安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定 「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を 直接示すような記述も見当たらなかった」とする “政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき |
2018年6月18日7時58分頃発生の大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震で高槻市寿栄小学校のプール沿いのブロック塀が倒壊、その下敷きとなって9歳の同小学校女子児童が死亡した。
ブロック塀は建築基準法違反の違法建築物であったことと建築基準法に基づいた3年に1度の定期検査が満足に行われていなかったこと、そして2015年11月の防災アドバイザーの当該ブロック塀の危険性の指摘に対して翌2016年2月に行った検査では建築士の資格のない職員が行っていたことなどが判明している。
先ず建築基準法違反違法建築物であることについて。元々はプールの高さと同じ1.9メートルのブロック塀だったが、プールの目隠しのためにその上に1.6メートルの高さにまで嵩上げしていて、合計3.5メートルで、建築当時の高さ制限(3メートル)にも違反していただけではなく、2018年6月20日付「毎日新聞」記事によると、参考のために画像を引用転載しておいたが、上部ブロックの接合部は35センチ長さの鉄筋を下のブロックに13センチ、上のブロックに20センチ埋め込んだのみであった。
この図だと、下のブロックにも通しの縦鉄が入ってないことになる。もし入っていたら、上の鉄筋と下の鉄筋を40センチから抱き合わせ状態に重ねて、接合部を頑丈にしなければならないが、抱き合わせた状態にはなっていない。
倒壊した接合部のニュース画像は2018年6月19日の当「ブログ」に載せておいたが、鉄筋は少しは曲がっているが、折れ曲がった状態ではなく、同じ長さに切断したような状態で覗いているから、上のブロックに埋め込んだ20センチの長さの鉄筋部分が地震の揺れに持ちこたえることができずにすっぽりと抜けた状態になったということなのだろう。
それだけ脆弱な工事方法だった。
さらに塀の高さが1.2メートル超の場合は3.4メートル以下の間隔で設置が必要とされる、前後に倒れるのを防ぐ「控壁」が設置されていなかった。いわば脆弱の上に脆弱を積み重ねたような構造となっていた。
3年に1度の法定定期検査だが、2018年6月22日付「毎日新聞」ネット記事は次のように伝えている。
〈市教委は事故後、記録が残る過去2回の検査を委託した業者を対象に聞き取り調査を進めており、(6月)22日午後に途中経過を明らかにした。〉
2014年2月の検査を実施した2017年とは別の業者はブロック塀を勝手に検査対象から外して2010年度の検査結果を写して市教委に報告。
2017年1月の検査担当の業者はブロック塀を目視で確認し、安全と判断した。
3年に1度の法定定期検査と銘打っていても、地震の発生を想定した危機管理に基づいて万が一の倒壊が倒壊だけで済まずに人命を巻き込んだ場合の重大性を些かも視野に置かない手抜き検査で済ましていた。
防災アドバイザーの2015年11月の危険性の指摘に関して。「NHK NEWS WEB」(2018年2018年6月22日 11時14分)
仙台市の吉田亮一氏が2015年11月にブロック塀倒壊死の寿永小学校で「防災教室」を開催し、全校児童や教職員などに対して過去の地震で崩れたブロック塀の写真を見せながら危険性を指摘、今回の地震で倒壊したプールのブロック塀について注意を促していた。
吉田亮一氏「自分は昭和53年の宮城県沖地震を経験し、多くのブロック塀が壊れて被害が出るのを見てきた。学校周辺はブロック塀が多くあり注意が必要だと感じたので指摘した。守れたはずの命を守ることができず悔しい」
吉田亮一氏の危険性の指摘に対しての高槻市教育委員会の対応。2018年6月22日付「朝日デジタル」
2015年11月に防災アドバイザーからブロック塀の危険性を指摘された校長は高槻市教委に点検を依頼。市教委は翌2016年2月に市教委の職員が校長らの立ち会いのもとで点検を実施した。
点検方法は目視や金属製の棒(打診棒)で叩いて劣化の度合いを確認するのが主だった。樽井教育長は「(コンクリート表面の)浮きやひび割れがなく問題がないと判断した」と説明。
要するに病気治療で言うと、レントゲンやCTスキャン、MRI検査等の最新の医療機器が存在する時代に触診だけで済ませていた。
しかも2016年2月の点検結果は市教委内で共有されず、記録にも残されなかったと記事は書いている。別の記事によると、点検した職員は建築士の資格もブロック塀工事の専門家でもなかったと伝えている。、
この二つの事実から見えてくる事実は点検自体を重要視していなかったことと、学校からブロック塀の危険性の指摘を受けたから、無視することができずに事務的に資格のない職員に点検をさせたといったところなのだろう。
点検した職員「建築基準法に違反しているという認識は、はなからなかった」
建築基準法を満たしているブロック塀という固定観念での点検だったから、打診棒で叩いて、コンクリート表面の浮きやひび割れの存在箇所の確認のみを行い、無かったから、大丈夫だと診断した。
専門家ではないということなら、少なくともブロック塀はどのような建築基準となっているのかを調べてから、点検に当たるべきだった。
以上見てくると、高槻市寿永小学校のブロック塀倒壊に巻き込まれた9歳少女の死は明らかに人災が招いたある意味殺人であって、地震の揺れによる不可抗力からの死では決してないし、そのような死にしてはならないはずだ。
防災アドバイザーの吉田亮一氏は昭和53年(1978年)の宮城県沖地震の経験からブロック塀の危険性に意を用いるようになったといったことを言っている。
〈40年前の昭和53年6月に起きた宮城県沖地震では、宮城県と福島県で合わせて28人の死者が出ましたが、このうち9人は、倒れたブロック塀の下敷きになって亡くなり、その半数以上が、塀の近くで遊ぶなどしていた子どもたちでした。〉と2018年6月18日付「NHK NEWS WEB」が書いている。
ネットを調べてみると、宮城県沖地震でのブロック塀倒壊による人的犠牲がブロック塀工事方法の規制強化のキッカケとなったと出ている。宮城県沖地震から40年も経過している。
40年も経過しているのだから、9歳女子児童が建築基準法違反のブロック塀の倒壊で殺される前のとっくの昔に安全対策を講じていなければならなかった。
にも関わらず、多くのブロック塀が建築基準法違反のまま放置されている。このことは人災殺人の危険性の放置をも意味する。
安倍晋三が6月21日に地震の地元を訪問、被害状況視察し、「発言」(首相官邸)している。9歳少女の倒壊死に関する箇所を抜粋。
安倍晋三「「まず、今回の地震によってお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りし、御遺族の皆様に哀悼の意を表したいと思います。そして、全ての被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。
先ほど、ブロック塀の倒壊によって幼い命が失われた悲惨な事故の現場を視察してまいりました。あと少しで安全な学校の敷地内に入れるという場所での悲惨な悲しい出来事でありました。御遺族の、御両親のお気持ちを思うと言葉もありません。本日、御葬儀が執り行われたと聞いておりますが、改めて、心から御冥福をお祈りしたいと思います。二度とこうした悲惨な出来事を起こしてはなりません。学校の安全を確保するため、まずは全国のブロック塀の緊急点検を行い、学校の安全を確保していきたい。子供たちの命をしっかりと守っていきたいと思います」
少女の犠牲を「悲惨な悲しい出来事でありました」と言い、「二度とこうした悲惨な出来事を起こしてはなりません」から、「全国のブロック塀の緊急点検」と「学校の安全確保」に言及している。
この発言には9歳少女の死がある意味ではブロック塀の安全性を放置してきたことによる人災が招いた殺人であって、地震の揺れによる不可抗力からの死としてはならないことの警告はどこにもなく、逆に少女の死を“二度とこうした悲惨な出来事を起こしてはならない”ことの対策のキッカケにしようとしている。
いわばこの少女の死があったから、安全対策が取られることになったという物語を描くことになる。だが、このことは少女をブロック塀危険性警告の最初の人、先駆者に仕立てる物語ともなる。
公明党代表の山口那津男も安倍晋三と同じ趣旨の発言をしている。「朝日デジタル」(2018年6月23日19時25分)
一部抜粋。
山口那津男「(大阪北部地震でブロック塀が倒れ、女児が死亡した大阪府高槻市の小学校などを視察した後に)ブロック塀が建築基準法に違反する状況の中で起きたことを深刻に受け止めないとならない。同様のことが二度と起きないよう、学校の通学路や校内の設備、施設の安全性の総点検を早急に行う必要がある。公共性の高いものは国、地方が連携をしながら安全策の確保に急ぐべきだ」
9歳女子児童が死亡する前に対策を終えていなければならなかったにも関わらず、そのことには触れずに少女の死を「同様のことが二度と起きない」キッカケとなった人――ブロック塀危険性警告の先駆者に安倍晋三と同様に仕立てることと同じである。
このような先駆者仕立ては1978年の宮城県沖地震から40年間、ブロック塀の安全性に留意して全性を確保してこなかった自分たちの責任を棚上げすることでもある。人災殺人とした場合、自分たちに責任が回ってくるから、先駆者仕立てで幕引きを図ろうということなのだろう。