昨日の「ブログ」で5月4日午後に起きた島根県邑南町(おおなんちょう)の県道での直径約1メートルの落石が軽乗用車に直撃、助手席に乗車していた18歳の女子大生が死亡した事故を取り上げて、20年前の調査で550メートルに亘って落石危険箇所と指定したものの、そのうち500メートルは落石防止ネットを張る対策を取ったが、今回の落石地点を含む残り50メートルは危険性は低いと判断、対策を取らなかった、その調査以来、県道を管理する島根県が点検・調査を一度も行っていなかった怠慢・不作為による殺人に相当、できるものなら、殺人罪で起訴すべきだと書いた。
根拠は「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた島根県土木部長の記者会見の発言である。
冨樫篤英島根県土木部部長「20年の間に浮石が発生し、大事故につながってしまった。今後は1度の調査・対策で終わりではなく、どう継続的に点検を行えるか、態勢を考えていかないといけない」
どう読んでも、20年前の調査一度きりとしか読むことはできない。
ところが、昨日の午後になって、島根県が落石防止ネットを張るなどの落石防止対策を取っていなかった事故の現場となった50メートル区間で島根県は週2回のパトロールを実施していたという記事に出会った。
事実パトロールを実施して危険性を点検・調査していたなら、不可抗力の自然現象ということになって、ブログでの批判は見当違いも甚だしく、謝罪しなければならない。
但しどのような内容の、どの程度のパトロールであったかによって、対策に対する姿勢が違ってくる。記事を参考までに全文引用して、自分なりに精査してみたいと思う。文飾は当方。
《島根の女子大生落石死、地元観測史上最大の強風が原因か 2日前現場点検も危険性把握できず》(産経ニュース/2016.5.6 19:10)
〈島根県邑南町(おおなんちょう)戸河内で、県道脇の斜面から落下した岩が軽乗用車にぶつかり、山口市平井の大学1年、栗原優奈さん(18)が死亡した事故で、島根県は6日、強風がきっかけで岩が落下した可能性があるとの見方を示し、第三者委員会を発足させ、専門家に調査を依頼すると発表した。
県によると、強風で木が揺さぶられ、根元にあった石が不安定になって落下した可能性があるという。松江地方気象台によると、事故発生直後の4日午後4時8分に同町淀原で、この地点としては観測史上最高の最大瞬間風速24・2メートルを観測した。
県は6日、記者会見を開き「お悔やみを申し上げる。申し訳ありませんでした」と謝罪した。現場付近では、週2回のパトロールを実施。最後に確認したのは2日だったが、危険性は把握できなかったという。
冨樫篤英土木部長は「当時の調査は問題なかったが、経過観察が甘かった」と話した。今後、県は第三者委員会を立ち上げ、原因や再発防止について検討する。〉――
この記事の紹介には矛盾がある。
〈現場付近では、週2回のパトロールを実施〉していたが、冨樫土木部長は(落石危険箇所と指定した20年前の)「当時の調査は問題なかったが、経過観察が甘かった」と言っている。
週2回のパトロールを以てしても「経過観察が甘かった」、その程度のパトロールだと矛盾したことを言っていることになる。
この矛盾は週2回のパトロールを満足な「経過観察」のうちに入れていないことによって解くこととができる。
ここで思い出したのが屋根にサイレンをつけたライトバン形式の黄色く塗った道路点検用のパトロール車である。高速で走らせる東名高速道などでは小さな落下物でも車が衝突したり、乗り上げたりした場合、大きな事故につながる危険性があることから、2人1組でパトロール車を定期的に走らせて路面に落下物がないか観察し、落下物があったなら、車を路肩に停めて、通行車両に気をつけながら、その落下物を拾って、荷台に乗せ、再び走らせて落下物がないか探す役目である。
勿論、道路に停車した故障車を見かけたりした場合にも対応する。
落石危険箇所の一般道路を走らせる場合でも、主として下(=路面)を見て走らせ、何も落下していなければ、そのことの報告だけで何も対策を打たないが、落下している土砂や石の量や落下範囲によって、その規模が大したことがなければ、上(=山の斜面)に何も問題は起きていないと判断し、その量も多く、範囲も広ければ、上(=山の斜面)で崩落が起きていると判断して、その時点で初めて車を停めて、上(=山の斜面)を直接目で見て確かめ、片側通行にするか、あるいは落下箇所をカラーコンで囲うだけにするかの対策を打つ、そういった内容のパトロールではないのではないだろうか。
要するに直接山に登って調査・点検することは20年前の調査以来、一度もなかったのではないか。
そうとでも判断しな限り、上記記事が書いている〈週2回のパトロール〉と言っていることは、主としてこのような下(=路面)だけを見て走るパトロール車の道路点検のことを指していて、道路の状況によって上(=山の斜面)を見て、落石の危険性を観察する点検のことでなければ、週2回のパトロールを実施していながら、「経過観察が甘かった」と土木部長が反省しなければならなかった矛盾に整合性を見い出すことはできない。
いずれにしても第三者委員会を発足させて専門家に調査を依頼すると言うことだから、いずれは事実が明らかになるだろうが、新聞記事を読む限り、週2回のパトロールによって島根県の怠慢・不作為を拭い去ることができたとはとても思えない。