安倍晋三の「安倍政権で拉致問題を解決する」は同じ箇所で同じ文句を繰返し聞かされる壊れたレコード盤

2018-09-25 11:57:32 | 政治

 

 安倍晋三が国連総会出席とトランプとの日米首脳会談等のために2018年9月23日に羽田空港からアメリカに向けて出発する際、午後4時30分から2分間、報道各社のインタビューを受けた。拉致に関する発言のみを拾ってみる。

 「記者会見」(首相官邸/2018年9月23日)

 安倍晋三「今回の国連総会においては、トランプ大統領あるいは文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領を始め、各国の指導者たちと首脳会談を行い、北朝鮮をめぐる問題、核問題、ミサイル問題、そして何よりも重要な拉致問題の解決の重要性について訴えてまいります。

 トランプ大統領とは今晩2人だけで会談、夕食を共にする予定でありまして、そしてまた26日にも日米の首脳会談を行います。北朝鮮をめぐる問題について認識を共有し、そしてその方向性について一致させたいと考えています」(以上)

 「何よりも重要な拉致問題の解決の重要性について訴えてまいります」と言っている。

 安倍晋三はこの9月23日午後4時30分から2分間の記者会見より先の午後2時2分から同26分まで東京都千代田区の砂防会館別館シェーンバッハサボーで開催された「全拉致被害者の即時一括帰国を!国民大集会」に出席して、スピーチを行っている。「安倍晋三スピーチ」(首相官邸/平成30年9月23日)

 安倍晋三「今後一層、米韓両国との緊密な協力に加えて、中国、ロシアを始めとする国際社会と連携し、北朝鮮の核・ミサイル、そして、何よりも重要な拉致問題の解決に向け、全力で取り組んでいく決意であります。

 特に拉致問題については、我が国が主体的に解決していかなければなりません。米朝首脳会談では、トランプ大統領から金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に対し、拉致問題に関する私の考え方を明確に伝えていただきましたが、最後は私自身が金正恩委員長と直接向き合わなければならない。そしてこれを行う以上は、拉致問題の解決に資するものにしなければなりません。核・ミサイル、そして、何よりも重要な拉致問題を解決し、そして新たな日朝関係を築いていかなければならないと考えています。

    ・・・・・・・・・・

 安倍政権でこの問題を解決する。拉致問題は、安倍内閣の最重要・最優先の課題であります。拉致被害者の方々と御家族の皆様が抱き合う日が訪れるまで、私の使命は終わらない。2002年の10月15日に5名の被害者の皆様が御帰国をされ、家族と再会されました。ただそれ以外の御家族の皆様は、まだ再会することができていない。私はあのとき、全ての拉致被害者の御家族がしっかりと、お嬢さんを、お子さんを抱きしめる日がやって来るまで、私の使命は終わらないと、こう固く決意したところでございます」――

 なかなかの決意表明となっている。但し「拉致問題については、我が国が主体的に解決していかなければなりません」も、拉致の解決のためには「最後は私自身が金正恩委員長と直接向き合わなければならない」も、金正恩と直接向き合った会談を行うためには「拉致問題の解決に資するものにしなければなりません」も、「安倍政権でこの問題を解決する」も、「拉致問題は、安倍内閣の最重要・最優先の課題であります」も、「拉致被害者の方々と御家族の皆様が抱き合う日が訪れるまで、私の使命は終わらない」も、何度か聞かされたか、あるいは何度も何度も聞かされた言葉である。

 拉致解決に何の進展を見ないままに同じ言葉を聞かされたなら、拉致被害者家族は大抵はウンザリするはずだが、ウンザリするどころか、同じ言葉を口にすることを許している。

 2018年6月12日にシンガポールで行われた「米朝首脳会談では、トランプ大統領から金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に対し、拉致問題に関する私の考え方を
明確に伝えていただきました」と言っている。

 この2018年6月12日の米朝首脳会談の2日後の2018年6月14日に安倍晋三は拉致被害者家族と首相官邸で面会している。「面会」(一部抜粋)

 安倍晋三「拉致問題につきましては、先に行われた日米の首脳会談で、トランプ大統領に、金正恩委員長に対して、日本にとって最重要課題である拉致問題を提起していただくようお願いをしたところでございますが、既に記者会見でも述べられたように、金正恩委員長に対して拉致問題を提起されたということでありました。

 その後、電話でお話をさせていただきましたが、明確にアメリカと、また日本にとって重要課題である大切な拉致問題について金正恩委員長に提起しました、というようなお話を頂いたところでございました。

 この米朝の首脳会談を機会として捉え、あとは正に日本の問題として日本は北朝鮮と直接向き合い、この問題を解決していく決意でございます。

     ・・・・・・・・・・・・

 拉致問題を提起したということは、私がトランプ大統領に首脳会談において述べてきた、私の拉致問題に対する考え方を、それをそのまま金正恩委員長に伝えたとそういうことでございます。

 もちろん日朝の首脳会談というのは拉致問題が前進していくものにならなければ意味がないわけでありますから、しっかりとそういうことも踏まえながら、対応していきたい。

 しかし申し上げましたように、拉致問題というのは日朝の問題でありますから、日本が主体的に責任をもって解決していかなければならない問題であろうと、このように思います」

 米朝首脳会談2日後の2018年6月14日に拉致被害者家族と首相官邸で面会した際の安倍晋三の拉致発言と2018年9月23日に「全拉致被害者の即時一括帰国を!国民大集会」に出席して行った安倍晋三のスピーのうちの拉致問題箇所はほぼ同じ繰返しとなっている。

 単に同じ繰返しとなっていると言うだけではなく、安倍晋三の今日に於ける拉致に向けた姿勢と矛盾が見える。

 米朝首脳会談2日後の2018年6月14日に拉致被害者家族と首相官邸で面会した際は安倍晋三は「この米朝の首脳会談を機会として捉え、あとはまさに日本の問題として日本は北朝鮮と直接向き合い、この問題を解決していく決意でございます」と発言、アメリカの問題でもトランプの問題でもない、「あとは正に日本の問題」だとの表現で当事国問題として主体的解決の姿勢を提示した。

 更に約3カ月後の一昨日、2018年9月23日の「全拉致被害者の即時一括帰国を!国民大集会」でも、「特に拉致問題については、我が国が主体的に解決していかなければなりません」と、同じく主体的解決の姿勢を前面に打ち出している。

 このような主体的解決の姿勢が「日本は北朝鮮と直接向き合い、この問題を解決していく決意だ」(2018年6月14日の拉致被害者家族との首相官邸面)と金正恩との直接会談を視野に入れることになったのだろう。尤もその主体性の提示は金正恩との直接会談は、「拉致問題の解決に資するものにしなければなりません」との物言いで、拉致解決に役に立たない会談は行わないと言っているのだから、失敗を避ける計算高さがあるものの、拉致解決に向けた日本の主体性とは拉致問題はアメリカの手から離れた、あるいはトランプの手から離れたと言っているに等しいはずである。

 あるいは拉致解決に関しては日本は独り立ちすることの宣言でもあるはずだ。

 ところが今回アメリカに向かう羽田空港での記者会見では特にトランプに対してだろう、「何よりも重要な拉致問題の解決の重要性について訴えてまいります」と発言、自らよる主体的解決に託した以上、今更直接当事者ではない第三者に訴えても始まらないにも関わらず、このことは米朝首脳会談でトランプが金正恩に拉致解決の提起を行ったが、役に立っていないことが証明しているはずだが、独り立ちどころか、依然として他人頼りなところを見せている。

 そしてこのことは2018年6月12日の米朝首脳会談前に安倍晋三がトランプに米朝首脳会談の際に金正恩委員長に対して拉致の解決に向けた問題提起をお願いしたことの繰返しそのものの姿勢で、何も変わっていない。

 安倍晋三はニューヨークに到着後、トランプタワー最上階58階のトランプの私邸で9月23日夜(日本時間24日午前)、トランプと夕食会を行っている。予定していた1時間を大幅に上回って約2時間半に及んだとマスコミは伝えている。夕食会後の安倍晋三の拉致に関係する対記者団発言を、「NHK NEWS WEB」(2018年9月24日 12時02分)記事からみてみる。

 安倍晋三「出発前に拉致被害者の家族会の皆さんから切実な思いを伺い、メッセージをトランプ大統領に伝えた。次は私自身が、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長と向き合い、1日も早い拉致問題の解決のためにあらゆるチャンスを逃さないという決意で取り組んでいく」

 前半の発言は拉致解決に向けたトランプに対する協力のお願い。協力をお願いしながら、後半の発言は拉致問題を日本の当事国問題として主体的解決で臨む姿勢を提示している。前半の発言にしても、後半の発言にしても、以前の発言の繰返しに過ぎないが、「次は私自身」が「1日も早い拉致問題の解決」に取り組む「決意」であるなら、トランプに拉致解決の協力をお願いする必要はないはずだが、今以ってお願いするという前後矛盾した姿勢を同時に曝け出している。

 同じ発言の繰返しや前後矛盾した姿勢を拉致問題を解決に向けて一向に進展させることができていない状況で見せていることを考えると、このような状況を埋め合わせて進展しているかのように見せかけるための目論見が誘因となっている同じ発言の繰返しや前後矛盾した姿勢であるはずだ。もし進展していたなら、同じ発言の繰返しや前後矛盾した姿勢を曝け出す必要はどこにもない。

 当然、拉致解決に向かっているように思わせるニュアンスで拉致解決に懸命に取り組んでいる姿勢を様々な機会を捉えた様々な発言で表現していることになる。実際にも安倍晋三の拉致問題に関する発言を見ると、拉致解決に向かっているように思わせるし、「安倍政権で拉致問題解決する」等の言葉は安倍晋三が如何にも拉致解決に向けて懸命に取り組んでいるかのような姿勢を彷彿とさせる。

 トランプに協力をお願いするのもそのためだろう。

 拉致が解決に向けて進んでいないのに進んでいると見せかける誤魔化しのためとは言え、あるいは安倍晋三自身が拉致解決に向けて懸命に取り組んでいると見せかける誤魔化しのためとは言え、現実には一向に拉致問題が解決に向かって前に進んでいかない状況下で同じ発言を繰返しされたり、矛盾した姿勢を見せられるのは同じ箇所で同じ文句を繰返し聞かされる壊れたレコード盤以外の何ものでもない。

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