another Beatle

フリースタイル、且つ、創造的。(これが、理想ですが--)

「海の向こうで戦争が始まる」再読--村上龍初期の二作目

2009-12-27 14:02:19 | Weblog

この小説は村上龍氏の

「限りなく透明に近いブルー」の次に発表された小説で、

私はすっかり内容も忘れてしまっていましたが、

心の中にこの小説の美しい装丁が残っていたので、

果たして今もこの小説は長い時間の経過のなかで

生き残っているのかどうか確かめたくて今回読んでみました。

装丁が素晴らしいと思います。

龍氏は大学で美術関係を専攻していたということで、

こじつけて考えているわけではありませんが、

私の中ではほぼベストワンの装丁です。

 

なんかイメージが広がります。

 

昔、書籍の整理のために売った本の一つですが、

数年前からこの表紙のこの本が欲しくて探していました。

もう発行されていなくて、諦めていたところ、BOOK OFFで売られていたので、

即買いして、ずっと車の中に入れていました。

 この本の帯に村上龍氏の*読者へのメッセージ*が付いていて

僕の見た戦争を書きたかったと書かれてあって、

戦争は、海の向こうで、

また我々の目の裏側で確実に始まっているのだ。

それは近代戦争しか体験のない我々の親達の想像力を超えている。

僕は戦争を見た。

意味を考えるのは見た後でいい。

僕の見た戦争をあなた方に語りたかった。

(青字部分は本の帯に書かれてあるものからの引用)

 

この本が書かれてもう30年も経っているけれども、

率直なところ、この小説は悪くないと思いました。

この中に出てくるフィニーという外人女性は、

おそらく村上龍氏が一作目の「限りなく透明に近いブルー」で

登場したリリーの影だと

思いました。龍氏にとっては実在の女性だったそうで、

二作目でも、

おそらく彼女が忘れられなかったのでしょう、

名前を変えて登場しています。

ただこの小説が恋愛小説であろうはずもなく、

ここがこの小説の好きな点です。

ただ、本の帯カバーにわざわざ自分のコメントを入れて置かないと、

分からないかも知れないという点で、この小説は難しいです。

理解しようと思わないほうがいいと思います。

村上龍氏の文体における幻想描写、イメージの描写ですから。

グロテスクな内容ですら、

まるで詩のように書いてしまうところが彼の才能だと思います。

真似をしようにも真似は出来ません。

小説自体は最初にフィニーとの出会いの部分があり、

これがすんなりと彼の小説の中では発展する訳もなく、

すぐさま、他の人物が登場して、そこで一つの物語があり、

時々フィニーと主人公の描写に戻り、

また別の人物の登場とその人物の物語があり、

そしてまたフィニーと自分の描写に帰って行く(著者の視点で)。

他の登場人物とフィニーと主人公(作者でしょうー)との関連は全くありません。

そして最後にこの小説に出てくる人間が全部戦争でやられてしまうのです。

ただ気に入らないのは、龍氏がこの小説の中でもコカインを使用して、

最後の部分あたりで、

フィニーと一緒にコカインをやる場面があり、

この次あたりから、

おそらくそれによる幻想と思える描写が続き、

この描写のなかで

二人称、三人称を織り交ぜながら、

イメージで登場人物を登場させ、

描写していくのです。この描写の中で登場人物はすべて戦争で死んで行きます。

村上龍氏がコカインを経験しているかいないのかそれは知りませんが、

コカインの使用を作品中に持ち込み、

それの幻想かのごとく文章を繋いで行くのは少しありきたりではありますが、

龍氏の文章がそれを超えているから、

この小説はもっているのだと思います。

海岸でコカインを使用し、幻覚を体験し、そのあとに主人公がフィニーに

「ねえフィニー、あした二人でヨットに乗ろうよ、渓谷の写真なんか撮るの止めろよ」

フイニーは水着に足を通しながら頷いた。

フイニーの長い影は、もう砂浜に掘られた穴のようには見えない。

すでに太陽は海面で躊躇するのを止めている。

 (青字ラスト部分-引用)

 

 小説の冒頭部分は引用しませんが、

冒頭とラストの部分を読んでみるとこの小説は成功していると思います。

日記@BlogRanking クリックしてくださいね-。

 

一年間私のブログを見て頂き本当にありがとうございました。

皆様方のお幸せ、ご健康をお祈りしています。

コメントを頂きありがとうございました。

いつも頂くたびに嬉しく感じていました。

本当にありがとうございました。

皆様も頑張って下さい。

  

  追伸

ノンさんから聞きました。Yukariさんもお父さんの看護しっかり頑張って下さい。

お父様の回復をノンさん共々皆でお祈りしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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4 コメント

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ご無沙汰しております (yukari)
2009-12-27 21:11:24
こちらこそ、今年も色々と楽しいお話を有難うございました。私も、こちらのブログがきっかけで又、本を読むようになりました。
のんさんから、聞かれたと思いますが、父が病院内での事故で大怪我になってしまいました。
一ヶ月経ちますが、徐々に回復している感じですが、まだまだリハビリです。
今日、車椅子の床ずれ防止ザブトンを買いました。また、介護のことなど教えて下さいませ。。
それでは、アナザービートルさんもお風邪などひかれませんよう、よい年末年始をお過ごしくださいませ
返信する
村上龍 (cabe)
2009-12-27 22:25:01
村上龍と言えば、20数年前、「コインロッカーベイビーズ」を読んだとき
脳ミソがひっくり返るような興奮を覚えた記憶があります。
村上龍のエネルギー溢れた作品を読むと「うおぉぉおおっ!」って感じになってしまう・・・。
返信する
ご無事で--。 (アナザービートル)
2009-12-27 23:12:15
ご無沙汰しております。
ノンさんからYukariさんのお父様のお話をお伺いした時は本当にびっくりしました。高齢になっての転倒は本当に危ないです。今更言っても始まりませんが、病院側ももう少し考えておかねばならないと思います。
 車椅子を使っているんですね。くれぐれも転倒だけには車椅子の場合でも気をつけておいて下さい。ロックを必ず忘れないようにしてくださいね。
リハビリを辛抱強くやればきっと回復すると思います。
Yukariさんご自身のお体にも気をつけて年末年始をお過ごし下さい。本当に一年間コメントありがとうございました。励みになりました。

 お忙しい折、コメントありがとうございました。お父様のご回復祈っております。
返信する
コインロッカーベイビーズ (アナザービートル)
2009-12-27 23:20:33
思い起こせば、「コインロッカーベイビーズ」もハードな小説でしたね。
考えてみれば村上龍の作品は沢山映画化されていますね。その視点からみればこの小説には映像化が難しい部分が沢山ありますが、仮に映画になったら綺麗なものになると思います。この小説の表紙のように。
 憎い小説家ですね。
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