――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを与えよう――
《鳩山首相「満額をやる。全然ぶれてません」 子ども手当》(asahi.com/2010年2月15日11時51分)
鳩山首相が2月14日、子育て中の10人の若い父母とお茶会を首相官邸で開き、そこでの子ども手当に関する発言。
「財源は極力、無駄を削減する中で余裕ができた分だけでやろう、という仕組みを作ろうと思う」
記事の解説は、〈財源次第では満額支給にこだわらないとも受け取れる発言をしていた。〉としているが、まさしく「余裕ができた分だけ」とは、その範囲内に限定するということなのだから、満額支給以内の変数にとどまると言ったことになる。
但し、この発言を翌15日に記者団から問われて、記事の題名どおりに訂正している。
首相「当然、予定通り、満額(支給)をやる。そのための財源は歳出削減を徹底的にやって見いだしていくということを申し上げた。それは変わらない」
記者「発言がぶれているとも思える」
首相「全然ぶれてません。・・・・国債を発行して子ども手当の財源にしたいとは思わない。あくまでも歳出削減でやっていく」――
「あくまでも歳出削減でやっていく」と断言した。
首相が「歳出削減」(=ムダの削減)と言うとき、昨年暮れの最初の事業仕分けで目標金額を3兆円に置いたのに対して、結果的な削減成果が6900億円程度であったことを頭に入れていたはずであるし、また頭に入れておかなければならないはずだから、お茶会の「財源は極力、無駄を削減する中で余裕ができた分だけでやろう、という仕組みを作ろうと思う」という発言は頭の思いに対する正直な反応として出てきたはずだ。
何しろ子ども手当を2011年度以降満額の月額2万6,000円支給した場合の必要とする財源は地方負担分などを含めて年間5兆円を超えるとされているのだから、最初の事業仕分けで学習させられた、歳出削減のみでは賄いきれないという結論でもあろう。
だとしたら、子ども手当を「あくまでも歳出削減でやっていく」は矛盾することになる。
《4月の事業仕分け「大きな金額想定せず」 枝野刷新相》(asahi.com/2010年2月16日16時28分)
枝野幸男行政刷新相が2月16日の閣議後の記者会見で4月実施予定の「事業仕分け」第2弾について次のように述べたという。
「仕分け自体で大きな金額を(削減することは)想定をしていない。問題が明確なものを取り上げ、実態を明らかにするのが事業仕分けだ」
これは、〈独立行政法人や公益法人の問題点を洗い出す第2弾は、歳出削減が最優先課題ではないとの考えを示した発言だ。〉と記事は解説している。
「問題が明確なものを取り上げ、実態を明らかにするのが事業仕分けだ」と言っているものの、そのことの重要さはあったとしても、全体としては最初の事業仕分けから「大きな金額」が出ないことを学習していて、「大きな金額」が出ないことへの批判や期待の裏切りに予防線を張った、目的を「大きな金額」を出すことから「問題が明確なものを取り上げ、実態を明らかにする」ことへの巧妙なすり替えであろう。
なぜなら、内閣統括者としての鳩山首相が言っている「財源は歳出削減を徹底的にやって見いだしていく」という統括者の趣旨にそぐわない「仕分け自体で大きな金額を(削減することは)想定をしていない」となるからだ。
記事は〈枝野氏は、事業仕分けに加えて、▽類似の事業、予算の無駄の削減▽優先順位の低い事業の抑制――の3段階でマニフェスト実現のための財源確保に取り組む、と説明した。〉と解説しているが、「類似の事業、予算の無駄の削減」にしても、「優先順位の低い事業の抑制」にしても、事業仕分け作業そのものに含まれる項目のはずで、このことを通して「マニフェスト実現のための財源確保に取り組む」ということなら、財源確保が歳出削減をプロセスとした設定値となっている以上、「仕分け自体で大きな金額を(削減することは)想定をしていない」と自ら枠をはめたことは矛盾する設定となる。
「仕分け自体で大きな金額を(削減することは)想定をしていない」が正しいのか、「事業仕分けに加えて、▽類似の事業、予算の無駄の削減▽優先順位の低い事業の抑制――の3段階でマニフェスト実現のための財源確保に取り組む」が正しいのか、少なくとも菅直人副総理兼財務相から見た場合、「仕分け自体で大きな金額を(削減することは)想定をしていない」が正しい枝野発言となる。
《「子ども手当の財源は増税で」菅財務相が発言》(msn産経/2010.2.20 22:23)
東京都町田市で演説したときの発言だそうだ。
「たくさん収入のある方に少し率として多めに税を払っていただき、そういうお金を子ども手当で応援に回していく」
「(所得税の)累進制が緩和されてある意味、お金持ちには減税になっている。・・・・今年から税制の本格的な議論を始めたい」
記事は、〈所得税率の見直しで子ども手当の財源を確保する方針を明らかにした。〉と解説しているが、一方で、〈歳出削減で子ども手当の財源を捻出(ねんしゅつ)する意向を示していた鳩山由紀夫首相との食い違いが、浮き彫りになった。〉と言っている。
但し、〈所得税の最高税率の引き上げについては、鳩山首相も検討する意向を表明。菅財務相は、政府の税制調査会で検討する考えを示していた。〉と記事は最後に書いている。
菅直人発言はある意味歳出削減の放棄であり、鳩山首相の「財源は歳出削減を徹底的にやって見いだしていく」の否定でもある。
また鳩山首相が「消費税は4年間は上げない。それを変えるつもりは毛頭ない」という姿勢を示しているのに対して、首相が「消費税の議論、早過ぎる」と軌道修正を図ったものの、菅直人財務相が「所得税、法人税、消費税など税全体の議論を3月から本格的に始めたい」(msn産経)と議論を先行させる構えを見せている。
こういった増税への衝動の芽生えと最初の事業仕分けで3兆円の歳出削減を目指しながら6900億円程度の削減しか見い出せなかった前例や枝野行政刷新相の「仕分け自体で大きな金額を(削減することは)想定をしていない」を参考とするなら、消費税その他の税の増税か、首相は「国債を発行して子ども手当の財源にしたいとは思わない。あくまでも歳出削減でやっていく」と言っているものの、国の借金をさらに増やし財政を尚のこと悪化させることになる一層の国債発行か、予算編成は多分その二本立ての道を取ることになるに違いない。
新規高速道建設で予測通行量を過大に計算して過大な建設事業とするような事業自体の規模を必要以上に大きくしたムダとそのムダに応じた予算のムダ、費用(予算)が要求していた効果に結びつかない作業効率のムダ、必要ではないのに必要と見せかけた事業とその予算のムダ等々、かねがね必ずどこかにムダがあるから、各事業の各予算を一律的に1割カットし、その範囲内で金銭的な遣り繰り算段を強いる、あるいは作業効率を工夫させて生産性を上げさせる、10年度予算案が92兆3000億円なら、全体で9兆2300億円歳出削減できると主張してきたが、財源不足を理由に子ども手当満額支給がカット可能なら、他予算も同じ理由でそれ相応のカットは可能のはずである。
それでどうしても不足するなら、事業の達成時期の延期を図り、カット分の予算を補正予算を組んで予算付けをする。その場合も1割カットして、順次達成時期を延期していく中で事業を完成させる。
〈11年度予算編成では、社会保障分野だけでも新たに約6兆円の財源が必要だ。子ども手当に加え、基礎年金の国庫負担引き上げ(約2・5兆円)や医療費などの自然増(約1兆円)と歳出圧力には事欠かない。〉(毎日jp)ということだが、年々増加していくそういった予算にしても、必ずムダがどこかに存在するはずだと看做して少ない予算で遣り繰り算段させてムダを炙り出し、それを知らしめる形式の、出る「歳出圧力」に対して出さない「歳出圧力」をかけることも求められているはずである。
事業仕分けの削減期待値3兆円に対する削減効果値6900億円の非効率的価値の学習、その学習から見い出した答としてある枝野行政刷新相の「仕分け自体で大きな金額を(削減することは)想定をしていない」といった仕分けに歳出削減の価値を置かない考え方が逆に菅直人財務相やその他民主党内の増税に価値を置く増税頼みを加速させた現在ある状況であると思うが、例え増税によって歳入をある程度保障できたとしても、結果的に歳出削減によるムダ排除の価値観を少なからず失わせることになって各種ムダを各事業の中に、あるいは各予算の中に温存した、あるいは巣食わせた増税頼みの歳入保障になるのではないだろうか。
増税は最後手段として、一律1割カットといった荒療治もムダをつくり出す政治と官僚の体質の改良やムダな予算編成構造の改善を出発点として成し得る財政の健全化には必要ではないだろうか。