玄文講

日記

発狂する瞳

2005-09-19 01:04:47 | 個人的記録
昔、用事で京都大学に行ったとき、そこでお世話になった院生の方は、毎晩表われる幽霊に悩まされていた。

彼はそれをただ自分にだけ観測できる現象として、それ以上も、それ以下の解釈もしていなかった。

それで、その幽霊の出る部屋に私たちはしばらく寝泊りしたわけである。
仮説と観測とを思考手段とする私たちにとって幽霊を見るというのはその程度のことである。
再現性の低い変わった現象の総称。その程度の意味しかない。


たとえば私は神も魂も信じていない。
世界は無心なるシステムであり、死は虚無である。

しかし、私も何回か「幽霊」という現象を観測したことはある。
私はそれらを人の魂だとは思っていないが、再現性の低い自然現象、生理現象として、「超偶然」に起きる怪異としてならば信じている。

そして私にも見えるものはある。
それは「瞳」である。

夜、闇の中に、それは表われる。
初めは一つだけ、闇の中に瞳が浮かぶのが見える。文字通り、闇の中にまぶたを持った眼球があり、それがこちらを見ているのである。
私がそれに意識を向けるとそれは増殖を始める。

一つは二つになり、二つは四つになり、四つは十六になり、
あっという間に空間が瞳で覆われる。
規則正しく格子状に並ぶ瞳で一面が埋め尽くされる。

それに対する恐怖は私にはない。
何故ならそれらは私の制御下にあるからだ。それらは私が許可したから表われたものなのである。
だから意識をそらせば瞳の群れは一瞬で胡散霧消する。

なぜそんなものが見えるのかは分からない。
恐らくそれはただの幻覚であり、私が持っている狂気の一部だ。

特別なことは何もない。
騒ぐことは何もない。
大げさに意味付けをする必要もない。
深刻ぶることもない。
ただのどこにでもいるキチガイというだけのことなのだから。


それはそうとして、明日から2週間、更新ができなくなります。
どうか無駄足を運ばないようにご注意ください。