はじめてこの詩集のタイトルを知ったとき
いいタイトルだと思っていました。
心の中に残っていました。
時間が経つにつれ
このタイトルにも少しなれ、
インパクトも少し薄れて来ましたが
飛びぬけて創造的なフレーズでは
あると思います。
要するに、魅力的なフレーズが
一行でも出てくれば
作品は成立するのかな
と思ったりします。
これも中原中也賞を獲った詩集ですが、
私が期待をしすぎたのか、
去年の中原中也賞の川上未映子氏の作品を思うと
http://blog.goo.ne.jp/gggggggo/e/fb35149cb521ebae009064c1c56424b4
少し創造性は弱かったと思います。
その分面白くなかったです。
多分好みの問題だと思います。
(決して川上未映子氏の作風が大好きだと言っているわけではありません。)
まずはタイトルの出所を確認しました。
これが少し違うのですね。
適切な世界の適切ならざる私
という言葉はそれで完結しているとは思っていたのですが、
違いました。
******************
(適切な世界の適切ならざる私-より部分引用)
ブレザーもスカートも私にとっては不適切。姿見に投げ込まれたまとまりが、
組み立ての肩肘を緩め、ほつれていく。配られた目を覗きこめば、どれも相違
している。そこで初めて、一つ一つの衣を脱ぎ、メリヤスをときほぐしていく。
それは、適切な世界の適切ならざる私の適切かつ必然的行動。
まだ後ろに言葉が続いていたのですね。
全体を見回して所々心に残る表現がありました。
この詩集の一番最初の詩 「落花水」 の一番最後のセンテンス
風で膨らむスカートのように
私は咲いてみせよう。
「私は、なる」と言う詩の一番最後のセンテンス
私は私でありつづける。
何かよくわかりますね。この一行。
この詩人は最年少で中也賞を獲ったそうです。
17歳前後で書かれていた詩(間違っていたらすみません)だと
思いますが、ネットで写真をさがしていたらありました。
初々しい感じのひとですね。
私の読んでいるこの本の中の詩が
何年か経ってまた違った風に私に迫ってくるかもしれないし、
私の中では埋葬されたものになるのかそれは知りませんが、
現時点で一作品選ぶとすればこれでしょうか。
(良し悪しは別として)
花火
(ひょろろろ---と勢いよく放たれた一匹の精子は、夜空のシーツを目指して
まっすぐ駆ける。寸前で尾の動きをゆるめ、まどろむように卵の中へ入ってい
く。音と色のしぶきを浴びて、私は浴衣の帯をそっとゆるめた。降りそそぐ受
精卵を腹に受けとめるため、袂をあけて空を仰ぐ。橋の桟には艶やかな女たち
が詰め掛けていて、精子に手を振っている、夏の景色)
橋のむこうから響く花火の音が
足音のように迫りくる。
心臓が脈打った後を
鼓動が追いかけているのだ。
花火、打ち上げ花火。
背中に花火の音を受けて
自転車のペダルは回る回る。
人々の熱気を吸って
私の黒目は開く開く。
夜空はその視線を恥じらい、
赤いつぼみをとじるとじる。
叩いた手の合間に
本当の花が開いて満ちる。
そこに咲いているもの、よ。
(全引用させて頂きました。)
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