食品のカラクリシリーズ おにぎらず/麺穀類
握らないおにぎり「おにぎらず」は爆発的人気ですが問題点も
意外にも手間が掛かる・ご飯や具材がぼろぼろ落ちて食べにくい
■ネーミングの面白さや見た目の綺麗さからブームに火が点いたようです
『おにぎらず』の著者・フードコーディネーター「しらいしやすこ」さんの影響か? “握らないおにぎり”~「おにぎらず」が、爆発的ブームです。そこで絶賛サイトが多い中、1つぐらい当ブログのような懐疑的な投稿も許されるかなと思います。説明するまでもなく、1枚の海苔を菱形に置いて、その中心部に軽く四角くご飯を敷き、その上に具材を乗せ、さらにご飯を乗せてサンドイッチ状にします。祝儀袋を袱紗(ふくさ)で包む要領(正しい袱紗の包み方・順序とは異なりますが)で、菱形の海苔の左右を折って重ね合わせ、次に上下です。四角い「おにぎらず」を、2つに切ったらでき上がりです。あるいは対角線状に切れば、オシャレに見えます。
サンドイッチ・ハンバーガーや手巻き寿司感覚で、具材に制限なしです。和風はもちろんのこと、定番のハム・玉子焼き・チーズ・ツナ・そぼろ、トンカツなどの揚げ物、ビビンバ、さらには白飯の代わりに残り物のチャーハン・ピラフ・ドライカレーもOK。サイトには無数のメニューがありますので、関心のある方は探して下さい。「おにぎらず」が人気なのは、見た目が綺麗で食欲が湧く、具材(お数)を多く摂れる、弁当箱に詰められる、ホームパーティのレパートリーになる、などでしょうか。女性自身や旦那さんの弁当、子供の運動会や遠足、簡単な外出時などに重宝がられています。
■「おにぎらず」の人気は若者世代の“ごちゃ混ぜ食”の延長か?
サイトでは「簡単」と書かれていますが、実際に作ると問題点や課題が見られます。(1)作る際、意外と手間や時間が掛かり、けっして簡単ではない(普通のおにぎりのほうが早くて楽) (2)握ってない上に具材も多いので、食べる時にご飯やお数がボロボロと落ちる (3)海苔1枚丸々使うとバランスが悪く、海苔が噛み切れないことがある (4)具材によっては、食べた時お数が抜けてしまいご飯だけのスカスカになる (5)夏場は、腐りやすい要因がある (6)多数の具材をごちゃ混ぜにして食べるため、具材ごとの味が消えてしまう(普通の食事や弁当のように、具材は1つずつ食べたほうが味が出る)、などです。
やはり握ったおにぎり(おかしな表現?)や握り寿司は握ってあるので食べやすく、シャリの間に適度な空気が入るのシャリも具材も美味しくなるのです。「おにぎらず」を食べると、日本人が築いてきた「握りの文化」のありがたさを再認識します。高齢の方や子供さんは海苔による喉の詰まらせ、ご飯を落とすなど食べにくいようです。因みにコンビニおにぎりの海苔がサクッと噛み切れるのは、機械で小さな穴を無数に開けているからです。新しい文化として定着するのか、一過性なのか分かりません。日本の和食は、具材を単品ずつ味わうことで美味しさが引き立ちます。しかし残念ながら「おにぎらず」の人気は、若者世代に多い“ごちゃ混ぜ食”の延長なのでしょうか?
■美味しい海苔を食べたかったら「一番摘み」を買いましょう
海苔メーカーもチャンス到来と、「おにぎらず」専用の海苔を販売し張り切っています。その海苔メーカーの回し者ではありませんが、あるTV番組の受け売りです。スーパーなどでは、同じように見える有明海産の養殖海苔(10枚入り)が、同じメーカーでも200円台や600円以上するものが並んでいます。でもサイズや、表示されている栄養分は全く変わりません。さて値段の大きな相違は、何でしょうか?その差は、秋から翌春まで海苔を摘み取る時期が違うことです。
一般的な生産者は、11月から翌年春までに数回から6回程度、養殖海苔を摘み取ります。その中でも最初に取る11月の海苔が、柔らかく一番美味しいのです。理由は夏の7~9月頃は雨が多く、山の養分が川から海に流れて10月頃の海はそうした養分が高いのです。その時期の養殖による海苔の胞子が、どんどん栄養分を取り込むためです。11月に摘み取る海苔は、アミノ酸を多く含み美味しいのです。このような高級な海苔は、パッケージに「一番摘み」「初摘み」「若摘み」と書かれています。
我が家はいつも経済的な安い海苔だったのですが、試しに食べ比べてみると高い海苔はパリパリ感がまるで違います。さらに海苔から、ジュワっと旨みが出てきます。並べると見掛けでも違い、安い海苔はやや緑掛かっています。高級海苔は養分を多く取っているので、黒い色をしています。それ以来、家族で手巻き寿司を作った時は、プチ贅沢で「一番摘み」などを使うことにしています(喜)。皆様も、試しにどうぞ!