概算要求95兆円から3兆円圧縮への査定は少な過ぎないか

2009-10-20 14:46:23 | Weblog

 鳩山政権初の来年度予算案の概算要求が一般会計の総額で過去最大の95兆380億円にのぼり、麻生政権作成の今年度の当初予算を6兆4900億円も上回った。

 民主党はムダ遣いの徹底排除を主たる公約の一つに掲げて政権を獲得した。自民党政権の予算には至る箇所にムダがあり、予算の効率的編成が為されていないと一刀両断してきたのである。にも関わらず“過去最大”の概算要求では民主党政権としては自民党政権に向けてきたムダ遣い批判の効力を些か失う。

 特にムダ遣いそのものだと批判した麻生政権最後の総額14兆7千億円の今年度補正予算から当初は2兆5千億円を、さらに上積みして2兆9259億円までを目標額に掲げていた3兆円に僅かに届かなかったもののムダな予算だと洗い出して執行停止処分とし、来年度予算計上の民主党がマニフェストに掲げていた「子ども手当て」等の政策執行の財源として振り替える、あるいは年明けの通常国会提出の今年度2次補正予算に充当させる方針だという。

 中にはムダ遣いとまでは言えず、優先順位から言って後回しにした予算も入っているだろうが、14兆7千億円の中から2兆9259億円の執行停止は約20%に相当するムダ排除となる。ケースバイケースだろうが、20%は不要(=ムダ遣い)・不急(=非優先)の目安となる確率ではないだろうか。

 概算要求が過去最大の95兆380億円にのぼるのに対して09年度税収は今年度当初に見込まれていた46兆円を下回って40兆円以下に落ち込む可能性が指摘され、鳩山首相が就任前から否定してきた赤字国債増発は必至となる状況となり、政府内から国債発行も止む無しの発言が出始め、首相自身も発行を検討する考えを示したという。

 そして仙谷由人行政刷新相が18日日曜日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」で新規国債の発行について麻生政権が予定していた今年度の当初予算と補正予算を合わせて過去最大となる国債発行44兆円を「超えさせないという決意の下に概算要求を削減していく」(asahi.com)と強調、過去最大の95兆380億円を政権公約の実現に必要な予算以外は厳しく査定して予算規模を3兆円程度圧縮し、92兆円に持っていく方針を示したという。

 いわば民主党の各閣僚が要求した要求予算から不必要部分がないか、今度は身内のムダを省くという作業に取り掛かると言うわけである。

 では要求額の95兆380億円に対してなぜ3%程度にしか当たらない3兆円の圧縮、事業見直しなのだろうか。麻生14兆7千億補正予算にしても、民主党の概算要求額95兆380億円にしても、マニフェストに掲げた政策以外は殆んどが官僚主導で作成した事業であり、その事業に合わせた予算額だろうから、自民党と民主党で予算積み上げの中身はさ程の違いはないはずである。

 麻生14兆7千億補正予算からムダ遣いや優先順位を洗い出してその約20%に相当する2兆9259億円を取り除くことができた。95兆380億円から約20%を取り除くとしたら、19兆076億円圧縮できて、76兆304億円と下げることができる。

 官僚の計算額から20%削減は不可能だろうか。

 昨年10月に会計検査院が調査した12道府県すべてが年度内に使い切れなかった予算を裏ガネとしてプールしていた不正経理問題も、さらに今年に入って26府県と2政令指定都市を調べたところ、全自治体から計20数億円の不正経理が見つかった問題(内部調査で総額約30億円の不正経理を9月に公表したばかりの千葉県からも約11億円の不正経理が発覚、飲食などの私的流用が行われていた。)も、国の補助金が含まれていたことは国の予算運用と運用した予算に対する適正執行の検証が共に杜撰だったことの証明であって、元を質すと、予算査定能力(コスト査定能力)を官僚が欠いていたことから出発している過剰配分であり、その結果のムダ遣いでろう。

 検査したすべての自治体で不正経理が行われていたということは1都1道2府43県、日本全国すべての自治体に対して中央省庁は予算をムダに配分していた疑いが限りなく濃厚となる。

 また中央省庁OBの天下り先となっている公益法人が所管省庁から受けた補助金等の国費支出額はOBの再就職を受け入れていない法人への支出額の平均6200万円に対して約7.6倍の4億7200万円に達していたことが会計検査院の調査で判明したと10月半ばにマスコミが伝えていたが、事業の内容と規模に応じて査定し、配分すべき予算を天下りの頭数で査定・配分する不適正なムダが所管省庁に存在していたということであろう。

 同じ10月半ばに複数の防衛商社が海外メーカーから販売手数料を受け取っていながら、それを見積書や請求書に含めて防衛省に提示、契約がその金額を基本としていたために商社に手数料の二重取りを許していたことが検査院の調査で判明したと言うことだが、これも予算にムダを生じせしめていたことを物語っている。

 また各省庁が自らの事業や備品を発注する際、競争入札ではなく、随意契約や競争入札を装った一社入札で済ませることも、予算にムダを伴う官僚行為と確実に言えることで、随意契にしても一社入札にしてもムダの所在そのものを示す。

 9月18日付の「日経ネット」記事――《国交省など競争入札、「1社応札」5割超 検査院調べ》が〈国土交通省と地方整備局などが2008年度(4~12月)に締結した契約(約5千件、約599億円)で、一般競争入札にもかかわらず1社しか応札しない、いわゆる「1社応札」が5割を超えることが18日、会計検査院の調べで分かった。全国100の独立行政法人が結んだ契約でも1社応札が4割で、「競争性を確保しにくい状況」(検査院)が続いている。〉と「一社入札」の競争性の不確保によるムダを伝えている。
 
 さらに記事は〈「天下り」との指摘が強い独立行政法人から契約先公益法人への再就職状況も検査。再就職者が在籍するケースでは、1法人当たりの契約支払額は「在籍ゼロ」の28倍に達し、天下り先との癒着ぶりが明らかになった。〉と、天下りと契約額の関係が既出の天下りと補助金支出額との関係ともそっくり連動している状況を教えている。

 ここにムダ遣いが存在しないと誰が証明できるだろうか。

 勿論、随意契約・一社入札は国だけの専門事項ではなく、国所管の独立行政法人なども右へ倣えで専門とする契約事項となっていることは周知の既定事実となっている。

 今年1月7日付の「47NEWS」記事――《一社応札45%、一般競争入札で 政独委、府省に改善要求》が〈総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会(政独委)は7日、国が所管する独立行政法人が2007年度に実施した一般競争入札で、参加企業が1社だけだった一社応札が45%に上〉り、〈07年度に独立行政法人が実施した一般競争入札は2万4168件で、うち一社応札は1万768件。所管府省別の一社応札の割合は、総務省の76%、文部科学省の55%、経済産業省の47%などが高かった。〉とその一端を伝えているが、これはことわざが言うところの“上のなすとところ、下これに倣う”の構図を踏んだ関係図であろう。

 行為をムダなる言葉に代えていうと、「上のムダ、下これに倣う」となる。ムダがありとあらゆる場面、隅々にまで蔓延していることの証明に他ならない。

 ちょっと古くなるが、07年10月17日付「毎日jp」記事――《<ODA>無償の施設工事、7割が落札率99%以上》が伝えている日本企業が参加する〈政府開発援助(ODA)の無償資金協力の施設建設工事で、03~06年度に成立した入札166件のうち7割近い112件が落札率99%以上だったことが会計検査院の調べで分かった。〉にしてもODA予算のバラ撒きに当たるムダ遣いそのものであろう。

 記事は一社入札も取り上げている。

 〈入札参加社数が少ないほど、落札率がつり上がる実態も浮かんだ。1社のみ参加の29件の平均落札率は99.31%、2社参加の48件は97.98%。一方、最大の5社が参加したカンボジアの村落飲料水供給事業(06年度)の落札率は62.16%だった。

 不落随契も割高な契約となり、ガーナの幹線道路改修計画(04年度)の場合、予定価格約35億円を約1億円引き上げて、ようやく交渉が成立した。〉――

 ここから見ることができる絵柄は国や独立行政法人・公益法人のムダをそれぞれの法人や民間企業が食い物にする図であろう。

 〈小泉内閣時代に行われたタウンミーティング(TM)で、契約書が事業の開始後に作成されていたため、業者が価格設定を変更してより多くの代金を請求できる状態〉にあった(《代金過大支払いの可能性=集会開催後に契約書-タウンミーティング会計・検査院》時事ドットコム/07年10月17日17時32分配信)は官僚たちがムダに如何に鈍感であったか、コスト査定能力の歪みを証明して余りある。

 こういったムダ遣いに鈍感な姿勢、コスト査定能力の歪みがすべての省庁、法人に亘って、いわば組織全体に亘って蔓延・横行しているということであろう。もしもコスト査定能力が正常に機能していながら、ムダをつくり出しているということなら、救いはなくなる。

 いずれにしても各省庁の各事業すべてに亘ってムダの存在を前提とすることができる。例え必要な事業だと査定したとしても、コスト査定の段階でムダが生じていることとなって、ムダの存在が想定可能となる。

 そういうことなら、すべての事業に亘って、機械的・一律的に一定の割合で各事業の各予算をカットしてもいいことになり、カットすることでムダを省くことが可能となる。例えカットによって必要な予算まで削ったとしても、カットした予算内で遣り繰り算段させる訓練を積ませることで、ムダなコスト査定を減らしていくことができる。
  
 家庭でも夫が失業した、給与が削減されたとなると、生活に関わるすべての支出項目に亘って予算を削る。食費をいくら抑える、駅までバスを使っていたのを自転車に変えて交通費を抑える、ちょっとした頭痛でも医者に通っていたのを市販薬で直す。夫の小遣いを削る、等々。遣り繰り算段の中途過程でどうしても必要な予算が不足するなら、補正で補ったらいい。

 以前建設談合が大手を振って罷り通っていた時代、元請会社は入札金額から上前をハネて下請に丸投げするといったことをした。ハネる率は2割から2割5分が相場だと聞いた。下請はさらに2割前後ハネて二次下請に仕事を回す。

 このことを裏返すと、多くの公共事業が4割から4割5分差引いた建設費で賄うことができたということであろう。談合防止法の制定等で談合自体が減ってきていると言っても、北陸新幹線の建設では新潟県内の30余りのトンネル工事で橋梁や高架橋と比較して平均で4ポイントから9ポイント高い98%の落札率で、工事のほぼ半数は単独の共同企業体が競争入札なしで契約を結んでいたと「NHK」が伝えているし、八ツ場ダムの関連工事の大半が落札率94%を超えていて、市民オンブズマンが談合の可能性を指摘、近く国交省に質問状を提出する方針だと「47NEWS」が伝えているように談合が依然として蔓延っている可能性は否定できない。

 4割から4割5分の疑惑数値の半分を取ったとしても、公共事業に2割のムダを指摘できる。この2割は麻生補正予算14兆7千億円から見直し査定によって2兆9259億円に圧縮した率に相当する。

 このムダだとする2割の可能性を来年度予算案の概算要求一般会計の総額95兆380億円にそのまま当てはめるのは危険ということなら、2割の半分の1割をかけて9兆538億円減らして85兆842億円に圧縮し、それを各事業の概算要求に均等に振り分けて、その中で予算を執行させることはできないだろうか。

 例え必要とする事業であっても、兎に角一律的に1割カットといったふうに予算を少な目に強行設定して、その少ない予算の中で遣り繰り算段させる。そこを出発点としてコスト査定能力を高め、官僚のムダ遣いを正していく道筋とする。

 こういったいわば一種の強硬手段を取らなければ、ムダ遣いはなくならないように思えるが、どんなものだろうか。

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