2010年10月25日 朝日新聞より、リメディアル教育の現状についての記事
三大予備校(河合塾、代ゼミ、駿台)そして、公文まで大学支援
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大学入学前から就職まで面倒みます??。
予備校などの教育産業による大学生支援が活発化している。
推薦・AO入試合格者らの学力低下を問題視した文部科 学省が
入学前教育の強化を求める通知を出したこともあり、
リメディアル(補習)教育の分野に新たな業者が続々と参入。
厳しい就職状況が続く中、キャリア教 育に手を伸ばす業者も急増している。
◆公文の教材で基礎から
神奈川県藤沢市の湘南工科大で8月末にあった「日本リメディアル教育学会」の会場は、
まるで展示会のようだった。
ベネッセ、学研などの教育産業の看板やのぼり旗がずらりと並び、
パソコンや教材を展示した19業者のブースがそろった。
その一角に、「公文式」で知られる公文教育研究会の水色ののぼりが翻っていた。
同社は2005年から新潟産業大経済学部(新潟県柏崎市)で
公文式の教材を使った補習をしている。学会ではその取り組みや成果を発表した。
同大では、新入生95人に実施した学力診断テストで下位40人に入ると、
公文式教材を使った「生活数学」の履修を事実上強制される。
四則演算や分数計算などの教材全5520枚のうち約1千枚を、
15回の90分授業で半年かけて解いていく。
補習を指導する同大経済学部の江口潜准教授は
「苦手だった数学を克服することで学生の勉学意欲が高くなり、
資格試験に挑戦するなど前向きな気持ちを抱く 学生が増えた。
採点を通じて教職員との人間関係も構築され、退学者も減少した」と喜ぶ。
受講した学生にも「数学を勉強し直すことは一生の財産になる、
という先生の言葉の意味がよく分かる」などと好評だ。
同社調査企画室の片山壮平さんは「幼児向けの挿絵や言葉遣いを修正することを
検討しているが、教室で使う教材を大学でもそのまま使う。
公文式のシステムを理解してくれる大学に事業を広げていきたい」と話す。
大手予備校の代々木ゼミナールは現在、全国の60大学の業務を請け負う。
8年前に補習教育の事業を始めたときは、予備校の教材を使っていた。
しかし、そ のレベルではついてこられない学生が急増。各大学の要望に従って、
中学生レベルの教材を新たに作っている。
化学なら元素周期表の「スイヘイリーベ」から、生物なら光合成から教えるという。
◆大学の売りに
文部科学省は昨年3月、来年度入試から入学手続きをとった生徒には
「入学までに取り組むべき課題を課すなど、入学後の教育のための準備を
あらかじめ講ずることが望ましい」
とする大学振興課長名の通知を学長あてに出した。
「今年は例年になく問い合わせが多い。通知で確実に大学の関心が高まっている」。
駿台予備学校グループの駿台教育研究所の坊野宏一事務長は大きな変化を感じている。
同研究所は1992年からリメディアル教育を大学から請け負う。
今年引き受けたのは30大学90学部で、大半はAO・推薦入試で合格してから
入学までの 半年間に行う入学前教育だ。
坊野事務長は「以前は『リメディアルをやっている』ことを大学が恥ずかしくて
口にできなかった。
最近では保護者から『やってい るのか』と確認されることも多く、
大学が高校を回る際にがんがんPRしている」と話す。
◆業界研究・討論 通年で
大学の「入り口」まで生徒を送り届けてきた予備校は
近年、就職先を決めて卒業するという「出口」まで支援を広げる。
河合塾グループの「河合塾KALS」は名駅校(名古屋市)で05年、
業界研究や自己分析、集団討論などの授業をする通年の就活講座を開始。
出張講座を希望する大学のニーズを見込んで、
今年からは新宿校(東京都新宿区)でも始めた。
新宿校の校舎長・森靖義さんは「目標は、小手先のテクニックでな
く社会人としての基礎力を磨くこと。授業はグループワークが中心。
様々な大学や学部から 学生が集まるので、柔軟性や多様性など社会人として
必要な力も身につく」と話す。
これまで名古屋での受講者は約100人。
半数以上は第1志望群の企業の内 定を得たという。
中学受験から大学受験までを指導する市進教育グループ(本部・千葉県市川市)は
昨年、大学生の就職活動や社会人としての能力向上を支援する
「キャリアデ ザインプログラム」を始めた。
原型は、学習塾で教える大学生講師の指導力向上の研修。
プレゼンテーション能力を上げる内容が「就活にも生きた」と好評で、
一般の大学生向け講座にアレンジしたという。
市進綜合研究所キャリアデザイン室の細谷幸裕課長は、企業の人事担当者から
「ゆとり教育の影響か、社会人としての基本的な力が備わっていない学生が目立つ」と
いった声を多く聞くという。
「『いい大学に入ること=(イコール)いい人生』ではない今、塾業界も偏差値重視から、
社会に通用する人材育成という社 会的責任の重視へと方向性が変わってきている」
(増谷文生、三島あずさ)
◇リメディアル教育
文部科学相の諮問機関の中央教育審議会は、大学教育を受ける前提となる
基礎的知識などを大学生が入学前後に学び直す補習教育と位置づける。
大学入試セン ターの荒井克弘教授によると、米国では元来、学習機会が少ない
貧困層の子を一般レベルまで引き上げる「治療教育」を指していた。
日本でこの言葉が広まった 背景について荒井教授は
「大学教育の概念に補習はなじまない、と考える関係者がこの表現を使ってきた」
と話す。
◇リメディアル教育で使われているテキストの出題例
【英語】
●英語で書いてみよう。
(1)私はピアノを弾きます
(2)この人は私の兄です。彼は学生です
(3)私の叔父はニューヨークに住んでいます
●疑問詞を入れなさい。
(1)これは何ですか? ( ) is this?
(2)あの女の子は誰ですか? ( ) is that girl?
●書き換えよう。
(1)I want a new bike.→Sheを主語に
(2)You swim well.→Heを主語に
【数学】
●30までの自然数のうち、素数であるものをすべて示しなさい。
●54と90の最大公約数を求めなさい。
●80円のあげパン4個と125円のメロンパン3個を買い、消費税(5%)とともに支払った。支 払金額を求めなさい。ただし、小数点以下は切り捨てとする。
【スタディスキル】(文章読解、レポート作成など)
●レポート作成のために(1)
次の文章(2200字程度)を400字以内で要約してみよう(ポイント:(1)重要だと考えられる個所に線を引く
(2)線を引いた個所を関係づける
(3)要点をまとめる
(4)解答の草稿を考える)
●レポート作成のために(2)
自分の考えをまとめてみよう(ポイント:(1)課題文の主題を確認する
(2)自分の意見の立場を明確にする〈YES/NO〉
(3)根拠を明確にする〈情報を集める〉
(4)解答の構成を考える)
《代々木ゼミナールが製作した初歩レベル向けのテキストから、抜粋》
出展 2010年10月25日 朝日新聞