示をした上で、当該リストにより理財局長に報告した。その際、理財局長は、応接録の取扱いは文書管理のルールに従って適切に行われるものであるとの考えであったことから、総務課長は、政治家関係者との応接録を廃棄するよう指示されたものと受け止め、その旨を国有財産審理室長、さらに近畿財務局の管財部長に伝達した。こうした状況は、理財局次長や国有財産企画課長にも共有された。

 近畿財務局においては、本省理財局からの指示を受けて、政治家関係者との応接録として存在が確認されたものを紙媒体及び電子ファイルともに廃棄した。本省理財局内においても、保存されていた政治家関係者との応接録の廃棄を進めたが、サーバ上の共有フォルダに保存されていた電子ファイルについては、廃棄されず残されたものも存在した。

 (3)森友学園側との応接録の廃棄等の経緯

 平成29年2月22日(水)、国会議員より、森友学園案件における森友学園側との応接録の存否についての確認があった。また、翌日23日(木)には、一部政党より、平成25年から平成26年にかけての財務省本省及び近畿財務局職員と森友学園関係者との接触記録の存否について、無いならば無い旨を書面で提出するよう要求があった。本省理財局内では、森友学園案件に関する応接録に関して、上記の通り売買契約が締結された平成28年6月20日(月)をもって「事案終了」に当たるものと整理していたことから、そうした記録は無いものと整理し、後者の要求に対して、平成29年2月24日(金)、その旨を記載した書面を提出した。

 平成29年2月24日(金)の衆議院予算委員会において、本省理財局長は、「昨年6月の売買契約に至るまでの財務局と学園側の交渉記録につきまして、委員からのご依頼を受けまして確認しましたところ、近畿財務局と森友学園との交渉記録というのはございませんでした」「面会等の記録につきましては、財務省の行政文書管理規則に基づきまして保存期間1年未満とされておりまして、具体的な廃棄時期につきましては、事案の終了ということで取り扱いをさせていただいております。したがいまして、本件につきましては、平成28年6月の売買契約締結をもちまして既に事案が終了してございますので、記録が残っていないということでございます」等と答弁した。

③ 平成29年2月24日(金)の衆議院予算委員会において上記の理財局長の答弁があるまでに、本省理財局の総務課長及

 び国有財産審理室長は、森友学園案件関係の各種応接録が実際には残っていることを認識していたものと認められる。他方、理財局長は、各種応接録の実際の存否を確認しないまま。
 
 「財務省行政文書管理規則」等に定められている以上、保存期間が終了した応接録は廃棄されているはずであると認識していたものと認められる。

 さらに、上記の本省理財局長の答弁の後には、同局長から総務課長に対して、国会において「財務省行政文書管理規則」どおり対応している旨を答弁したことを踏まえ、文書管理の徹底について念押しがあり、総務課長は、残っている応接録があるならば適切に廃棄するよう指示されたものと受け止めた。(以上)

 51ページの文書だが、以上を読んだだけで、誰の眼にも「報告書」の狙いが不都合な事実隠しにあるのが分かる。文飾箇所を再度ここに記載してみる。

 〈取引価格の算定は適正に行われていることや、総理夫人付や政治家関係者からの照会に対して回答をしたことはあるが、特段問題となるものではない〉

 要するに不都合な事実隠しの、このことを裏返すと、自分たちに都合のよい解釈・判断のみを用いて国有地売却は公平・適正に行なわれたと看做して、その妥当性を主張し、翻って財務省自身の、より広く言うと、安倍内閣自身の売却に関しての正当性を証明しようとしているに過ぎない。

 〈総理夫人の名前が入った書類の存否について確認がなされた。これに対して、総理夫人本人からの照会は無いことや、総理夫人付から本省理財局に照会があった際の記録は作成し、共有しているが、内容は特段問題となるものではないことを確認した〉

 問題となっていたのは森友学園理事長籠池泰典が自身の背後に安倍晋三や安倍昭恵がさも控えているかのように思わせるためにその名前、その存在をちらつかせ、その影響力で以って財務省をコントロールし、より安価な価格で国有地を手に入れようとしたことであり、安倍昭恵を自身の建設予定の小学校の名誉校長に据えたのも影響力利用の一つであって、〈総理夫人本人からの照会は無い〉ことを以って〈特段問題となるものではない〉と結論づけることは決して公平とは言えない。

 この結論づけに2015年4月30日付〈5・特例承認の決裁文書②「普通財産の貸付けに係る特例処理について」〉に記録されている安倍昭恵についての記述に財務省報告書が何ら触れていないことも不都合な事実隠しに相当、結論が決して公平とは言えない理由の一つとなる。

 国有地売却の財務省側と当時森友学園理事長籠池泰典との打ち合わせの際に籠池泰典が「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた。」と財務省側役人に発言し、なおかつ森友学園籠池理事長本人と安倍昭恵が小学校建設予定地に立っている写真を見せたのは、明らかに安倍昭恵がその夫安倍晋三によって与えられている有形無形の政治的影響力を利用しようとしていたからであり、その影響力が国有地売却価格にどう反映したのかは未解明のままであり、未解明のまま、〈特段問題となるものではない〉結論づけているのだから、不都合な事実を隠した、自分たちに好都合な結論と言わざるを得ない。

 籠池泰典は安倍昭恵をきっと便利な広告塔として失礼にならないよう、丁寧な扱いをしていたに違いない。

 また総理夫人付谷査恵子の背後には安倍昭恵という総理夫人が控えていることによって財務省に対するその照会が安倍昭恵本人の意思に基づいているとの判断を誘発させることになった売却に関わる財務省側の特段の配慮との疑惑が浮上している以上、財務省だけの考えで、〈特段問題となるものではない〉と簡単に無罪放免とするのも、不都合な事実を隠しに当たる。

 安倍昭恵と同様に〈政治家関係者からの照会〉に関しても、〈特段問題となるものではない〉と、籠池泰典から依頼を受けて財務省や近畿財務局に行った国有地売却に関わる照会を何ら問題視していない。

 ではなぜ政治家関係者からの照会状況の応接禄を作成しておきながら、それを廃棄するに至ったのだろうか。単なる照会であったなら、隠す意図のもと、廃棄する必要性は何ら生じない。〈政治家関係者からの照会〉〈特段問題となるものではない〉と無視していながら、廃棄処分自体が実際はそうではなかったことの証明、不都合な事実を隠さざるを得なかった証明としかならない。

 土地価格算定について次のように記述している。〈森友学園案件をめぐっては、国会審議等において、地下埋設物の撤去費用の算定を含めた価格算定手続の妥当性等について議論がなされているが、財務省としては、森友学園に対する国有地の売払い処分は、小学校開校に向けて校舎の建設工事が進む中で新たな地下埋設物が発見され、相手方からの損害賠償請求のおそれがあるなど切迫した状況の中で行われたものであり、将来にわたって一切の国の責任を免除するよう特約条項を付すことも含めて、ぎりぎりの対応であったと考えている旨を答弁している。本報告書は、平成29年2月以降の森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査の結果をとりまとめたものであり、上記の価格算定手続の妥当性等を含め、平成28年6月20日(月)の事案終了前の状況について調査を行ったものではない。〉――

 一方では、〈取引価格の算定は適正に行われている〉と結論づけながら、〈損害賠償請求のおそれがある〉切迫した条件下で、〈将来にわたって一切の国の責任を免除するよう特約条項を付すこと>を唯一国側に有利な条件を埋め合わせに契約に至った経緯、その正当性を述べているが、売買契約が成立した〈平成28年6月20日(月)の事案終了前の状況について調査を行ったものではない。〉と、地下埋設物量算定の過程、算定した地下埋設物量に対応した地下埋設物処分・撤去費用の見積もり交渉等は一切排除した、結果としての売買契約成立のみに限った正当性であって、一方で不都合な事実を隠した国有地売却の正当化であろう。

 「報告書」を全部読んだわけではないが、以上見ただけでも、解明しなければならない部分が多くある報告書となっているはずだ。

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安倍晋三擁護の大阪地検特捜部国策捜査か、佐川宣寿不起訴処分:供述内容からそのように判断せざるを得ない

2018-06-04 10:38:30 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 森友国有地売却問題で文書記録廃棄に対する「公文書毀棄」、決裁文書改竄に対する「虚偽公文書作成」、交渉データ隠滅に対する「証拠隠滅」の各容疑で告発を受けていた前財務省理財局長佐川宣寿が嫌疑不十分で不起訴処分となった。

 山本真千子大阪地検特捜部長が不起訴処分の場合は開く慣例とはなっていない異例の記者会見を5月31日(2018年)に開いたが、ごみの撤去費について「不適正との認定は困難」と述べたのみで、その額が適正かどうかの見解は示さなかった、学園との交渉記録を廃棄については文書に保存義務はなかった、公用文書等毀棄や証拠隠滅罪には当たらない、国有地値引き額については適正額を特捜部として算出したかどうかも含め、明らかにしなかった等々とマスコミは伝えている。

 政治家の関与については、「お答えを差し控える」と繰返し述べたということだが、関与が認められなければ、なかったと断言できる。断言せずに答えなかったのは関与が認められからであり、それを公表した場合は差し障りが出る政治家が存在するからだろう。このことだけで政治家擁護の、具体的に言うと安倍晋三擁護の国策捜査にしか見えない。

 2018年6月1日付「NHK NEWS WEB」記事が佐川宣寿の大阪地検特捜部に対する供述内容を伝えている。

 佐川宣寿供述内容「去年2月の国会答弁のあと、決裁文書の内容を知り、答弁と合わない記述があることが分かった。『これでは自分の答弁と整合性がつかない』と部下に言った。

 明確な言葉で『改竄しろ』とまでは言っていないが、改竄について部下から報告を受けて了承しており、私が改竄を指示したと言われてもしかたがない」

 記事はこのあと次のように解説している。〈このため特捜部は佐川氏の指示で改竄が行われたと認定したものとみられますが、文書をウソの内容に変えたとまではいえないと判断し不起訴にしました。〉――

 改竄は事実隠蔽の必要性が出来することによって行なわれる。この必要性に迫られて、文書によって表されている事実を隠し、別の事実――ウソを持ってきて取り替える作業を行うことになる。いわば一つの事実を別の事実に変えることが文書改竄の目的となる。

 佐川宣寿は事実隠蔽の必要性を「去年2月の国会答弁のあと、決裁文書の内容を知り、答弁と合わない記述があることが分かった」ことを挙げている。当然、文書改竄の目的は「自分の答弁と整合性」を取るためということになる。

 但し「明確な言葉で『改竄しろ』とまでは言っていない」計画的指示による改竄ではなく、、部下の方で上司の立場を忖度して改竄し、それを了承した結果的改竄だと、自ら罪一等を薄めている。

 このことが不起訴処分の理由の一つになったのかもしれない。

 では、「決裁文書の内容を知り、答弁と合わない記述があることが分かる」までの「去年2月の国会答弁」はどのような記録に基づいて行っていたのだろうか。

 これまでブログに書いてきたことと重なるが、森友学園が大阪府豊中市の国有地取得を財務省近畿財務局に要望を出したのが2013年9月2日。当初は買受けを前提とした貸付け交渉を行い、買受け特約を付した有償貸付契約を近畿財務局と締結したのが2015年5月29日。

 新たに発見された地下埋設物(地下ゴミ)の処理等を巡った様々な交渉を経て、不動産鑑定評価額9億3200万円の国有地を1億3400万円で財務省近畿財務局と森友学園が売買契約を結んだのが2016年6月20日。

 この余りの格安売却を朝日新聞が報じたのが2017年2月9日。この報道に基づいて2017年2月15日の衆議院財務金融委員会で共産党の宮本岳志が追及。この追及に対して佐川宣寿が政府参考人として出席し、答弁を行っている。

 但し佐川宣寿が財務省理財局長に就任したのは財務省近畿財務局と森友学園が売買契約を結んだ2016年6月20日の3日前の2016年6月17日で、売買契約に至る交渉は佐川宣寿の前任者の迫田英典が責任を担っていた。そして佐川宣寿は理財局長の前は関税局長であり、国有地売却とは何の関わりもない。

 この点からも国会答弁に立つには売買契約の交渉の過程を記した何らかの記録に基づかなければ、いくら有能な官僚と言えども、不可能である。

 勿論、この記録とは決裁文書を指す。そして財務省の説明では決裁文書改竄は2017年2月下旬から4月に本省の理財局で行ったとしている。

 いわば佐川宣寿は売買交渉に何ら関わっていないのだから、改竄前の決裁文書に目を通して、全ての経緯を把握していなければ、国会答弁はできなかった。にも関わらず、「去年2月の国会答弁のあと、決裁文書の内容を知り、答弁と合わない記述があることが分かった」と、明らかに矛盾したことを言っている。

 決裁文書に基づかずに一体どのような記録に基づいて国会答弁を行ったと言うのだろうか。

 2018年3月27日午前中、参院予算委員会で佐川宣寿の証人喚問が行われた

 丸川珠代「では、改めて伺いますが、この森友学園への国有地の貸し付け、ならびに売り払いに総理、および総理夫人が関わったことはないと断言できますか」

  佐川宣寿「私が昨年、勉強して、ずっと一連の書類を読んで、国会で答弁させて頂いた中で言えば、総理も総理夫人の影響もありませんでした」――

 佐川宣寿は言っている。「私が昨年、勉強して、ずっと一連の書類を読んで、国会で答弁させて頂いた」と。

 「一連の書類」とは、決裁文書以外の記録ではないはずなのは断言できる。2018年3月27日の証人喚問では「一連の書類を読んで、国会で答弁させて頂いた」と当然の発言をしていながら、大阪特捜部の取調べに対しては「去年2月の国会答弁のあと、決裁文書の内容を知り、答弁と合わない記述があることが分かった」としているとしたら、矛盾した虚偽発言となる。

 元々の国会答弁自体が決裁文書の記録に基づかなければできなかったことだから、決裁文書の記述と答弁とが合わない箇所が存在したということは、最初からの答弁にウソを混じえていなければ、起こり得ない出来事であろう。

 以下のことも以前ブログで取り上げたが、2018年3月18日放送の「新報道2001」が森友学園国有地売却に即した財務省理財局による局長佐川宣寿使用の国会答弁書作成と安倍晋三や麻生太郎使用の国会答弁書作成の流れを伝えていた。

 ① 野党議員から衆参各委員会に質問書(質問通告)が届く
 ② 財務省大臣官房文書課が財務省理財局(当時課長は佐川宣寿)に答弁書の作成を指示
 ③ 理財局国有財産企画課・課長補佐が答弁書作成
 ④ 理財局国有財産企画課・企画課長の了解
 ⑤ 理財局国有財産企画課・審議官の了解
 ⑥ 理財局国有財産企画課・次長の了解
 ⑦ 理財局長(佐川宣寿)に挙げられ、了解を取る
 ⑧ 財務省大臣官房文書課に上げられる
 ⑨ 財務大臣が関わる答弁の場合は財務大臣秘書官に提出。両者の間で内容や答弁の適否等の検討
 ⑩ 総理答弁の場合は答弁書は内閣参事官に上げられる。
 ⑪ 案件に応じて内閣参事官から首相秘書官(政務・財務・外務・経産・防衛・警察)に上げられ、各秘書官から官房長官、そして首相に伝えられる(以上)

 誰の国会答弁書であろうと、その作成は決裁文書を紐解かなければ不可能であり、それぞれの国会答弁書は内容が共通していなければならないのは断るまでもない。

 ところが、決裁文書改竄の必要性に迫られた。「去年2月の国会答弁のあと、決裁文書の内容を知り、答弁と合わない記述があることが分かった」から、改竄したのではなく、最初から決裁文書の記述とは異なる国会答弁をしていたから、それを隠蔽する必要上、決裁文書の改竄を目的とするに至ったと言うことでなければ、佐川宣寿の一連の発言に整合性を与えることはできない。

 このようにも佐川宣寿の言葉に信用が置けない疑いを指摘できながら、大阪地検特捜部は佐川宣寿を嫌疑不十分で不起訴処分とした。但し政治家の関与については、「お答えを差し控える」との表現で暗に政治家の関与を匂わせている以上、佐川宣寿を救うことによって、安倍晋三をも救うことができる関係から、安倍晋三擁護の国策捜査としか言いようがない。

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加計学園事務長渡邉良人の安倍晋三と加計孝太郎面会デッチ上げ情報の愛媛県謝罪に見る足りないもの

2018-06-01 11:52:07 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 加計学園事務局長渡邉良人が5月31日(2018年)午前、愛媛県庁を訪れて安倍晋三と加計学園理事長加計孝太郎とのニセ面談情報を(本人はそうは言っていないが)愛媛県と今治市に流したのは自分だと謝罪したことを5月31日付でマスコミが伝えていた。

 5月21日(2018年)、中村時広愛媛県知事が参議院から要請のあった加計学園獣医学部新設に関わる文書を提出。2015年3月の「獣医師養成系大学の設置に係る加計学園関係者等との打ち合わせ会について」と題した文書に、〈加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいとの申し出があり、3月3日、同学園関係者と県との間で打ち合わせ会を行った。〉とあり、加計学園からの報告の一つとして、〈2/25に理事長が首相と面談(15分程度)。理事長から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは「そういう新しい獣医学大学の考えはいいね。」とのコメントあり。〉と出ている。

 中村愛媛県知事が参議院に愛媛県の新文書を提出した5月21日から4日後の5月26日に加計学園は上記面談を否定するコメントを発表している。

 そこには、〈当時は、獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探しておりました。そのような状況の中で、構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば、活路が見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と(今治)市に誤った情報を与えてしまったように思うとのことでした。〉と、ニセ面談情報考案の理由と目的が書かれている。

 そして5月31日の加計学園事務局長渡邉良人の愛媛県庁謝罪訪問。2018年5月31日付「朝日デジタル」記事が謝罪の動画を載せていたから、文字に起こした。

 渡邉良人「このたびは愛媛県に対し多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳なく思っております。お詫びを申し上げます。(一礼)

 あの、実際、総理と理事長が面会をしたということについてはですね、これはこちらの方で、えー、そういうことを言ったのかなと、いうことで、覚えてなかったんですね。3年前のことですから。

 それで、ちょっと、あの、ま、県の方がですね、ああいう文章を、何もなく書くということはないということで自分が思い出す限りはですね、あのときに、多分、自分が言ったんだろうというふうに思います。

 県の方がですね、何もないところで書くいうことはあり得ないと、いうふうなことから逆算しましてですね、もしあのとおりのメンバーから言えば、もう僕しか言うのはおらないだろうということで――」

 記者(テロップ)「国会で説明責任を果たすべきだとの意見があるが?」

 渡邉良人「そうですね。何もそういうふうなことがないもんですから、説明をする必要もないんじゃないかなと思うんですけども、結局そういう思いで以ってですね、説明したんじゃないかなと思います」

 記者(テロップ)「渡邉事務局長自身が嘘をついた?」

 渡邉良人「えー、まあ、ウソ、ウソをついたと言いましょうか、あのー、結局そういう思いで以ってですね、説明、県に説明したんじゃないかと思います」

 記者(テロップ)「ウソを元に公金が出された」

 渡邉良人「ウソで以ってですね、認可になっているとは思ってませんで」(聞き取れない箇所あり)

 「3年前のこと」だから、「そういうことを言ったのかな」、「県の方がああいう文章を何もなく書くということはないから、多分、自分が言ったんだろうというふうに思う」、あるいは「あのとおりのメンバーから言えば、もう僕しか言うのはいない」等々、安倍晋三と加計孝太郎が2015年2月25日に面談したこと、その会話の一部を紹介したこと自体は覚えていないが、あくまでも県の文書の記載から「逆算」した結果、ニセの面談を報告したのは自分の仕業に違いないと推測しているに過ぎない。

 いくら加計学園獣医学部認可を実現させるためとは言え、いや、実現させる一助とするために一国の首相である安倍晋三を相手に自分のところの理事長とのありもしなかった面談の事実をデッチ上げたことの大それたことをしたという深刻な思いも罪の意識からの反省も発言からは窺うことはできない。

 このことは発言中の顔の表情にも見えた。深刻に受け止めている様子は探すことはできなかった。

 いくら覚えていなくても、愛媛県文書の記載から「逆算」して、一国の首相との面談をデッチ上げ、ニセの面談情報で獣医学部新設認可を有利に運ぶべく不当利益を意図したのが自分である可能性が否定できない以上、大それたことをしたことの反省くらいは示していいはずだが、僅かでも示してはいなかった。

 この誤魔化しでいけば、十分に誤魔化せると高を括っているのかもしれない。

 渡邉良人は面談を否定するコメントを出すについても、自身が愛媛阿県庁に赴いてニセ面談情報の提供を謝罪するについても、愛媛県の新文書の大方を読んでいなければならない。なぜなら、文書の大方を読んでいなければ、否定も謝罪も、文書全体に書いてある事実それぞれと整合性が取れていなければ、否定コメントが否定とならず、謝罪が謝罪とならない可能性が生じる恐れが出るからなのは言うまでもない。

 昨日のブログにも書いたが、《県・市と加計学園との事情打合せにおける渡邉事務局長主な発言》と題する愛媛県新文書No.7の中に2015年4月2日の首相秘書官柳瀬唯夫との首相官邸面会当日の面会直前なのか、当日以前なのか分からないが、加計学園事務局長渡邉良人の発言として、〈先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったことに対し、理事長から柳瀬秘書官にちゃんと説明しておくように言われている。同秘書官からも、本日、その点を質問される可能性があり、県・今治市から、100%の回答にはなっていないが、ちゃんと昨年12月26日にペーパーにより文部科学省に直接説明している旨を回答してほしい。〉と記載されている。

 この発言の主意を解くと、下村博文が加計学園に対して文科省として望む獣医学部の形態に添う課題を出したが、何の回答もないと言って、自身も同席していた安倍晋三と会食していた加計孝太郎に「けしからん」と伝えた。伝えられた加計孝太郎は自身の学園の事務局長である渡邉事務局長に対して会食後、2015年4月2日の首相官邸での面会が決まってからだろう、このことを柳瀬唯夫との面会の際に「柳瀬秘書官にちゃんと説明しておくように」と指示したということになる。

 と言うことは、この指示自体が安倍晋三と加計孝太郎とが下村博文を加えて会食し、獣医学部について話し合ったことを事実中の事実とする渡邉良人による間接的証言ということになる。

 首相秘書官の柳瀬唯夫は2015年4月2日の愛媛県・今治市、加計学園関係者との首相官邸面会時に、〈加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、その対応策について意見を求めたところ〉今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよい。〉と、愛媛県新文書は柳瀬唯夫の発言を記している。

 いわば渡邉良人は首相官邸でも、安倍晋三と加計孝太郎とが下村博文を加えて会食し、獣医学部について話し合ったことを事実とする発言を行った。

 2015年2月25日の安倍晋三と加計孝太郎の面談はデッチ上げ情報だといくら否定したとしても、愛媛県と今治市職員、さらに渡邉良人とその他が首相官邸を訪問した2015年4月2日から遡って「先日」という近い過去に安倍晋三と加計孝太郎が下村博文を交えて会食し、獣医学部について話をしていた事実までも否定しないことには安倍晋三が今治市新設獣医学部の事業主体が加計学園であることは2017年1月20日になるまで知らなかったとしていることに対して前者の否定は意味を失うことになる。

 渡邉良人は愛媛県文書の大方を読んでいるはずだから、両方の面会を否定しなければならなかったはずだが、片方の面会しか否定していない。それとも2015年4月2日から指した「先日」が2015年2月25日だとしたら、2015年2月25日の面会の否定だけで足りることになる。

 但し否定を完璧とするためには、いわば面会がニセ情報であることを証明するためには、渡邉良人は2015年2月25日の面会と2015年4月2日から指した「先日」の面会が同じだったと証明しなければならない。

 勿論と言うべきか、首相秘書官柳瀬唯夫は2018年5月10日の参考人招致で下村博文「けしからん」発言の対応策を4月2日の首相官邸で渡邉良人から求められたことを「全く記憶にない」と答弁し、安倍晋三も「加計理事長とそしてまた下村大臣と、三人で会食したことはございません」と会食否定の国会答弁をしているが、愛媛県職員が柳瀬唯夫と同じテーブルに座って、直接耳にした発言をメモに取り、あとで纏めて文書にしたであろう事実性に基づいて記録した内容である。

 柳瀬唯夫の記憶にない答弁、さらには安倍晋三の会食否定の国会答弁に対して愛媛県職員が加計学園理事長渡邉良人と首相秘書官柳瀬唯夫が交わした発言をそのまま記録した事実性と比較してどちらにより信憑性が高いと言うことができるだろうか。

 と言うことなら、渡邉良人は2015年2月25日の面会と2015年4月2日から指した「先日」の面会が同じ面会であったことを証明するだけではなく、《県・市と加計学園との事情打合せにおける渡邉事務局長主な発言》の中に記載されている自身の発言を愛媛県側が文書に記録することで示した事実性を打ち砕く方法で否定して初めて面会の事実の否定も愛媛県に対する謝罪も不足のないものとなる。

 いわば単に自分はそのような発言はした記憶はありませんと記憶頼りの否定をするだけではなく、愛媛県職員が柳瀬唯夫と同じテーブルに座って直接耳にした事実性自体を合理的な言葉遣いで打ち砕かなければならない。

 例えば、「絶対に言っていないことは確信を持って言うことができる。言っていないことを書いた愛媛県職員はどうかしていたのだ。精神鑑定に回すべきだ」ぐらいは言うべきだが、それでも言葉遣いの合理的は不足する。

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