有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

JACS 2005, 127, 15716.

2005-12-08 22:24:02 | 新着論文
Synthesis of Fused Polycyclic Aromatics by Palladium-Catalyzed Annulation of Arynes Using 2-Halobiaryls


Pd触媒とベンザイン、2-ヨードビアリルの環化反応。ポリアロマティックハイドロカーボンが合成可能。収率はよい。2-iodoビアリルはヘテロ環でも可能。

Larockのグループ。ベンザイン-Pd錯体を中間体に考えているのが面白いです。反応機構で、ベンザインと先に反応するか、ハロゲンに酸化的付加するか、どちらが先かの2つを考えています。流行のe-rich phosphineやカルベンなどを使っていないところが更に展開や最適化ができそう。ベンザイン先ならパイ受容性の高いカルベン配位子が有効な気がしないでもない。

この仕事の本質と無関係に思ったこと。ベンザインの温和かつ官能基共存的な発生法と遷移金属錯体の化学がよくわからない。ヨードニウムがあったがどの程度コンパチが可能なのか。ヘテロ原子を含むベンザインってやっぱり壊れるのだろうか?錯体などで安定化して合成に使えないか。
展開としては、トランス体からフルオレニリデン骨格が得られたりしないのか。基質の設計で3成分の縮合ができないだろうか。


Angew.Chem.Int.Ed. ASAP

2005-12-08 07:14:13 | 新着論文
Ir-Catalyzed Borylation of CH Bonds in N-Containing Heterocycles: Regioselectivity in the Synthesis of Heteroaryl Boronate Esters

Nを含むヘテロ環へ立体障害を利用すると、Ir触媒によるC-Hへの直接的ホウ素化反応が進行。

読み始めは宮浦先生、石山先生のビピリジル誘導体のIr触媒でのホウ素化をヘテロ環にもっていっただけかと思いつつ。オルト位に置換基ー立体障害をもつ窒素含有へテロ環は触媒毒になることなく、位置選択的にホウ素化がおきることを発見。結論まで読んで、OLEDへの応用や従来方よりも優れた修飾法、合成法になることが強調されなるほどと仕事の意外性、有用性に納得。

ピリジン誘導体のホウ素化の位置選択性と機能性分子合成への応用でまとめた方が読みやすい論文になるような気がしました。
しかし、この石山先生、宮浦先生のIr触媒は本当にインパクトの高い仕事と思います。JACSで報告されてから翌年の学会では、このホウ素化を利用した報告が多かったことに驚いたのを覚えています。