仮想通貨は投資商品の性格が強まっており、金などと同様に「重要な資産の一つとして発展していく」との見方もある。先日マネックスGに買収されたコインチェックは現在、3つの集団訴訟を抱えており、先行き楽観は出来ませんが、法律家は「被害者に対し、大部分の補償は終わっているので、潜在的な債務とは言えないと思う」と話す。コインチェックはすでに流出したNEMに関する被害者の補償を終えているため、裁判は仮想通貨の価値の下落分や一部凍結中の仮想通貨の取り戻しなどが、主な請求内容になるからだ。これらは市場が安定し、価格が再度上昇すれば済んでしまう話なのです。重要なのは市場の将来性ですが、無視できない規模にまで拡大し、今後、金融市場の波乱や、金融緩和の恩恵を一番受けやすい位置にいます。中央銀行も絡み銀行に眠っていたお金が動き出すのか、仮想通貨がどのようになるのか興味深々です。
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ビットコインなど仮想通貨は相場がたったひと月で2倍になったり、半値になったりと激しく動く投機の塊だ。交換所からの巨額の資金流出事件も起きるし、犯罪組織の不正資金の温床にもなるなど、社会的には問題だらけだ。にもかかわらず、仮想通貨がますます世にはばかるのはなぜか。
それを考える前にまず質問。目に見えない電子空間のなかでしか存在しないのに、仮想通貨がなぜ「通貨」になるのか?
優等生なら以下のように答えるだろう。お店次第だが、モノが買えるし、食事代が払える。円やドルなどと交換できる。ネットを使って容易に海外送金できる、と。
それにしても、通貨、あるいはおカネって正体は何だろうね。
金融用語でいうマネー(おカネ)とは、現金と銀行預金の合計、さらには現金に簡単に替えられる投資信託や国債などの証券も含まれる。調べてみると、現預金の総額のうち、現金は日本で9%、米国で8%程度に過ぎない。残る預金通貨は市中銀行のデータセンターに記載された数値情報であり、それを統括するのが日銀など中央銀行のデータセンターだ。
日銀は異次元緩和政策によって、最大で年間80兆円ものカネを金融機関に流し込む。金融機関はその資金をもとに家計や企業に融資すると預金になって還流し、その預金が原資になって新たな融資がなされ、預金が増える。つまり預金通貨という名のマネーが創造され、増殖する。
技術面でみれば、この取引はコンピューター端末間で行われる。つまりおカネの創造とは電子空間上で追加記載された数値のことで、最終的なカネの増加額は中央銀行のデータセンターで確認される。何のことはない。電子空間上でおカネの取引データを追加記載した分が創造されたおカネということになる。
ビットコインはこの記録作業を「採掘」と呼び、民間業者の大型のコンピューター装置によって行われる。取引記録を追加すれば新たなカネが創造されるとみなし、その業者は報酬として追加ビットコインを得るという。つまり、仮想通貨は法定通貨を単位に成り立つ通貨・金融システムに適合するのだから、当局も通貨として認定せざるをえなくなったのだ。
権威ある中央銀行としてはどこの馬の骨かもわからぬ業者にカネを創造されたら、面白いはずはない。日銀の黒田東彦総裁は「仮想通貨には裏付けとなる資産がない」とけなす。法定通貨は徴税権を持つ国が価値を保証するという論法だが、欺瞞(ぎまん)ではないか。
インフレになれば価値が損なわれる。悪性インフレになれば法定通貨は紙くずになるが、国家は知らぬフリで、国民は泣き寝入りするしかない。ビットコインの場合、その点、発行上限を定めており、金鉱と同様、残存量が少なくなるにつれて、採掘量は減る仕掛けになっている。
仮想通貨の時価総額は2月下旬時点で4500億ドル(約48兆円)。14兆ドル弱の米国のおカネの総量に比べると大したことはないようだが、仮想通貨の時価総額はたったひと月で2000億ドルも増え、年間で増加額が7000億ドル前後の米国マネーに匹敵しかねない。中央銀行はさて、どうするのか。(産経新聞特別記者・田村秀男)